テナーサイズかコンサートサイズか、ウクレレ選びで迷った時にわかりやすい判定方法があります。
左手 | 難しいコードに手が届くか? |
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セーハしやすいか? | |
右手 | 指先が自然にいい位置を弾けるか? |
この記事では、右手と左手の弾きやすさを具体的にどこで見ればいいのか? を解説しています。
記事後半では、目的別に「どっちを選べばいい?」を考えていきます。
また、コンサートウクレレのおすすめモデルをお探しの場合は、以下の関連記事がおすすめです。
わかりやすい選び方は右手・左手の「弾きやすさ」
「自分にとって弾きやすいのはどっち?」が最終的な判断基準になる、ウクレレのサイズ選び。
小柄な女性の場合、ソプラノウクレレが最適で、ムリをして買い換える必要はないかもしれません。
男性の場合は、実はコンサートサイズ以上のほうが体格にあっていることが多く、買い替えを検討するのはある意味当然かもしれません。
そこで「どこを見れば自分にあったサイズかわかるの?」という疑問にお答えします。
左手は指が「届く」ことと「セーハのしやすさ」で選ぶ
手が小さい人でもソプラノウクレレは弾けますがテナーサイズになると押さえにくいコードが出てくるかもしれません。
そこで例えばG13thのストレッチコードなどを押さえてみて、「難関コードが弾けるか」を確認するといいでしょう。
上記のように、手を広げて指を伸ばして弾くコードをストレッチコードといいます。こういったコードが弾けるか試してみて、なんとか弾けそうなサイズを選ぶのがおすすめです。
ポイント① 難関コードが弾けるかチェックして、弾きやすいサイズを選びましょう。
テナーサイズはちょっとセーハしにくいという問題も
またソプラノサイズとコンサートサイズで共用できる弦は多いのですが、テナーサイズはちょっと硬めのテナー専用になります。弦が硬く、弦を張る力(テンション)が強いので、セーハコードが押さえにくくなります。
ソプラノに比べた弦の硬さ | |
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コンサートサイズ | ちょっと硬いかな? くらいであまり違和感なし |
テナーサイズ | はっきり硬いとわかり、セーハの難易度はややアップ |
そこで、「ハイポジションでセーハできるかどうか」を確認しておき、弾けそうならテナーサイズ、厳しそうならコンサートサイズ……という風に切り分けるのもひとつの手です。
ポイント② セーハに自信がない人はコンサートサイズがおすすめ。握力ばっちりな人はテナーでも大丈夫です。
右手は「自然にいい位置をストロークできるか」で選ぶ
右手は左手に比べて判断基準がはっきりしています。店頭で試奏する時は、ぜひ右手に注目してください。
ウクレレを弾く時は右ヒジでウクレレのボディーを支え、あまりそのヒジを動かさずにストロークします。
正しくは下の写真のようにヒジよりちょっと手首寄り部分で、ウクレレのボディを支えます。
つまり、腕の長さによって自分に合うウクレレのサイズが変わってきます。
ウクレレで一番いい音がでるスイートスポットは、上の図のような位置です。右ヒジでウクレレのボディをはさんでストロークをした時、自然と人差し指(または親指)がこのスイートスポットを通るサイズがベスト。
実際にはヒジそのものでなく、上の写真のようにヒジの少し先でウクレレボディーを押さえます。
女性であればソプラノサイズかコンサートサイズ、男性であればコンサートサイズかテナーサイズが適している場合が多いです。
ポイント③ ウクレレを持った時、右手の指が自然といい場所をストロークできるサイズが適正です。
ここまでをまとめると?
左手はストレッチコードなど「難しいコードが押さえられるか?」と「セーハできるかをチェック」。右手は、ストラップなしでウクレレを持った時「自然にいい位置をストロークできるか?」を見てみると、自分に適したサイズがわかります。
お悩み別「テナーかコンサートか」判別法
「この曲が弾きたい」
「この音がほしい」
だから、コンサートかテナーサイズウクレレを探している……というケース別に考えていきましょう。
ただし、結論としては「結局弾きやすい方がいい」に落ち着くことが多いです。
「もっと大きな音のウクレレが欲しい」時の選び方
「大きな音でよく鳴るウクレレが欲しいからテナーサイズにしたい」という声はよく聞きます。しかし騒音計で測定してみると、実はソプラノもコンサートもテナーも、音の大きさはほとんど変わりません。
以下の3本は、全てLehoというブランドのウクレレです。騒音計で測定してみると、それぞれ次のような音量でした。
ソプラノ | コンサート | テナー | |
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1回目 | 81.3dB | 84.7dB | 79.5dB |
2回目 | 82.4dB | 83.3dB | 79.0dB |
3回目 | 81.7dB | 84.1dB | 80.2dB |
平均 | 81.8dB | 84.0dN | 79.6dB |
この通り、サイズが大きいから音が大きいということはありませんでした。今回は同じメーカーで比較しましたが、別のメーカーであっても、サイズによる音量の差は出ません。
より大きな音が鳴るウクレレを探すとしたら、店頭で試奏をして一本一本確認してみるしかありません。例えばKALAのKA-J1というソプラノウクレレは1万円前後で買えますが、ほとんどの上位モデルより音が大きいです。
大きい音のウクレレ、鳴りのいいウクレレが欲しい場合、急いで中途半端なテナーウクレレを買うよりも、お小遣いをがっちり貯めてからいいウクレレを買うべきだと思います。
コアロハは独自の構造(ユニブレース構造など)のせいか、非常によく鳴る印象です。
音量測定はウクレレから1.5m離れた場所で3回測り、その平均を取りました。
「もっと低音の出るウクレレが欲しい」時の選び方
実は低音が出るウクレレは存在しません。音域はソプラノもコンサートもテナーも、すべて同じだからです。
バリトン以外のウクレレは、すべてG・C・E・Aのチューニングで、同じ音程です。なので、テナーサイズもソプラノサイズも、同じ高さの音しかでません。
また、よく「テナーウクレレはボディーが大きいので低音成分が豊か」といわれますが、測定してみるとそういうこともありませんでした。
音声スペクトルを表示するアプリで測定してみるとわかるのですが低音成分に関して、ソプラノもテナーもあまり変わりません。
ただし、弾いてみた時の「低音が豊かな感じ」は価格とメーカーによって違ってきます。
音の豊かさは値段・工場の技術で変わる
KAMAKA HF-3のようなテナーウクレレは、豊かにずっしりと響いてくれます。
それは低音が出ているというより、音に深みがあるということだと思います。
その証拠に、コンサートサイズのKAMAKA HF-2も深く豊かなサウンドです(HF-3と少し違いますが、負けずにいい音です)。
バイオリンでいえば「ストラデバリはよく鳴る」というのと同じで、いい材料を使い高い技術を持つ工場で作られたウクレレは、豊かに響き、一音一音がクリアに聞こえます。
おそらく5~10万円あたりに壁があります。
コンサートでもテナーでも、高いウクレレは、やっぱりいい音がします。以下の記事などを参考に、理想のウクレレを探してみてはどうでしょう?
ウクレレベースという選択
もし「低音」の意味が「バンドを組んだりアンサンブルをする時に低音が欲しい」ということであれば、ウクレレベースがおすすめです。
ウクレレベースは小さなボディにもかかわらず、ウッドベースに似た雰囲気のある低音が出ます。音域は大型のベースと同じなので、普通のウクレレと組み合わせると迫力のある演奏になります。
うちにはDCTのウクレレベースがありますが、コスパが高く、いい音がします。
ウクレレベースを弾くなら、ウクレレに加えてベースの奏法も学ぶ必要があります。しかしベースがうまく演奏できるとかなりかっこいいので、ぜひ挑戦してください。
DCTは夢を叶える(Dream come true)の頭文字を取って設立されたジャパンブランドで、低価格ながらよくできたウクレレをラインナップしています。
「もっと高音の弾けるウクレレが欲しい」時の選び方
ジェイク・シマブクロのようなかっこいいソロが弾きたい場合、多くのソプラノウクレレではフレットの数が足りず、そもそも音が出せないため演奏することもできません。
ウクレレのサイズ別フレット数ソプラノウクレレ | 12から15フレット(17フレットのモデルも) |
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コンサート・テナーウクレレ | 18から19フレット |
テナーサイズかコンサートサイズであれば、フレット数はだいたい同じです。どちらを選んでも問題ありません。コンサートでもテナーでもいいので、弾いてみてしっくりくるものを選べばたいていの曲は弾けます。
ソプラノロングネックという選択
ソプラノウクレレにコンサートウクレレサイズの長いネックを組み合わせた「ソプラノロングネック」というウクレレもあります。
ボディサイズが小ぶりなので、ソロを弾きたい小柄な女性におすすめのカテゴリーです。
たとえば、有名なギターブランドのK.Yairiが作っているソプラノロングネックのモデルは、抱えやすく弾きやすいウクレレです。フレットワイヤーが細めで、軽い力で弦を押さえたい人に向いている楽器です。
指板とブリッジ以外はすべてマホガニー単板で、やさしい中にもしっかりと芯があるいい音で鳴ります。
初心者だけどテナーかコンサートか迷っている時の選び方
初心者でも体が大きな人であればソプラノウクレレは小さすぎて弾きにくいかもしれません。
その場合テナーサイズかコンサートサイズの中から選ぶことになりますが、どちらかおすすめをあげるとしたらコンサートサイズです。
初心者セットのラインナップを見ると圧倒的にソプラノウクレレが多く、コンサートサイズも少しラインナップされている……という感じです。テナーウクレレの初心者セットはほとんど見かけることがありません。
ソプラノウクレレの初心者セット | 種類が豊富で好みに合ったものが選べる |
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コンサートウクレレの初心者セット | バリエーションは少ないが一応選べる |
テナーウクレレの初心者セット | めったに見ないので選べない |
こういった状況なので、初めての1本を探すとしたらコンサートウクレレになると思います。
たとえば1万円台で買えるコンサートウクレレの初心者セットといえば、以下のモデルがあげられます。
これはコスパが高く、かなりお買い得感のある初心者セットです。
予算が潤沢にある場合は初心者セットではなく単品で買い揃えてもいいと思います。その場合はテナーウクレレでも問題ありません。
テナーサイズかコンサートサイズかの選び方は、冒頭の表をもう一度掲載しておきます。
左手 | 難しいコードに手が届くか? |
---|---|
セーハしやすいか? | |
右手 | 指先が自然にいい位置を弾けるか? |
この表に照らし合わせて適正サイズを選び、テナーかコンサートかを決めるのがおすすめです。
目的別に考えるウクレレの「サイズ」
なみのおと音楽教室では資料用に楽器を収集しています。ウクレレも10台以上ストックしていて、趣味でもよく弾いています。
そして長年弾いているうちに、いつしかウクレレの役割は次のように決まってしまいました。
ソプラノ | 伴奏用(ナイロン弦) |
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コンサート | ソロ・伴奏両方(フロロカーボン弦) |
テナー | ソロかアルペジオ用(ナイルガット弦) |
ソプラノはいちばんウクレレらしい音が出るので、あえてサスティーンの短いナイロン弦を張ってコロコロしたサウンドを楽しんでいます。ほぼ伴奏にしか使いません。
コンサートは「これ1本で何でもできる」という性格なので、もっともひんぱんに弾いています。どんなジャンルの曲でも弾けるように、クリアなサウンドのフロロカーボン弦を張るようになりました。
ジャズやボサノバの曲で伴奏する時は、Low-Gのテナーを使います。アルペジオで伴奏する時もLow-Gのテナーをよく使います。High-Gのテナーはソロや単音弾き専用になりました。
このように、3つのサイズのウクレレを手元に置いておくと、いつの間にか役割が決まってくることもあります。それぞれのウクレレに、きっと出番があるはずです。
どうしてもテナーかコンサートか決められない! という時は、もう開き直って2本買ってしまうのもアリです。
また、ウクレレのサイズ全般については以下の記事で詳しく考察しました。
価格帯別に気になるモデルを紹介!
コンサートサイズやテナーサイズのウクレレを検討している、ということであれば、初心者の方ではなく「2本目のウクレレを探している」という方が多いはず!
そこで、「ソロ弾きやバンドアンサンブルに向いている楽器は?」という観点で、おすすめのウクレレをピックアップしていきます。
最近、展示会などで手に取ってみて「いいな」と思うのは、台湾製とハワイメーカーのサブブランドです。
Enya EUT-MAD
テナー 中国ブランドのEnyaは、すでに世界でも知られる有名メーカーとなりました。ものすごくコスパが高いのが特徴です。本機もオール単板のマホガニー製でありながら、2万円を切る低価格というのが驚きです。
この価格でもテナーらしい音量と、マホガニーのやさしさもありながら、輪郭のハッキリしたサウンドです。どんな曲にもあいそうなクセのなさも魅力です。
UMA Baby-T
中間サイズ 2024年のサウンドメッセでいろんなウクレレを弾いてみましたが、台湾メーカーUMAのコスパのよさが光りました。中でもこのBaby-Tは「テナーかコンサートか迷っている」という人におすすめです。実は、テナーとコンサートの中間サイズなのです。
材は台湾産のアカシアコア。ボディサイズはほぼコンサートウクレレで、弦長(スケール)がテナーに近いサイズです。ボディの肘があたる部分にはエルボーコンター(肘が痛くないような面取り加工)がされており、それもまた弾きやすさのポイントとなっています。
サウンド的にはシャキッとハリがあり、良く鳴るウクレレという印象です。軽やかで明るいトーンも印象に残りました。
ハワイの名門Ko'olauのサブブランドPONO
コンサート Ko'olauといえば、ハワイのハイエンド・ウクレレブランド。数十万円レベルの高価格帯モデルが多く、なかなか手が届きません。しかし、インドネシア生産のサブブランドPONOであれば、手に届きやすい価格で販売されています。
弾いてみると、明るさのなかに、透明感や伸びが感じられる上品なサウンドが印象に残ります。個人的には、ちょっとチェンバロを思わせるような美しい響きが印象に残りました。
国産で今イチオシのK.Yairi UT-M1
テナー 2024年のサウンドメッセで、一番印象に残ったのがK.Yairiのテナーウクレレでした。オールマホガニー単板で、飾り気のないシンプルなウクレレですが、非常に弾きやすいと感じました。ネックの丸みが少しギターっぽく厚みがあり、しっかりとした感じです。ハイポジションまで押さえやすく、ミスしにくいホールディングのよさも感じました。
サウンド的には、すぐ上で紹介したPONOと同じマホガニー製なのに、まったく違う方向性です。ふくよかで厚みがあり、日本製らしいしっとり感も好印象でした。コードを弾いたときも美しくまとまりのある響きが感じられます。
サウンドメッセに出品されていたのは、ソロワークスシリーズのUT-M1ですが、かなり類似したモデルです。