リペア

ギターのフレットすり合わせを基礎から解説。自分でできる詳しい手順も掲載

少し古めの中古ギターを買った場合、フレットのすり合わせはほぼ必須のメンテナンス。初めてでもていねいに作業すればできるので、ぜひチャレンジしてみてください。

では「なぜフレットのすり合わせが必要なのか」というと、演奏しているうちにフレットがすり減り、音詰まりやビビリの原因になるからです。

あるいは、経年変化でネックにねじれが生じて、ビビリが発生することもあります。

ギターのフレットすり合わせとは、そのように不均一になってしまったフレットを研磨して、高さを均一に揃える作業です。

すり合わせは、フレットの打ち直し(フレット交換)をはじめとした様々なメンテナンス・リペアの基本となる技術なので、今後ギターリペアを覚えていこうという人は、ここからスタートしてみてください。

用意する道具

フレットクラウンファイルを除くと、ほぼ特殊な工具は必要ありません。専用のすり板も販売されていますが、筆者は自宅倉庫に転がっていたツーバーフォー材の端材を使用しています。

  • すり板
  • 320、#600、#800、#1000、#1200の耐水ペーパー
  • コンパウンド
  • フレットクラウンファイル
  • 油目のファイル(やすり)
  • 油性マジック(青色がおすすめ)

筆者はHOSCOのフレットクラウンファイルを使用しています。

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上記はミディアムフレット用です。ジャンボフレットなどは別のファイルを使用します。

フレットすり合わせの手順

ここからは具体的なフレットすり合わせの手順を紹介していきます。すり合わせの前にネックをストレートに調整しておく所はポイントです。

また、ネックの状態によってはかなり大きく削ることになります。すり合わせで状態が改善しない場合は、フレットの打ち直し(リフレット)が必要になるかもしれません。

マスキングテープでマスキングする

最初に指板の両サイドにマスキング

最初に、マスキングテープでネックまわりを保護します。まず、上の写真のように、指板の両サイドにマスキングテープを貼ります。

ネックをストレートに(ロッド調整)

次に、トラスロッドを回してネックをストレートにします(ストレートになっていることが作業の前提)。

ストレートかどうかを確認するときは、30~40cmの定規をフレットに当ててみて、どのフレットにもすき間が出ないかどうかを見ます。

マジックでフレットにマーキングする

次に、すべてのフレットに油性マジックでマーキングします。次の作業では、このマジックの削れ具合を見て、すべてのフレットにペーパーが当たっているかどうかをチェックします。

マジックの色は好みですが、筆者は青が見やすいと考えています。

すり板+320番のサンドペーパーですりあわせる

すり板に320番のサンドペーパーを貼り付けて、最終フレットから1フレットに向けてまっすぐにすり合わせていきます。

筆者は普通のサンドペーパーを購入し、デザイン用のペーパーセメントですり板と貼り合わせています(貼って剥がせる糊です)。

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ペーパーセメントは、塗布した後、いったん乾燥するまで待ってから貼り付けます。

基本的に1フレットは当てない意識で

1フレットは当てないつもりですり合わせるくらいでOKです。

多めに削る場合は#150から

フレットを多めに削りたい場合は、#320でなく、もっと目の粗い#150番からスタートしてください。ちなみに、筆者は多めに削るときには高儀の両面ダイヤモンド砥石を使用しています。非常に便利ですが、あっという間に削りすぎるので注意してください。#400側を使用します。

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全フレットにペーパーサインがつくことを確認

全てのフレットを削り、全フレットにペーパーサインがつくまですり合わせます。すり合わせは、基本的に一番低いフレットに合わせて削っていくので、一番低いフレットを見るようにしてください。

最後に12F以降を砲弾型にすりあわせる

ひととおりペーパーサインがついて、すり合わせができたら、さらにハイフレットをすり合わせます。写真(図)のように砲弾型にすり合わせておきます。

ハイフレットはもともと、サウンドホール側へ向けてゆるく傾斜しているからです(少し下がっている)。

フレットエッジを油目のファイルで処理する

余力があればフレットエッジを油目のファイルで削り、少し丸めておきます。

フレットファイルで形を整える

すり合わせたばかりのフレットは、頂点が削れて台形になっています。それをふたたびフレットの形にするために、フレットファイルで形を整えます。

フレットファイルは、上記の図のように4つのアールがあり、それぞれ異なっています。どのアールを使うかを決めてから作業を行います。

耐水ペーパーで磨く

フレットファイルで整形できたら、耐水ペーパーで磨き、キズを消していきます。以下の順番で磨いてください。

#320→#600→#800→#1000→#1200

#320のキズを#600で消し、#600のキズを#800で消し……という風に繰り返していきます。

コンパウンドで磨く(仕上げ)

最後に、布にコンパウンドをつけて磨きます。筆者はピカールを使用しています。液体でもゲル状でも、どちらでも問題ありません。ピカピカに磨けたら完成です。

フレットすり合わせに関連したよくある質問

最後に、フレットすり合わせに関連したFAQをまとめておきます。

フレットすり合わせの料金はどれくらいですか?

フレットすり合わせの料金は、作業内容や楽器の状態によりますが、一般的に13,000円から20,000円程度が相場です。ちなみに、島村楽器の公式サイトでは13,420円~となっています。

しかしフレットのすり合わせは、ていねいに作業すれば誰でもできます。複数台のギターを持っている方なら、道具を揃えて挑戦するメリットは十分あります。

フレットすり合わせのデメリットは何ですか?

フレットすり合わせを繰り返すと、フレットの高さが低くなり、ピッチのズレや演奏性の低下を招く可能性があります。もしそうなったら、フレット交換(リフレット)を行う必要があります。

フレットすり合わせとリフレットの違いは何ですか?

フレットすり合わせは、摩耗したフレットの高さを均一に整える作業です。 一方、リフレットは古いフレットを全て新しいものに交換する作業で、演奏性や音質の大幅な向上が期待できます。リフレットのことを「フレット打ち直し」ともいいます。

またフレットを打ち直す時、指板の調整も行います。指板にねじれが生じている場合は、指板調整によって修正しますが、この作業ではフレットの打ち直しが必須となります。

フレットのすり合わせに失敗するとどうなりますか?

適切な技術がないと、フレットの高さが不均一になり、ビビりや音詰まりの原因となります。 特定の弦の特定のポジションだけ音がビビるといった症状はよくあります。

また、削りすぎるとフレットの寿命を縮めることにもなります。

まとめ

この記事では、中古ギターを購入した際に必要となる「フレットすり合わせ」の手順についてまとめました。

フレットは演奏によってすり減り、高さが偏ってくると音詰まりやビビリの原因になります。この問題を解消し、快適な演奏を可能にする作業が「フレットすり合わせ」です。

また、この作業はギターリペアの基本技術でもあるため、リペアスキルを身につけたい方には必須の工程です。

基本的な手順をおさらい

  1. マスキングテープで指板を保護 - 作業中にフレットが傷つかないようにするため。
  2. トラスロッドでネックをストレートに調整 - 均一に研磨するための前提条件。
  3. フレットにマーキング - 削るか所を視覚的に把握するためマジックでマーキング。
  4. すり板でフレットを研磨 - 徐々に細かいペーパーに切り替えながら削ります。
  5. 形を整え磨く - フレットクラウンファイルや耐水ペーパーを使用して仕上げます。

この記事にまとめたフレットのすり合わせを行うことで、ギターの演奏性が向上し、長く快適に使い続けることができます。また、基本技術を習得することで、より高度なギターリペアにもチャレンジできるようになります。

フレットすり合わせは手間がかかりますが、初めての方でも、一つずつ丁寧に進めていけば完成度の高い仕上がりが期待できます。

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