最近よくfacebookなどで広告を見かける「再建築不可物件投資セミナー」。ちょっと気になるタイトルです。再建築不可物件を建築可能にする、法の抜け道はありませんが、法律の知識があればなんとかできる再建築不可物件も確かに見かけます。
また、記事後半で道路に接していない土地の、その他の救済策を解説します。役所で「建築基準法の道路じゃないですね」といわれても、あきらめずに粘りましょう。粘り方のポイントがあるので、ぜひチェックしておいてください。
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どんな手順で接道を調査するの?
今回はプロの不動産業者が接道について調査するときの手順を元に、少し簡略化して解説していきます。
- 市町村役場で物件位置を特定。
- 市町村役場で航空写真を取得(地積併合図に航空写真を重ねたもの)。
- 土木課など担当部署で道路の種類を尋ねる。
大阪イチ安い!? 価格10万円の土地を調査
大阪府南部で112.55㎡(約34坪)の土地が、価格10万円でレインズに掲載されていました(2020年6月27日現在)。坪単価10万円ではなく、価格が10万円です。急行の停まらない小さな駅ですが、徒歩圏です。
上の写真は南海本線淡輪駅。急行こそ止まりませんが、なんば駅まで一本で行けるこの駅から、物件までは約640m、徒歩8分です。
問題は接道。物件前に到着してみると、前面道路の幅員が2.2mしかありません。
この土地に建築できなければ10万円の資材置き場としてしか利用できませんが、もし建築可能であれば大化けするはずです。買い取って売却するだけで、利回り1000%くらいになりそうなので、張り切って調査してみましょう。
役所で前面道路の種類を調査
接道を調査するためには、市町村役場の窓口に行って、道路の種類を確認します。役所・役場によって担当部署が違いますが、受付等で都市計画や道路を担当している部署を教えてもらえばOKです。
今回の物件は大阪府泉南郡岬町にあったので、岬町役場を訪ねました。
ポイント
役所では最初に航空写真(地積併合図と航空写真の重ね合わせ図)を取得することをおすすめします。これは税務課などの窓口で発行してもらえます。今回も所在地(地番)を告げて航空写真を出してもらい、それから都市計画課の窓口に行きました。
都市計画課の窓口で航空写真を見せると、その場で前面道路の種類を確認してもらえます。「道路について調べたいのですが」と伝えると、担当者には「建築基準法上の道路かどうかの調査だな」と伝わるので、細かいことを言わなくても回答してくれます。
今回はさらっと……
前面道路は建築基準法上の道路ではありません。非二項判定の里道です。
といわれました。このままでは再建築不可です。
しかし、ここで諦めるのではなく、粘り強く様々な可能性を検討します。
もし「二項道路? 何それ?」と思ったら、以下の記事を読んでおくと、さらに再建築不可物件に強くなれます。ただし、けっこう長い記事なので後から読んでみてください。
参考【接道義務】土地がどんな道路に接していれば建築できるかまとめ
再建築不可に抜け道あり? 接道していない場合の救済策は?
建築基準法の原則は、建築物の敷地は、建築基準法上の「道路」に2m以上接していなければならないというものです。
上の図のように、建物を建てる場合はその土地が、建築基準法第42条に定めた道路に2m以上接している必要があります。ところが、今回の調査では「土地前面道路は、建築基準法の道路ではありません」と回答されました。
このような場合、次のような救済措置があり、それに該当しないか調査を続けます。
接道に関する救済措置
- 法第43条第2項1号認定・2号許可
- 里道またぎでの確認申請
- 道路位置指定
法43条2項1号認定と2号許可
すでに建物が建ち並んでいる市街地で、再建築できない建物については、防災や防火の見地から再建築を認めようという動きがあります。最近も建築基準法第43条が改正され、若干の見直しがはかられました。
比較的よく利用される、法第43条2項1号認定と2号許可という措置がそれに該当します。
ここでは、大阪府住宅まちづくり部建築指導室が発表している『建築基準法第 43 条第2項第2号許可取扱い方針』をもとに判断していきます。
「判断基準第2第3項②の幅員が2.7m未満1.8m以上の通路に接する敷地における一戸建ての住宅の取扱いについて」という項目の要件に適合すれば、再建築が認められる可能性がありそうです。
要件はいくつかありますが、今回のケースでは次の条件にあてはまりそうです。
道路について | 国又は地方公共団体の管理する道で、市町村認定道路によって幅員のすべてが構成されている通路 |
建築可能な建物 | 専用住宅もしくは兼用住宅(延べ面積の1/2以上を居住の用に供し、住宅以外の用途に供する部分の床面積が50㎡以下のもの |
表の上段の道路に合致すれば、下段の建物(基本的には住宅限定)を建築できるということになりますね。
この条件に適合するかを調べるには、道路を管理している部署の窓口で尋ねます。岬町の場合は土木課です。窓口で航空写真を示して道路の種類を尋ねると、「町道です」との返答がありました(認定道路ということですね)。細いけれど町道であれば再建築できそうです。最終的に許可をするのは建築主事(特定行政庁)なので、その行政庁の判断を確認するか、市街化調整区域に詳しい建築士の意見を聞いて、確認してください。
ポイント
今回の土地は、法43条2項1号認定で再建築できる可能性あり!
ということで、ここまで調べた時点で「再建築が可能と思える」と判断できました。もし購入できたら、利回り1000%も達成可能そうです。
メモ
法43条2項1号認定と2号許可については別記事で細かくフォローしました。この記事の一番下を見ていただくか、すぐ下のリンクから参照できます。
参考【接道義務】土地がどんな道路に接していれば建築できるかまとめました
というわけで、本物件の調査では法43条の救済措置が適用されそうだとわかりましたが、他にも接道していない物件を救済する方法があります。
里道またぎと水路またぎ
建築基準法上の道路と敷地の間に、何か別の土地があって接道していないというパターンもよくあります。このような場合、道路と敷地の間にある土地が何かを調査します。
こういった細長い土地が建築基準法上の道路に認定されていない里道だった場合、多くの自治体では里道の払い下げ等の方法で、接道を確保する措置をとっています。
買い取れない(払い下げてもらえない)ケースでも、里道を通行したり掘削する許可を得て建築を可能とする措置もあります。
市町村ごとに細かい対応が異なっているため、窓口で確認する必要がありますが、大まかな方向性としては里道をまたいでの建築は認められるケースが多いです。
ちなみに下記のような事例だと、3号道路(既存道路)部分は建築主事、里道部分の許可は市町村役場の土木課などと、2か所にまたがる調査になります。実務上は、建築士さんが建築確認申請の前提として調べてくれる場合が多いです。
ちなみに3号道路(既存道路)というのは「都市計画法施行前から、幅員4m以上の道として使用されていたようなので、建築を認めましょうか」という制度です。
次に、河川や暗渠、水路をまたいでいるケース。実際に調査したことがあるケースとしては、次の図のようなケースがあげられます。
普段の通行には他人の敷地を通路として使わせてもらっている土地なので、接道していません。そして背後は幅2mくらいの水路でした。
このケースでは水路管理者から法定外公共物使用許可を得て、水路と敷地の間に幅員2m以上の橋を架けることで、再建築が可能となりました。
ポイント
里道や水路をまたぐ土地の場合、市町村役場によって細かい規定は異なりますが、再建築可能な可能性があります。
道路位置指定をとる
ここからいきなりハードルがあがります。道路位置指定とは道路のないところに新たに私道を設けて、特定行政庁から道路の位置指定を受け、その道路を建築基準法の道路とする方法です。
道路位置指定に関する指定基準はかなりレベルが高く、ざっくりと「公共工事並みの費用がかかってしまう」という点を押さえておいてください。
位置指定道路についても、以下の記事で少し詳しく触れています。
参考【接道義務】土地がどんな道路に接していれば建築できるかまとめ
道路調査に関しては「粘り」が大切
道路調査の初期の時点で「非道路です(建築基準法の道路ではないです)」と言われることはよくあります。
しかし、不動産実務の教科書でも「道路調査には粘りが必要です」と書かれているとおり、そこから「どんな救済策があるか?」を調べていくことで、建築が可能となるケースも多々あります。
不動産のプロでなければ、役所の窓口の人にストレートに質問してみるのがよいと思います。「なんとかなりませんか?」と食い下がれば、何かヒントを教えてくれることもあります。一度の調査で非道路でも、諦めずに再調査してみてください。
役場の窓口に行くときは以下の記事をブックマークしておくと便利です。道路に内容を絞って解説しています。
粘ってもダメだった時でも売却は可能
中にはどうしても建築可能にならない物件もありますし、調査がたいへんで力つきることも……。
そんな時でも、売却は不可能ではありません。「どんな物件でも買い取ります」という買取サイトも存在します。株式会社AlbaLinkの訳アリ物件買取PROであれば、ひとまず相談からスタートすることもできます。
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また、以下にリンクを掲載したドウスル株式会社は「お困り不動産」に特化した査定サービスです。再建築不可物件や事故物件など、通常敬遠される物件を積極的に扱っています。
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再建築不可物件に関連したよくある質問
最後に、再建築不可物件に関するよくある質問と回答をまとめました。
「再建築不可物件」を購入しましたが、今後の対策はありますか?
再建築不可物件の購入後は、売却が難しい場合に備えリフォームや賃貸収入を検討するのが一般的です。接道要件の変更があれば再建築可能になる可能性もあるため、地域の条例変更も注視しましょう。
再建築不可物件はやめたほうがいいですか?
再建築不可物件の購入は慎重に検討するべきです。資産価値が低く、売却やリフォームが制限されるため、将来的な制約が多い傾向にあります。リスクを理解し、将来の活用方法を検討してから判断するのが無難です。
再建築不可物件を購入して後悔することはありますか?
再建築不可物件では、転売や融資が困難な点で後悔するケースが見受けられます。再利用の方法が限られるため、資産価値が下がることも一因です。十分なリサーチと長期的な活用計画が重要です。
再建築不可物件はリフォームできますか?
再建築不可物件は基本的にリフォームは可能ですが、増築などの大幅な構造変更は制限される場合があります。利用しやすい内装や設備の更新で価値を高める方法が一般的です。
再建築不可物件のリフォームには補助金が使えますか?
再建築不可物件でも、省エネや耐震改修を目的とするリフォームなら補助金が利用できる場合があります。自治体によって制度が異なるため、市町村役場で詳細を確認してください。
再建築不可物件はなぜ存在するのですか?
再建築不可物件は、建築基準法に定める「接道義務」を満たしていないために新築が認められていないケースが多数を占めます。古い町並みや狭い道路が多いエリアでは、当時の基準では問題なかったものの、現行法では再建築不可とされることがあります。
まとめ
再建築不可物件には、建築基準法における「接道義務」を満たしていないため新築ができないものが多く、投資や購入には注意が必要です。しかし、建築基準法第43条の要件を満たすことで、再建築が可能となる場合もあります。また、道路との間にある里道や水路についても、自治体の許可で接道を確保する方法があり、粘り強く調査すれば解決法が見えてくる可能性もあります。
また、再建築不可が解消されない場合でも、売却が不可能とは言いきれません。訳あり物件を専門に取り扱う査定サービスもあり、売却によって資産を現金化することも可能です。
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再建築不可物件は扱いが難しいものの、適切な調査と対応策を知っていれば、活用の道は広がります。