1万円以下で買える樹脂製のウクレレEnya Nova Uをテストしてみました。音量は木のウクレレと同じレベルで、倍音も出ており、データ的には「木製ウクレレとあまり変わらない」という結果に! 詳しくは記事中で詳しく発表しています。
細かい点では賛否があると思いますが、総合的にみて「コスパが高く、買ってソンのないモデル」と考えています。
ただし、1本目でなく2本目以降のウクレレにおすすめです。
この記事は「初心者におすすめのウクレレは?」というテーマの記事の補足記事として制作しました。
全体の印象や細かい点の仕上げは価格以上
「これが9000円のウクレレか」と思いながら見ると、かなり優秀な仕上げです。国産ウクレレ好きとしては、くやしいですがきれいです。
結論からいえば買って後悔するようなウクレレではなく「よくできているな」が第一印象でした。
Enya Nova Uとはどんなウクレレ?
Enya Nova Uは、カーボンファイバーを30%混合したポリカーボネイト製のウクレレです。中国の楽器メーカーEnyaがつくる樹脂製ウクレレですが、すでにYouTubeのレビューが大量に出ています。
評判は非常によく、けなしている人を見たことがありません。
この記事ではそういったレビューを補完できるように、主にデータ面から評価してみたいと思います。
弦高や細部の精度は価格以上の水準
届いてまず12フレット付近での弦高をチェックしましたが、1円玉2枚ぶんと標準的な数値。木製ではなく樹脂製の工業製品なので、こういう点は優秀です。
続いてオクターブピッチを測ると、価格から考えられないくらい正確でした。
左がEnya Nova Uで、右がFujigen FUS-TCです。値段が10倍以上のFujigenと比べて、まったく遜色がないことに驚きました。
オクターブピッチは12フレットを押さえてきちんとオクターブ上の音が出ているかを測っています。通常安いウクレレは大幅にずれていますが、Nova Uはやたらと正確でした。
ただし通常のコンサートサイズより若干ですが弦長が長いので、フレット間はやや広く、手が小さい人はワンサイズ下のNova U miniを選んだ方がいいかもしれません。
サウンド的には若干のクセがあり、好みが分かれる
音は悪くないですがやや固く、やはり木製とは違う響きのように感じます。比較的明るくクリアなサウンドですが、ちょっとクセがある感じ。とはいえ、違和感があるおかしな音ではありません。ちゃんとウクレレの音の範囲内だと感じます。
上の動画でサンプル音源を聴くことができます。
好みの問題なので、こういうシャープな音が好きであればぜんぜんありだと思います。
音量・倍音を測定してみるとかなり優秀
Nova Uウクレレの音を測定してみると、楽器から1.5m離れた場所で平均83.6dB。これはごく平凡な音量ですが、価格や素材を考えると優秀な水準です。
メーカー | 機種名 | トップの材 | 弦 | 1.5m離れた時 |
Enya | Nova U | 樹脂 | Enya フロロ | 83.9dB |
83.1dB | ||||
83.7dB |
特徴的だと感じたのは、最大音量にバラツキがないこと。その他のウクレレであればもう少しデータがばらつくのですが、Nova Uに限っては弾くたびにほぼ同じ音量の音が出ました。
音量の測定時は、測定用に編曲した「クレイジーG」を演奏しています。3度計測して平均をとりました。
【参考】他のウクレレの音も測定しており、以下の記事にまとめています。KALA、Lehoなど他ブランドと比較したい人はぜひ読んでみてください。
倍音も出ており木製との差は感じられない
次にiPhoneアプリの「Audio Spectrum Monitor」で倍音の出方をチェックしてみました。
Nova UはFujigenなどの木製ウクレレに比べるとC5(1オクターブ上のドの音)の成分が少ないですが、オクターブと5度上のG5やC6はそれなりに出ています。これは、安価な木製のウクレレよりむしろ優秀です。
倍音は、鳴らしたい音の整数倍の周波数をもつ音の成分のことで、一般的には倍音がよくでている方が豊かな響きであるとされます。
また、低音から高音までの音の成分も調べました。
音声スペクトルを比較すると、Fujigen FUS-TCとあまり変わりませんでした。20Hz付近の低音から、20K付近の高音まできれいに出ています。
音を測定してみた結論としては、「樹脂製だけあって正確な製品だ」といえます。音の減衰も少なくサスティーンも良好でした。
Enya Nova Uの欠点とは?
Nova Uにも欠点はあります。まず、フレットが見にくい点。Nova Uのフレットは金属ではなく樹脂の一体形成で、黒色です。フィンガーボードと同じ色なので見えにくく、なおかつスケール(弦長)がちょっと長いので、個人的には弾きにくいと感じました。
テナーサイズのNova U Proのみ金属製フレットを採用しています。
また、ポジションマークが手裏剣のような形で、これもちょっと見にくいです。好みの問題ですが、普通に丸にしてくれた方が直感的にポジションを把握できそう。まぁ、これは言いがかりに近いですが……。
フレットもそうですが、ナットも一体形成です。もしナットがすり減っても交換できません。一度Nova UをLog-Gに張り替えたら、楽器の寿命がくるまでLog-Gでいくしかないか……という点は気になります。
あとは「ザ・工業製品」的な見た目とディテール。この値段なら文句はないのですが、持つ喜びみたいなものはありません。
結論として
若干の欠点はありますが、驚異的なコストパフォーマンスをもつウクレレなので、購入を検討しているなら買って損はないと思います。
テストする前は「1本目のウクレレには向いていないだろう」と考えていましたが、実物を手にして、弾いてみて、初心者が1本目のウクレレに選んでも一応問題ないと考えます。
とはいえクセもあると感じるため、初心者の方であれば同じEnyaのEUS-25Dがおすすめです。
Enya Nova Uウクレレの評判はなぜいいのか?
Enya Nova Uについては、世界中のYouTuberがレビューしています。「Enya Nova U」でYouTube検索をすると、上の画像のように超大量のレビューが、世界中で投稿されていることがわかります(注1)
Enyaというメーカーについて調べてみると、もともとはOEMで他メーカーのウクレレを生産していたファクトリーだったようです。そこから独自のブランドを立ち上げ、世界戦略を立ててEnyaブランドを作り上げていきました。
Enyaは店頭に並ぶことはほとんどなく、Amazonなどのネット販売が主力。実は日本でも扱っているウクレレ専門店はありますが、卸業者を通さない、メーカー直取引だそうです。
Enyaは既存の流通ルートにのせずに直販中心とすることでコストを下げ、なおかつYouTubeのレビューを増やすなど、インフルエンサーを活用した広告・宣伝戦略をとり、大幅に存在感を伸ばしつつあります。
注1……KALA KA-15など、他メーカーのウクレレのレビューもたくさんありますが、Nova Uは特にたくさんレビューされています。
気になるLava Uとも比較してみました!
実は、カーボンファイバーを使用した樹脂ウクレレの元祖はLava MusicのLava Uです。
どうしても「Nova Uは後追いのコピーモデルじゃない?」という残念感が拭えなかったので、Lava Uも買ってみて弾き比べてみました。結論としては、気にせずにNova Uを購入するのが正解です。
Lava Uは見た目がかっこいいですが、サウンド的にはNova Uと大差なく、さらに弾きやすさではNova Uのほうが上です。
詳しくは以下の記事でレポートしているので、ぜひご参照ください。