ボロ家・空き家は、ほとんどの場合、売ることができます。
問題は、物件の古さではありません。売り方の戦略を持っているかどうかです。
国土交通省不動産情報ライブラリに登録された実際の売買データ(2022〜2025年)を当社で集計・分析したところ、築50年超の物件であっても、東京都台東区では全取引の約25.1%を占めていることが確認できました。「古いから売れない」という思い込みは、必ずしも正しくないのです。
筆者(宅建士)がこれまで関わってきた案件を振り返っても、本当に売れなかった物件はごくわずかです。むしろ多かったのは、「売り方を知らなかったために時間と費用を大きく損した」ケースでした。
そこで、この記事ではボロ家・空き家の売却をめぐる注意点と3つの売り方、税務対策、そして相談先の選び方まで、筆者の実務経験をもとに順を追って解説します。
ボロ家・田舎の空き家は売れる?

結論からいえば、ほとんどの空き家・ボロ家は売れます。
どんなに古く、傷んでいても、売却できない不動産はほとんどありません。ただし、売り方を間違えると売却が長期間にわたって難航するケースは少なくなく、そのせいで「負動産」という言葉が生まれてしまいました。
筆者(宅建士)がこれまで関わってきた案件を振り返ると、売れなかった物件より「売り方を知らなかったために時間と費用を大きく損した」物件のほうが圧倒的に多いのが実情です。
ボロ家・空き家の売却で大切なのは、「個別の不動産について売却方法を分析し、戦略を立てる」という視点です。
そのために、まず物件の状態と法的な位置づけを正しく把握することが出発点になります。しかも、調査してみないと実際の築古物件の売れやすさはわかりません。その点を、国土交通省不動産情報ライブラリに登録されたデータで検証してみましょう。
築古物件がどれくらい売れているかの「データ分析」
| 台東区 | 岩出市 | |
|---|---|---|
| 築年数中央値 | 築35年 | 築23年 |
| 築20年以上 | 499件(69.6%) | 166件(52.9%) |
| 築30年以上 | 426件(59.4%) | 110件(35.0%) |
| 築40年以上 | 308件(43.0%) | 48件(15.3%) |
| 築50年以上 | 180件(25.1%) | 9件(2.9%) |
上記は、国土交通省不動産情報ライブラリに登録された「実際の売買データ」を集計したものです。
私たちは「田舎では古家・空き家でも売れる」と思いがちですが、実際には違います。
築50年以上の築古物件は東京都台東区では「十分売れる(全売買の25.1%)」のに対し、和歌山県岩出市では、ほとんど存在感がありません(2.9%)。
この調査を全国展開してみると、たとえば沖縄県那覇市、北海道函館市などは「築古でもそこそこ売れているエリア」といえます。一方、岡山県倉敷市や福島県福島市では、それよりワンランク売れにくい、と判断できます。
もちろんこれは一面的な調査ですから、これを持って断言することはできません。
しかし「常識で簡単に判断してはいけない」ということは確かです。そこで、ボロ家・空き家の売却時には信頼できる不動産会社に調査を依頼し、どう売るべきかという戦略を立てることが必要になります。
本分析は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」の成約データをもとに、宅地(土地と建物)のうち築年数を算出できた一戸建て成約を集計したものです。比較しているのは「築古物件が各エリアでどの程度実際に成約しているか」であり、売却期間、成約率、在庫数、値下げ回数までは把握できません。そのため、本記事では「売りやすさ」を厳密に断定するのではなく、「築古でも成約している市場の厚み」を比較しています。
そのまま売るか解体かは「個別判断」が必要
古家あり物件として売るか、更地として売るかは、一律に判断することができません。
エリアによって需要が異なり、「誰が、どんな状態の不動産を求める傾向があるか」を調査・分析しないと答えが出せないからです。
その意味で、簡単に「更地にしましょう」という不動産会社は信用できません。「更地にしたらすぐ売れて仲介は楽だが、価格は古家あり状態より安くなる」ということもあります。
まず確認したい3つの「危険」なポイント

売却を始める前に、次の3点を確認してください。これが売却価格や売却の可否に直接影響するポイントだからです。
| なぜ重要か | まずやること | |
|---|---|---|
| ①名義 | 相続登記が済んでいないと、原則として売却を進めにくい | 登記事項証明書を法務局で取得する |
| ②建築可否 | 再建築不可だと買主が大きく減る | 接道状況・道路種別・建築基準法上の扱いを確認する |
| ③土地条件 | 境界未確定・越境・がけ・私道負担で価格が変わる | 測量図・公図・現地状況を確認する |
この3点を把握するだけで、売却戦略の方向性がほぼ決まります。順に解説します。
売却の前提として「遺産分割協議」をすませておく
筆者が見た「相続した実家が売れなかったケース」で、最も多い原因は「相続人間の意見がまとまらなかった」というものです。
相続人が兄弟だけで全員仲がいい、といった場合は心配ありません。しかし、中には数次相続(何回か相続が発生している)が発生し、相続人の人数が多い場合もあります。
数次相続が発生している場合、相続人が10人・20人に膨らむケースも珍しくありません。全員の署名・押印が必要な遺産分割協議書を整えるだけで、半年以上かかることもあります。
そこで、まず遺産分割協議をすませておき、その不動産をどう処分するかという方針を出しておきましょう。
遺産分割協議がまとまらないと相続登記ができず、登記が完了していなければ原則として所有権の移転もできません。遺産分割協議→登記→売却は、この順番で進める必要があります。
再建築できるかどうかによって売却価格が大きく変わる
「再建築不可(さいけんちくふか)」とは、今ある建物を取り壊した後に、新しい建物を建てることができない土地のことをいいます。
建物を建てるには、原則として幅員4m以上の道路に間口2m以上接していることが必要です(建築基準法第43条)。この条件を満たさない土地は、再建築不可となります(ただし例外あり)。
再建築不可の物件は、住宅ローンの融資を断られることも多く、買主が現金購入者や投資家等に限られます。その結果、同じエリアの再建築可能な物件と比べて、価格が3割〜6割程度も下落することがあります。
なお、接道している道路が「建築基準法上の道路」かどうかは、見た目だけでは判断できません。幅が狭い里道(りどう・国有地の通路)や私道の場合、建築基準法上の道路と認定されていないこともあるため、必ず市区町村の担当窓口か不動産会社を通じて確認してください。

その他価格に影響する「土地の個性や難点」
名義と建築可否のほかに、土地そのものの状態が価格に影響する要素がいくつかあります。
①境界未確定
隣地との境界線が確定していない場合、買主が「思ったより面積が狭かった」「境界トラブルに巻き込まれた」といったリスクを抱えます。売却時に確定測量(かくていそくりょう)を求められることが多く、測量費用は40万〜80万円程度かかることもあります。
②越境(えっきょう)
隣家のブロック塀や樹木の根が敷地内に入り込んでいる、または自分の所有物が隣地に越境しているケースです。越境が判明すると、売買交渉が止まることも多く、事前に隣地所有者と「越境の覚書(おぼえがき)」を締結しておくことが有効です。
③がけ地・擁壁(ようへき)
土地が急な斜面に接している場合、都道府県や市区町村の「がけ条例」によって建築制限が生じることがあります。老朽化した擁壁の補修が必要な場合は、費用が大きくなることもあります。
④私道負担(しどうふたん)
敷地の一部が私道(道路として使われている私有地)に充てられている場合、その部分は実質的に使えない面積になります。また、通行・掘削の権利が明確でないと、インフラ工事の際に隣地所有者の同意が必要になるなど、買主にとって大きな不安要素になります。

これらは、公図(こうず)や測量図の確認と、現地での目視調査によってある程度把握できます。売却前に不動産会社と一緒に現地を確認しておくことを、筆者は強くお勧めしています。
損をしないために押さえておきたい「3つの売り方」

ボロ家・空き家の売却方法は、大きく3つに分かれます。どの方法が最善かは物件の状態・エリア・売主の事情によって異なりますが、まず全体像を把握しておくことが重要です。
| 売り方 | 売却価格の目安 | 売却期間の目安 | こんな人・物件に向く |
|---|---|---|---|
| ①そのまま仲介 | 最も高い(市場価格に近い) | 3か月〜1年以上 | 状態が比較的よい/エリア需要がある |
| ②更地にして仲介 | 中程度(解体費用との差引きが重要) | 1〜6か月程度 | 建物の価値がマイナスになっている/土地需要が高いエリア |
| ③業者買取 | 最も安い(市場価格の5割〜7割程度) | 最短1〜2週間 | 急いで現金化したい/難あり物件で仲介が難しい |
①そのまま仲介|最も高く売れるが、時間がかかることも
「古家付き土地(ふるやつきとち/こやつきとち)」として市場に出す方法で、価格的には最も有利です。
リフォームを前提に購入するエンドユーザーや、賃貸・民泊などを目的とする投資家が主な買主になります。
仲介での売却は、3つの方法のなかで最も高い売却価格が期待できます。ただし、状態の悪い物件・再建築不可の物件・需要の少ない過疎エリアの場合は、買い手が見つかるまでに時間がかかることも多く、場合によっては1年以上市場に出続けることもあります。
筆者が実際に経験したケースでは、田舎の相続物件を仲介に出したまま2年以上売れず、その間に固定資産税と管理費だけがかさんでいた、という例もありました。「とりあえず仲介に出す」だけでなく、価格設定と販売戦略の見直しを定期的に行うことが欠かせません。
②更地にして仲介|解体コストとの「損益分岐点」を必ず計算する
建物を解体して更地にしてから売る方法です。土地としての需要が高いエリアでは有効ですが、注意点があります。
まず、解体費用の目安は木造住宅で1坪(約3.3㎡)あたり3万〜5万円程度です。30坪の家であれば90万〜150万円程度の解体費用がかかる計算になります。この費用を売却価格でしっかり回収できるかどうか、事前に複数見積りを取ることが大切です。
また、更地にすると固定資産税が最大で6倍になる点も要注意。
住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が軽減されていますが(小規模住宅用地は評価額の6分の1に相当)、建物を取り壊すとその特例を受けられません(地方税法第349条の3の2)。売却までに時間がかかる場合は、この税負担にも注意が必要です。
さらに、更地にすることでかえって売りにくくなる場合もあります。再建築不可の土地は更地にすると建物が建てられないため、買主にとって使いづらい土地になるといった事情もあります。
③業者買取|価格より「確実性とスピード」を優先する選択
不動産会社が直接買主となって購入する方法です。仲介を介さないため、売却までの期間が最短1〜2週間と非常に短く、現金化のスピードが最大の強みです。
一方で、買取価格は一般的に市場価格の5割〜7割程度になることが多く、仲介と比べると売却価格が下がります。これは、買取業者がリフォームや転売にかかるコストとリスクを価格に織り込んでいるためです。
そこで、専門業者による買取を利用する場合は、売却スピードと価格のトレードオフである点を押さえた上で結論を出す必要があります。
業者買取が向いているのは、次のようなケースです。
- 遠方に住んでいて管理が難しい
- 相続税や借金の返済など、期限のある資金需要がある
- 再建築不可・残置物あり・雨漏りありなど、仲介が難しい難あり物件
- 相続人が複数いて、早期に現金を分配したい
ただし、業者買取については、買取価格の考え方が分かりにくいのが現状です。以下の記事でぜひ整理しておいてください。

相続した家で気になる「5つの注意点」

相続した家の売却では、「売れるかどうか」より「知らずに損をしないか」のほうが、実は深刻な問題になりがちです。筆者がこれまで相談を受けてきたなかで、特に見落とされやすい注意点を5つ整理しました。
1. 相続登記の義務化と「過料(ペナルティ)」
2024年(令和6年)4月1日から、相続登記は法律上の義務になりました。不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があり、正当な理由がないのに怠ると10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
「売るときに一緒にやればいい」と考えると、後々ひっかかるポイントもあります。
売却先が決まり、いざ契約という段階になってから登記手続きに着手すると、司法書士への依頼・書類収集・法務局での審査などに数週間〜1か月以上かかることがあります。
その間に買主の事情が変わり、契約の機会を逃してしまうケースも考えられます。
登記が済んでいない場合は、売却活動と並行して、早めに司法書士に相談することをお勧めします。
(参考)相続登記の義務化|法務省

2. 「境界(きょうかい)」の未確定による売却の遅れ
親の代から住み続けてきた家では、隣地との境界が明確に確定していないケースが数多くあります。
一般の個人に仲介で売却する場合、通常は確定測量(かくていそくりょう)が必要になります。確定測量とは、隣地の所有者全員に立ち会ってもらい、境界を正式に確定させる作業のことです。順調に進んでも3か月〜4か月程度かかることが多く、隣地の所有者が遠方にいる・相続が複雑である・隣人との関係が良好でない、といった事情があると、さらに長引くことがあります。
一方、価格交渉の材料として「確定測量をしない」という選択もあり得ます。売却スケジュールに余裕がある場合は、買い手が決まってから測量を手配するという方法も考えられます。
(参考)土地境界の明確化に関する取組|国土交通省
3. 空き家になった後の「火災保険」の落とし穴
家が空き家になった後も、火災保険の契約をそのままにしているケースがあります。これは、思わぬリスクにつながります。
火災保険の多くは「居住用」を前提とした契約です。長期間誰も住んでいない空き家状態になると、保険会社から「居住用の条件を満たさない」とみなされ、火災や損害が発生した際に保険金が支払われない可能性があります。
また、空き家は放火や管理不全による火災リスクが高いとして「一般物件」扱いとなり、住宅物件より保険料が割高になる、あるいは加入自体を断られるケースもあります。
相続後すぐに空き家になった場合は、加入している保険会社に「空き家になった旨」を速やかに連絡し、契約内容の変更が必要かどうかを確認してください。
4. 譲渡所得税を大きく左右する「取得費不明」問題
売却で利益が出た場合、譲渡所得税(じょうとしょとくぜい)がかかります。
課税額は「売却価格-取得費-譲渡費用」で計算されますが、ここで問題になるのが「取得費(その家をいくらで買ったか)」が分からないケースです。
親が購入したときの売買契約書や領収書が残っていない場合、税務上は売却価格の5%を取得費とみなして計算することになります(概算取得費の特例・所得税法施行令第185条)。
たとえば2,000万円で売れた場合、取得費は100万円(2,000万円×5%)とみなされ、差額の1,900万円近くが課税対象になる計算です。
一方、当時の売買契約書や通帳の引き落とし記録・住宅ローンの償還表・分譲時のパンフレットなどで実際の取得費を証明できれば、課税額を大きく減らせることがあります。
書類を探す手間は大変ですが、数百万円単位の節税につながる可能性があります。まず古い書類をすべて確認することを、筆者は強くお勧めしています。
(参考)取得費が分からないとき|国税庁
5. 自治体の「空き家バンク」と「補助金」の活用
ボロ家・空き家の売却や管理に関しては、行政の支援制度が充実してきています。
解体費用・残置物(ざんちぶつ)の撤去費用・リフォーム費用に対して補助金を設けている自治体も増えています。
しかし、こういった補助金は、利用しにくい制度設計のものが多いのが実態です。
たとえば「売買契約前」や「工事着工前」の申請が必須条件となっているケースが大半。先に業者と契約して工事を始めてしまうと、補助の対象外となります。
とにかく計画的に利用することが大前提です。
また、各自治体が運営する「空き家バンク」(空き家の売りたい人と買いたい人をマッチングする制度)に登録することもひとつの手です。通常の不動産市場では買い手がつきにくい物件に、移住希望者やリノベーションに関心のある購入者が現れるケースもあります。
そこで、売却を検討し始めた段階で、物件が所在する市区町村の窓口や公式サイトを確認しておいてください。補助金の内容や申請期間は自治体ごとに異なるため、ご自身の物件が所在する市町村で確認する必要があります。
税金をゼロにする「3,000万円控除」活用の全条件

相続した実家を売却した場合、条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。
うまく活用すれば、売却益にかかる税金をゼロか大幅に抑えられますが、適用条件が細かく、誤解も多い特例です。一つひとつ正確に確認してください。
なお、この特例は税理士の専門領域にあたります。本稿は概要の把握を目的としており、実際の申告にあたっては必ず税理士に相談してください。

この特例の正式名称と根拠法令
「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といい、租税特別措置法第35条第3項に定められています。適用期間は令和9年(2027年)12月31日までです。
(参考)No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
適用できる「5つの主な要件」
この特例を使うには、次の条件をすべて満たす必要があります。
①被相続人が相続直前まで一人で居住していた家屋であること
相続開始の直前において、被相続人(亡くなった方)が一人で住んでいた家屋が対象です。二世帯で同居していた場合や、老人ホーム等への入居で空き家になっていた場合は、条件が変わります(後述)。
②昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋であること
いわゆる「旧耐震基準」で建てられた建物が対象です。1981年6月1日以降に建てられた建物には、この特例は使えません。
③区分所有建物(マンション等)でないこと
マンションのような区分所有建物は対象外です。戸建てと土地が対象になります。
④相続後、売却するまで事業・貸付・居住に使っていないこと
相続してから売るまでの間に、誰かに貸したり、自分が住んだりしていると、特例が使えなくなります。空き家のまま維持していることが条件です。
⑤売却価格が1億円以下であること
売却代金(譲渡価格)が1億円を超える場合は適用できません。
売り方の条件|2024年から選択肢が広がった
この特例を使うためには、売却の方法にも条件があります。以下のどちらかを満たす必要があります。
A:売主が耐震改修または解体をしてから売る(従来からの方法)
建物を耐震基準に合致させるようにリフォームしてから売る、または建物を取り壊して更地にして売る方法。
B:買主が取得後に耐震改修または解体をする(2024年1月1日以降の新しい方法)
売主はそのままの状態で売却し、買主が取得後に耐震改修または解体を行う場合も、特例の対象になるようになりました(令和5年税制改正)。ただし、この場合は確定申告の際に買主が耐震改修または解体を完了したことの証明書が必要になります。
この改正により、「解体費用を負担してから売る」という負担なしに特例を使えるケースが増えました。
控除額は「相続人の数」で変わる――2024年改正の盲点
この特例の控除額は、令和6年(2024年)1月1日以降の譲渡から変更されています。
| 相続人の人数 | 控除額 |
|---|---|
| 1人または2人 | 3,000万円 |
| 3人以上 | 2,000万円 |
2023年以前は相続人の人数にかかわらず一律3,000万円でしたが、現在は相続人が3人以上の場合、控除額が2,000万円になります。兄弟3人で相続した実家を売る場合などは、この点に注意が必要です。
ボロ家・空き家でも安心「この流れで売却!」

ボロ家・空き家であっても、売却の流れは通常物件と同じです。ただし、とくに注意しておきたいポイントが存在します。
ここでは、ボロ家・空き家向けの売却の流れを解説し、早め早めに準備をすることができるようにガイドしていきます。
Step 1:権利関係と現状の確定(売却前)
ここはまず「売れるかどうか」を確認し「売れる状態」にするためのステップです。
| 確認項目 | やること | 目安の期間・費用 |
|---|---|---|
| 相続登記 | 登記事項証明書を取得し、名義を確認する。未了の場合は司法書士に依頼 | 2〜4週間・5万〜15万円程度 |
| 境界の確認 | 測量図・公図の有無を確認する。境界標がない場合は土地家屋調査士に相談 | 確定測量は3〜4か月・40万〜80万円程度 |
| 残置物の仕分け | 貴重品(通帳・権利証・印鑑など)を先に探す。不用品は処分業者に見積もりを取る | 内容による |
| 建物の状態確認 | 再建築可否・雨漏り・傾きなどを目視で確認する。不明点は不動産会社と現地確認 | 不動産会社に相談 |
ポイント: 相続登記が未完了の状態でも売買契約自体は締結できますが、引き渡し(決済)までに登記を完了させる必要があります。手続きに時間がかかるため、売却活動と並行して早めに着手してください。
Step 2:売却戦略の決定と査定
ここは「どう売るか」を決める段階です。
①売却査定(買取査定)
不動産会社(仲介)と買取業者の、両方に査定を依頼します。1社だけでは相場感がつかめません。
②売却方法の決定
仲介による売却であれば「現況のまま売るか、更地にして売るか」を判断します。
まずは解体せずに古家あり土地として売却を検討しましょう。2024年の税制改正により、売主が解体しなくても買主が取得後に解体すれば「空き家の3,000万円控除」が適用される可能性が出てきました。そのメリットを生かした戦略をとりましょう。
③建物内部の片付けと内見対応
また、売却方法が決まったら、最低限の片付けや清掃をしておきましょう。第一印象で買主の反応は大きく変わります。筆者の実務感覚では「片付けの有無は、売却成功を左右する大きな要素になり得る」と考えています。
④告知事項の整理
雨漏り・傾き・シロアリ被害・近隣トラブルなど、知っている不具合はすべて事前に不動産会社に伝えます。後から判明した場合、契約不適合責任を問われるリスクがあります。
「住んでいなかったからよくわからない」という場合は、必ずその旨を不動産会社に伝え、契約書作成時に契約不適合責任を負わない旨の特約を入れておいてください。
Step 3:媒介契約と売却活動
売却を開始したら、基本的には不動産会社にお任せとなります。しかし、最も重要な法的手続きの段階でもあります。

契約不適合責任の免責を明記する
ボロ家の売却で特に重要です。売買契約書に「売主は建物に関する契約不適合責任を負わない」旨を明記し、買主の了承を得た上で契約してください。口頭での確認だけでは後のトラブルになる可能性があります。
手付金の受領
売買価格の5〜10%程度を手付金として受領します。
残代金の決済と所有権移転登記
司法書士の立ち会いのもと、代金の受領と登記の移転を同日に行います。この日をもって引き渡しが完了します。
Step 4:決済と引き渡し
決済は司法書士の立ち会いのもと、売主・買主・双方の不動産会社・金融機関の担当者が一堂に集まって行います。
売主としては当日に必要書類等を忘れないように注意してください。以下のような書類が必要になります(一例)。
- 権利証(登記識別情報)
- 実印
- 印鑑証明書
- 本人確認書類
実印や印鑑証明書の持参忘れは意外と多く、その場合は手続きが延期になることもあります。事前に不動産会社から「持ち物リスト」を受け取り、前日までに必ず確認しておいてください。
代金の受領と所有権移転登記は同日に完了し、この日をもって引き渡しとなります。
Step 5:税務申告(売却後の翌年2月〜3月)
売却後に忘れがちな、しかし非常に重要な手続きです。
「空き家の3,000万円控除」などの特例は、確定申告をして初めて適用されます。申告期間は売却した翌年の2月16日〜3月15日で、この期間を逃すと特例が受けられなくなります。
申告には、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」・売買契約書の写し・登記事項証明書・取得費を証明できる書類(通帳の記録など)が主に必要です。特例の適用可否や計算方法は個別の事情によって大きく異なるため、申告前に税理士に相談することをお勧めします。
こんなボロ家は早めに相談「失敗しないための準備」

筆者はさまざまな不動産を扱ってきて「土地や建物にまつわる問題は、多種多様で複雑だ」と考えています。
ボロ家や空き家などの築古物件はとくに、時間の経過によって法律が変わってしまったり、常識が通じなくなっているという問題があります。
よくあるのは、こんな事例です。
- 法律が変わってしまい「再建築不可」となった。
- 隣地所有者が変わり、私道の通行ができなくなった。
- 物件から遠方に住んでいて、今どうなっているかよくわからない。
- 残置物が多く、何から手を付けていいか分からない。
- 田舎の実家の場所はわかるが、附属する山林の場所がわからない。
そういったケースほど、早めに対策することが大切です。
まず誰に相談するかも考える必要がある
「この専門家に相談すべき」という相談先も、ケースごとに異なってきます。筆者であれば、次のように切り分けて考えます。
相続自体で難航している場合
この場合は司法書士に相談してください。司法書士は法律と登記の専門家で、相続登記を担当します。いずれにせよ登記の段階で相談する司法書士に、最初から相談しておくメリットは大きいでしょう。
複雑な相続問題を整理し、法律の観点から「こう考えましょう」と提案してもらえます。その上で、売却する段階で不動産会社に相談すればいいわけです。
「再建築できるかわからない」「売れるか分からない」場合
この場合は、地元で信頼できる不動産会社を探し、そこに相談するのがはやいでしょう。不動産会社は常に「建築可否」を調査していますから、専門分野といえます。また、いくらで売れるかを、ある程度正確に予測できます。
隣地所有者と揉めているなど相隣関係に問題あり
この問題を単体で考えると弁護士さんがベストな相談先。しかし、出口は「その物件を売却する」ことにあります。
そう考えると、司法書士さんに相談して、まずは問題を切り分けてもらうのがおすすめです。司法書士さんも民法については詳しいですから、解決への道筋を提案してもらえるはずです。
また、弁護士と違って司法書士は、常日頃から不動産会社との付き合いがあります。売却時には「先生のおすすめ不動産会社はどこですか?」と尋ねてみてください。
付き合いのある不動産会社の中で、最適な会社を紹介してもらえるかもしれません。
【現場の知恵】残置物処理と「心の整理」の進め方

残置物(ざんちぶつ)の多さに圧倒されて、売却に踏み出せないという方は少なくありません。筆者がまずお伝えしたいのは、「全部捨てなくていい」ということです。
売却にあたって必要なのは、厳密には「買主に引き渡せる状態にすること」です。
業者買取の場合は、残置物がある状態のまま買い取ってもらえるケースも多く、「片付けてから相談しよう」と思っている間に時間だけが過ぎてしまうのはもったいないことです。
まず不動産会社に相談し、「残置物がある状態で査定してほしい」と伝えてみてください。
どうしても自分で処分する場合は、最初に貴重品の探索を優先してください。
通帳・印鑑・権利証・保険証書・古い売買契約書などは、売却手続きや税務申告で必要になることがあります。これらを先に確保してから、不用品の処分に移るのが正しい順序です。
そして、もう一つ。長年住んだ実家の片付けは、体力だけでなく気力も消耗します。「思い出の品をどうするか」で家族間の意見が割れることもあります。写真に撮って記録に残す、思い入れのある品だけ手元に残すなど、「全部残さなくていい、全部捨てなくていい」という気持ちで、少しずつ進めていきましょう。
まとめ:ボロ家・空き家売却で「負動産」を「富動産」に

ボロ家・空き家は、売り方を間違えなければ売却可能です。
問題は物件の古さではなく、戦略の有無なのです。
地方の実家を相続したものの、建物は古く、管理もままならない。毎年かかる固定資産税、遠方からの現地確認、いつ終わるともしれない空き家期間……そういった重荷をひとりで抱えている方は、決して少なくないはずです。
- 相続登記が完了しているか
- 再建築の可否は?
- 境界は確定しているか
この3点が整えば、「そのまま仲介」「更地にして仲介」「業者買取」のどの方法が最善かが見えてきます。
条件を満たせば「空き家の3,000万円控除」を活用して、売却益にかかる税金をゼロに近づけられる可能性もあります。早めに動くほど、選択肢は広がります。
国土交通省の売買データを分析すると、築50年超の物件でも東京都台東区では全取引の25.1%を占めており、「古いから売れない」という思い込みが必ずしも正しくないことがわかります。筆者がこれまで関わってきた案件でも、売れなかった物件より「売り方を知らずに時間と費用を大きく損した」物件のほうが、圧倒的に多い実情があります。
まずは無料査定フォームから、物件の状況をお知らせください。どのような状態の物件でも、最適な売却方法をご提案します。


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