現在、初心者向けウクレレ教本はたくさん出版されていますが、読み込んでみると「さすがに1冊ですべて満足させるのはムリ!」とわかりました。
そこで、この記事ではタイプ別に……
に分類しました。
1つの教材ですべてをまかないたい! という人は、教本よりむしろウクレレDVD・通信講座がおすすめです。
通信講座であれば、超入門~ソロ弾きまでをがっちり丁寧に解説してもらえます。
ウクレレ教本の傾向マトリックス
初心者向けウクレレ教本をじっくり見比べてみて「意外とカバーしている範囲が違う!」ということに気づきました。
主な教本を図にしてみましたが(上の図)、ソロ重視だったりまんべんなくカバーしていたりと、教本によってずいぶん違っています。
そこで、この記事では①超初心者向け、②ちょっとハイレベル、③ソロ重視、④アンサンブル重視、⑤その他…に分類することにしました。
というわけで、レベル別・目的別にウクレレ教本・教則本を解説していきます!
楽器経験ゼロの人でも独学OKな教本
楽器が苦手な人でも大丈夫な、超初心者向け教本はいくつかありますが、なかでも『できる』シリーズの『ゼロからはじめるウクレレ超入門』がわかりやすいです。
『できる ゼロからはじめるウクレレ超入門』
タイトル | できる ゼロからはじめるウクレレ超入門 |
著者 | いちむらまさき[著] |
出版社 | リット-ミュージック |
発売日 | 2016/6/24 |
価格 | 1650円(税込) |
メディア | DVD |
おすすめ度 | ★★★ |
ギター・ウクレレ奏者のいちむらまさきさんが執筆。基礎の基礎から解説しているので、「楽器が初めて」という人でも安心です。
とにかく超初心者だけに的を絞り、初級レベルを集中解説しています。とくにDVDがよくできているので、DVDをしっかり活用するのが上達のポイントになりそうです。
たとえば「チューニング」の解説では、画面がぱっと切り替わり、このような図で説明してくれます。YouTube動画では案外こういう親切な編集がなく、口で説明しているだけだったりします。
DVDの完成度は「映像のプロがちゃんと編集しているな!」と感じました。
この本のデメリット基礎重視なので、高度なテクニックまでは進みません。初心者を卒業するかしないか……といったレベルで終了します。しっかり練習すれば、おそらく1週間くらいで修了する内容で、その後はまた別の教本を探す必要があります。
最初の1週間を確実に乗り切れる、超初心者向けの本です。
『改訂版 今日からはじめるウクレレ』
タイトル | 改訂版 今日からはじめるウクレレ |
著者 | クラフトーン[編] |
出版社 | ヤマハミュージックエンターテイメントホールディングス |
発売日 | 2022/5/10 |
価格 | 1320円(税込) |
メディア | YouTube |
おすすめ度 | ★ |
本の内容は親切で、丁寧に解説しています。全体にちゃんとしている感じがしますが……。
この本のデメリット動画はYouTubeで視聴する方式ですが、編集に工夫が足りません。また、動画の量が少なすぎると感じます。
最後の方の練習曲には動画や参考音源がなく、初心者の人がいきなり弾くのは無理があります。なぜここに参考動画や音源がないのかがナゾです。
本の編集はしっかりしています。映像を重視しない人向け。
『みんなで歌おう!かんたんウクレレ教室』
タイトル | みんなで歌おう!かんたんウクレレ教室 |
著者 | ガズ[著] |
出版社 | リット-ミュージック |
発売日 | 2018/6/19 |
価格 | 1540円(税込) |
メディア | YouTube |
おすすめ度 | ★ |
コードを極限まで簡略化しているので、難しいコードがほとんど出てきません。とっつきやすさは抜群です。「とにかくラクに弾きたい!」という人に向いています。
この本のデメリット反面、コードを簡略化しすぎているので原曲の雰囲気が失われている場合もあります。「弾きたかったのはコレジャナイ」感を感じることもありました。
動画はYouTubeで視聴する方式ですが、動画編集のプロではなくガズさんが編集している(と思われる)ので、そこまで見やすくないのも残念ポイント。
とりあえず弾ければいい、という場合はこれで。
ちょっとだけ楽譜・タブ譜が読める人向けの教本
基本をさくさくっと終わらせて、少し高度な技術解説に誌面を割いている本もいくつかありました。
基本部分の解説があっさりしているので、楽器経験者でないと手こずるかもしれません。ただし、まったくの初心者でも、回りに教えてくれる人がいたら大丈夫です。
『はじめよう!ウクレレ』
タイトル | はじめよう!ウクレレ |
著者 | キヨシ小林[著] |
出版社 | ヤマハミュージックメディア |
発売日 | 2005/6/20 |
価格 | 1760円(税込) |
メディア | DVD |
おすすめ度 | ★★★ |
キヨシ小林さんがアレンジした楽曲で練習できるのが最大のポイント。かんたんな入門曲から上級編まで、弾いて楽しい楽曲なので練習がはかどります。
この本のデメリット解説があっさりしていて、進み具合も速めです。「ジュピター」「愛のロマンス」「花(喜納昌吉)」などの名曲を美しいアレンジで弾ける反面、弾けない人はついて行けない可能性も。
また、動画がなくCDの音源だけで練習しないといけないので、初心者にはやや難しいかもしれません。
楽器経験がある人にはイチオシのおすすめ本です。
『ウクレレの教科書』
タイトル | ウクレレの教科書 |
著者 | 浦田泰宏[著] |
出版社 | ヤマハミュージックメディア |
発売日 | 2018/4/20 |
価格 | 1870円(税込) |
メディア | DVD |
おすすめ度 | ★★ |
進み方も速すぎず遅すぎず、本の解説もしっかりしていてわかりやすく、DVDとCDが両方ついているうえ、スマホで動画を視聴できます。しかもスマホ動画はDVDと別バージョン。映像制作をがんばっていると感じます。
この本のデメリット執筆が浦田泰宏さん(ギタリスト)で、演奏が川村幸子さん(ギタリスト)。なので、演奏や解説にウクレレの癒やし感が少ないのが残念です。「ギターうまい人が弾くウクレレ」みたいな雰囲気に違和感を感じることも……。また、チューニング解説の動画がないなど、構成にかたよりが感じられました。
ウクレレに「癒やし」を求めないテクニック重視派の人におすすめ。
初心者でもソロ志向の人におすすめの教本
完全にソロに照準を合わせた鈴木智貴さんの『ソロ・ウクレレBOOK』もいいですが、今回じっくり読んでみたところ、勝誠二さんの『DVDで今日から弾ける!かんたんウクレレ』という本がなかなかのできばえでした。
『DVDで今日から弾ける!かんたんウクレレ』
タイトル | DVDで今日から弾ける!かんたんウクレレ |
著者 | 勝誠二[著] |
出版社 | リット-ミュージック |
発売日 | 2020/5/23 |
価格 | 1518円(税込) |
メディア | DVD |
おすすめ度 | ★★★ |
日本におけるトッププレイヤー勝誠二さんが執筆、演奏、音源制作を担当。DVD映像がわかりやすく、勝さんワールドを吸収できます。スピッツ、あいみょん、サザン、ジブリ……と、選曲のよさもさすが勝さん。DVDとYouTube動画の両方に対応しています。
この本のデメリット基礎からソロまでを幅広くカバーしているので、1つ1つの技術解説があっさりしています。これだけだと「弾き方がわからない」という事がありそうです。
この本と同じ範囲をしっかり解説するなら、教本ではなくDVD・通信講座になってしまいます。1冊でカバーするのが難しい内容をカバーしようとしている本かなと感じます。
『買ったその日にスグ弾ける!ソロ・ウクレレBOOK』
タイトル | 買ったその日にスグ弾ける!ソロ・ウクレレBOOK |
著者 | 鈴木智貴[著] |
出版社 | ヤマハミュージックエンターテイメントホールディングス |
発売日 | 2022/4/10 |
価格 | 2750円(税込) |
メディア | YouTube |
おすすめ度 | ★★ |
あの鈴木智貴さんアレンジの楽譜で練習できます。シンプルな曲でもかっこよく「弾いてみたい!」というモチベーションが続くのが特長。曲の解説動画はYouTubeで見る方式ですが、参考音源というより細かい弾き方を解説してくれます。まるで智貴さんのレッスンを受けているような印象でした。
この本のデメリットチューニングのしかたから解説する初心者向けの本ですが、かなり一足飛びにソロを練習します。むしろ冒頭のチューニング解説などはいらないのでは? と感じました。また、YouTube動画は智貴さんが編集していると思われます。プロの動画制作に比べて、やはり工夫や細かい配慮は不足しており、そこまでわかりやすくはありません。
「初心者だけどソロが弾きたい」という人には、ほぼこの本が唯一の選択肢。
初心者でもアンサンブル志向の人におすすめの教本
初心者向け教本で、アンサンブル(合奏)をカバーするものはほとんどありません。唯一、なぜか三重奏を練習する教本が存在しています。
『これからはじめる!!ウクレレ入門』
タイトル | これからはじめる!! ウクレレ入門 |
著者 | 不明 |
出版社 | ドレミ楽譜出版社 |
発売日 | 2009/8/30 |
価格 | 2200円(税込) |
メディア | DVD、CD |
おすすめ度 | ★★ |
地味ですが案外いい本で、導入レベルからわかりやすく解説しています。練習曲の選曲もよく、ビギン、サザン、SMAPなどの楽曲を選んでいます。DVDの映像編集がよく、しっかりと制作されていると感じました。
練習曲『アロハ・カウアイ』はウクレレ3本による合奏。本格的なアレンジで、これが弾けたら楽しそう! と感じますが、仲間が2人必要です。
この本のデメリット良くも悪くもアンサンブル(合奏)の解説があるので、その他の解説が削られ気味な点が残念といえば残念です。練習曲も少なめで、もう少し楽譜を掲載してもいいのでは? と思います。
評価に使ったのは旧版ですが、上記は最近発売された改訂版です。オールカラーになっています。
普通に考えて「初心者が3重奏?」と思いますが、教室のテキストとして使うなどの用途が考えられますね。
その他のウクレレ教本
最後に、どこにも分類できなかった教本をまとめました。
『[大人のウクレレ]初歩の初歩入門』
タイトル | [大人のウクレレ]初歩の初歩入門 |
著者 | カイマナ佐藤[著] |
出版社 | ドレミ楽譜出版社 |
発売日 | 2008/6/30 |
価格 | 1320円(税込) |
メディア | なし |
おすすめ度 | ★★ |
ハワイアンの大御所カイマナ佐藤さんが解説しているので、ハワイアンの楽曲が多めです。フラをやっている人などにはよさそう。使い道としては、ハワイアン重視のウクレレ教室でテキストとして使うのに向いています。
この本のデメリットDVDなどの映像や音源が付いていないので、独学で学ぶ本としてはわかりにくいです。
ちょっと古い本なので編集はそこまで細かく行き届いていません。ただ収録している楽曲はいいですよ。
『ウクレレ入門』
タイトル | ウクレレ入門 |
著者 | 小竹遼[著] |
出版社 | 島村楽器 |
発売日 | 2019/9/14 |
価格 | 1980円(税込) |
メディア | DVD |
おすすめ度 | ★ |
まんべんなく解説するバランスのいい構成です。循環コードの解説が入っていたり、ウクレレを弾く前のストレッチ方法が書いてあったりと、オリジナリティーもあります。
この本のデメリットオールカラーで映像も附属するのに、なぜか「この本だけではわかりにくい」と感じるのがデメリット。おそらくこれは島村楽器のウクレレ教室でテキストとして使うための本ではないでしょうか? 完全独学には向いていませんが、教室テキストとしてみたらアリです。
独学には向いていませんが、教室のテキストならよさそうです。
まとめとこの記事で取り上げたベスト1教本
今回10冊の初心者向けウクレレ教本を改めて読み比べ、DVDなどの映像も見比べて気付いたことがあります。
- 著者名をはっきり書いている本の方がわかりやすい傾向がある
- YouTube映像よりDVD映像の方がわかりやすい
とくに②は強く感じました。
YouTubeだと、ミュージシャン本人が映像編集もしているため、あまり凝ったことができていません。
その点、DVDの映像は専門の編集会社が手がけているので、ストロークをする手の横に図を出したり、楽譜を流したり……とわかりやすい工夫がされていました。
そこで、現状では、迷ったらDVD付きの教本を選んだ方が無難です。
初心者向けウクレレ教本ベスト1は!?
正直、ベストを1つあげるのは難しいですが、やはりキヨシ小林さんが記事執筆と楽譜アレンジを手がける『はじめよう!ウクレレ』をベストに推します。
なぜこの本がベストかというと、やはり掲載されている課題曲のアレンジがすばらしいからです。
弾いていて「いいな」と思える曲、「まだ弾けないけどがんばってマスターしよう」と思える曲を弾くことが、モチベーションアップにつながります。
その点、キヨシ小林さんアレンジの楽譜で練習できるこの本は、個人的には永遠のベスト1! ぜひおすすめしたい1冊です。
ただし、進み方が速いので、ちょっとだけ楽譜が読める人だったり、ギター経験がある人にぴったりの教本といえます。
完全初心者なら「古川先生のウクレレ通信講座」
まったく音楽経験がない人に、テッパンのおすすめ教材をあげるとしたら『古川先生のウクレレ講座』がベストです(通信講座的な教材です)。
古川先生のアレンジも雰囲気がよく、なおかつDVDの映像がめちゃめちゃわかりやすいため、超超初心者の人でもついていけます。「スマホで見たい」という場合は、同じ映像をオンラインで視聴できます。
「自信ゼロだけどやる気は100%」という人には、この教材が永遠のベスト1です。
古川先生のウクレレ講座|公式サイト
何がすごいかというと、驚きのフォロー態勢。不明点はLINE、メール、電話で質問し放題です(しかも半永久的に)。なので「教材の説明がわからなくて挫折した」ということはほとんど考えられません。
ここまでのフォロー態勢は他にはないので、絶対うまくなりたい初心者におすすめです。
中級以上のウクレレ教本は、以下の記事で解説しています。