家を売り出しているのになかなか成約しない、なかなか売れないという場合、その理由は3パターンに分類することができます。
CASE1 | 仲介している不動産会社に問題がある |
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CASE2 | 売主自身か物件に問題がある |
CASE3 | 物件を取り巻く環境に問題がある |
この記事では不動産が売れない理由をさらに細かく整理していき、その対処法を考えます。
売れない不動産はありません。
私が不動産会社を始めたばかりの頃、大先輩のおじいちゃん社長に言われた事があります。
「売れない不動産はない。」
これは今でも心に残っています。
その後10年間不動産会社を経営してきて大先輩のおじいちゃん社長が言うことは正しいと実感しました。売れない不動産はありません。ただし値段や売り方には様々な工夫が必要です。
不動産屋に問題があるケースの対処法
まず最初に不動産屋に問題があるケースについて細かく見てみましょう。ざっくり分けると
- 不動産屋に悪意があって売却が進まない
- 不動産屋の能力が低くて集客がうまくいっていない
の 2つに分けることができます。特に注意したいのは不動産屋に悪意があるケースです。
囲い込み行為にあうと物件が売れにくくなる
不動産屋に悪意があるケースで代表的なものといえば囲い込み行為。囲い込み行為とは、動産屋が仲介手数料を最大化したいために、他の業者に紹介せず自社で情報を囲い込んでしまうことをいいます。
少し前に、法律で定められているレインズへの登録なども行わず物件情報を完全に隠してしまうという手法が横行しました。
最近は、手法がより巧妙になっています。
現在主流の囲い込み方はレインズには登録するものの、他社から問い合わせが来ても「もう申し込みが入っています」などと言って紹介しないというパターンです。
囲い込み行為について詳しくは下記の記事で解説していますので、気になる方はご参照ください。
参考不動産の囲い込み行為とは? 対策方法を含めて徹底解説しています
物件を囲い込まれると売却に時間がかかってしまいますし、最終的には売れ残って、買い取り業者に買い叩かれてしまうということもあります。
しかも大手不動産仲介業者ほどよく囲い込み行為をしているという、衝撃のデータもあります。詳しくは下記のリンクからダイヤモンド不動産研究所の記事を読んでみてください。
参考大手不動産仲介は「囲い込み」が蔓延?!住友不動産販売の「両手比率」は、62.75%!不動産売却時は「両手比率」が高い会社に注意を
物件を囲い込まれていないか確認する簡単な方法
レインズに登録しないという違法な囲い込み行為を受けている場合は、売主管理画面を見ることですぐに確認することができます。
仲介不動産業者に「レインズの売主向け登録内容確認画面に入るための ID とパスワードをください」と請求してみてください。
これで ID とパスワードを知らせてこない場合はレインズに登録をされず、囲い込まれている可能性が濃厚です。
レインズとは
レンジとは不動産流通機構のことで、国土交通大臣が指定する全国規模のデータベースです。全国の不動産屋が加盟しており、広く物件情報を配信しています。
参考レインズとは?……公益財団法人東日本不動産流通機構
不動産を囲い込まれていた場合の対処方法
不動産の囲い込みをするようなタイプの業者は、ユーザーの立場に立って営業してくれるとは到底思えません。すぐに不動産業者を変えた方がよいでしょう。
不動産業者を選ぶには、やはり不動産の一括査定を利用することになりますが、そこにも様々な背景や裏事情があります。できれば以下の記事を参照して、間違いのない一括査定サイトを選択してください。
参考デメリットから判断する不動産一括査定。個人情報を10万円で売るつもりで真剣に選べ!
不動産の一括査定サイトをいくつかピックアップするとしたら、マンションはマンションナビが優秀です。地方圏ならイエウールかリガイドがよいでしょう。
参考マンションナビ……マンションに強い業者を効率よく探せる
参考イエウール……地方でも査定対応業者が多い
参考リガイド……地方でデータ以上の存在感。おすすめ
不動産屋の能力が低くて売れない可能性も考えられる
例えば広告の物件写真に関しては、不動産屋によってものすごく温度差のあるところです。
物件写真や資料のデザイン・見せ方について興味がない業者は、暗くて印象の悪い写真や室内が散らかったまま適当に撮った写真などを平気で使用しています。
経験上不動産の物件写真については問い合わせの量をかなり左右します。それに気づいている不動産業者は小さな地元企業であっても、写真セミナーに参加したり、きちんとしたカメラ機材を揃えて見せ方に気を使っています。
これはひとつの例ですが、不動産屋の能力によって物件の問い合わせが大きく違ってしまうということはよくあります。
不動産屋の能力が低い・対応が悪いと感じたら
不動産屋を変えるのもなかなか面倒ですが、以下の流れで交渉してみれば、比較的スムーズに不動産屋を変えることができます。
前提として仲介は一般媒介契約で
一般媒介契約で2社か3社の不動産業者に仲介を依頼しておけば、囲い込まれることは絶対にありません。また、どれか一社の能力が低くても、残りの業者が頑張ってくれれば最終的にはちゃんと成約することができます。
一般媒介に変更する交渉
もしすでに結んでいる媒介契約が専任媒介もしくは専属専任媒介の場合は「長期化しているので一般媒介にさせてください」と交渉します。これはなかなか断ることができないのでスムーズに一般媒介に変更できるでしょう。
仲介業者を1社もしくは2社追加
ここまで不動産の売却活動してきて、不動産業者に対する見方もある程度固まってきていると思います。この経験を生かして新たに契約する業者を1社もしくは2社選びます。
不動産業者を効率よく探すには以下の記事がおすすめです。
売却活動を継続
ここまでの手順で、より信頼できる不動産業者を見つけられたはずです。その業者を中心に販売戦略を練り直し、売却活動を継続していきます。これまで信頼できなかった元々の不動産業者が急に頑張りはじめることもあり、媒介契約を見直す効果は実感できる場合が多いです。
この手順であれば自然に新しい不動産業者に売却を依頼することができます。
売主または物件自体に問題があるケースの対処法
不動産業者としてはズバリ指摘しにくいのですが、売主が希望する価格が相場に比べて大幅に高すぎるということはよくあります。
動産業者も一応は「価格が高いのではないか」と指摘するはずですが、あからさまに「あなたの不動産にそれほどの価値はない」と否定的なことを言うのははばかられるため、売主がはっきりと自分の値付けの間違いに気づかないというケースもあります。
値段が高すぎる可能性は考えておくべき
不動産屋の査定書に頼ることなく自分自身で自分の不動産の価格を把握しておく、というのは以下の2つのメリットがあります。
- 不動産屋が作るにウソ査定書に惑わされない
- 自分自身の相場観が間違っていないか確認できる
良心的な不動産屋は別として、とにかく仲介を取りたいという不動産業者は相場より値段が高いウソ査定書を出してくることがあります。不動産市場をよく調べていない売主であれば、自分の物件はこんなに高く評価されているのか、と喜んでその不動産業者に仲介を任せる事になります。
不動産業者としては相場より高いウソ査定書を出せばいいだけなので、非常に楽な営業ができます。
このウソ査定書の背景や見抜き方については以下の記事で詳しく解説しています。
そこで不動産の一括査定をする前に自己査定をしておくことをおすすめします。
自己査定をして自信を持って自分の不動産の価格を判断できれば、不動産屋のウソ査定書にだまされることがなくなりますし、自分自身の間違った相場判断によって売却のチャンスを逃すこともなくなります。
自分の不動産の相場を把握する方法
当サイトで無料の不動産査定ソフトを配布しています。特に土地の価格であればかなり正確に算出することができるので、ぜひ利用してみてください
国土交通省のデータベースに登録されている約120万件のデータを内蔵し、日本全国の土地価格を概算査定することができます。
それ以外にも一般に公表されている公的データを利用して不動産の価格を概算査定する方法がいくつかあります。
- 地価公示・地価調査のデータを利用する
- 路線価のデータを利用する
- 無料のオンラインサービスを利用する
- ネットの情報をエクセルなどで集計する
といった方法で不動産の価格をつかむことができます。めんどうですが、不動産売却時には自分自身の手で、自分の物件の価格を割り出しておくようにして下さい。
ネット広告を自分で集計する方法が実践的
地価公示は路線価などの公的データは、民間の不動産会社が取り扱う不動産の実勢価格とずれていることがあります。
そこで最も実践的なのはアットホームやSUUMO、LIFULL HOME'Sなどに掲載された実際の広告を見て、その価格を集計してしまう方法です。
そのポイントを考えてみましょう。
まず土地の値段を出しそれに上物価格をプラスする
たとえ売りたい物件が一戸建てであっても、まず土地の価格を算出します。それに上物価格を加えて土地・建物の価格を出します。
ここでは不動産ポータルサイトのLIFULL HOME'Sを使って価格を計算してみます。
物件広告から相場を出すLIFULL HOME'Sにアクセス
立地条件をある程度揃えるために市町村単位ではなく沿線の駅単位で物件を絞り込んでいきます。LIFULL HOME'Sの場合は「住まいを探す」と書いてあるトップページから、「駅・路線から」と書かれたアイコンをクリックします。
駅単位で物件情報をチェック
立地条件をある程度揃えるために市町村単位ではなく沿線の駅単位で物件を絞り込んでいきます。LIFULL HOME'Sの場合は「住まいを探す」と書いてあるトップページから、「駅・路線から」と書かれたアイコンをクリックします。
土地をクリックして自分の物件が立地するエリアを選択します。
駅からの距離に応じて物件を取捨選択
例えば大阪府阪南市にある私の自宅の場合、最寄り駅の南海本線鳥取三井駅から徒歩10分です。そこで、鳥取三井駅から徒歩8分から12分の間にある物件をピックアップします。
2021年7月29日時点、全部で10件のデータが登録されています。
エクセルに貼り込んで集計
絞り込んだデータをエクセルに貼り付けて集計します。
エクセルで集計するといっても、以下のようにごく簡単な内容でも十分実用になります。
上記のように集計した平米単価は、私の自宅周辺の相場とほぼ符合しています。とはいえある程度のブレはありますから、こうやって算出した土地価格に、弊社で配布している無料の査定ソフトの結果を照らし合わせて判断するのがおすすめです。
建物価格を概算する
建物価格については以下の記事内で、概算ソフトをダウンロードできます(Windwos10)。
参考ダウンロード……『フドマガ』ダウンロードページ
また、建物価格を概算する方法も解説しています。
参考自分でできる不動産査定。自宅や土地の大まかな値段を出す方法
自分の内覧時の対応に問題はないかも考える
買いたい人が現れて物件を案内するとき、不動産屋が最も苦戦するのは室内が散らかっているケース。これは意外とよくあります。
不動産屋はプロですから、たとえ室内が散らかっていても、きれいに片付いた状態の建物を想定して正しく価値を把握することができます。なので、訪問査定時には多少散らかっていても問題ありません。
しかし不動産の買い手は素人なので、判断は第一印象に左右されます。きれいに片付いていて第一印象がいいと、それだけで成約の可能性はアップします。
そのため、物件内覧時には可能な限り室内外をきれいに片付けておきましょう。それだけで不動産屋の営業力を1~2割アップできます。
アテブツにされてない?
不動産屋が本命物件を案内する前に、本命よりよくない物件を見せておくことがあります。この本命の前に見せる物件をアテブツといいます。室内が汚いとアテブツにされてしまう可能性もあります。
内覧時に買主との交渉をしてしまうのはNG
物件案内時に買主と話をする……だけなら問題ないですが、値段や条件の交渉をしてしまう売主さんがいます(けっこういます)。
しかしこれは避けてください。理由は3つあります。
- 案内前に不動産屋が買主に別の説明をしているかもしれない
- ワンクッション置いて不動産屋を介して回答した方が熟慮でき、失敗がない
- 本来不動産屋が責任を持つべき事まで責任を問われるかもしれない
①は不動産屋との事前打ち合わせ次第で解決できますが、②の問題は大きなポイント。たとえば価格についてもその場で返答してしまうより、後で不動産屋の意見も聞きながら、より成約につながりそうな返答をしたほうがよいでしょう。
また本来不動産屋がしっかり調査して重要事項説明書に書くような内容をポロッとしゃべってしまうと、後々の責任問題になりかねません。
仲介を依頼している以上、原則として仲介業者を介して話をするほうが安全かつ効率的です。
物件が古すぎたり立地が悪すぎる場合の対応
記事冒頭で書いた「売れない不動産はない」という格言(?)は、築古の物件や、立地が悪い物件にも当てはまります。
適正価格に設定し、時間さえかければたいていの物件はちゃんと売れます。
つまり、物件にネガティブな要素があっても、腕のよい不動産業者なら最終的になんとか売却してくれるということです。それを前提に、なぜ売れないのかを考えましょう。
適材適所の不動産業者に任せるべきケース
たとえば、市街地の新築・築浅住宅を中心に扱っている業者に、築古の古民家物件を売ってもらうのは無理があります。
そもそも古民家物件を探すお客さんが来店しないので、売却チャンスがかなり限られます。加えて、古民家に対する知識がないとしたら、自信を持って営業することもできません。
こういうケースでは古民家など特殊な物件に特化したタイプの不動産業者に依頼するべきでしょう。
東京R不動産などがその代表例です。
逆に、地方圏でマンションをほとんど扱わない不動産業者にマンション売却を任せるのも非効率的です。
参考マンション売却の手順と手続きはこれで完璧。必要書類のチェックリストもあります
築古物件や立地が悪い物件でも、そういった物件の売却を得意とする業者に任せれば、それだけで成約の確率は上がります。
立地が悪い場合の対処方法
立地の悪さには2通りあります。
- 交通不便な郊外で人気がない
- 災害などの危険がある立地
このうち②については次の章で考えていきます。ここでは①の交通不便な、いわばイナカの立地で売りにくいケース。
立地が悪いとどうしても売却に時間がかかってしまうことは前提として、以下のような対応で売却を目指すことをおすすめします。
- その地域に強い不動産業者を探す(大手は避けたい)
- 個人売買サイトを試してみる
- それでも売れない場合は無償譲渡サイトを検討
大手仲介業者の場合、地方の手間がかかる物件をコツコツ売るような営業は苦手です。そこで、地場でコツコツ営業している業者を探して仲介依頼をするのがおすすめです。
一括査定サイトでいうと、イエウールが地方の地場業者発掘に熱心ですから、イエウールで一括査定をかけてみるのもひとつの手です。
参考イエウール……地方圏で強い査定サイト
平行して個人売買サイトを利用すると2つのメリットがあります。
- 売却チャンスが広がる
- 実際の反響を知ることができる
直接取引により売却チャンスが広がるのは当然として、②の「買い手の反響を実感できる」というのはプラス材料です。直接メッセージをやりとりをしながら買い手のニーズをつかめるので、不動産業者の売り方が正しいのか間違っているのかの判断もより正確にできます。
個人売買サイトはいくつかありますが、『家いちば』以外反響がないのでおすすめしません。ここは『家いちば』一択です。
参考不動産の個人売買サイト4つを実際に使ってレビュー!使えるのは「家いちば」のみ
最後に、どうしても売れない物件を手放した方がよいケースもあります。将来いくつもの相続が発生して収拾がつかなくなることを防ぎ、負動産を処分しておくなら、無償譲渡の情報サイトをおすすめします。
参考「みんなの0円物件」……最終手段ですが譲渡する場合に
登録物件数は少ないですが、マッチングが成立する確率は高いので、参考までにチェックしてみてください。
物件をとりまく環境に問題がある場合の対処方法
物件を取り巻く環境に問題があるケースは、
- 一時的なもの
- 長期間どうにもできないもの
の2つに分かれます。②の長期的にどうにもできない場合は、価格で対応するしかない事が多いです。
周囲に優良なライバル物件が多すぎる場合は?
マンションなどではよくありますが、周囲に良物件の売出しが多いときには、売り出しても成約しにくくなります。
一戸建ての場合も、近くでローコストな建売住宅がでているなどの条件に左右されます。
こういった場合は、できるだけ売却時期をずらしてください。また、不動産屋を選択するときに、こういった情報を把握している業者を選んでください。
査定依頼時に「周辺のマンション売出し状況は?」「このあたりで新築・中古の一戸建ての売出し予定は?」といった点を尋ねてみて、詳細に解説してくれる業者の方が安心です。
周辺に嫌悪施設があったり災害の危険がある場合は?
また最近は水害についての意識が高まっていますし、重要事項説明時に災害情報を伝えることも義務化されました。
こういう簡単に解決できない問題がある場合は、基本的に価格調整で対応するしかありません。売れるラインまで価格を下げます。
価格設定はデータに基づいて行いたい
では、売れるラインとはいくらなのか? それはデータに基づいて調べるしかありません。基本的にはレインズのデータや、地元の不動産業者が持っている成約情報などから割り出します。
嫌悪施設や災害の危険がある地域での売却事例は、レインズで怪しい事例を探してその物件を仲介した業者に問合せをする……という大変な作業を繰り返す必要があります。
ここは不動産業者に任せてしまった方がよいといえます。
問題がある物件の仲介は専任媒介で
当サイトでは一般媒介を推奨していますが、問題がある物件の売却に限っては、専任媒介で1社だけに任せてください。
そその1社とじっくり相談し、じっくり営業活動をしてもらいます。
おさらいしておくと、媒介契約の類型は以下の3つにわけられます。
専属専任媒介契約 | 当サイトではおすすめしていません |
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専任媒介契約 | 1社のみに仲介を依頼します |
一般媒介契約 | 複数社に仲介依頼できます |
媒介契約について詳しくは以下の記事で解説しています。
家が売れない時のまとめと不動屋の選び方
ここまでをまとめると、家が売れない主な原因は以下の3つでした
不動産屋の実力不足 | 不動産屋に問題がある |
価格が高すぎる | 物件・売主に問題がある |
その他の要因 | 周辺環境が悪くて売れない |
このように整理すると、やるべき事は、
- 適正価格を割り出し価格を訂正する
- 不動産業者を変える
といった対応が必要であるとわかります。
その上で、環境に問題があるときはじっくりと腰を据えて取り組み、よりシビアに不動産屋を選定してください。
不動産屋の選定方法は以下の記事が参考になります。
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