オーギュメント(オーギュメント・トライアド)とは、メジャー・トライアドに含まれる完全5度の音を半音上げて、増5度に変えたもののことです。

少し不協和な響きをもつものの、コード進行の印象を変える力をもつオーギュメント。この記事ではその仕組みや、効果的な使い方を考えていきます。
また、オーギュメントは三和音の一種です。オーギュメント以外の三和音については、以下の記事で詳しく説明しています。
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オーギュメント(aug)=増三和音

augmentは英語で、増加させる、拡大するといういう意味。音楽用語では、メジャーコードの5度の音を半音高くしたコードをオーギュメント(オーグメント)と呼びます。
一般的にはaug(CならCaug)と表記しますが、C+など他の表記方法もあります。

また、オーギュメントを構成音で分類すると4つにまとめることができます。
| コードネーム | 構成音 | 同じ構成音をもつコード |
| Caug | C、E、G# | =Eaug、G#aug |
| C#aug | C#、F、A | =Faug、Aaug |
| Daug | D、F#、A# | =F#aug、A#aug |
| D#aug | D#、G、B | =Gaug、Baug |
EaugとG#augは、Caugの転回形と考えることもでき、その点、やや特殊なコードのひとつといえるでしょう。
ここからは、オーギュメントの構成音や使い方を詳しく見ていきます。
オーギュメントの構成音と機能

通常、ダイアトニックトライアドは、根音(ルート)+3度(3rd)+5度(5th)の3つの音で構成されています。
またメジャートライアドもマイナートライアドも、構成音に完全5度の音をもっています。
この完全5度の音を半音上げたものを、オーギュメント(オーギュメンテッドトライアド)といいます。

一例として、CとCaugを比較してみましょう(上図)。
Cの構成音はC、E、G(ド・ミ・ソ)です。ドとソは完全5度の関係ですが、ソを半音上げてソ#にすると増5度となり、Caugになります。
音程のしくみをおさらい
ここまで読んで「あれ、完全5度ってなんだっけ?」となった方のために、音程のしくみをざっくりとおさらいしておきます。
知ってるよ! という人は読み飛ばして次の章へ進んでください。
音程とは、基準となる音から別の音への相対的な距離のこと。その距離を「度数」によって表します。

2つの音が同じ線(または線間)にある場合は、1度(ユニゾン)といいます。たとえばドとドは1度の関係です。
ドとレは2度、ドとミは3度……ということになります。
しかし、ドとレの間は全音(半音2つぶん)ですが、ミとファの間は半音です。そこで、ドとレのような場合を長2度、ミとファのような場合を短2度と呼びます。
1度から5度までをまとめると、次の表のようになります。
インターバル
| インターバル | 半音の数 | 例 | ||
| 2度 | 全音 | 2 | CとD | 長2度 |
| 半音 | 1 | EとF | 短2度 | |
| 3度 | 全音+全音 | 4 | CとE | 長3度 |
| 全音+半音 | 3 | DとF | 短3度 | |
| 4度 | 長3度+短2度 | 5 | CとF | 完全4度 |
| 長3度+長2度 | 6 | FとB | 増4度 | |
| 5度 | 完全4度+長2度 | 7 | CとG | 完全5度 |
| 完全4度+短2度 | 6 | FとB | 減5度 |
表の「5度」の部分を見ると、CとG(ドとソ)が完全5度の関係にあることがわかります。そのGの音を半音上げると、増5度になる、ということです。
オーギュメントの効果的な使い方
オーギュメントは、調性内の音高以外の音を含むため、単独で聞くと違和感があります。しかし、コード進行の中で経過的に使うことで、さまざまな効果を生み出します。
クリシェ/5度音上昇型クリシェ

同じコードが複数の小節にまたがって続くような場合、1つの声部だけを変化させる手法をクリシェといいます。
なかでも5度音を変化させる、5度音上昇型クリシェはよく使われますが、具体的には以下のようなコード進行になります(Cの場合)。
!fumen
|C|Caug|C6|C7|
C+はCaugのことです。
クリシェの例(「ブラジル」)

上記は「ブラジル」の冒頭部分ですが、Cの5度音上昇型クリシェで、C6からまた |Caug |C | と下がっていく進行になっています。
ドミナントの代理として使うとテンションに類似した効果

上の図のように、VaugをV7(ドミナントセブン)の代理として使うことができます。図ではG7を例に解説しています。
Gaugの構成音ソ・シ・レ#のうち、レ#(ミ♭)はGのフラットサーティーンス(♭13)なので、テンションコードであるG♭13thに近い響きになります。
ただし、セブンスがないので、G♭13thとは違った独特の印象を与えることができます。
そこで、
- G7
- G♭13th
- Gaug
この3つのコードを使い分けることで、よりアレンジの幅が広がります。なお、テンションについては以下の記事で詳しく解説しています。
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(参考)マイナーフラットフィフス

オーギュメントは、ルートから長3度・長3度の音を積んだ三和音でした。一方、ルートから短3度・短3度と音を積んだコードがマイナーフラットファイブ(m(♭5))。
いずれも調性内にない音を使うため、それ単体では不協和な響きとなりますが、使い方しだいでは楽曲のイメージを変える力を持ちます。
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まとめ:オーギュメントの特徴と使い方
オーギュメント(オーギュメント・トライアド)とは、メジャー・トライアドに含まれる完全5度の音を増5度に変えたもののことでした。
不協和な響きをもつため、単体で使われることは少なく、経過的に使うことが大半です。
オーギュメントを経過的に使う例(「スワニー河」

上記は |C |F | と進行する途中にオーギュメントを差し挟み、 |C Caug |F | とした例です。
その他、記事中で説明したようにクリシェに使われることも多く、テンションに類似した効果を期待して使われることもあります。
オーギュメントを効果的に使える場面は他にもあり、記事では書ききれませんでした。また別記事で解説していく予定です。
参考文献
清水響(2018)『コード理論大全』リットーミュージック
篠田元一(2020)『実践コードワーク 完全版 理論編』リットーミュージック
石田ごうき、大浦雅弘、熊川ヒロタカ(2017)『使える!コード理論』リットーミュージック
松田昌(1986)『松田昌の音楽講座 ポピュラーアレンジの基礎知識』財団法人ヤマハ音楽振興会