この記事では、所有者がわからない土地の持ち主を調べる方法を解説しています。
ひとつは正攻法、ひとつはネット検索しても出てこない裏ワザです(2021年1月現在)。
正攻法 | ネットか法務局の窓口で登記簿を取得する |
裏ワザ | 一部市町村でのみ可能な「土地台帳閲覧」を利用する |
台帳閲覧については、ほとんどの人が知らないと思います。実は一部市町村では、個人情報を満載した固定資産税の課税台帳(土地台帳)を第三者が閲覧できる制度が残っています(2020年代にこんな制度が残っていることには驚きますが……)。
記事前半で登記簿による所有者の調べ方(正攻法)を解説し、記事後半ではこの「土地台帳閲覧」を解説します。
ページ内リンクウラ技「台帳閲覧」へジャンプ
ネットで登記簿を取得して所有者を調べる
まず最初に試しておきたいのは、自宅に居ながら調査ができるネットでの登記簿取得。昔は法務局(登記所)へ足を運ばないと取得できませんでしたが、今は「登記情報提供サービス」というサイトで取得できます。
登記簿を取得することの意義は、所有者名が「登記名義人」の欄に掲載されていること。登記名義人の住所も載っています。個人情報保護が厳しいこの時代でも、登記簿には所有者の権利関係を公示する目的がありますから、掲載する必要があるのでしょう。
ただし、登記名義人がなくなった場合や転居した場合に、必ず登記名義を変更しているとは限りません。そのため登記簿を取ったからといって、必ずしもそこに記載された登記名義人が現在の所有者だとは限りません。
メモ
場合によっては登記名義人が現在の所有者ではないこともあるので、その点は要注意。
以上を踏まえて、登記簿を取得する手順を見ていきましょう。
地番がわかっている場合とわからない場合
郵便物が届く住所は住居表示といいますが、登記簿上の所在地はそれと異なる地番で示されています。
実は地番というのは明治時代から使われています。そのため時間の経過とともに合筆してなくなった番号があったり、分筆して枝番が複雑化した番号があったりします。
そこで、建物がある場所に新たに住居表示を行い、住所をわかりやすく整理するようになりました。住居表示は基本的には土地だけの物件には振られていません。
私たちは普段住居表示に基づいた住所を使って暮らしています。そのため、地番がわからないケースは多いと思います。
この記事では次のようなステップで、地番の探し方から解説していきます。
step
1地番を調べる
地番がわからない場合は、次のような方法で地番を調べてから「登記情報提供サービス」で登記情報を請求します。
以下の各項目をクリックすると、それぞれの「地番の調べ方」が開きます。ちょっと探し方にクセがありますが、最近はオンラインで調べるのが主流です。
まずはオンラインで調べてみて、わかりにくいようであれば法務局か市町村で調べると効率的です。
step
2登記情報提供サービスにアクセス
地番がわかっている場合は、ネットの登記情報提供サービスにアクセスします。
ネットで「登記情報提供サービス」を利用する手順
以前は管轄の法務局へ行かないと取得できなかった登記簿(登記情報)を、現在ではネットで取得することができます。
不動産業者や司法書士にとっては便利なサイトですが、慣れないとわかりにくい手順もあります。この記事では、登記情報を請求する手順を詳しく解説していきます。
用意するもの
- 地番がわかるもの
- クレジットカード
地番を確認できる書類などを手元に置いてからスタートしてください。登記情報提供サービスの一時利用はクレジットカード決済なので、クレジットカードも用意しておく必要があります。
VISA、JCB、MASTER、DINERS、NICOS、AMEXが利用できますが、デビットカードは利用不可です。
ネットで登記簿を請求すると、ちょっと価格が安い
登記簿(登記情報)は法務局で取得するよりも、ネットで取得したほうが割安です。
法務局 | ネット | |
登記簿(全部事項) | 600円 | 334円 |
地図(公図) | 450円 | 364円 |
図面(測量図など) | 450円 | 364円 |
料金はいずれも消費税込みの価格です。
「一時利用」でログインする
登記情報提供サービスのトップページから一時利用の「利用申込」をクリックすると約款が表示されます。ページの一番下にある「同意する」をクリックして、次のページで必要な個人情報を入力します。
必須項目は次の5つです。
- 氏名
- 氏名カナ
- パスワード
- 電話番号
ほかにも入力項目がありますが、必須ではないので入力しなくても大丈夫です。名前は本名でなくてもいいのかな、と思ってしまいますが、後ほどカードで決済するということもあり、本名にしておくのが無難だと思います。
パスワードは、この時点で自分で決めてください。8ケタ以上で、英数字と一部記号が使えます。基本的には一度しか使わないパスワードなので、そこまで複雑なものでなくてもよいと思います。
「次へ」ボタンをクリックして出てくる画面で内容を確認したら、「登録」ボタンを押します。
基本的な操作方法
先ほど届いたメールに書かれた「お客様ID番号」と、自分で決めたパスワードでログインします。上のほうにある「不動産請求」タブをクリックして、調べたい不動産の情報を入力する画面を開きます。
上記の画面で都道府県を選択し、市町村名や地名を入力します。「地番・家屋番号」と書かれたところに地番を入力し、画面右下の「確定」をクリックすると次の画面に進みます。
画面表示をチェックして問題なければ「請求」ボタンをクリックして、登記簿を請求します。
デフォルトでは登記申請用統合ソフトで利用するQRコードが印字されますが、これは通常使わないので、あまり気にしなくて大丈夫です。入っていても、入っていなくても構いません。
この後は、画面表示に従ってクレジットカードで決済すると、マイページに取得できた登記簿が一覧表示されていますので、必要な物件にチェックを入れて「表示・保存」ボタンでダウンロードします。
登記簿には必ず「共担目録」を付ける
登記簿を請求する時に、必ず請求しておきたいのが「共同担保目録」のオプション。無料で共担目録を付けてもらうことができます。
共同担保目録というのは、ひとつの債権(たとえば住宅ローンの借り入れなど)について2つ以上の不動産を担保に提供した場合に作られるものです。
共同担保目録をとっておけば、同じ人がほかに不動産を持っていることがわかるケースがあります。
住宅ローンの抵当権を設定した場合などは、共担目録を取ると土地と建物の両方が掲載されているのですが、たとえば土地2筆にまたがって1つの建物を建てているような場合に、そういった事情を読み取ることができます。
共同担保目録には、このように同一名義人の債務の共同担保に供された不動産が列挙されています。これを手がかりに登記名義人の他の財産の存在を知ることができます。この例では2筆の土地の上に1つの建物が立っているということがわかりました。
すべての財産を把握できるわけではないとはいえ、登記名義人のその他の財産を知る手がかりとして、不動産業の実務では必ず共同担保目録を付けて登記簿を請求します。
安上がりにすませるなら「所有者事項」もアリ
通常は「全部事項」にチェックを入れて、登記簿謄本に相当する情報を取得しますが、お金を節約するなら「所有者事項」を請求する手もあります。
価格が税込144円と、かなり安くなります。
ただし情報量が少なく、共同担保目録なども付けることができません。たくさんの土地の所有者を調べ、そこから情報を絞り込んでいくような場合に限って使うべきだと思います。
ここで地番検索サービスが利用できる
記事の上の方で少しだけ触れたように、登記情報提供サービスのサイト内で、オンラインのブルーマップともいえる「地番検索サービス」が利用できます。
ログインした状態で「不動産請求」タブをクリックすると、画面の右側、真ん中より下あたりに「地番検索サービス」というボタンがあるはずです。これをクリックしてください。すると、次のような画面に飛びます。
規約などが表示されるので「規約に同意します」にチェックを入れてから「PCで利用します」ボタンを押します。
画面左の「住所検索」で調べたい土地を検索すると、次のような画面になります。
黒い数字が住居表示で、青い数字が地番です。この青い文字(地番)をメモしておき、登記情報の検索に使用してください。
該当する登記が見つからない時のヒント
もし正しいと思っている地番で該当する登記が見つからない場合は、まず公図を取ってみることをおすすめします。地番を少しだけずらして公図を取ってみると、周りの筆の状況がわかります。
確認してみたら、実は枝番がついていた……といったこともあります。
この後は、ネットで探しても出てこない「台帳閲覧」という裏ワザを解説します。
裏ワザ「台帳閲覧」で効率的に土地所有者情報を収集
すべての自治体ではなく一部の市町村に限られますが、第三者の固定資産税課税台帳(土地台帳)の台帳閲覧ができる制度が今でも残っています。
Googleで「固定資産台帳 閲覧」と入力すると「固定資産台帳 閲覧 誰でも」とサジェスト(Googleのオススメ検索キーワード)が出ることから、この制度の存在にうっすらと気づいている人は少数ながら存在すると思われます。
しかし、2021年11月現在、ネットで検索してもこの制度の情報は出てきませんでした。これはいったい、どんな制度なのでしょうか?
個人情報が載っている土地台帳を閲覧できる、驚きの制度
地方税法第380条1項の規定により、各市町村には固定資産税課税台帳を備え付けることが義務付けられています。
通常この台帳を閲覧できるのは納税義務者等に限られます(地方税法§382の2)。しかし、一部市町村では、いまだに第三者がこの課税台帳を閲覧することが可能です。
もちろん利用できる市町村は少ないですが、それでも存在はしますので、私は小さな町村役場で物件調査をするときには、税務課で「固定資産税の台帳閲覧は可能ですか?」と尋ねることにしています。
具体的な市町村名をここに書いてしまうのははばかられるので、比較的最近まで可能だった自治体を紹介しておきます。
たとえば沖縄県南城市では、ほんの数年前まで第三者が台帳閲覧をすることが可能でした。上の図は2016年10月に、南城市の課税台帳閲覧で得た情報約150件を整理した時のデータです。このように、かなり最近まで南城市の台帳閲覧は可能でしたし、その近くの市町村でも可能な時期がありました。
おそらく昭和の時代であれば大多数の市町村で、第三者が他人の台帳閲覧を行うことが可能だったと考えています。紙ベースで情報を管理していた時代には、意外と幅広く閲覧が認められていたのではないでしょうか。
南城市でも2017年頃に第三者が課税台帳を閲覧できる制度は廃止されました。
平成半ばまで法務局の登記情報も閲覧できた
実は、法務局がオンライン化される以前は、登記簿も紙ベースで管理していました。そして紙ベースの法務局(支局)をブック庁と呼び、ブック庁では登記情報をつづった冊子を閲覧することができました。
それほど古い話ではなく、平成のなかば頃まで、法務局では個人情報満載の登記簿情報を閲覧することが可能だったのです。
冊子に掲載された不動産の所有者情報・不動産の情報は、氏名や住所など個人情報を含めて自由に閲覧でき、複数物件の登記情報をメモして帰ることもできました。
いわゆる登記簿の閲覧制度です。法務局がオンライン化されたことで閲覧が不可能となり、その結果できたのが「所有者事項」という制度です。安上がりに所有者の住所氏名だけを知りたいという人向けに、オンラインであれば不動産1つあたり144円で情報提供しています。
これと同じように、固定資産税の課税台帳を紙ベースでも保管している市町村のごく一部に、いまだに閲覧制度が残されています。
台帳閲覧の利用方法と用意しておきたいもの
台帳閲覧は、閲覧だけができる制度で、台帳の内容を紙で出力してもらうことはできません。ただし、自分でメモして帰ることができますので、A4など書きやすい判型のノートを持参するとよいと思います。
上の写真は私が実際に台帳閲覧でメモしてきた情報です。左端に地番、そこから順に地目、面積、所有者名、所有者の住所を書いています。
この制度が使える自治体はかなり少なくなりつつありますが、例えば下記のような自治体であれば利用できるはずです。
土地の所有者を知りたいのですが(箕面市)……まだ閲覧できそうな自治体の例
また、台帳閲覧という制度が廃止される傾向について、東京新聞の記事が参考になります。
自治体で閲覧中止相次ぐ|東京新聞
台帳閲覧不可の場合、別の制度が使える可能性も
第三者が固定資産税の課税台帳を閲覧できる市町村は限られています。多くの市町村では、課税台帳を閲覧できる者を次のように定めています。
- 納税義務者
- 同居の親族で納税義務者からの委任がある人
- 納税義務者の代理人
- 借地人・借家人
- 破産管財人など一定の処分権限をもつ人
ここで一応押さえておきたいのは、借地人・借家人が含まれていること。土地や建物を借りている人であれば、その不動産についての固定資産税課税台帳の閲覧が認められます。利用範囲は狭いですが、覚えておいてソンはないと思います。
もうひとつ注目したい制度に、固定資産税課税台帳の縦覧というものがあります。残念ながら所有者の情報は伏せられていますが、自分が不動産をもつ自治体内で、自分の資産だけではなく他人の資産についても縦覧することが可能です。
土地の所有者を知るという目的からは外れますし、4月頃の一時期しか利用できませんが(自治体によって若干の違いがあります)、タイミングが合えば利用してもよい制度だと思います。
縦覧して得た情報を整理すると、不動産の価値や将来性を考えるヒントになるからです。
法務局と市町村の情報を総合して土地所有者を探す!
ここまで見てきたように、正攻法は法務局の登記情報を取得すること。登記には権利関係を公示するという役目があるため、個人情報も必ず掲載されます。
ですから、登記情報を取得すれば、少なくとも登記された時点の所有者氏名や住所を知ることができます。
不動産業者の実務としては、登記情報が古くて所有者と連絡が取れない場合などには、周辺での聞き込みなど地道な作業を行っています。
それに加えて、市町村で固定資産税課税台帳の閲覧ができないかトライしてみると効率がアップする可能性があります。一気に複数の土地の所有者情報を把握できるからです。ただし、さすがにこれが可能な自治体は減っていっています。
…これはすごいですよね。でも便利なので、地方の小さい自治体で不動産の調査をする時は、税務課の窓口等で次のように尋ねてみてください。
あのー、この土地の所有者が分からなくて困っているんですが、いい方法ありませんか……?
「あ、台帳閲覧ができますよ」と言われたら、利用させてもらうのもひとつの手だと思います。
おまけコラム「正確な価格査定」
プロに調査をお願いする時は「怪しい価格査定」に注意してください。不動産の価格査定はけっこうバラツキが大きく「あえて高めに出しておこう」的な業者がたくさんいます。業界で「正確な価格査定」を打ち出す業者はほとんどいませんが、筆者の知る限り三井のリハウスはしばらく前から「価格乖離率(査定の正確さ)」にこだわっています。
三井のリハウス|公式サイト
上記の公式サイトでも、査定額の正確性を打ち出しています。