「シロアリがゴキブリの仲間だ」というのは本当です。この記事ではさらに、以下の内容を解説しました。
- シロアリとクロアリ(蟻)との違い
- シロアリにはどんな種類がいるのか
- シロアリはどうやって生活しているのか
シロアリという生き物を深掘りしながら、見つけ方や駆除方法などを解説していきます。
覚えておきたいのは、シロアリは本来土の中や朽ち木のなかに住む生き物だということ。そのため見つけるのは大変です。
サクッと1分で解説「シロアリはゴキブリの仲間!?」
シロアリというとその名前から、砂糖に寄ってくる蟻の白いヤツかな? と思ってしまいがち。でも、実はまったく違う種類の昆虫です。
実はシロアリは蟻の仲間ではなく、むしろゴキブリに近い種類。ゴキブリが進化して社会性をもち、女王と王を中心として暮らすようになった……というわけです。
ゴキブリにも、キゴキブリなど木を食べる仲間がいて、そういった種が社会性をもつようになってシロアリへと進化したと考えられています。
もし「今目の前に羽アリがいる!」という場合は、ここをクリックして見分け方のコーナーに飛んでください。シロアリの女王と王のペアであれば、すぐに翅(はね)を落として並んで歩き始めるはずです。
そのカップルは、あなたの家の柱のすき間で新たな巣を作ろうとしているのかもしれません。
シロアリってどんな虫? シロアリの正体を掘り下げ解説!
世界中には約2900種類のシロアリが生息していて、多くが木材をエサとしていますが、そのうち住宅に害を与えているのはごく一部のシロアリです。
シロアリは蟻じゃない! むしろゴキブリに近い昆虫
シロアリは「白蟻」という名前や見た目から、蟻(クロアリ)と同じ種類の昆虫だと思われがちですが、実は全く違う種類の昆虫。アリがミツバチやスズメバチなどと同じハチ目(膜翅目)に属する進化の進んだ昆虫であるのに対して、シロアリはシロアリ目(等翅目)で、昆虫の中では古いグループに属しています。分類としては、むしろゴキブリに近い昆虫だといえるのです。
オーストラリアにはムカシシロアリという種類のシロアリがいますが、名前のとおり原始的なシロアリで、卵を塊で産むなどゴキブリといくつかの共通点を持っています。実はこのシロアリが発見されたことで、シロアリがゴキブリに近い昆虫であることがわかりました。
現在、ムカシシロアリ科のシロアリはオーストラリアに生息している1種類のみですが、化石は世界各地で出土しているのだそう。ムカシシロアリは家屋に被害を与えることが知られているほか、作物の害虫ともなっています。
シロアリとアリはここで見分ける! まずは触角とくびれで判別しよう
アリとシロアリを見分けるときのポイントは、大まかにいうとふたつあります。ひとつは触覚の形の違いです。蟻の触角は、くの字に曲がっているのに対して、シロアリの触角はまっすぐで、玉がつながった数珠のような形をしています。
もうひとつ特徴的なのが体形です。蟻の体には大きなくびれがありますが、シロアリにはくびれがなく、胸と腹がずん胴になっています。
また、どちらも羽アリ(有翅虫)になるものがいますが、この羽アリを比較してみると、羽の形が違っています。蟻の羽アリは4枚の羽のうち、前の羽が大きく後ろの羽が小さいのですが、シロアリの羽アリは4枚ともほぼ同じ大きさで、同じ形です。家の中で見かけた羽アリがシロアリか蟻か判別したいときは、この点に注目するといいでしょう。
シロアリの羽アリは、地面に着くと身をよじって自ら羽を落としてしまいます。これが可能なのは、シロアリの羽アリの羽の付け根には、取れやすいように切り取り線のようなものがついているためです。
蟻の羽アリにはこのような仕組みはなく、強く引っ張らないかぎり羽は取れません。
シロアリの羽アリについては以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。
参考羽蟻を見たら即シロアリ対策が必要?シロアリか黒蟻かの見分け方も解説します
今目の前にいるヤツがシロアリか蟻か、どうしても気になる方は、専門業者の無料調査を依頼してみましょう。以下で紹介しているシロアリ110番は上場企業が運営。しつこい営業もなく、キャンセルや変更も柔軟に応じてもらえます。
実際にシロアリ110番の防除工事をお願いしたレポート|関連記事
シロアリは真社会性昆虫! 蟻との共通点もある
このようにシロアリはアリとは全く違う種類の昆虫ですが、大きな共通点もあります。それは社会性昆虫であるという点です。簡単にいうと、どちらも女王アリと王アリの一対の親と、彼らが生み出したおびただしい数の子どもたちの大家族で共同生活をしています。
シロアリは女王アリと王アリを中心としたコロニー(生物集団)を形成し、地面の中や朽ち木の中などに巣を形成していきます。巣では何世代ものシロアリが同時に生活していて、それぞれの個体がカーストと呼ばれる社会的身分を持って仕事の分担をしています。カーストの違う個体がそれぞれの役割を分業することで、生産性が上がり、コロニーが効率的に維持存続できるようになっているのです。
では、シロアリの社会にはどのようなカーストがあるのでしょうか? ざっくりと分けると、卵を産む生殖カースト(生殖虫)と、卵を生めない非生殖カーストに分けられます。
卵を産む生殖カーストとしては、コロニーの中で唯一、交尾をして生殖行動に専念する女王アリと王アリがいます。シロアリの巣は、オスとメスの羽アリがペアになり、女王アリと王アリとなって卵を産むことから始まっていくのです。
非生殖カーストは、兵アリと職アリ(ワーカー)に分けることができ、将来的に羽アリとなって生殖虫になるニンフと呼ばれる個体も少しだけ混じっています。この辺りのメカニズムはかなり複雑で、ワーカーから生殖虫に変化する例などもあり、現在でもさまざまな研究がなされています。
またシロアリは独自の社会を形成するために、階級分化フェロモンというフェロモンを利用していることもわかっています。フェロモンとは動物や植物などが、体外に分泌する化学物質のことで、同種の他の個体に作用して、ある特定の行動や生理的変化を起こさせます。
シロアリの社会や女王アリ、王アリの寿命は以下の記事で解説しています。京都大学の松浦教授の推定では、王アリは100年生きるという驚くべき長寿命。記事中で動画も紹介していますので、ぜひ見てみてください。
参考シロアリの寿命は長く王アリは100年生きる可能性も!その生態とは?
では女王アリが死んだら巣は滅びるのでしょうか? 実はそうではありません。
ヤマトシロアリの場合、女王アリと王アリがいる間は階級分化フェロモンの働きで、ワーカーは身分が固定されています。しかしコロニーから女王アリを取り除くと、擬職アリやニンフから、女王アリになる個体が現れます(補充生殖虫といいます)。女王アリがいなくなると一時的に階級分化フェロモンがなくなるため、ワーカーの中から新たな女王アリ候補が出現するというわけです。
そのため、シロアリの巣を見つけて、奥深くにいる女王アリをやっつけたとしても、それでシロアリの巣が全滅させられるということにはなりません。コロニーそのものは次に現れる新しい女王アリによって、それまでと同様に生き続けていくのです。
ポイント
女王アリを倒したと思っても、次々に新しい女王アリが出てくる!
木を消化しているのは、シロアリの体内にいる微生物
ウシやヤギのような草食動物の胃や腸の内の中には、さまざまな微生物が住んでいて、食べた植物の繊維を消化し、エネルギーに換える手助けをしています。それと同じく、シロアリの消化管の中にもさまざまな微生物がいて、同様の役割を果たしています。シロアリは微生物と共生しているのです。
シロアリの消化管の中にいる微生物のうち、大型で目立つのがひとつの細胞だけでできている原生動物(原生生物)の仲間です。シロアリが主なエサにしている木材の主要成分はセルロースですが、シロアリがこれを消化するときには、原生動物が作る酵素が必要になります。原生動物はシロアリが食べたセルロースを細胞内に取り込んで分解し、シロアリはその分解産物を吸収してエネルギー源としているのです。消化管の中の原生動物を取り除く実験をすると、たとえ十分な餌を与えていてもシロアリは飢え死にしてしまいます。
では、原生動物はどうしてシロアリの消化管の中に住んでいるのでしょうか? シロアリの消化管の中の原生動物のほとんどは、酸素がない状態でないと生きられない嫌気性生物です。つまり原生動物はシロアリのためにセルロースを消化し、そのかわりにシロアリは原生動物が生きていくために条件のいい環境を提供しているというわけです。このようにお互いが相手に依存し合う関係を相利共生といいます。
シロアリが社会性昆虫になった大きな理由のひとつに、微生物が関係しているのではないかといわれています。卵からふ化したばかりのシロアリの赤ちゃんは、まだ消化管の中に微生物を持っていません。では、どのように微生物を獲得するのでしょう? 実はシロアリは他の個体から微生物を受け継ぐことによって、自分の体内に微生物を発生させます。具体的にいうと「肛門食」といって、別のシロアリのお尻に口をつけて、消化管の中の内容物をもらっているのです。シロアリは仲間がいないとセルロースを消化できるようにならないため、集団で暮らすようになったのかもしれません。
ただし、シロアリの仲間の中には、消化管の中に微生物を持たない種類もおり、それらのシロアリは自分の持つ酵素だけでセルロースを分解できることもあるようです。また、キノコシロアリ類といって、巣の中でキノコを栽培して、その菌糸が分解したセルロース分解物をエサにしている種類もいます。
シロアリの社会を維持するフェロモンの働き
シロアリはさまざまなフェロモン(信号物質)を利用しながら生活しています。実はシロアリのほとんどは目が退化していて、ものを見ることができません。そのため、仲間内だけで作用するフェロモンによってコミュニケーションを取っています。たとえば、職アリ(ワーカー)は仲間を誘導するために、道しるべフェロモンを出しながら歩きます。仲間のシロアリは、この道しるべフェロモンを頼りに、どのルートをたどるかを決めているのです。
また巣が壊された時や外敵が巣に侵入してきた時には、兵アリが警戒音や警報フェロモンと呼ばれる匂い物質を出して、仲間に危険を知らせます。兵アリはこの匂いに反応して興奮状態になって集まり、ワーカーは一目散に巣に戻って、巣の修理にとりかかることになるのです。なかには、道しるべフェロモンを大量に出すことで仲間を巣の修理に駆り立て、警報フェロモンのように利用している種類のシロアリもいるそうです。
このほか、シロアリが利用しているフェロモンには、異性に対して作用する性フェロモンや階級分化フェロモンがあります。前の項目で説明したように、階級分化フェロモンは複雑なシロアリの社会を維持するためのカギとなるフェロモンです。いずれのフェロモンも、シロアリが生活を維持する上で、なくてはならない大切な働きをしています。
日本に住むシロアリは?
現在、日本には21種類のシロアリがいるといわれており、その大半は住宅に被害を与えることはありません。それどころか、自然の中では、枯れた木や落ち葉などを食べて土壌を改良してくれる益虫なのです。日本で住宅に被害を与えているのは、主にイエシロアリとヤマトシロアリの2種類のシロアリです。
では、ほかにどんなシロアリがいるのでしょうか?日本に生息しているのはレイビシロアリ科、オオシロアリ科、ミゾガシラシロアリ科、シロアリ科の4つの科に属するシロアリで、そのほとんどが琉球列島と日本海流沿いの海岸域に分布しています。
レイビシロアリ科のシロアリでは、沖縄の八重山地方に住む比較的大型のコウシュウシロアリのほか、カタンシロアリ、ナカジマシロアリ、サツマシロアリなどがいて、立木の枯れた部分から侵入して巣を作ることが知られています。また乾材シロアリと呼ばれるダイコクシロアリの一種や、侵入種のアメリカカンザイシロアリ、小笠原にいる土着種のハワイシロアリなどがこの仲間です。
オオシロアリ科にはオオシロアリがいて、奄美大島から鹿児島にかけて分布しています。このシロアリは長らく日本のみにいる種だと思われていましたが、最近になって中国や台湾に分布している種と同じ種だということがわかりました。
ミゾガシラシロアリ科には、家屋に食害をもたらすイエシロアリとヤマトシロアリが含まれています。イエシロアリは関東地方が生息の北限とされていますが、屋内ではさらに北部でも生きられるようです。また、本来は中国から日本にかけて分布する種でしたが、現在では人の活動に伴ってハワイ、アメリカ、南アフリカなどにも広がっています。また、ヤマトシロアリの仲間は世界的に見ても最も北に分布している種類で、北海道にまで住んでいて、イエシロアリにつぐ家屋害虫として知られています。
シロアリ科には、木の上に丸い巣を作るタカサゴシロアリや、土の中に小規模なコロニーを作るニトベシロアリ、ムシャシロアリなどがいます。キノコシロアリの仲間のタイワンキノコシロアリもこの仲間で、日本産のものは地中に巣を作り、キノコを栽培することで知られています。沖縄では、梅雨時期にこのシロアリの巣から伸びて地上に生えるオオシロアリタケを「ジーワイ(地割り)」と呼んで食用にすることがあるようです。味は大変おいしいものの、まず市場には出てくることのない、たいへん珍しいキノコなのだそうです。
日本全国の住宅に加害するヤマトシロアリ
ヤマトシロアリは北海道北部を除く、ほぼ日本全土に分布するシロアリです。寒さに強く、近年では住宅の断熱性能の向上や地球温暖化の影響により、北海道北部でも発見されています。体の色は若干黒みを帯びており、茶色に近い個体もいます。体長は10ミリ前後です。
ヤマトシロアリは自分で水を運ぶ能力がなく、コロニーも小さいため、被害の範囲が比較的小さく、地面から1メートル程度の高さ以下に限定されるといわれています。ただし雨漏りで柱に湿っている部分がある場合など、それよりも高い場所で被害が発生することもあります。
とはいえ、最近の研究によってヤマトシロアリの女王アリは自分のクローンを産み、何頭にも増えることがわかっています。時には数百頭の女王アリを持つコロニーもあり、こうなると住宅を大規模に加害することになります。
参考シロアリの寿命は長く王アリは100年生きる可能性も!その生態とは?
西日本中心に深刻な被害を与えるイエシロアリ
イエシロアリは温暖な環境でのみ生息できる種類で、千葉以南の本州南岸で発見されています。紀伊半島から四国・中国地方、九州・沖縄など、比較的温暖な地域に多く分布し、住宅に甚大な被害を与えています。
イエシロアリは自ら水を運ぶ能力を持っているため、建物の1階だけでなく2階以上や屋根裏など、建物全体に被害を与えます。ヤマトシロアリに比べると体色は黄色味が強く、体長は少し大きく12ミリから15ミリ程度です。
ヤマトシロアリのコロニーは2~3万頭程度で作られるのに対して、イエシロアリのコロニー内の個体数は100万頭にもなることがあります。数が多ければそれだけ食べる量も多くなり、家屋への食被害のスピードも速くなります。
被害が拡大しつつあるアメリカカンザイシロアリ
アメリカカンザイシロアリはアメリカ原産のシロアリで、1976年に東京都江戸川区に定着しているのが確認されました。輸入木材や家具など、海外の木製品とともに運び込まれたと考えられている侵入種で、現在では宮城県から沖縄本島まで、点々と生息が確認されています。その名の通り、水分の少ない乾材でもかまわずエサにしてしまうため、今後、大きく被害が拡大するのではないかと注目されています。
乾燥に極めて強く、新しい建築物をはじめ、畳、家具、ピアノなどに加害している例もあるようです。コロニーが小さく、点在することから、生息場所の早期発見が難しく、駆除の難易度が高いシロアリだともいわれています。
シロアリをどう防ぐか? 予防の考え方は?
平安時代初期に書かれた最古の説話集『日本霊異記』には、「仏像の首が蟻にかみ砕かれた」という記述があり、これがシロアリの食害について書かれた最初のものだとされています。日本人が昔からシロアリに悩まされてきたことは間違いありませんが、シロアリの被害調査や対策が始まったのは意外と遅く、明治中期以降になってからだといわれています。
シロアリの食害を防ぐために自分でできることといえば、建物の周りに古い木材や枯れ木の枝、ダンボールなどシロアリのエサになるようなものを置かないこと、また木製の杭・柵などを使わず、なるべくシロアリに食べられないような金属製の柵を使うなどの工夫です。
一方、最近の新築木造住宅では、土台や根太などに加圧注入材というシロアリを防ぐ薬剤の処理を行った材木を使うことで、シロアリの被害を防いでいます。また、それ以外にも安全で効果的な薬剤の開発など、さまざまな新しい技術が登場しており、長い長い人間とシロアリの戦いが終わる日も近づいているのかもしれません。
参考シロアリ予防ガイド。どんな家が危ない? 自分でもDIYで工事できる?
天敵でシロアリを駆除することは可能?
個々のシロアリは弱い生き物で、なおかつ栄養も豊富なため、多くの動物の餌になります。特に羽アリはカエルやヤモリ、クモなどが好んで捕食します。また黒蟻がシロアリの天敵だということも、よく知られています。
こういった天敵によって害虫を防除することを生体防除といって、専門に研究している人もいます。
しかし、いったん命がけの結婚飛行を終えて巣を作ったシロアリを天敵で駆除することは不可能でしょう。詳しくは以下の記事で解説していますので、興味がある方はぜひ読んでみてください。
参考シロアリの天敵とは? 黒蟻やクモなど身近な生き物が天敵だった!
ここからは、シロアリを自分で見つけたり予防する方法を考えていきます。
シロアリは土の下から侵入してくる
シロアリは普段、温度変化が少ない地面の中に生息しています。コロニーと呼ばれる巣を形成して集団生活を送りながら、エサを求めて地下通路を作り、床下から家屋へと侵入してきます。
イエシロアリやヤマトシロアリなど、一般的なシロアリは乾燥に非常に弱く、光や風を嫌うため、土の上に出ると蟻道(ぎどう)という自分たち専用のトンネル状の通路を作ります。これは、土や木材のカスにシロアリ自身の分泌物や排泄物を加えて練った蟻土(ぎど)という素材を使って作るもので、体のやわらかいシロアリを乾燥や外敵から守る効果があります。シロアリはこつこつと蟻道を延ばしながら、目的の木材にまで侵入していくのです。
ではどんな家でシロアリ防除工事が必要なの? という点は、以下の記事で解説しています。
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シロアリの発生時期。羽アリが飛ぶのは4月~7月
シロアリの羽アリが飛ぶ時期は、種類によって違っています。地域により多少異なりますが、ヤマトシロアリの場合は4月中旬から5月下旬にかけての日中に、羽アリが飛びます。
それに対してイエシロアリは6月から7月の、夕方から夜間にかけて羽アリが飛びます。夜、室内の電灯の明かりにたくさんの羽アリが集まってくるところを見たことがある方もいると思います。その羽アリの色が、比較的白みの強い黄色系であれば、イエシロアリの可能性があります。
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自分でできるシロアリの見つけ方とは?
シロアリの被害は、知らない間に進んでいることがほとんどです。まずは自分でこまめにチェックして、大切な住まいを守りましょう。では、具体的にどんなところを見れば、シロアリの被害が発見できるのでしょう? ここではいくつかのポイントを挙げてみます。
まずは、庭の杭などを抜いてみて、家の外周にシロアリがいないか確認しましょう。同様に古い材木やダンボールなどが落ちていれば、撤去しながら観察してみてください。
家の中では壁や柱を叩いてみて、空洞音がしないかを確認します。この時、ポコポコと虚ろな音がした場合は、すでに被害が広がっているかもしれませんので注意が必要です。特にシロアリが好む水回りは念入りにチェックしてください。また、これまでスムーズに動いていたドアや開き戸が、動かしにくくなっていると感じたときも注意信号です。
目で見てわかるサインとしては、フローリングの隙間などに細かい木くずが出ていないかどうか、床下に蟻道ができていないかなどがチェックポイントです。特に玄関まわりは被害が発生しやすい傾向にあるので、よく観察しましょう。床下点検口があれば、ライトで照らして調べてみるといいでしょう。
イエシロアリは地下に巣を作るため、食べた木材そのものを巣にするヤマトシロアリに比べて見つけにくい傾向があります。上記のようなチェックをしてみて、少しでも不安がある場合は、早めに専門の駆除業者を利用するのがお勧めです。最近は無料調査に応じてくれる業者も多いので、相談してみるのもいいでしょう。
詳しくは以下のリンクを参照してみてください。
参考シロアリ予防ガイド。どんな家が危ない? 自分でもDIYで工事できる?
「とりあえずゴキブリ用の殺虫剤をかける」は厳禁です
シロアリはゴキブリの仲間だから、ゴキブリ用の殺虫剤で駆除できるのではないかと考える方もいると思います。確かに、目の前のシロアリに殺虫剤をかけると、その部分だけはシロアリがいなくなります。しかしこれは絶対にやってはいけないことで、シロアリ駆除業者は推奨していません。
殺虫剤は、直接それを浴びたシロアリを死滅させることはできますが、それ以外の大多数の個体は駆除できません。むしろ驚いたシロアリが警戒して逃げてしまうため、巣や女王アリが見つけにくくなり、全くの逆効果になってしまいます。シロアリは非常に警戒心が強い昆虫なので、一度攻撃を受けるとコロニーの場所を変えたり、通り道を変えたりしてしまい、さらに駆除が難しくなるケースがあることを忘れないでください。
シロアリを見つけたときの対処法としては、まず専門の駆除業者に相談することが賢明です。すぐに殺虫剤をかけたくなる気持ちもわかりますが、グッとこらえて専門家に任せましょう。
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シロアリ対策インデックス 沖縄から大阪に引っ越したタイミングで「シロアリ防除をしなければ」という話になりました。しかし、 ...
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今アツい!イチオシの研究者はこの方
ここからは私のイチオシ研究者を紹介します。京都大学の松浦健二先生がその人!
シロアリに関する文献を調べていくと、2000年以降新発見が続いていることがわかります。そのなかで「すごい」と思う発見・研究はだいたいこの人。昆虫生態学者の中で、当サイトの推しメンです。
たとえばヤマトシロアリの女王が単為生殖で「自分のクローンを産んでいる」ということをつきとめたのも松浦先生。野外調査では、1頭の王アリに対して676頭の女王がいるコロニーを見つけたりしています。
参考「シロアリの単為生殖による女王位継承」京都大学昆虫生態学研究室
そして今やってる研究も限りなく熱いテーマ! 王アリがなぜこんなに長生きなのか、老化しない理由に迫ろうとしているそうです。
科学を通して哲学を問い直したという点もすごいですよ。アリストテレス以来2400年ぶりくらいにメタフィジクスはメタなんだぜという問いかけもしています。めちゃめちゃ「知」を感じるお方です。
参考文献
山野勝次「昆虫学講座第3回 シロアリ目」『文化財の虫菌害第60号』
今村祐嗣、角田邦夫、吉村剛(2000)『住まいとシロアリ』(青海社)ISBN4-906165-84-2
吉村剛、板倉修司、岩田隆太郎、大村和香子、杉尾幸司、竹松葉子、徳田岳、松浦健二、三浦徹(2012)『シロアリの辞典』青海社 ISBN978-4-86099-260-6
松浦健二(2008)『シロアリの社会生態に関する総合的研究』