不動産の仲介をしていると、よく聞かれるのが今回のテーマ。「私が買おうとしている物件に抵当権が設定されているけど、大丈夫なの?」という問題です。
抵当権とは何か?
ざっくりいうと、債務者がお金を返してくれない場合に、担保に取った物から優先的に返済を受ける権利を、抵当権といいます。抵当権を実行すると、目的となる不動産を競売し、売れたお金から債権を回収することができます。
もし、他人が抵当権を設定した不動産を、その抵当権が付いたまま購入すると、どうなるでしょうか? 抵当権を設定した人が返済を怠るなどした場合、抵当権が実行されて競売にかかり、せっかく購入した不動産がなくなってしまうかもしれません。
「じゃー、抵当権が設定された不動産を購入したら危険じゃないか!」と思われたかもしれませんが、実務では次のような手順で、安全な取引を行っています。
抵当権が付いた物件の売買はよくある
たとえばローン返済中に不動産を買い換える場合、当然抵当権は付いたまま売り出すことになります。ですから、世の中に流通している中古物件のなかには、かなりの頻度で抵当権が設定された物が含まれます。一般に流通している普通の住宅の場合「まぁ、たいがい抵当権がついていますよね」というレベルです。抵当権前提で仲介している、という感覚です。
そのような抵当権付きの物件の場合、次のような手順で買主にとっての取引の安全を確保しています。
- 手付金を打って契約
- 売主が借り入れをしている金融機関に抵当権抹消書類を用意してもらう
- 準備できたら残金決済
- 売買したお金で売主は金融機関に返済
- 同時に抵当権を抹消しつつ所有権移転登記申請
この流れの中でキモは④と⑤。抵当権が付いている物件であっても売却すればその時点で抹消可能です。そこで売買によって売主に入ってきたお金で、即金融機関に返済④し、抵当権抹消と所有権移転登記申請を同時に出す⑤という流れです。
その抵当権、本当に抹消できる?
さてここで気になる点がひとつ。抵当権抹消と所有権移転を同時に(というより連続して)行うのはわかったとして、その抵当権が本当に抹消できるかどうかは誰がどう保証してくれるのでしょうか? 実際に抵当権が担保している債務(借金)を返済できるのかという問題だけではなく、きちんと書類が揃っていて、間違いなく関係者全員の印鑑が押されていることも重要です。
実はその点は、司法書士さんが担保しています。司法書士は、一般的には「決済の現場に現れて、数枚の書類をぺらぺらと目の前に並べて押印させ、数万円の報酬を取っているおいしい商売の人」と認識されている気がします。しかし、実際には「この登記が間違いなく入る」という点を担保している、登記の専門家なのです。
抵当権を抹消できると思って購入したのに、抹消できなかった! となるとどえらい大問題ですが、司法書士さんが「書類完備です」と言ってるなら大丈夫。司法書士さんが首をかけて取引の安全を担保してくれている、と考えてよいと思います。
そのようなわけで、抵当権が付着している不動産を購入する場合であっても、過度な警戒は不要です。ただし「なぜ警戒しなくていいのか」という仕組みを理解し、取引がその仕組み通りに行われているかを確認することは必要です。
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