もっと高い査定額を出してもらいたい!
そう思う人ほどダマされています。
ウソ査定書がまん延していますが、なぜでしょうか?
最近はネットの不動産一括査定が増えすぎてしまいました。一度入力すると6~10社に査定書をもらえる便利なサービスです。
しかし、査定書を出す不動産業者は「なんとか仲介を取ろう」と必死です。
その結果、通常より高い査定額を出すウソ査定書が増えてしまったのです。
どうして「高い査定書がほしい!」と考えるのはダメなの?
実際より高いウソ査定書は簡単に作れます。でも、ウソ査定書をもとに正しい販売戦略を立てられません。
後で詳しく説明しますが、不動産業者が使う価格査定ソフトは「取引事例比較法」といって、①過去の取引データと、②査定物件を比較して査定額を出します。
- 過去の取引データ……事例として入力
- 査定したい物件……同じくデータ入力
- ソフトが指数化して比較……価格査定が出る
上のような仕組みなので、①の取引データをいじると値段を操作できます。
そして現在は高い査定書を出すと喜んで仲介契約(媒介契約)してくれるお客さんが多いため、多くの不動産業者が高いウソ査定書を出すようになってきました。
本来、査定書は「いくらで売れると予想される?」という推定値を出すものです。
高い査定書がいい査定書ではありません。正確な査定書がいい査定書です。
高く売るためには、いったん「正確な査定書」で正しい金額を知り、「どうやったら相場以上に売れるんだろう?」という戦略を立てる必要があります。
でもウソ査定書だと、その戦略が間違ってしまうのです。
そう考えると、高すぎるウソ査定書にはメリットがひとつもないのです。
おすすめは「簡易査定で業者の実力を見る」こと
では、ウソ査定書が多い現在、どう対処すればよいのでしょうか?
実は、ほとんどのオンライン査定サイトでは「机上査定(簡易査定)」と「訪問査定」を選ぶことができます。基本は机上査定にしておき、査定書を作ってから訪問してもらいましょう(リビンマッチでは選べません)。
机上査定 | 不動産を詳しく見ずに主にデータから査定額を出す |
訪問査定 | 不動産を実際に訪問して具体的に見てから査定(実査とも) |
こう聞くと机上査定はあてにならないのかな? と思いがちですが、違います。机上査定が訪問査定より大幅に不正確ということはありません。データから、意外に正確な数字を出せます。
私は不動産会社を経営してている時、数百通の価格査定書を書きました。その経験から「机上査定で十分」といえます。
土地の査定 | 机上査定でほぼ正確に金額を出せる |
一戸建ての査定 | 多少の誤差は出るが、目安として十分な査定ができる |
マンションの査定 | 誤差は出るが一戸建てより正確に出せる |
ほとんどの査定サイトや不動産業者は「査定依頼をする人のほとんどが『訪問査定』を選んでいます」といいますが、ウソです。
ここはサイト運営者が意図的にウソを書いていると思います。
私が不動産屋として利用していたのはイエイ、リビンマッチ、イエウール、リガイドです。10年で数百件の査定書を書きましたが、大半は机上査定を希望する査定依頼でした。
ですから、心配せずに「机上査定(簡易査定)」を選んでください。それで十分です。
そして査定書は「高いか安いか」で比較するのではなく、ちゃんと相場の価格を出しているかな? という点を見てみてください。
ポイントは2つです。
- 複数の査定書の取引事例を見比べましょう。どんな事例を使っているかな、というのは業者の誠意を表します。
- 自分でもざっくり価格を把握しておきましょう。今は、路線価や国交省のデータを利用すれば、自力で相場をつかめます。
査定書を複数もらうには、ネットの一括査定サイトを利用することになります。ただし、一括査定サイトには注意点もあります。不明点がある場合は、以下の記事が参考になります。
不動産屋だけが知っている一括査定の裏側と本当の使い方|関連記事
不動産の価格査定は「意外と不正確」だった!
一般的に、不動産業者の価格査定には「取引事例比較法」という方法を使うと説明しました。パソコンの査定ソフトに、まず同じエリアの類似物件の取引事例を入力し、それから査定したい物件のデータを入力します。
パソコンがその2物件をポイント化して評価し、推定価格を出してくれるわけです。
そこには、どうしても不正確になってしまう事情があります。
エリアによりますが「ここ数年で物件近辺に成約データがない!」ということは、田舎に行けばけっこうあります。
その場合、少し離れたエリアまで広げて取引事例を収集するので、その分不正確になってしまいます。
また、不動産の価格は毎年けっこう変動しています。「過去のデータを使うしかない」としたら、それもまた正確に査定できない原因になってしまいます(一応補正はしますが、完璧ではありません)。
このように、不動産の価格査定には、思ったより正確な価格を出せない裏事情があります。
現実には、不動産査定額よりだいぶ安く成約している!?
そこで、不動産の売出価格と成約価格のギャップから、不動産価格査定がどれくらい正確か調べてみましょう。
このグラフは公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が発表した「首都圏不動産流通市場の動向(2019年)」から引用しています。
これは首都圏中古戸建てのすべての登録データを集計した物ですが、売出価格と成約価格の間にかなりの差があることがわかります。
2019年に限ってみると、すべての事例(13,037件)の売出価格(平均)は3,827万円。それに対して成約価格(平均)は3,115万円です。約2割ダウンして成約していることがわかります。
多くの場合売出価格は査定額にもとづいていますから、ここからも「査定額が高すぎるのではないか?」ということが推測できます。
唯一「正確な査定」を打ち出す三井のリハウス
そんな中、もし信頼できる査定を出してくれる業者を1つだけあげるとすれば、三井のリハウスになるでしょう。下記の公式サイトでも確認できますが三井不動産リアルティ(三井のリハウス)は、正確な価格査定を打ち出しています。
上のグラフはリハウスの価格乖離率です(公式サイトのデータに基づいて作成)。平均的な不動産業者が8割以下で成約している中、リハウスでは76%のケースで査定額(提案額)の95%以上で売却できていることがわかります。
三井のリハウス|公式サイト
また、65%の人が2か月以内に売却できている点も重要です。リハウスでは、正確な価格をもとに短期間で、値引きせずに成約していることがわかります。
不動産業者がこういう仕事をしてくれると、売主としてはかなり楽に売却活動を進めることができます。
参考:不動産価格査定には様々な手法が存在します
不動産業者(宅建業者)の価格査定では、主に「取引事例比較法」が使われているという点は、すでに説明しました。
ここから先は詳細を覚える必要はありませんが、不動産の価格査定には、他にもいくつかの方法があるということは知っておいたほうがよいでしょう。
たとえば、不動産投資をする時などは、取引事例比較法だけで判断できません。
収益還元法
不動産投資をする時には「その物件が将来どれくらい稼いでくれるかな?」という、収益に着目した方法で判断する必要があります。
ものすごくざっくりいうと、収益還元法の不動産価格は、その物件の1年間の収益をキャップレート(還元利回り)で割ると出すことができます。
収益価格(不動産の価格) = 年間の純収益 ÷ キャップレート
キャップレートを超ざっくりいうと、その物件の近くの類似物件がどれくらい利回りを上げられるか(稼ぐ力を持っているか)という数字です。
キャップレートを出すのはかなり難しいので、とりあえず「ほー、そういうものがあるか」という感じでOKです。
再調達原価法
再調達原価法(原価法)というのは、更地にもう一回この建物を建てたらいくらになるの? という数字を出す方法です。
不動産価格 = もう一回建てた場合の価格 - 建物が古くなった分の金額
というふうにして、金額を求めます。
再建築した場合の価格を元に計算するので、建物にしか使えません。不動産業者が使っている価格査定ソフトは、この手法を簡略化した手順で建物価格を出しています。
建築の専門家が積算した数字に比べるとアバウトですが、中古市場での相場価格を出すならそれで間に合います。
不動産を売る時、消費者にとって意味のある情報源とは?
不動産を売却したい時、本当に必要な知識は、それほど専門的なものでなくても問題ありません。
参考書籍を1冊上げるとしたら、絶版ですが、以下の本は非常によくできています。その家の値段が、どうやって決まるのか? わかりやすくまとめられています。
絶版とはいえ、今のところ古書が100円(送料別)くらいから買えるので「何か1冊読んでおきたい」という場合は買ってみてください。かなりおすすめの本です。
ネットで閲覧できるデータとしては、国土交通省の「土地総合情報システム」がおすすめです。
- 不動産取引価格情報検索
- 国土交通省地価公示・都道府県地価調査
という2つのコンテンツがあり、いずれの情報も、不動産のプロでも利用しているものです。売却する物件の近くのデータを閲覧しておけば、自分でも物件価格をざっくり把握することができます。