リバースモーゲージとは何でしょうか? 簡単に言ってしまうと、持ち家に住みながらお金を貸してもらい、亡くなった後にその家を売却して精算する仕組みです。
メリットは、老後、自分の家に住み続けながら生活資金が手に入るという点にあります。
実際、リバースモーゲージには大きなリスクがあるといわれています。
この記事ではそのリスクを詳しく掘り下げ、リバースモーゲージをどう利用すればいいかを考えていきます。
リバースモーゲージとは何かを簡単に解説
リバースモーゲージとは、高齢者向けローンの一種。自宅に住み続けながら、その自宅を担保としてお金を借り入れることができます。
借りている高齢者が生きている間は、元本の返済をしなくてもかまいません。
亡くなった時に、相続人(または金融機関)が土地や建物を売却して、その売却資金から借り入れている元金を一括返済します。
リバースモーゲージには以下のようなバリエーションがあります。
- 毎月一定額を終身受け取る(終身年金型)
- 毎月一定額を一定期間受け取る(定期年金型)
- 融資枠を設定して枠内で随時希望額を受け取る(信用枠型)
- 融資枠全額を契約締結時に受け取る(一括型)
一見するとうまくできた仕組みですが、日本におけるリバースモーゲージには3つの担保割れリスクがあるといわれています。
リバースモーゲージのデメリットと3つのリスク
リバースモーゲージにひそむリスクは、すべて「担保割れリスク」です。つまり、何らかの理由で担保不動産の価値より借入が大きい状態になり、返済できなくなってしまうというリスク。3つのパターンにわけられます。
- 長生きリスク
- 金利上昇リスク
- 担保不動産価値下落リスク
それぞれ、簡単に説明していきましょう。
リバースモーゲージの「長生きリスク」
日本でよく利用されているのは毎月一定額を受け取る「終身年金型」か「定期年金型」のリバースモーゲージ。
このうち「終身年金型」であれば、長生きしすぎると、家の価値よりも借り入れたお金の方が多い! という状態になります。
担保割れしたら全額返済を求められるというシビアなケースもあるため、リバースモーゲージを検討する時はこの点に注意してください。
リバースモーゲージ先進国のアメリカでは、ノンリコースとすることで担保割れリスクをなくす仕組みが作られています。
リバースモーゲージの「金利上昇リスク」
金利上昇リスクとは、予想外に金利が上がってしまい、利息を含めた融資残高が担保不動産の価値を上回ってしまうリスク。今の日本では可能性が高いといえないものの、一応考慮しておいた方がよさそうです。
とくに、日本のリバースモーゲージでは、「元本は据え置きながら、利息だけは定期的に支払わなければいけない」というタイプがほとんどです。
利率が上がってしまうと、年金生活の高齢者にとって、利息の支払いも苦しくなってしまいます。
変動金利を採用しているリバースモーゲージでは、この点に注意が必要です。
リバースモーゲージの「担保不動産価値下落リスク」
予想よりも土地価格が下落してしまい、借入れている残高よりも不動産価値が低くなってしまうリスクもあります。これを「担保不動産価値下落リスク」といいます。
3大都市圏ではまだ大丈夫そうですが、地方都市では地価下落幅が大きくなりつつあります。
リバースモーゲージを利用する場合はこの点にも十分考慮して、担保割れしないように気をつけるべきだといわれています。
このテーマでは、駅からの距離と不動産価格について解説している、以下の記事も役に立ちます。
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リバースモーゲージは金利が高い点もデメリット
銀行など金融機関のウエブサイトでは目立たないように書かれていますが、リバースモーゲージの金利は、一般の住宅ローンに比べるとかなり高いのが実情です。
住宅ローンであれば金利1%以下で借りられる場合が多いのに対し、リバースモーゲージでは2~4%と、かなり利率が高くなります。
リバースモーゲージは最後の手段
老後資金はまず手持ち資産でやりくりして、それが底をついた時にリバースモーゲージを利用する……というのがベストな選択です。老後に手軽に資金を確保するというにはほど遠く、まだまだ改善の余地がある制度だからです。
生活保護とリバースモーゲージ
市町村によっては、生活保護を申請した場合、持ち家がある人は「まずリバースモーゲージを利用してください」といわれることがあります。
この場合、わざわざ金利が高いリバースモーゲージを利用するよりも、持ち家を単純売却してしまい、賃貸不動産に転居した方が有利な場合も多く、かならずどちらがいいかを試算してください。
以下の記事などを参照して、不動産業者の無料査定を依頼してみるのもひとつの手です。
市町村によっては持ち家を維持したまま生活保護を受給できる場合もあります。また、リバースモーゲージではなく、まず持ち家の単純売却を勧められる場合もあります。
親世代と現役世代ではどう違うか?
40代・50代のプレシニア世代と、その親にあたる60代以上のシニア世代で、実は資産の状況が大きく異なっています。
上のグラフは日本FP協会の調査による、現在の金融資産総額の年代別平均額。50代と40代の間に大きな格差があることがわかります。
団塊の世代といわれる70代を中心に、高齢層が資産をたくさん持ち、現役世代は資産を持たないわけです。
親世代にとってはリバースモーゲージの必要性は薄いのかも知れませんが、現役世代にとっては「最後の切り札」として用意しておきたいオプションです。
なお、賃貸と持ち家のコスト比較は以下の記事でかなり詳しく検討しています。
「賃貸と持ち家で1300万円の差」は本当なのか検証してみました|関連記事
もし今、現役世代の方が賃貸か持ち家かで悩んでいる場合は、可能であれば持ち家にしておきましょう。
将来、最悪の場合にリバースモーゲージが利用できるからです。また、その時期にはリバースモーゲージの制度がアメリカ並みに改善されている可能性にも期待できます。
住宅購入を考える時、おすすめの第一歩は「自分に借り入れできる金額」を把握しておくこと(無理のない資金計画こそが大切です)。
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「持ち家は資産にならない」という人もいますが、そんなことはありません。地価下落にともなって価値が落ちることはありますが、ゼロになることはないからです。
結論 リバースモーゲージは利用すべきか?
すでに、この記事で結論が出ていますが、リバースモーゲージは利用するべき……というより、最後の手段としてとっておくものだといえます。
その理由は、日本のリバースモーゲージには3つの担保割れリスクがあり、よほど注意深く借入額を設定しておかないと破綻する可能性があるからです。
一方、アメリカではノンリコースといって、担保割れしても元本以上に返済しなくてもいい仕組みが整備されています。これは政府が保証する形をとっているからです。
日本でもやがて、こういった仕組みが実現されるかもしれません。
今の高齢者世代、親世帯がリバースモーゲージを利用するなら、現役世代がバックアップして「この額なら確実だ」という計算をしてあげる必要があるでしょう。あるいは、最後の最後の手段として、セイフティーネット的に取ってほうがいいかもしれません。
今の現役世代がやがてリバースモーゲージを利用するころ、制度がしっかりと整備されている可能性は高いです。
そうなっていたら、我々も安心して老後をすごすことができるでしょう。
参考文献
大石佳能子(2019)『人生100年次代、「幸せな老後」を自分でデザインするためのデータブック』ディスカバー・トゥエンティワン
雨宮卓志(2015)「リバースモーゲージの現状と課題」、『調査と情報』国立国会図書館
小森卓郎(2019)「高齢社会における金融サービスのあり方について」、『信託277号』一般社団法人信託協会
日本FP協会(2018)「世代別比較 暮らしとお金に関する調査2018」
日本経済新聞(2020)「老後資金にリバースモーゲージ 自宅を担保に借り入れ」