2024年6月現在、沖縄県、広島県、石川県、宮城県にシロアリが多発しています(シェアリングテクノロジーのシロアリ発生指数による)。
4月~7月に、窓のすき間から部屋に入ってくる羽アリはシロアリの可能性あり! 胴体にクビレがなく、ずんどうだとしたら要注意です。
シロアリの羽アリはパートナーを見つけてペアになり、新しい女王と王になろうとしています。そのために、あなたの家の近くから、巣の一部を破って飛び出し、命がけの結婚飛行を行ったところです。
もし目の前に羽アリがいるとしたら、彼らはあなたの家のちょうどいいすき間を見つけて潜り込み、そこに巣を作ろうとしているはずです。
おおざっぱな目安ですが、その場合の危険度は、次のように考えてください。
羽アリの数や状態と危険度
外からわずかな数の羽アリが飛んでくる | そこまで危険ではない可能性あり |
---|---|
羽アリの数が多い。なかなか羽を落とさない | 近くに発生源がある可能性が高い |
室内から羽アリが飛び立っている | 最も危険度が高くすぐに調査を呼ぶべき |
この記事では、いつどんなシロアリが飛んでくるのか、シロアリの種類の見分け方は? といった点を解説します。
緊急の場合は?
室内に大量の羽アリが飛んでいるなど緊急の場合は、ひとまず無料のシロアリ調査を呼んでみてください。私の自宅でシロアリ110番を呼んだときの記事も参考になると思います。
地域によりシロアリの羽アリは4~10月にかけて飛ぶ
シロアリの羽アリが飛ぶ時期は長く、冬以外はいつでもシロアリが飛んでくる可能性があります。西日本の温暖な地域では、春先にヤマトシロアリ、初夏にイエシロアリの羽アリが飛び、外来種のアメリカカンザイシロアリは、羽アリが群飛する時期が一定しません。
東北など寒冷地にはイエシロアリがいないので、春先のヤマトシロアリに気をつけておけば大丈夫です。
ここからはシロアリの発生周期や、どの種類のシロアリかを見分ける方法を解説していきます。
シロアリの発生原因と発生時期
シロアリの発生原因は、成熟した巣から新しく分かれて巣を作るための群飛(スウォーム)と呼ばれる行動に由来しています。
シロアリの巣(コロニー)は、女王アリと王アリを中心とする集団で構成されています。それは1つの社会ともいえる、役割分担が明確な家族集団です。
種類によりますが、夏前の一定の時期になると、そこから新たな巣を作るために新しい女王アリ候補と王アリ候補が羽アリとして飛び立ちます。
家の中で見かけるシロアリの羽アリは、このように、新しい巣を作るために飛び立ち、新天地を探してあなたのお家にたどり着いたということになります。
住宅に被害を与えるシロアリは主に2種類
『木材工業ハンドブック』によると、現在日本には22種類のシロアリが生息しているといわれています。そのうち住宅に被害を与えるシロアリは主に2種類。ヤマトシロアリとイエシロアリです。
ヤマトシロアリと家シロアリは、兵アリに注目すると見分けることができます。
シロアリの巣を見つけたら、その中で少し大きめな個体を探してみてください。それが兵アリで、イエシロアリは頭がそれほど大きくなくて、丸い形をしています。それに対してヤマトシロアリは頭が体に対してかなり大きく、角張った形をしています。
といっても、一般の人が自宅にシロアリがいることに気づくのは、シロアリの羽アリが飛んでいるのを見た時だ、といわれています。普段なかなか人目につかないシロアリが、この時だけは大量に飛び立つからです。
イエシロアリの羽アリが飛ぶ時期
イエシロアリの羽アリは、地域にもよりますが、主に6月から7月の夕方暗くなってから群飛を開始します。
羽の色が透明で、体の色は黄色味が強い茶色……と表現されることが多いのですが、どちらかというと白っぽい個体もいます。大きさは、おおよそ12ミリから15ミリくらいです。
梅雨から初夏にかけてシロアリの羽アリを見つけた場合は、かなり危険性が高いです。
シロアリ110番|公式サイト
上記サイトに問合せ電話番号が掲載されています。非通知でも大丈夫なので、どうしても気になる方は相談してみると安心できます。
外から飛んでくる場合と室内から飛び立つ場合
一般に、シロアリが外から飛んでくる場合はそこまで危険度が高くはないのですが、その場合でも「飛んできてすぐに翅を落としたかどうか」を確認してください。
シロアリが、庭や隣家など近くから飛んできている場合は、しばらく翅を落とさない傾向があります。なかなか翅を落とさない場合は危険度が上がります。
家の中から飛び立っている場合はさらに危険度が高く、はやめの対策が必要です。お風呂場など湿気が多い場所で、よくシロアリの巣が見つかります。
シロアリの危険度の見分け方や、そもそもシロアリかどうかの見分け方は、以下の記事でくわしく解説しています。
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ヤマトシロアリの羽アリが飛ぶ時期
ヤマトシロアリの羽アリは、イエシロアリよりも少し早い時期に群飛します。夜間ではなく昼間、それも午前中に飛ぶのが特徴です。
羽の色は黒っぽく、体の色も黒味が強い茶色をしています。そのためシロアリではなく黒蟻だと思われるかもしれません。体長はイエシロアリよりも少し小さく、翅を除くと10ミリ前後です。
見分け方は首に黄色い輪っかがついていること。写真で確認してみてください。
シロアリの羽アリがいる場合、シロアリ対策が必要かどうかの見分け方については以下の記事で詳しく説明しています。
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アメリカカンザイシロアリの羽アリが飛ぶ時期
1970年代に初めて発見されて以来、外来種アメリカカンザイシロアリの被害が断続的に報告されています。
アメリカカンザイシロアリは北米の砂漠地帯が原産地。日本には少ないカンザイシロアリの一種で、水分がほとんどなくても生きていくことができます。輸入家具や建具に入って日本にたどり着いたと考えられています。時にはピアノも食害された記録があり、なかなかやっかいな種類のシロアリです。
アメリカカンザイシロアリは日本と気候が違うアメリカから渡ってきた外来種なので、日本の環境下では羽アリが飛ぶ時期が一定していません。6月から10月頃に発生します。光に集まる性質(走光性)はなく、また飛ぶ距離も短いので、すぐ近所に着地することが大半です。
被害にあった場所に糞が見つかることが多いので、注意して見てください。和風だしのような顆粒状の細かい糞が落ちていたら、専門業者の無料点検をお願いした方がいいかもしれません。
アメリカカンザイシロアリの被害割合は0.3%に過ぎませんが、今後増加する可能性が指摘されています。
年間を通してシロアリは活動している
シロアリが人目に付くのは群飛する夏前の一時だけです。しかし、群飛によって新しく誕生した女王アリと王アリのカップルは人目に付かない土の中や木の中に住み、どんどん巣を大きくしていきます。
そして冬になると活動量が減るものの、まったく休止することはなく、ほぼ年間を通じて木材を食べ続けることになります。
そんなシロアリの生態については、以下の記事で詳しく解説しています。
参考シロアリはゴキブリの仲間って本当?2億年の歴史を持つシロアリを解説
シロアリの被害にあいやすい家の特徴は?
『シロアリ被害実態調査報告書』(日本長期住宅メンテナンス)によると、木造在来工法の住宅で築年数が古いものほどシロアリの被害に遭いやすいことがわかっています。
築年数 | 蟻害発生率 |
0-4年 | 1.9% |
5-9年 | 4.0% |
10-14年 | 11.0% |
15-19年 | 29.3% |
20-24年 | 38.4% |
25-29年 | 37.4% |
30-34年 | 35.5% |
35-39年 | 46.7% |
40-44年 | 50.2% |
新築から4年目まではシロアリの被害発生率が1.9%ですが、5年を超えると4%に上昇します。10年以上では約10%、15年以上で約30%と右肩あがりにシロアリ被害が増えていきます。
このことから、築年数が古くなるほどシロアリの被害にあいやすいといえます。
新築時のシロアリ予防工事の効果が切れる築5年ごろからシロアリの被害にあいやすくなり、時間の経過とともにその危険性が上がっていく、と考えるとよいでしょう。
ツーバイフォーが気になる!
シロアリ被害実態調査報告書では、ツーバイフォーの住宅で在来工法よりもシロアリの被害が多い点を指摘しています。
機密性が高く住みやすいツーバイフォー住宅はシロアリにとっても快適な環境となる可能性や、一部ツーバイフォー住宅に使われているSPF材が非常に蟻害に弱い点などが指摘されています。今後詳しい調査が待たれます。
参考シロアリがいる家の特徴・いない家の特徴……シロアリがいる家の条件を深掘り
シロアリが好きな環境や繁殖しやすい環境
では具体的に、シロアリが好む環境はどんなものでしょうか? シロアリはある程度温暖な環境で、常に湿気があるような場所を好むとされています。これはもともとシロアリが熱帯性の昆虫であることが理由です。
では住宅の中で、どのような場所がシロアリの巣に適しているのでしょうか? どんな場所でシロアリが発生しやすいのかを見ていきます。
床下
シロアリは本来土中生物であるといわれています。土の中に巣を作り住宅の基礎の下から侵入してくるケースが多いので、床下が被害にあうケースがもっとも多いといえます。
建物の基礎構造別のシロアリ被害発生率を見るとわかりますが、ベタ基礎といって床下全体にコンクリートを打っている基礎では、比較的発生率が低くなっています。
それに対して布基礎はシロアリ被害の発生率が明らかに高くなります。布基礎は床の下が土のままで、柱の形に沿って基礎を打っている旧来の形の基礎。シロアリは土の中に通り道を作って侵入してくるため、このタイプの基礎ではシロアリ被害の発生率が高くなっています。
布基礎の場合は、シロアリ防除の薬剤散布の必要性がより高まるといえます。
水回り
キッチンやお風呂などの水回りには常に湿気があるため、シロアリの被害にあいやすい場所となっています。特にシステムバスではない、在来工法のお風呂の場合は要注意です。
在来工法のお風呂はモルタルとタイルで仕上げていますが、防水性に関しては完璧とはいえません。そのため多少築年が古くなってくると、常にお風呂周りに湿気がこもった状態になります。
リフォーム時に在来工法の浴室を解体してみると、シロアリの被害にあっていたり、廃朽といってかびたり腐ったりしてしまっていることがよくあります。
在来工法の浴室が危ない!
在来工法のお風呂は非常に高い確率で木部が腐ったり、シロアリの被害にあっています。従来工法のバスルームを撤去せず、その中にシステムバスを組み込むリフォームをするケースがありますが、これはぜひ避けるべきです。廃朽やシロアリ被害が見えにくくなり、深刻な事態を招くことがあります。
玄関
玄関も意外とシロアリの被害にあいやすい場所です。玄関は水回りの近くにあることが多い、というのも1つの理由ですが、他にも理由があります。
住宅の建築で一番最後に玄関部分を作ることがよくあります。玄関前にポーチを作ったり階段を作るような時に、どこからから土を持ってくる客土を行いますが、客土した土にシロアリが住んでいるケースがあります。
そこでまず玄関近くに巣を作ったシロアリが、その後建物内部に侵入してくるという事例もよくあります。
屋根
床下から侵入するイメージが強いシロアリですが、イエシロアリの場合は水分が少なくても木材を食べることができるので、屋根瓦の下などに巣を作っている事例も報告されています。雨漏りがするような住宅では屋根の小屋組も湿っていることが多いですから、屋根からシロアリの被害にあうということも考えられます。
被害にあいやすい箇所をまとめると?
グラフをみると水回りと居室、廊下で全体の60%を占めています。これらは木材が湿った環境にあることが原因で、床下からそれぞれの部位にシロアリが侵入していると考えられます。
これに玄関を加えると全体のほぼ9割。水回りを中心とした床下および玄関のチェックがシロアリ駆除において大切であることがわかります。
シロアリの被害にあいにくくする工夫
住宅の敷地に不要な木材を放置しておくと、そこにシロアリが巣を作り、その巣を拠点に住宅内部に侵入してきます。他にもシロアリの被害にあいやすい住宅には、以下のような特徴があります。
こんな家は要注意
- 床下換気が基礎パッキンでなく地窓、もしくは換気がない
- 基礎内断熱が施工されているとシロアリの侵入を受けやすい
- 基礎の立ち上がり高さ(床下の高さ)が低い
- 山を削った造成地に建築されていて、もともとは林や森だった
- 周りに池や水源がある。庭に池がある
- 敷地内に木杭や木の柵、切り株などがある
メモ
つまり換気が悪く湿気がある事と、敷地内や周辺にシロアリが好む木材等がある事が2大要因となっています。
建物構造そのものによるシロアリ危険度は、以下の記事で解説しています。
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シロアリを寄せ付けないために自分でできること
シロアリに強い環境を作るためには、まず敷地内の整理整頓を心がけることが必要です。木材や段ボールなどはきちんと片付けてシロアリを寄せ付けないようにします。大変ですが古い木の切り株なども処分しておいた方がいいでしょう。
その上で、築年数が古く床下換気のない住宅の場合は、通気性を高めるリフォームを検討できればなおいいといえます。
シロアリ駆除に適した時期は?
シロアリの駆除そのものに適した時期は特にありません。ヤマトシロアリは気温4度以上で活動するといわれているので、冬場でも日中は活動を続けています。しかし、木材の内部にいるため、一般には目にする機会はほとんどありません。
シロアリを発見する時期は羽アリが飛ぶ夏前が多いのですが、シロアリの被害は常に進行しています。気になったら早いタイミングで調査依頼をするのがベストだといえます。
駆除業者が暇な時期はもしかしたら価格的にも有利な場合がありますので、繁忙期の夏ではなく秋冬のうちにシロアリの調査を依頼する、シロアリ駆除を依頼すると言う方がお得な可能性もあります。
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シロアリの羽アリを見つけた場合でも、ほんの数匹程度が窓の外から入ってきているのであればシロアリの被害にあっていないことも多く、そこまで心配はありません。しかし、家の中からシロアリの羽アリが飛び立っている場合は注意が必要です。
すでに家の中に成熟した巣があり、そこから新たに巣を作るための羽アリが飛び交っている可能性があります。
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筆者のケースでは、シロアリ110番を実際に呼んでみて、庭に3つのシロアリの巣が見つかりました。もちろん防蟻工事まで施工してもらいましたが、その時のレビュー記事は以下をご参照ください。
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参考文献
今村祐嗣、角田邦夫、吉村剛(2000)『住まいとシロアリ』(青海社)ISBN-10:4906165842
日本長期住宅メンテナンス有限責任事業組合(2013)『国土交通省補助事業 シロアリ被害実態調査報告書』
『建築士』「木材と廃朽 第2回 木材の生物劣化 シロアリ」公益社団法人日本建築士会連合会