2024年6月現在、沖縄県、広島県、石川県、宮城県にシロアリが多発しています(シェアリングテクノロジーのシロアリ発生指数による)。
古い木造住宅だけがシロアリの被害にあっているイメージがありますが、実際には鉄筋コンクリート造や軽量鉄骨造の住宅でも、場合によってはマンションでもシロアリの被害は発生しています。どんな住宅であっても、木材を使用している以上シロアリの被害は避けられません。
チェックポイント
- 構造にかかわらずどこかしらに木は使われていることがほとんど
- シロアリはコンクリートに穴をあける場合がある
- マンションもシロアリの被害にあう
ここでは鉄筋コンクリート造や軽量鉄骨造の住宅やマンションではどこが被害にあいやすいか、シロアリ被害にあいやすい場所と理由を解説します。
鉄筋コンクリート造以外の建物については以下の記事で解説しています。木造住宅の方はそちらを参照してみてください。
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鉄筋や鉄骨造でもシロアリ被害発生!
木造と違って建物を支えている構造部分は無事なことがほとんどですが、意外と深刻な被害を受けている住宅が多かったことを覚えています。
- 鉄筋コンクリート住宅は湿気がこもりやすいケースが多い
- 「RCだから大丈夫」と油断している人が多い
- RCだと長持ちするので古い住宅が多く設備も古い
以上のような理由で、鉄筋コンクリート住宅でも大きな被害が発生しています。
鉄骨造(S造)でも同じ事がいえます。
この写真のような状態になると、鉄筋コンクリートの住宅でも、内部はすべて作り直しになってしまいます。リフォームには数百万円の費用がかかってしまい、場合によっては建て替えとコストがかわらないこともあります。
鉄骨造や鉄筋コンクリート造の家でもシロアリ被害にあう
ですから、鉄筋コンクリート造や鉄骨造、軽量鉄骨造だからシロアリの被害にはあわないというのは間違いです。木造でない住宅も油断はできません。
鉄筋コンクリート造の住宅は、実は木造建築に比べて湿気がこもりやすい特徴があります。湿気がこもってしまうため、一度シロアリが入ると木部を荒らされてしまうことが多いといえます。
また、木造建築では法律によって防虫処理が義務づけられていますが、鉄筋コンクリート造の住宅では義務化されていません。
メモ
建築基準法施行令で、木造住宅の場合は「地面から1メートル以内の部分にシロアリその他の虫による害を防ぐための措置を講じなければならない。」と定められています。しかし、鉄筋コンクリート住宅の場合にはそのような規定がなく、建築時に防虫処理が行われていない可能性があります。防虫処理が行われていない点も鉄筋コンクリート住宅でシロアリの被害にあう理由のひとつとなっています。
特に古い鉄筋コンクリート住宅の場合は床下にコンクリートを打設せず、土がむき出しになっているケースがよくあります。こういった住宅ではシロアリ被害をよく見かけます。いわゆる布基礎の状態で施工されています。
布基礎とは、地面に逆T字型のコンクリートを打ち込んで建物の基礎とする工法です。ベタ基礎と違い、一本のレール状の基礎で建物を支えます。また、床下が土のままなので、シロアリが侵入しやすいというデメリットがあります。
シロアリはコンクリートに穴を開ける
シロアリの侵入経路として多いのは、床下を経由して入ってくるというパターンです。土の中に巣を作っているシロアリが蟻道を伸ばして床下に侵入し、根太や梁などの木部を食べてしまいます。
ほとんどの場合シロアリは硬いコンクリートを迂回するように蟻道を伸ばし、地窓や基礎パッキンの間から床下に侵入します。
しかし、コンクリート部分を迂回する以外にも侵入方法があります。実はシロアリはコンクリートに穴を開けることがあるのです。
インターネット上の記述では「コンクリートを溶かす能力がある」と書かれていることがありますが、それは間違いです。実際にはシロアリはコンクリートの砂粒一つ一つを強力なアゴで外していき、最終的にコンクリートに穴を開けてしまいます。
(ポイント)「シロアリが酸性物質を分泌してコンクリートを溶かす」はウソ。
シロアリの体は柔らかいですが、アゴだけが角質化して著しく硬くなっています。
コンクリートだけでなく電線など何でも穴を開けてしまうシロアリ
シロアリは蟻道を作って目的の場所へ進んで行きます。目的の場所への途中に障害物があれば、強いアゴの力でその障害物に穴を開けて掘り進んでいきます。
室内に電気を供給する引込線などの電線も被害にあうことも知られています。一般的な電線のビニール製の被覆の場合、シロアリに対抗することができず表面に穴をあけられてしまいます。ビニール製被覆の電線に穴があき、火災につながる事故が起きたことも報告されています。
「消防防災の科学」に北九州市消防局が寄稿した報告によると、平成28年6月にシロアリの被害が原因となった建物火災が発生しました。
この建物火災は木造住宅の事例ですが、トイレ付近に長年シロアリが住み着いて大きな巣を作り、電線がその巣の中に取り込まれてしまったということです。電線の表面はシロアリによって穴を開けられており、たまたまシロアリ駆除をしたときの薬剤が穴の開いた電線に付着したことでトラッキング現象を起こし、火災が発生したそうです。
こうした事例に対応するために、電線メーカーは比較的低価格でありながらシロアリにかじられても強い電線を開発したりしています。
最近は新防蟻材料を被覆に用いたシロアリ対策ケーブル『ありタフ!』などが販売されています。『ありタフ!』は①ナイロンと同等以上の防蟻性能をもち、②ナイロンほど材料価格は高くなく、③低摩擦性を有した、シロアリに強い製品となっています。
木造以外の建物で被害にあいやすい場所
鉄筋コンクリート造の住宅であっても、意外と多くの木材が使われています。
床や床下、柱、壁、天井にも木材は使われている
特に木材がたくさん使われているのは床と床下です。鉄筋コンクリート造の住宅は通常は木材の根太の上に捨て貼りの板を貼り、その上に仕上げの床材を貼っています。
またその他にも柱や壁、天井の材料にも木材が使われています。
無垢の木材に比べて、パーティクルボードなど最新の住宅用建材は若干シロアリに強いと考えられます。それでも結局は木質系の材料なので、最新の住宅用建材であってもシロアリの被害にあいます。木材にスチレン樹脂などのプラスチック系素材を注入した複合材は、シロアリはあまり好きではないようですが、それでも被害にあっている事例が報告されています。
パーティクルボードとは、木材の小片に接着剤を噴霧して堆積したマットに熱と圧力を加えて成型した板状の材料です。JIS規格(日本工業規格)
湿気がこもりやすい場所は被害にあいやすい
鉄筋コンクリート造住宅でよく被害にあっているのは、台所や洗面所などの水回り付近の床下です。また、日の当たらない北側部分の床下なども被害にあいやすい場所です。どちらも湿気がこもりやすく、シロアリが好む場所となります。
木材が使われている場所はシロアリに注意が必要
木造住宅と同じく、玄関周りもシロアリの被害にあいやすいといえます。
鉄筋コンクリート造の住宅は木造住宅に比べてシロアリのエサとなる木材が少ないせいか、床上の家具や作り付けの下駄箱なども被害にあっている例をよく見かけます。
断熱材にもシロアリの被害を受けやすいものと受けにくいものがある
床や壁の断熱材の種類によりシロアリの被害を受けやすいものと受けにくいものがあります。グラスウールの断熱材はシロアリの食害に強いのですが、発泡型の断熱材は比較的簡単にシロアリに貫通されてしまいます。
木造でも鉄筋コンクリート造でも同じですが、基礎断熱を施行している場合、スタイロフォーム等発砲型の断熱材の中をシロアリが通って蟻道を作り、木材に到達して被害を与える例が増えているそうです。
発泡系の断熱材の場合、断熱材そのものがシロアリにとって暖かくて住みやすい巣になってしまうという問題点も指摘されています。
鉄筋コンクリート造でシロアリの被害にあった場合、木造より軽微ですむ?
ケースバイケースで何ともいえませんが、鉄筋コンクリート造の住宅の場合、確かに構造を支える躯体部分に壊滅的なダメージはありません。
しかしシロアリに内部の造作を大幅に加害されてしまった場合、修繕には相当な費用がかかってきます。例えば内部の造作全てが被害にあって、フルリフォームをするとしたら、1,000万円単位の予算がかかってくる可能性もあります。
鉄筋コンクリート造だから安心、と考えるのは間違いで、鉄筋コンクリート造や鉄骨造であってもシロアリへの対策は必要であるといえます。
場合によっては、鉄筋コンクリート住宅であってもシロアリ被害のために建て替えをするケースもあります。
鉄筋コンクリート造や鉄骨造の場合は早期発見をすることで木造に比べると被害を軽微に抑えられる可能性があります。シロアリが気になったら、無料の調査を依頼してみることをおすすめします。
参考シロアリ110番……全国対応。調査は完全無料でOKです
シロアリの駆除・予防の費用相場については、下記の記事で解説しています。
参考シロアリ駆除の方法と費用は?料金と相場&おすすめ発注方法
アメリカカンザイシロアリはマンションでも被害が発見されている
アメリカカンザイシロアリは1976年に東京都内で初めて発見された外来種で、筆者がよく参照している『シロアリの事典』には、次のように書かれています。
乾材シロアリはその名前の通り乾燥した木材中に深く穿孔して生活し、地下生息性シロアリとは全く異なり土壌との接触は持たない。その被害の発見は容易ではなく、被害木に開けられた"Kick-out hole"から排出された俵状の乾燥したフンの堆積が唯一の兆候となる。
以下の写真はマンション4階に発生したシロアリ被害痕ですが、カンザイシロアリはこういった水分のない環境でも加害することができます。
一般にマンションはシロアリの被害にあいにくいですが、アメリカカンザイシロアリの被害にあう可能性は否定できないため、一定の注意が必要です。
また、アメリカカンザイシロアリの駆除方法は確立されておらず、もし被害にあっていることがわかった場合は、信頼性の高い駆除業者に相談した方がいいでしょう。
参考文献
今村祐嗣、角田邦夫、吉村剛(2000)『住まいとシロアリ』(青海社)ISBN4-906165-84-2
吉村剛、板倉修司、岩田隆太郎、大村和香子、松浦健二ほか(2012)『シロアリの事典』(青海社)ISBN978-4-86099-260-6
『消防防災の科学』「シロアリが引き起こす電気火災」