空き家の処分は、早く動くほど選択肢が多く、対応の幅が広がります。
なぜなら、空き家は放置している間にも傷みが進み、管理の負担や固定資産税の問題が重くなりやすいからです。
総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は900万戸、空き家率は13.8%で過去最高でした。さらに、賃貸・売却用などを除く空き家も385万戸まで増えています。空き家問題は、もはや珍しい悩みではありません。
この記事では、宅建士の視点から、空き家の処分方法を「売る」「買い取ってもらう」「解体して売る」「国に引き取ってもらう」という現実的な選択肢に切り分けて、わかりやすく整理します。
相続した実家や古い家をどうするべきか迷っている方は、まず全体像から確認してください。
空き家・ボロ家の処分の基本(7つの処分方法)

空き家を処分するとき、まず解体した方がよいのでは? と考える場合も多いでしょう。
しかし、実務では、売る・買い取ってもらう・譲る・国に引き取ってもらうなど、複数の選択肢から状況に応じて選びます。
建物が古くても、立地や接道条件次第では家付きのまま売れることがありますし、逆に解体すると土地として売りにくい物件もあります。
そこで「解体すべきかどうか」を含め、様々な処分方法を検討するようにしてください。
主な処分方法としては、以下の6つがあげられます。
①不動産会社に仲介を依頼する ②不動産会社や専門業者に買い取ってもらう ③解体して更地として売る ④隣地所有者や第三者に譲る ⑤空き家バンクを使う ⑥相続土地国庫帰属制度を検討する ⑦0円で譲渡するサービスを使う
それぞれに「向いている物件」と「向いていない物件」があります。順番に解説していきましょう。
不動産会社に仲介を依頼する
不動産会社が売主と買主の間に入り、売却を仲介する方法です。最も一般的な売り方で、市場価格に近い金額で売れる可能性が高いのが特徴です。
向いている物件
- 接道条件を満たし、再建築が可能な物件
- 都市部や駅近など、需要がある立地の物件
- 買い手が見つかるまで時間的な余裕がある場合
向いていない物件
- 再建築不可や接道不良の物件(買い手が限られる)
- 過疎地域で買い手が極端に少ない場合
- 早急に現金化したい場合
仲介売却は「高く売れる可能性がある」反面、買い手が見つかるまでに数か月から1年以上かかることもあります。その間も固定資産税や管理コストは発生し続けます。

不動産会社や専門業者に買い取ってもらう
不動産会社や買取専門業者が直接、物件を購入する方法です。仲介と異なり、業者が買主になるため、早ければ数週間で現金化できます。
向いている物件
- 古家・ボロ家など、仲介では売りにくい物件
- 再建築不可・接道不良など、訳あり物件
- 内覧対応や残置物整理の手間を省きたい場合
向いていない物件
- 立地がよく、一般市場で高く売れる見込みがある物件
- 売却価格を最大化したい場合
買取価格は市場価格より低くなることが多いですが、「早く、確実に手放せる」という点では、管理が負担になっている遠方在住者にとってメリットがあります。
解体して更地として売る
建物を取り壊し、土地として売る方法です。買い手の幅が広がる場合がありますが、注意点も少なくありません。
向いている物件
- 建物の傷みが激しく、家付きでは売りにくい物件
- 土地としての需要が見込めるエリア
- 倒壊や近隣トラブルのリスクが迫っている物件
向いていない物件
- 古家付き土地として投資家や再生事業者に需要がある物件
- 再建築不可で、解体すると逆に売りにくくなる物件
- 相続空き家の3,000万円特別控除(※後述)の適用を検討している場合
解体費用の目安は、木造一般住宅で1坪あたり3万〜5万円程度。延床30坪の家であれば、100万〜150万円前後の出費になることが多いです。また、建物を取り壊すと固定資産税の「住宅用地特例」(税額を最大6分の1に軽減する制度)が外れ、税負担が増えることにも注意が必要です。
解体はあくまで最終判断です。 まず家付きで売れるかどうかを確かめてから検討してください。
隣地所有者や第三者に譲る
不動産会社を介さず、隣地の所有者や知人などに直接売却・譲渡する方法です。市場に出しにくい物件でも、隣人にとっては「土地を広げたい」「境界トラブルを解消したい」という理由で価値があることがあります。
向いている物件
- 無道路地や変形地など、隣地と一体で活用した方が価値が上がる物件
- 周辺の所有者が取得意欲を示している場合
向いていない物件
- 周辺所有者との関係が希薄で、交渉の糸口がない場合
- 相続人が複数いて、意思統一に時間がかかる場合
譲渡価格がゼロ円に近い場合は贈与税の問題が発生することもあります。税務上の扱いは事前に税理士へ相談しておくと安心です。
実際、筆者が行きがかり上仕方なく仕入れた接道していない土地について、購入から8年ほど経過後に隣地所有者から「買いたい」との申し出がありました。長い目で見れば、隣地所有者の買取も一定の可能性はあります。
空き家バンクを使う
自治体が運営する空き家バンクに物件を登録し、移住・定住希望者などに売却・賃貸する方法です。地方移住の需要を取り込みやすいのが特徴です。
民間に比べて動きが悪く、開店休業状態の空き家バンクが多い点は残念です。
向いている物件
- 地方・郊外にある物件(移住希望者の需要と合致しやすい)
- 売却価格よりも「とにかく手放したい」という場合
- 賃貸も含めて柔軟に検討できる場合
向いていない物件
- 都市部の物件(民間の仲介市場で十分に対応できる)
- 建物の傷みが激しく、そのままでは利用困難な物件
空き家バンクは無料または安価で登録できるものが多く、自治体によっては補助金制度も併用できます。ただし、買い手・借り手が見つかるまでの期間は読みにくく、即時売却には向きません。
これも、長時間かけて売却を実現する手段と考えるべきでしょう。
相続土地国庫帰属制度を検討する
2023年4月に施行された制度で、相続した土地を一定の要件のもとに国に引き渡せる仕組みです。「どうしても売れない」「引き取り手がいない」という場合の選択肢のひとつです。
向いている物件
- 山間部や農地など、市場での売却が難しい土地
- 建物をすでに解体済みで、更地になっている土地
向いていない物件
- 建物が残っている土地(建物付きは申請対象外)
- 境界が未確定の土地
- 土壌汚染、担保権・使用収益権が設定されている土地
申請には1筆あたり14,000円の審査手数料がかかり、承認後は土地の性質に応じた負担金(標準的な宅地で20万円前後)も必要です(法務省による)。要件が厳しく、すべての土地が対象になるわけではありません。
国庫帰属制度は万能ではありません。意外と費用もかかります。 あくまで他の方法が難しかった場合の最終手段として考えてください。どちらかというと、次に紹介する「ゼロ円物件サイト」を利用する方が合理的です。
ゼロ円物件サイトであれば、土地だけでなく、建物付き物件も無償譲渡できます。
ゼロ円で譲渡するサービスを利用する
なかなか売れない不動産を「ゼロ円でもらってくれるユーザー」とマッチングする専門サイトがあります。
書類集めや手続きを自分で行えば費用をかけずに譲渡できるため、筆者としては国庫帰属制度よりこちらをおすすめします。
国庫帰属制度と違い、測量費用などをかけなくても譲渡できます(ただし契約書の書き方は注意が必要)。また、登記費用も譲受人に負担してもらえます。
みんなの0円物件|公式サイト
上記のサイト「みんなの0円物件」の場合、掲載料は無料ですし、自分で手続き等を行えば完全に0円で譲渡できます。いろいろお任せのプランでも198,000円(定額)なので、相続土地国庫帰属制度を利用するよりも安上がり(かつ費用が明快なので安心)です。
ただし、料金は変更される場合もありますので、必ず上記の公式サイトで確認してください。
空き家を放置するリスクを押さえておこう

空き家は、放置するほど選択肢が狭まります。建物の劣化だけでなく、税負担の増加・行政指導・相続関係の複雑化など、複数のリスクが同時進行するためです。
①建物の劣化が加速する
無人の建物は傷みが早く、雨漏り・シロアリ・設備の腐食が進みやすいです。劣化が進むほど買取価格は下がり、手元に残る金額が減ります。
②近隣トラブルに発展しやすくなる
草木の繁茂やごみの不法投棄など、管理が行き届かなくなると近隣からの苦情や行政への通報につながるケースがあります。
③固定資産税の優遇が外れる
2023年改正の空家法では、倒壊寸前でなくても「管理不全空家等」として勧告を受ける仕組みが設けられました。勧告を受けると、固定資産税の「住宅用地特例」(税額を最大6分の1に軽減する制度)が外れ、税負担が大幅に増える可能性があります。
④相続関係が複雑になる
時間が経つほど相続人の数が増え、意思決定が難しくなります。相続人の一人でも反対すると手続きが止まるため、早期に方針を共有しておく方が安全です。
空き家を残すなら管理計画が必要です。手放すなら、早めに出口の方針を決めることが最終的な損失を小さくすることにつながります。
空き家・ボロ家の処分前に確認しておきたいこと

空き家の処分を進める前に、次の項目を確認してください。ここを飛ばすと、あとで方針がぶれたり、手続きが止まったりすることがあります。
| 確認項目 | なぜ重要か |
|---|---|
| 名義は誰か | 売却・解体の前提。故人名義のままでは手続きを進めにくい |
| 相続人は何人か | 共有者が多いほど意思決定に時間がかかる |
| 接道状況 | 道路に2m以上接していない場合、再建築不可になる |
| 借地権か所有権か | 借地権付きの場合、地主との調整が必要になる |
| 建物の状態 | 家付きで売るか、解体するかの判断材料になる |
| 残置物の量 | 片付け費用と手間に直結する |
| 固定資産税評価額 | 維持コストや売却判断の目安になる |
| エリア需要 | 仲介向きか、買取向きかの判断材料になる |
特に相続した空き家では、名義の確認が最優先です。
法務省によると、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。正当な理由なく相続登記を怠ると、過料(罰則的な金銭負担)の対象になる可能性があります。

また、接道状況は見落とされやすい項目のひとつです。建物が古くても再建築が可能であれば売却の選択肢は広がりますが、建築基準法上の道路に接していない「再建築不可物件」の場合は、売り方や価格の考え方が大きく変わります。
接道については、以下の記事を参照してください。

まずはこの表を手元に置き、わかる範囲から情報を整理するところから始めると、その後の相談がスムーズになります。
空き家・ボロ家売却の合理的な考え方とチェックリスト

処分の方向性がある程度定まったら、次に考えたいのは「建物付きで売るか、解体してから売るか」という判断です。ここを誤ると、不要な費用が発生したり、使えるはずの税制優遇を見逃したりすることがあります。
建物付きで売れるかどうかを判定する
まず確認したいのは、現状のまま売却できる可能性があるかどうかです。次の条件を目安にしてください。
売れる可能性が高いケース
- 道路に2m以上接しており、再建築が可能な物件
- 都市部・駅近など、需要が見込めるエリア
- 古家付き土地として投資家や再生事業者の引き合いがある物件
- 建物の傷みが軽度で、リフォーム前提の売却が現実的な物件
仲介では売りにくいケース
- 再建築不可・接道不良の物件
- 市街化調整区域にある物件(例外あり)
- 借地権付きで地主との調整が必要な物件
- 建物の傷みが激しく、残置物も多い物件
仲介で売りにくい場合でも、買取専門業者が対象にしているケースがあります。「売れない」と判断する前に、買取査定を取得することをお勧めします。
訳あり物件買取PRO|公式サイト
判断に迷う場合の解体チェックリスト
「建物付きで売るか、解体して売るか」迷ったときは、次のチェックリストを参考にしてください。
- 建物付きでの売却・買取の査定をすでに取得しているか
- 再建築不可物件でないか(解体すると逆に売りにくくなる場合がある)
- 借地権付きでないか(地主の承諾なく解体すると不利になることがある)
- 相続空き家の3,000万円特別控除の適用可否を確認済みか
- 解体後の固定資産税の増加額を把握しているか
- 隣地との境界を確認済みか
- 解体業者の見積もりを複数社から取得済みか
再建築不可物件や接道の考え方については、詳しくはこちらもあわせてご覧ください。

解体すると税金・費用・売れ行きはどう変わるか
解体を選ぶ場合、次の3点は事前に把握しておく必要があります。
費用 木造住宅の解体費用は1坪あたり3万〜5万円前後が目安です。延床30坪の家であれば、100万〜150万円前後の出費になることが多く、この費用は売却前の持ち出しになります。
固定資産税 建物を取り壊すと、住宅用地特例(土地の固定資産税を最大6分の1に軽減する制度)が外れます。更地になった翌年から税負担が増えるため、売却が長引くほど維持コストが重くなります。
売れ行き 更地にすると買い手の幅が広がることがありますが、再建築不可の物件は建物を壊しても価値が上がらないケースがあります。解体前に「更地にすれば売れるか」を不動産会社に確認することが重要です。
また、相続空き家の3,000万円特別控除は、建物の扱い方によって適用条件が変わることがあります。解体を急ぐ前に、税理士への確認もあわせて行ってください。
相続した空き家を売るときの税金(基礎知識)

相続した空き家を売却する場合、税金の確認は早めに済ませておく必要があります。特に重要なのが、相続した空き家の譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。
3,000万円特別控除の主な要件
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 取得原因 | 相続または遺贈で取得した家屋・敷地であること |
| 居住状況 | 被相続人が亡くなる直前まで一人で住んでいたこと |
| 建築時期 | 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること |
| 建物の種別 | 区分所有建物(マンションなど)でないこと |
| 譲渡期限 | 相続開始から一定期間内の譲渡であること |
| 売却価格 | 1億円以下であること |
| 控除額 | 相続人が3人以上の場合、令和6年1月1日以後の譲渡は2,000万円に縮小される場合がある |
国税庁は、この特例は令和9年12月31日までの譲渡に適用されるとアナウンスしています。
後回しにすると損をしやすいポイント
この特例を使うには、市区町村長が交付する「被相続人居住用家屋等確認書」などの書類が必要です。売却後に慌てて準備しようとすると、書類の取得に時間がかかり、申告に間に合わないケースもあります。
また、解体のタイミングによって適用条件が変わることがあります。建物をいつ壊すか、売却前か売却後かで、特例の扱いが異なる場合があるため、解体を急ぐ前に確認が必要です。
「あとで税理士に聞けばいい」と後回しにしがちですが、売却の方針を決める前に一度確認しておくことをお勧めします。この特例の要件や手続きの詳細は、相続空き家の譲渡所得特例について詳しく解説した記事もあわせてご覧ください。

売れない空き家は「問題の種類」を切り分ける

「こんな家、どうせ売れない」と思い込んでいる方は少なくありませんが、実務では原因を整理するだけで選択肢が見えてくることがあります。まず、売れない原因がどの種類に当たるかを確認してください。
売れない原因は4つに分かれる
| 分類 | 主な原因 |
|---|---|
| ①権利の問題 | 借地権、共有持分、名義未整理 |
| ②接道・法規制の問題 | 再建築不可、接道不良、市街化調整区域 |
| ③建物の問題 | 老朽化、残置物、雨漏り・シロアリなどの損傷 |
| ④需要不足 | 地方・山間部、過疎エリア、買い手が集まらない立地 |
原因によって対処の方向性が変わります。以下で順番に確認してください。
再建築不可・接道不良のケース
道路に2m以上接していない物件や、建築基準法上の道路に接していない物件は「再建築不可」となり、一般の住宅購入者には売りにくい状態になります。
ただし、こうした物件でも投資家や再生事業者には一定の需要があります。リノベーションを前提にした買取や、隣地所有者への売却が現実的な選択肢になることもあります。一般仲介で動かない場合は、訳あり物件を専門に扱う業者への相談が合っている場合があります。
接道義務と再建築不可の考え方については、詳しくは「接道義務を解説した記事」もあわせてご覧ください。
市街化調整区域のケース
市街化調整区域は、原則として新たな建築が制限されるエリアです。既存の建物を使う場合でも用途に制約があり、一般の買い手が住宅ローンを組みにくいケースがあります。
ただし、既存建物のリフォームが認められる場合や、農家住宅としての活用が可能な場合など、条件次第で出口が生まれることがあります。また、農地を含む物件では農地法の転用許可(農家ではない一般の方に売る場合に必要な手続き)が絡むこともあるため、早めに専門家に確認することをお勧めします。
借地権付き空き家のケース
土地を地主から借りている「借地権付き」の物件は、売却や解体の前に地主との調整が必要です。地主の承諾なく建物を解体すると、借地契約上不利になることがあります。
まず借地契約書の内容を確認し、地主との関係を整理してから動くのが基本です。借地権の売却自体は可能ですが、地主への承諾料が発生するのが一般的です。借地権に詳しい不動産会社や司法書士への相談を先行させてください。
残置物・老朽化が目立つケース
大量の残置物や激しい老朽化は、内覧のハードルを上げ、仲介での売却を難しくする要因になります。ただし、残置物があっても買取であれば対応可能な業者が多く、解体前提での引き取りを含めて相談できるケースがあります。
「片付けてから売ろう」と思って手が止まっているなら、まず買取業者に現状のまま査定を依頼することが、動き出す一番の近道です。
一般仲介ではなく専門買取を検討すべきケース
次のいずれかに当てはまる場合は、一般仲介より買取専門業者への相談を優先することをお勧めします。
- 再建築不可・接道不良で、一般の買い手がつきにくい
- 借地権付きで、権利関係の整理が複雑
- 残置物が大量にあり、そのままでは内覧できない状態
- 市街化調整区域など、建築制限が厳しいエリア
- 遠方に住んでいて、管理や内覧対応が難しい
- 早期に手放したく、売却期間を短くしたい
買取価格は仲介より低くなることが多いですが、「確実に、早く手放せる」という点では、管理に限界を感じている方にとって合理的な選択肢といえます。
訳あり物件買取PRO|公式サイト
相談先の選び方

空き家の処分は、相談相手を間違えると遠回りになります。不動産会社だけで完結するケースもありますが、状況に応じて司法書士・税理士・解体業者に相談する必要も出てきます。
| 相談先 | 向いている相談内容 |
|---|---|
| 不動産会社 | 売却方針の検討、査定、エリア需要の確認 |
| 買取専門業者 | 早期売却、訳あり物件、残置物あり物件 |
| 司法書士 | 相続登記、共有持分の整理、名義変更 |
| 税理士 | 譲渡所得の計算、特別控除の適用判断、確定申告 |
| 解体業者 | 解体費用の見積もり、工事条件の確認 |
相続空き家は「名義・相続人・税制」の3点確認が先
売却を前提に動いていても、名義や相続関係が整っていなければ手続きは進みません。不動産会社への相談より先に、次の3点を確認することが必要です。
- 不動産の名義が誰になっているか
- 相続人は何人いるか、全員の意思確認は取れているか
- 譲渡所得の特例(3,000万円特別控除など)が使えるか
この3点が整って初めて、売却や解体の具体的な話を進められます。
故人名義のままでは売れない
不動産の売却には、名義人本人または正当な権限を持つ相続人が手続きを行う必要があります。故人名義のまま売却を進めることはできません。
法務省によると、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。正当な理由なく怠ると過料の対象になる可能性があります。相続登記は司法書士に依頼するのが一般的で、費用は登録免許税を含めて数万〜十数万円が目安です。
遺産分割協議でひっかかりやすいポイント
相続人が複数いる場合、全員の合意がなければ売却も解体も進められません。遺産分割協議が止まりやすいのは、次のような場面です。
- 相続人の一人が連絡不通または行方不明
- 「売りたい」「残したい」で意見が割れている
- 相続人の一人が認知症などで意思能力に問題がある
- 相続人自身が亡くなり、さらに次の代に相続が発生している(数次相続)
こうした場合は、司法書士や弁護士への相談を早めに行うことをお勧めします。放置するほど相続関係が複雑になります。
税金面で引っかかりやすいポイント
相続した空き家を売却するときは、税金の確認も早めに済ませておく必要があります。この点は税理士に相談してください。
特に見落としやすいのが、相続空き家の譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。昭和56年5月31日以前に建築された家屋であることや、被相続人が亡くなる直前まで一人で居住していたことなど、適用には複数の要件があります。また、解体のタイミングや売却時期によって適用条件が変わることもあるため、売却方針を決める前に税理士へ相談しておくのが安全です。
要件・手続きの詳細は、以下の解説記事をご覧ください。

相続土地国庫帰属制度の向き不向き
相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に引き渡せる制度ですが、要件が厳しく、すべての物件が対象になるわけではありません。
相談先は、弁護士、司法書士、行政書士。法務局への申請を行うため、司法書士に依頼するケースがおおいようです。
権利関係に争いがない場合は、費用を抑えるなら行政書士に書類のみ作成してもらう方法も考えられます。
→ 相続土地国庫帰属制度について、詳しくはこの記事前半で解説しています。
専門家に相談する前に準備しておく資料
相談をスムーズに進めるために、次の資料をあらかじめ手元に揃えておくと役立ちます。
| 資料 | 確認できる内容 | 入手先 |
|---|---|---|
| 固定資産税納税通知書 | 物件の所在地、評価額 | 毎年4〜6月ごろ郵送 |
| 登記事項証明書 | 名義人、抵当権の有無 | 法務局またはオンライン申請 |
| 地積測量図・公図 | 土地の形状、隣地との境界 | 法務局 |
| 建物の図面(あれば) | 床面積、構造 | 手元にあれば持参 |
| 遺産分割協議書(作成済みの場合) | 相続人の合意内容 | 作成した司法書士または手元 |
| 権利証(登記識別情報) | 所有権の確認 | 手元 |
すべて揃っていなくても相談は始められます。ただし、固定資産税通知書と登記事項証明書の2点は、最初の相談前に用意しておくと話が早く進みます。
遠方に住んでいても空き家処分は進められる

実家が遠方にあると、「現地に行けないと何も進まない」と感じる方も多いでしょう。しかし実務では、最初の現地確認さえ済ませておけば、その後の手続きの多くは電話・メール・郵送で進められます。「遠方だから難しい」は、必ずしも正しくありません。
遠方でも「現地確認・書類整理・相談先分担」で進められる
遠方からの空き家処分は、次の3つを押さえることで動き出せます。
①現地確認:建物の状態・残置物の量・接道状況を把握する。一度だけ現地を訪れ、写真を撮っておくと、その後の相談がスムーズになります。
②書類整理:固定資産税通知書・登記事項証明書など、手続きに必要な書類を手元に揃える。登記事項証明書はオンラインでも取得できます。
③相談先の選定:不動産会社・司法書士・解体業者のそれぞれに役割があります。一社に「全部お任せ」ではなく、役割を分けて相談することが遠回りを防ぐ近道です。
現地に行く前に整理したい情報
一度の訪問を有効に使うために、現地確認の前に次の情報を整理しておくと効率的です。
- 不動産の名義は誰か(故人のままか、すでに変更済みか)
- 相続人は何人いるか、全員と連絡が取れるか
- 固定資産税の通知書はあるか
- 借地権か所有権か(権利証や契約書があれば確認)
- 残置物の大まかな量と、片付けを誰が担うか
現地では、建物の外観・室内・接道状況を写真に収めておくことをお勧めします。不動産会社や解体業者に相談する際は、写真があるだけで話が格段に早くなります。
不動産会社・司法書士・解体業者の役割分担
遠方在住で動きにくい分、相談先の役割を明確にしておくことが重要です。
不動産会社は、売却の可否・査定・買取の相談窓口です。現地調査に来てもらえるため、最初の一歩として連絡しやすい相手です。
司法書士は、相続登記や共有持分の整理を担います。名義が故人のままであれば、売却の前に必ず関わることになります。郵送やオンラインで対応してくれる事務所も増えています。
解体業者は、建物を取り壊す場合の見積もりと工事を担います。解体が必要かどうかは不動産会社の判断を聞いてからでも遅くありません。先に解体業者を呼ぶ必要はありません。
詳しくは空き家・実家の処分を遠方から進める方法についての解説もあわせてご覧ください。

残置物や仏壇の扱いをどう考えるか
遠方在住者が特に頭を抱えやすいのが、残置物と仏壇の処分です。
残置物については、買取業者の多くは残置物がある状態でも査定・購入に応じます。「片付けてから売ろう」と思って動けなくなるより、現状のまま相談することが先決です。不用品回収業者と連携している不動産会社もあります。
仏壇については、宗教的な意味合いがあるため、一般の不用品と同様には扱えないと感じる方も多いです。仏壇の魂抜き(閉眼供養)は菩提寺や近くの寺院に依頼できます。遠方からでも菩提寺に電話で相談すれば、段取りを教えてもらえるのが一般的です。
相談先を決める前の準備メモ
問い合わせの前に、次の項目をメモしておくと、最初の電話・メールがスムーズになります。
- 物件の所在地(住所)
- 土地・建物の名義人の氏名
- おおよその築年数と構造(木造・鉄骨など)
- 相続人の人数と関係(例:子ども3人)
- 残置物の有無と量の目安
- 希望する処分の方向性(売りたい・早く手放したい・まず相談したいなど)
- 現地に行ける頻度の目安
すべて正確でなくても構いません。「わからない」という項目があれば、そのまま伝えるのがよいでしょう。不明点を整理することも、各専門家の仕事のひとつです。
まとめ:処分前に確認したい5つのポイント

空き家の処分は、「早く動くほど選択肢が広く、損失が小さい」というのが、この記事でお伝えしたかったことです。
処分の方法は、①仲介売却、②買取、③解体して更地売却、④隣地への譲渡、⑤空き家バンク、⑥国庫帰属制度、⑦ゼロ円譲渡の7つがあります。
どれが合うかは、接道条件・名義・相続人の数・エリア需要によって変わります。
ただし注意したいのは「とりあえず解体」。場合によって固定資産税の増加や再建築不可の問題を招くこともあるため、まず現状のまま売れるかどうかを確かめることが先決でしょう。
また、相続した空き家には譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があり、解体・売却のタイミングによって適用可否が変わります。売却方針を決める前に、税理士に相談しておくべきでしょう。
この記事を読み終えた今、「自分の空き家はどのケースに当たるか」を整理する準備は整っています。名義・相続人・接道の3点だけでも確認できれば、最初の相談は十分に始められます。
「どうせ売れない」と思って放置した空き家が、後に相続人の数だけ増えて手が付けられなくなる……そういうケースは珍しくありません。
完璧な準備までは不用です。固定資産税通知書と登記事項証明書の2点を手元に用意して、まず一度相談することをお勧めします。


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