この記事では、コストパフォーマンスに定評のあるエンヤ(Enya)ウクレレを実際に購入し、弾き込んでみたレビューをお届けします。
結論からいうと、エンヤのなかで買うべきモデルは低価格・高コスパな機種。なかでも初心者向けには、7,000円を切る価格でマホガニーの単板を使ったEUS-25Dをおすすめします。
Nova UやEUT-X1Cといった、新素材を使用したウクレレについてもレビューしています。どのウクレレにも長所と欠点の両方が存在し、人によって向き不向きがあります。
そこで、エンヤウクレレを購入する際の参考資料としてお役に立つように、欠点と感じた部分もしっかり記述しました。
すべて自腹レビューです!
公式ホームページに見る「Enyaブランドとは?」
エンヤはもともとOEMで楽器を製造する「工場」からスタートしています。1995年に創業し、その後自社ブランドのEnyaをスタート。現在では年間25万台以上のウクレレを製造・販売する、世界有数のブランドとなっています。
アメリカのテキサス州に物流倉庫を構え、世界40カ国に流通チャンネルをもつグローバルな楽器メーカーとなった現在、カーボンファイバーを使用したウクレレなど、先進的な楽器を作り出しています。
Enya|公式サイト
しかしエンヤの特徴や、買うべきモデル・避けたいモデルははっきりしており、そこを押さえてからウクレレ選びをしたほうがいいでしょう。
エンヤの強みと弱点から「買うべきモデル」を割り出す!
エンヤの特徴のひとつは「先進性」。カーボンファイバーを混入した樹脂製のウクレレNova Uシリーズを生み出したり、HPL(ハイプレッシャーラミネート)という素材を使ったウクレレを製造しています。
それに加えて、アプリと連動するスマートギターなどもラインナップに加えました。
しかしそれらはオマケにすぎず、エンヤ最大の強みは圧倒的なコストパフォーマンスです。
エンヤのウクレレはすべて自社工場で製造されているため、コストと品質を両立できています。公式サイトでも「最もお手頃価格(most affordable)」を打ち出しており、エンヤ自身が考える最大のウリも、価格競争力にあるといえます。
すなわち、エンヤのウクレレは安いモデルにこそ価値があるのです。
エンヤのウクレレは安いモデルがおすすめ。理由は?
エンヤというブランドがコストパフォーマンスを打ち出していることは、すでに述べたとおりです。
少し下で紹介するEUS-25Dはトップにマホガニーの単板を使用しながら、約7,000円という価格を実現しました。
では、Enyaの高級ラインは? というと、そちらはかなり微妙です。高いモデルでは、約53万円の5Aがあげられますが……
残念ながら、デザインがいまいちなのです。指板にゴージャスなインレイが入っていますが「かわいくない」というのが正直な感想。それだけでなく、エンヤの販売方法にも問題があります。
Enyaはネット直販が中心なので試奏できないのです。
しかし、試奏せずに高級機を買うわけにもいきません。
そこで、「エンヤを買うなら低価格モデルに尽きる!」と断言できます。特に、初心者の方が初めて手にする高コスパモデルとして、EUS-25Dのような機種は有力な選択肢になります。
安いモデルはゴテゴテした装飾がないので、ダサくない! というのもポイントです。
エンヤウクレレのおすすめ3機種徹底解説!
ここからは、エンヤのウクレレ3台を自腹購入したレビューをお届けします! それぞれに「いい点・悪い点」があるのですが、どれも高コストパフォーマンス。特徴を知って買うなら、きっと満足のいくお買い物になるはずです。
激安のソプラノウクレレEnya EUS-25Dは初心者におすすめ
常識を塗り替える、低価格・高コストパフォーマンスなウクレレです。7,000円以内で買えるのに、サウンドボード(弦を貼っている部分の板)が合板ではなく、マホガニーの単板。音程もかなり正確で、十分「楽器として使える!」というレベルにあります。
これまで触ったどのソプラノウクレレよりも弦が柔らかく、押さえやすいのもポイント。他メーカーではハリが強く音が大きいナイルガット弦などを使用することが多いのですが、エンヤでは音量を犠牲にして、柔らかいフロロカーボン弦を採用しています。
また、ウクレレ本体を買うと、しっかりしたケース、チューナー、ストラップ、交換弦などなど、必要な物が一式付いてきます。
付属品の多さもプラスすると、ほとんど他メーカーが太刀打ちできないレベルのコストパフォーマンスを実現しています。
ただし、中級以上の腕前になると物足りなくなってくる楽器です。決して音が悪いわけではありませんが「あくまでも練習用」といった位置づけのウクレレでしょう。
EUS-25Dの詳しいレビューは、以下の記事に掲載しています。これからウクレレをはじめる初心者の方は、ぜひチェックしてみてください。
コンサートサイズのカーボンウクレレEnya Nova U
エンヤ Nova Uはカーボンファイバーを30%混入したポリカーボネイト製のウクレレで、完全な工業製品。非常に正確なのが特徴です。
9,000円くらいで買えてしまうウクレレですが、筆者はよく弾いています。弾きやすいからです。
音声スペクトラムなどのデータ上、サウンドは木製ウクレレとあまり変わらないですが、耳で聞くとやはり違いが感じられます。若干カタめでシャープな傾向ですが、悪い音ではありません。
薄いボディーも「弾きにくいのでは?」と思いきや、意外にも安定しており、弾きやすいと感じました。
しかしNova Uにも弱点はあります。
見た目にも音にも高級感はなく、何か「プラスアルファがないな」と感じます。一生使うメインのウクレレではなく、クルマに積んでおいて出先で弾くなどに向いているかな? という印象です。
Nova Uについて、詳しくは以下の記事でレビューしています。中級者以上の方で、「屋外で気軽に弾けるウクレレを探している」という人にぴったりです。
テナーサイズならEnya EUT-X1シリーズ
名前に「X1」とつくシリーズには、HPL(ハイプレッシャーラミネート)という素材が使われています。このHPLは木材ではなく、システムキッチンや家具の表面にも使われる樹脂素材です。
HPLはクラフト紙を何枚か重ねてエキポシ樹脂に浸し、それを高圧・高温で圧縮した薄い板で、木材は一切使っていません。「木くずを固めたもの」とする説明もありますが、それは間違いです。
楽器用としては変わった素材なので、X1シリーズの特徴ははっきりしています。
- ハワイアンには向かない重厚なサウンド
- サスティーンが長くちょっとギターっぽい
- ブルースや演歌にはハマる!
という傾向の音で、Enya EUT-X1CをLow-G用として使っています。
※上記はスロテッドヘッドのモデル(X1)にリンクしています。
フラの伴奏をする人には一切おすすめできませんが、「ギター代わりに弾きたい」という人にはおすすめです。ジャカソロを除くソロプレイにもおすすめです。
何より、音程が正確なテナーウクレレが約1万5000円で手に入るというお手頃感がポイントです。
Enya EUT-X1Cの詳しいレビューは以下の記事に掲載しました。
エンヤEUT-X1シリーズのライバルMartin OXKコンサート
マーチンのOXKは、エンヤEUT-X1シリーズのライバルというより先輩で、元祖HPLウクレレです。値段は約3倍ですが完成度はエンヤより高く、弾いたときの違和感がより少なく、より伸びやかなサウンドが印象に残ります。
また、材がHPLなので表面の木目はプリントですが、マーチンのプリントは「さすが」と思わせるナチュラルな仕上がりで、注意しないと「印刷だな」とはわかりません。その点、エンヤはやや遠目からでも「何か違う」と感じてしまうのが残念。
マーチンOXKウクレレにはソプラノとコンサートサイズがありますが、HPLのよさが生きるのはコンサートサイズ。価格も大きくは違わないので、ぜひコンサートサイズを選んでください。
コスパにすぐれたエンヤのライバルを紹介
「コスパといえばエンヤ」といった雰囲気になっていますが、他にもいいブランドがありますし、各社しのぎを削って入門モデルを開発しています。
ここでは筆者が弾いたことのある楽器の中から「初心者向けにコスパがいいモデル」をピックアップしました。
島村楽器のオリジナルモデルHanaleiのコスパもすごい
島村楽器ではCOTONEとHanaleiという2つのオリジナルブランドを展開しています。低価格帯のHanaleiは、かなりコスパが高いのが特長です。
おすすめ機種を1つあげるとすると、下から2番目のHanalei HUK-80。トップにはマホガニーの単板を使っており、なかなかいい音が鳴ります。なにより、しっかり作られているので、演奏しやすいのがいい点です。
あえてナイロン弦を貼っているのは、初心者向けに柔らかく弾きやすいものをチョイスしたのかもしれません。エンヤのEUS-25Dより少し高い分、クオリティーも少し高めです。
動画はコンサートサイズのHanalei HUK-80Cです。
低価格高品質で世界を驚かせたaNuenue
2010年にaNuenue(アヌエヌエ)ウクレレが登場したときも、今のエンヤと似たような雰囲気でした。筆者はお茶の水の楽器店に買いに走ったのですが、大半のお店で売り切れていました。
店員さんに聞くと「このデキでこの値段ですから……」と苦笑していたのを覚えています。
そんなaNuenueのエントリーモデルHawaiian Dream Seriesは、
今のaNuenueは、Kyasさんなどプロが使っている高級機もすごくいいですよ。
国産なのに2万円で買えるFamousウクレレ
安くていいウクレレの代名詞となりつつあるFamous FS-1Gは、材料こそオール合板ですが、メイド・イン・ジャパン。楽器として、しっかりした性能をもつ商品です。
エンヤに比べると価格が高くなってしまいますが、これからウクレレをはじめる初心者でも、欲をいえばこれくらいの楽器を使ってほしい……と思います。いい楽器のほうが練習もはかどりますし、長く使えることを考えると、決して割高ではないでしょう。
エンヤ登場以前のド定番KALA KA-15S/J1
5~10年前に「コスパのいい初心者モデルは?」と尋ねると、たいていの人があげていたのがKALA KA-15S。測定すると音が大きく、国産のFaousよりずっと鳴りがいいことがわかったモデルです。
マホガニー合板ながらつくりがよく、「初心者なら国産のFamous FS-1Gか、輸入モデルならKALA KA15Sがいい」という人がたくさんいました。
現在でもKALAは十分にいいウクレレで、初心者の方が最初の1本に選んでも後悔しないはずです。
ただし、KALAは全体的に値上げをしてしまいましたし、エンヤに比べてそこまでアドバンテージがあるわけでもありません。今後は「定番初心者モデル」のポジションをエンヤなどの後発メーカーに譲っていくかもしれません。
まとめと初心者向けエンヤの選び方
ここまでをまとめると、エンヤはOEM製造を手がけていた工場が作った自社ブランドで、世界中で急速に成長とげています。現在では、年間25万台以上という、膨大な数の楽器を販売するようになりました。
しかし、高級モデルにはまだまだ手を出しづらく、買うべきモデルは低価格帯がメインとなるでしょう。
なかでも初心者におすすめできるのは、7,000円以下でしっかりとしたクオリティーを備えているEUS-25Dです。ソプラノサイズで扱いやすく、比較的正確な音程が特徴です。
音量こそ小さいですが、柔らかい弦を使っていて「非常に押さえやすい」と感じるのは大きなメリットです。
ネット販売が主力のエンヤですが、低価格帯モデルであれば安心して購入することができます。
一方、高価格帯モデルはデザイン的に微妙で、ネット販売のため試奏できないのもマイナス点です。