政治家の春日一幸さんが設立した春日楽器のアコースティックギターF-15にはまったく同じ機種名で、異なった製品があります。しかしいずれにせよ、装飾を省いた質素なベーシックモデルではあります。
また、日本ではあまり知られていませんが、海外ではジャパンビンテージとして500ドル前後の値段がついていることもあるようです。

そんなF-15をリペアしてみてわかったのは「ざっくりした見た目に対して音はいい」ということでした。春日楽器が力を入れた「K.Country」のような高級ラインではありませんが、それでもOEM製造を多く手がけた春日楽器らしく、良く鳴る楽器に仕上げています。
ボディ | OMサイズ |
---|---|
トップ | スプルース(おそらく合板) |
サイド・バック | マホガニー? |
ネック | マホガニー? |
指板 | ローズウッド |
KASUGA F-15リペア内容

うちに来た時はネックが順ぞり気味で弦高が高かったので、ロッドを少し締めて順ぞりを調整し、ブリッジとサドルを削って下げました(サドルスロットも掘り下げ)。現在6弦が2.6ミリ、1弦が2.0ミリくらいです。

弾いてみるとあちこちで音がビビっていたので、指板に問題がありそうでした。とりあえずフレットのすりあわせで対応し、1弦の13フレット以外はビビりがなくなりました。
そこから再度すり合わせを行って、全ての弦・全てのフレットでビビりがなくなるように調整できました。
また、この時代の低価格帯ギターらしくハードウエアがチープでチューニングしにくかったため、Ariaのオープンバックのものに交換しました。Ariaは安いですがよくできており、チューニングのしやすさが格段に向上しています。

現状はダダリオのブロンズ弦(エクストラライトゲージ)を張っています。音量も豊かで、どの弦もバランスよく、よく響いているがしっかり締まりもある感じです。
ちなみに、ナットは牛骨で作り直し、エクストラライトゲージに合わせて溝を切ってあります。また、サドルも牛骨で作り直しています。

まだ買えます。
このギターのリペアのポイント
リペアをしてみて感じたのは「かなりフレットが低い」ということです。元々のフレットの高さが低いため、あまり何度もすり合わせをすることができず、打ち直しが必要になると思われます。フレットの低さは、弦高の高さにつながっているようにも思えました。
また、つくりはどちらかというと雑です。
指板の端(ナットに接する部分)が垂直でないなど、気になる点も見受けられました。
しかしこの個体に関しては、ネックの元起きもなく、コンディションはよく保たれていました。入手時には弦を張りっぱなしだったことを考えると、丈夫なギターなのかもしれません。
そこそこ鳴るOMサイズの古いギターを探している場合、フレット打ち直しとチューニングヘッドの交換を前提とするなら、アリなギターかと思います。
20世紀ギターストア
このギターは以下のストアで購入できます。
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春日楽器について

春日楽器製造株式会社は、1935年に名古屋で創業された楽器メーカーで、ギターの他にバンジョーやバイオリンも製造していました。
創業者は後に民社党委員長を務めた春日一幸氏だったことも有名です。
春日楽器は高い技術を持ち、短期間ですがヤマハブランドのOEM製造も行っています。また、米国のギターブランドのOEM製造も手がけ、知られているところではConrad、Emperadorなどの製造を行ったようです。また、一時ESPのギターも製造していたとの情報もあります。
自社ブランドの楽器も販売し、「K.Country」や「The Kasuga」などのブランド名でアコースティックギターを展開。特に「K.Country」は同社の技術の粋を集めた名機として知られています。
しかし、晩年には業績が不振となり、1996年頃に操業を停止したとされています。それは、創業者の春日一幸氏が亡くなって数年後のことでした。