一般的なウクレレのサイズは小さい順に、ソプラノ、コンサート、テナーの3つ。最初の一本であればコスパが高く流通量が多いソプラノサイズを選ぶのが無難でしょう。
ただし、2本目を買うなら体格に合ったサイズを選ぶのがおすすめです。女性ならコンサートサイズ、男性ならテナーサイズが最有力候補になります。
それ以外の要素(音の大きさやサスティーンの長さ)については、この記事の後半で測定データに基づき解説しました。
ウクレレの主要なサイズは3つ
一般的にウクレレのサイズは上の図のようにソプラノ、コンサート、テナー、バリトンの4種類。しかしバリトンはチューニングが異なるため、一般的なウクレレのイメージから外れてしまいます。
そこで、通常ウクレレを購入する場合、ソプラノ、コンサート、テナーの3種類から選ぶ事になります。
ソプラノより小さいベビーウクレレやピッコロウクレレもあります。見た目がかわいくひかれますが、実用上はおすすめできません。また、テナーより少し大きいテナーXLというサイズもありますが一般的とまではいえません。
ソプラノサイズの特徴とメリット・デメリット
コロコロとしたかわいい音がするウクレレが多く、いかにもウクレレらしい癒やしのサウンドが楽しめるのがソプラノサイズの特徴です。
メリット
- 弦が柔らかく押さえやすい(指が痛くならない)
- 同じシリーズなら他のサイズより安い
- 小さくて持ち運びしやすい
- 見た目がかわいい
- ケースなどアクセサリー類が豊富で選びやすい
デメリット
- フレットの数に制限がありソロ弾きでは不利
- フレット間が狭く手の大きい人には不向き
- 体の大きな人はきゅうくつに感じる事も
この記事では各サイズについていろいろな事を書いていますが、しかし結論からいうと「初心者の最初の一本ならソプラノサイズ」をおすすめします。
最初の一本に他のサイズを選んだとしても、いつか必ずソプラノが欲しくなるからです。
コンサートサイズの特徴とメリット・デメリット
ソプラノより少し大きいですが、それでも十分コンパクト。その割に演奏性はぐっと高くなり、ソロ弾きもしやすくなるサイズです。何でもできる優等生的なサイズがコンサートといえるでしょう。
メリット
- 伴奏もソロも無難にこなせる万能タイプ
- テナーより機種が豊富で好みのウクレレを探しやすい
- 小柄な人でも扱いやすい
デメリット
- テナーに比べると中途半端感がいなめない
- 意外と男性には小さすぎるサイズかも
コンサートサイズは主要3サイズのまん中に位置します。なので、良くも悪くも「中くらい」の性格です。よくいえば万能タイプで、何でもできます。悪くいえば中途半端で「どうせならテナーの方がいいのでは?」と目移りする可能性も…。
ただ、全体として無難なサイズであることは間違いありません。「迷ったらコンサートサイズ」という決め方もアリです。
一生涯一本のウクレレで通す! という場合はコンサートがいいかもしれませんね。
テナーサイズの特徴とメリット・デメリット
ソプラノと同じGCEAチューニングの中で、最も大きなサイズがテナーです。ソロを弾く時の演奏性が高く、難しい曲を弾きこなしたい人ならテナーが向いています。
メリット
- 指板が広く弾きやすい
- 男性なら体格的にもテナーが最適
- ストラップを付けた時に違和感がない
デメリット
- 他のサイズより割高になる
- 他のサイズよりモデル数が少なめ
- 弦のハリが強めで初心者には押さえづらい
- ケースが若干探しづらい
男性なら最初の一本で検討してもいい、意外とほどよいサイズです。ソプラノにストラップを付けて弾くと少しきゅうくつに感じますが、テナーなら弾きやすいのもポイント。立って弾く時に差が出ます。
一方、Famousの低価格帯にはテナーサイズが存在しません。他にも、テナーを作っていないブランドがあります。そのため、ソプラノのようにたくさんの選択肢から選ぶことができないのが難点です。
最近はテナーのラインナップも増えてきたので、選びにくさは解消されていくと思います。
地味に気になるのはハードケースが選びづらい点。最近はセミハードケースの種類が増えているので、それで対応することは可能です。
初心者の時にはできる範囲でいいソプラノを買い、上達したら納得のいくテナーを買う……というのが最強の流れです。
予算から割り出せばソプラノが有利
同じシリーズでソプラノとコンサートサイズ以上を比べると、通常はソプラノがお買い得です。Famousのエントリーモデルで比較すると、かなり値段が違っています。
ソプラノ | FS-1G | 2万円台前半 |
---|---|---|
コンサート | FC-1G | 4万円弱くらい |
同じ予算であればソプラノが有利だとわかります。そこで、最初の一本には予算いっぱいで買える良質なソプラノウクレレを狙うというのがおすすめです。そうすれば、少ない予算でも良質な材料を使い、いい工場で作ったウクレレを買うことができます。
最初の一本や、予算に制限がある場合はソプラノが有利。同じ予算でより高品質なウクレレが購入できます。
指が痛くなりにくいのはソプラノサイズ
ウクレレのサイズによって弦の長さが違うので、テンション(弦の張り具合)が違います。弦長はだいたい以下の長さが目安です(およそ2インチ間隔)。
ソプラノ | 340ミリ前後 |
---|---|
コンサート | 380ミリ前後 |
テナー | 430ミリ前後 |
一番弦が短いソプラノサイズはハリが弱めで、左手指の押さえる力が少なくてすみます。弦が柔らかく感じるので、指が痛くなりにくく、初心者のうちは「練習しやすい」と感じます。
また、ソプラノとコンサートサイズのウクレレ弦は共通のものも多いのですが、テナーサイズは専用弦になります。テナー弦は少し太くて硬くなるので、初心者のうちは「手が痛くなる」と感じやすいはずです。
初心者でも指が痛くなりにくいのはソプラノサイズ。テナーはいちばん弦のハリが強く、ちょっと押さえにくい傾向があります。
音の大きさはサイズで判断できない
実際に測定したので自信をもって断言しますが、ウクレレのサイズによる音量の違いはわずかです。
よく「ソプラノは音が小さく、テナーサイズは音が大きい」といわれますが、違っていました。サイズの違いよりも、工場(メーカー)の技術力や内部構造がウクレレの音の大きさを決めるようです。値段が高ければ音が大きいということもありませんでした。
ウクレレボディーの弦が貼ってある部分の板をサウンドボード(トーンウッド)と呼びますが、この板の厚みやブレース(補強)の入れ方で音量が変わってきます。
結局、ウクレレの音の大きさは試奏してみないとわかりません。近くに試奏できるお店がない場合は、サイズよりもブランドにこだわってください。
ウクレレの音量について、以下の記事で詳細に検証しています。
同じメーカーのソプラノ、コンサート、テナーも比較していますが、音の大きさとボディサイズは関係ありませんでした。
ボディサイズと音量は比例しないので、あまり気にしなくてOK。
自分の体格に合ったサイズの選び方
カナダの有名なウクレレ奏者ジェームス・ヒルが提唱しているウクレレの大きさの選び方は「腕の長さを基準にする」こと。ウクレレは右ヒジでボディーを押さえて弾きます。そこで、ヒジでボディーを固定した時、自然に右手の指がウクレレのいい位置をストロークできるサイズがベストチョイスです。
単純にサイズだけで選ぶと、
- 男性はテナーサイズ
- 女性はコンサートサイズ
……が有力候補です。ウクレレを持ってみて、右手が自然にいい位置をストロークできるサイズを探してみてください。
もっとも、これは目安にすぎません。
テナーより大きなギターを弾きこなす、小柄な女性もいます。「どうしても迷った時の目安」として覚えておいてください。
指板の弾きやすさはテナーかコンサート
写真上がテナーサイズの指板、下がソプラノサイズの指板です。テナーは余裕があるので、難しいソロも弾きやすいのが特徴です。
コンサートサイズとテナーサイズは比較的近い感覚で演奏できますが、ソプラノは「難しいソロを弾くには指板が小さい」と感じることがあります。
ソロ演奏の場合ハイポジションを弾くことも多く、ソロ志向の人はテナーまたはコンサートサイズが有利です。
左手の弾きやすさから考えればテナーサイズまたはコンサートサイズがおすすめ。
サイズによる音(サウンド)の違いは大きくありません
結論からいうと「テナーの方が音がいいのではないか」という心配は不要です。音の良し悪しはウクレレのサイズよりも、木材や製造方法によって変わります。
サイズが大きいテナーは低音がよく出る……ともいわれますが、測定してみるとそういうわけでもありませんでした。
サスティーンの長さ(音がどれくらい鳴り続けるか)についても、測定してみるとボディサイズによる違いはありませんでした。たとえば、同じLehoのコンサートサイズ(スプルース単板トップ)とテナー(ピンカド単板トップ)で比較してみると、コンサートサイズの方がサスティーンが長いことがわかりました。
3弦開放のCを弾いてみて(90dB程度になるようにピッキング)、50dBまで減衰する時間を比較すると、以下のようになりました(各5回計測した平均)。
コンサート | 平均4.10秒 |
---|---|
テナー | 平均3.04秒 |
同じLehoブランドで比べていますが、弦長の短いコンサートサイズのほうがサスティーンが長く、サイズはあまり関係なさそうです。それよりもやはり木材の違いが大きく、アコースティックギターに多用されるスプルースのよさが出た結果といえるでしょう。
ウクレレ・マガジンの実験でも意外な結論に!
ウクレレ専門誌「ウクレレ・マガジン」が2020年のVol.23で、ソプラノ、コンサート、テナーの音響解析を行う実験結果を掲載しています。プロ奏者の名渡山遼さんは、以下のように結論づけました。
サスティンに関しては、ストロークの場合は、テナーのサスティンが一番短いので、ロック調の激しい曲などで歯切れの良いストロークをするにはテナーが向いていると思います。ゆったりとしたハワイアンで、のびやかなストロークをするには、ソプラノが向いていますね。
これは驚きの結論でした。
ほとんどの人は「テナーのほうがソプラノより、常にサスティンが長い」と考えていますが、ストロークでは逆です。
ウクレレはまだまだ新しい楽器なので、サウンド的には常識が間違っていることもあるため、結局は自分の耳を頼りに選ぶのがベストです。
サイズ別おすすめウクレレ
ここまでの話をまとめると、ウクレレのサイズを選ぶ時は、
- 体格に合ったウクレレを選ぶ
- 目的に合ったウクレレを選ぶ
のどちらかを重視することになります。②の目的別で考えれば、
- ソプラノはコード伴奏で実力を発揮
- コンサートは何でもできる性格なので万能性を重視
- 単音弾きやソロ演奏で最も実力を発揮するのがテナーサイズ
といった選び方が妥当でしょう。
ウクレレらしいサウンドのソプラノを選ぶなら?
ソプラノウクレレを選ぶ場合は、抱えやすくローコードをきれいに演奏できる楽器がおすすめです。
- ソプラノなら伴奏中心
- コロコロしたサウンドはソプラノの特権
このあたりを考えると、以下のようなモデルが候補になってきます。
Famous FS-1G
ウクレレが売れなくなった1980年代にも唯一ウクレレを作り続けたブランドFamous。独特の空気感が感じられる、本来のウクレレらしいサウンドが魅力です。
Famousのマホガニー合板モデルFS-1Gを、ゆったりとオープンコードで演奏すると、癒やしの世界を演出できます。
万能タイプのコンサートウクレレはバランスを重視
コンサートサイズのウクレレは何でもできるウクレレなので「これ1本持っていれば何でもできる」という万能性が重要かなと思います。
Pupukea UF-C40-03
日本が誇る弦楽器ファクトリーフジゲンが作るPupukeaブランドは、コスパの高さに定評があります。筆者の友人は昔からPupukeaを使っていますが、「これで5万なら安い…」という造りのよさを感じます。
以下はオールマホガニー単板のモデルですが、甘すぎずしっかりとしたサウンドで、まさに優等生といったウクレレです。
テナーサイズを買うならいいものか激安かどちらかに?
テナーサイズになると、コンサートサイズよりはっきりと「ソロを弾く」というイメージになります。そのため、ある程度がっつりとソロの練習をする決断がないと、「ソプラノでよかったのでは……」ということになりがちです。
その決断ができない場合は、激安で手に入るEnya EUT-MSをおすすめします。テナーウクレレで真剣に練習に取り組みたい! という場合は思い切っていいものを買い、そうでもないなら激安品で様子を見てはどうでしょう?
テナーは好き嫌いが分かれると思うので、何となく高いのを買うのはちょっとおすすめしにくいです。
Enya EUT-MS
Enyaのウクレレは全体的にコスパが異常に高く、残念ながらメイド・イン・ジャパンはもうコスパでは勝てないと感じさせられます。そんなEnyaウクレレの一番安いテナーサイズがEUT-MSです。およそ1万5000円でこのできはヤバいと思います。
テナーサイズの世界をのぞいてみたいという事なら十分以上のクオリティで、かなりちゃんとしたウクレレと感じるはず。おまけにしっかりしたケースやチューナー、ストラップなど付属品もたくさんついてきます。
ただし、デザインの好き嫌いは分かれそうです。
一方「テナーウクレレをがっちり弾きまくる」「難しいソロも練習する」と決断した人には、日本が誇るギターファクトリー「ヤイリギター」のウクレレをおすすめします。
ヤイリギターはマホガニーのウクレレで、かなりいいものをリリースしていますが、これもその一本。マホガニーの甘いサウンドに抜けのよさやクリアな残響を加えた独特の響きがその特徴です。持った時のバランスもよく、抜群に弾きやすいモデルです。
サイズ以外に注目したいウクレレ選びのポイント
サイズも悩みどころですが、ウクレレ選びには、ほかにも気になる点がいろいろあります。たとえば見た目。見た目がかわいくて気に入ったウクレレでないと、モチベーションがあがらないからです。
しかし! 筆者は見た目だけでApplause by Ovationを選んで大失敗したことがあります。
そこで、かわいいウクレレを選ぶ前提として以下のような点にも注目してみてください。
ブランドと製造技術
あたりまえすぎてあまり触れられることがありませんが、ウクレレ選びでは、ブランドも重要です。なみのおと音楽教室には十数本のウクレレがありますが、いいブランドのウクレレは弾きやすく高音質です。
国産ブランドでは、Fujigen、Asturias、K.Yairiなどが優秀で、Famousのキワヤ商会がそれに続く印象です。海外ブランドでは、KamakaやKoalohaなどハワイアンの有名ブランドは当然として、庶民的な価格のウクレレをラインナップするKALA、Leho、aNuenueなどが優秀です。中国のEnyaも高い製造技術を持っています。
木材の性質とウクレレの良し悪し
ウクレレはギターよりも多種多様な木材が使われる傾向にあり、なみのおと音楽教室にもジリコテやピンカドなどの珍しい木材でできたウクレレがあります。
ただ、珍しい木材よりも、アカシアを含むハワイアンコアやマホガニー、スプルースなどメジャーな木材を使ったウクレレの方がパフォーマンス的には安心できます。
木材については以下の記事で詳しく分析しています。
メーカーの技術力×木材×ウクレレのサイズすべてが組み合わさって、ウクレレの良し悪しが決まっていきます。
まとめとウクレレに複数のサイズがある理由
ウクレレの歴史をひもとくと、初期に作られたウクレレはソプラノサイズでした。そのため、今もソプラノがスタンダードサイズと呼ばれています。
しかし、楽器は時代とともに進歩します。
ウクレレでもコンサートで演奏するのにより適したサイズを模索し、コンサートサイズが誕生します。やがてテナーサイズやバリトンサイズが登場し、サイズバリエーションが増えていきました。
ウクレレに高度な演奏が求められるにつれてウクレレがより大型化していったわけです。そうすると、ジェイク・シマブクロのような高度な演奏をめざすなら、やはりテナーサイズが有利と考えてよさそうです。
一方、今でもソプラノが「スタンダードサイズ」と呼ばれていることからわかるとおり、最もウクレレらしいウクレレはソプラノサイズです。
初めてのウクレレが手に入ったら、次は以下の記事で上達のコツをマスターしましょう。