不動産を売却した時の手数料・諸費用の合計は、売買金額の約5%前後がめやすです(注1)。ただし売却益(儲け)がでた場合は、譲渡所得税が高額になりがちです。
仲介手数料 | 物件価格の3%+6万円(+税) |
登記費用 | 数万円くらいが多い |
収入印紙 | 1~2万円が多い |
譲渡所得税 | 売却益が出たら「儲け」に対して2~4割 |
その他 | 場合によって測量費用や上物解体費用が発生 |
ざっくり上の表のようなイメージです。細かい内容は、この後くわしく見ていきましょう。
注1……購入時は売買金額の1割程度といわれます
家を売る時必要な「不動産仲介手数料」を深掘り
記事冒頭で不動産仲介業者に支払う仲介手数料の額は、売買金額の3% + 6万円に消費税を加えたものと説明しました。ただし例外もあります
また、3%+6万円というのは「速算法」といって簡単に答えを出すための計算式です。正確には、仲介手数料の上限額は、以下のように定められています。
売買代金 | 媒介報酬(仲介手数料) |
200万円以下の部分 | 取引物件価格(税抜)×5%+消費税 |
200万円を超え400万円以下の部分 | 取引物件価格(税抜)×4%+消費税 |
400万円を超える部分 | 取引物件価格(税抜)×3%+消費税 |
仲介手数料(報酬)の額は宅地建物取引業法第46条に、「国土交通大臣の定めるところによる」と決められています。
それを受けて作られたのが「昭和45年建設省告示第1552号」です。この告示は改定を重ねながら現在も使われており、最終改定は令和元年10月1日。この時、400万円以下の宅地又は建物の取引について、売主から受け取ることができる仲介手数料の上限額が18万円+消費税に改められました。
ポイント
400万円以下の物件は、低廉な土地・低廉な空き家等と分類され、売主からは一律18万円の報酬を受け取ることができるようになりました。
さらに詳しく説明すると、報酬+調査費用相当額合わせて18万円+消費税と定められています。
仲介手数料以外に必要な手数料・諸費用など
ここまでで、仲介業者に支払う仲介手数料は物件価格の3パーセント強ということがわかりました。しかし不動産の売買については、他にも必要な費用があります。それらをあわせて、手数料・諸費用の合計は物件価格の約5%~となります。
ほぼ必ず必要となる費用から先に説明しましょう。
登記費用と司法書士報酬を整理
一般的には、不動産の売買において、所有権の移転費用は買主が負担します。買主は「登記権利者」ですから、自分の名義にするために登記費用を負担するのは当然という考え方によります。
しかし地域によって例外があります。遠方の不動産業者と取引すると、思わぬローカルルールに驚かされることが少なくありません。
登記費用には注意したいローカルルールがある
通常、不動産の登記名義を買主に移転する「所有権移転登記費用」は、買主が負担するものです。しかしエリアによっては、その一部を売主も負担するというローカルルールがあります。
たとえば大阪府の一部では、所有権移転登記費用の一部を売主が負担するという習慣があります。沖縄県では、所有権移転登記費用を折半する、というルールがあります(このルールはかなり珍しくなってきました)。
こういったローカルルールは他の地域でも存在するかもしれません。そこで、早い段階で一度、司法書士などの専門家に尋ねておくといいと思います。
住宅ローンを借りていた人・完済した人は抹消費用が必要
住宅ローン返済中の場合は必ず、売買と同時に現在融資を受けている金融機関の抵当権を抹消する、抵当権抹消登記申請が必要です。すでに住宅ローンを完済したという人でも、まだ抵当権の抹消をしていない場合は、売買と同時にその抵当権を抹消する登記を申請します。
所有権移転登記と違って、抵当権の抹消登記は売主の責任で行う必要があります。費用は以下の通りです
登録免許税 | 不動産1つにつき1000円 |
司法書士報酬 | 一般的に2万~3万円くらい |
登録免許税は不動産1つにつき1000円です。一戸建ての場合は土地と建物それぞれにつき1000円かかるので2000円ということになります。マンションであれば1000円です。
司法書士報酬は自由化されているので、上の表と異なる報酬規定を設けている可能性もあります。
ポイント
住宅ローン返済中の場合は、不動産を売却したお金で金融機関に一括返済することになります。この時繰り上げ返済手数料がかかることがあります。
キャッシュで買った等、制限物権(抵当権など)がない人
住宅ローンを組まずに家をキャッシュで買った人や、ローンを返済してなおかつ抵当権抹消登記もすませている人は、この時点で他に登記関係の費用はありません。
ただし、ずっと昔にローンを完済した、という場合は「抹消書類」の手配に注意してください。「抹消書類」というのは金融機関から「ローンは完済したので抵当権を抹消していいですよ」という意味で出してもらう書類で、これがないと抹消登記ができません。
まだ存在している銀行ならいいのですが、どこかの銀行と合併して消えてしまっている銀行などもありますので、早めの手配が正解です。
売買契約書に貼る印紙税(収入印紙)はいくら?
不動産を売買するときには契約書を作成します。契約書には定められた印紙を貼る必要があります。一般的には売主と買主2通の売買契約書を作り、各自が保管します。
この2通それぞれに収入印紙を貼る必要があるのですが、もし売主と買主どちらかが収入印紙を貼らなかった場合、実は、売主・買主が連帯して納付する責任を負うことになります。この点は注意が必要です。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
これは現在(2021年5月)の税額です。平成26年4月1日から令和4年3月31日までに作成される不動産売買の契約書については、軽減税率が定められており、上の表右列はその軽減税率にもとづく金額です(租税特別措置法)。
なお、10万円以下の売買であれば収入印紙は不要です。
注意!譲渡所得税は高額になる場合もあり
不動産を売却することを、法律の用語では「譲渡する」といいます。譲渡所得税とは、不動産を売って儲けが出た場合、その儲けに対して賦課される税金のことです。
長期譲渡 | 売却した不動産の所有期間が5年を超える | 儲かった金額の約2割 |
短期譲渡 | 売却した不動産の所有期間が5年以下 | 儲かった金額の約4割 |
長期譲渡と短期譲渡を分ける「5年」の数え方には少し細かいルールがありますし、税率も厳密にいうともう少し複雑な数字になります。
そこでもし不動産を売却して利益が出そうだという人は、以下の記事も併せて読んでみてください。
買い手との交渉により測量費用が必要な場合も
不動産の売買には、公募売買と実測売買の2種類があります。
公募売買というのは、登記簿に書いてある面積を信じて売買し、「後になって登記簿の面積が実際の土地の広さと違うと分かっても、売主・買主お互いに異議を述べない」という契約のしかたです。
地方に行くと土地の単価が安いためか、境界については比較的おおらかです。古い境界標が残っていたら「それを信じて売買しよう、測量はいりません」と言う買主も多く、境界の測量が省略されることもよくあります。
実測売買の場合、売主は測量をして土地の境界を明示した上で、測量によって確定した面積に基づいて金額を出して売買します。
土地の単価が高い都心部では境界が少しずれるだけで大きく金額が変わってしまう可能性があります。そこで、契約上も、売主があらかじめ境界を明示して安心して売買できるようにしようという取引が主流です。
ちょっとややこしいのは、公募売買であっても測量しなければいけないケースがあることです。公簿売買であっても、厳密にいえば売主は境界を明示する必要があります。境界を明示しないと「どこからどこまでを売っているかわからない」ということなので、売買の目的物を特定できていない、ということになるからです。
そこを厳密に考える買主であれば「公簿売買であっても測量はしてください」と主張するかもしれません。
ポイント
測量が必要な場合に、どの測量事務所に発注するかを不動産会社にまかせてしまう人も多いですが、慎重に考えてください。測量費用は事務所によって大幅に違うからです。特に土地家屋調査士の資格を持っている人は高く、土地家屋調査士資格を持たない測量事務所は、比較的低価格で測量してくれる傾向があります。
一戸建てなどを土地として売る時は上物解体費用に注意
契約の内容次第ですが、上物が立っている物件を「土地」として売却し、なおかつ契約上「更地渡し」となっている場合には、売主が上物を解体してから引き渡すことになります。
上物の解体費用は、そこそこ高額になる場合が多いです。価格帯としては100万円以上になるのが普通なので、更地渡しにするか現況渡しにするかは売出しをする前にしっかりと検討して決めておいてください。
その際、上物の解体費用を算出する便利なツールとしては、以下のサイトがよいと思っています。
参考解体無料見積ガイド……解体工事見積りを公開
(社)あんしん解体業者認定協会が運営する上記サイトでは、業者を紹介するだけでなく、その後の見積りや施工事例も管理。過去の工事記録7万5千件以上を保管・管理するなど、運用方法にも信頼感があります。
まとめと家を売る時に参考になるおすすめ記事
不動産を売却する時の諸費用・手数料等は、購入する時より若干安く、おおむね売買価格の5%前後です。
ただし、特に注意したいのは「譲渡所得税」で、売却益(不動産を売った利益)が出た時は比較的高額の税金が課されます。
譲渡所得税に関しては、以下の記事を参照して「どれくらい課税されるか」を計算しておき、翌年の確定申告で申請するようにしてください。
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