私自身、家を買う時に「住宅ローンは年収の7倍」といった解説に、どんな根拠があるのかを調べました。
理由もはっきりしていて、「住宅ローンが年収の何倍が適正か」というのは、人によって違っているからです。
この記事では、返済比率から自分にあった年収倍率を計算する方法をはじめ、住宅ローンを借りる上でのポイントを解説しました。
迷ったらコレで!
ざっくりいうと、30代以下の人は、住宅ローンの借入額を年収の4.8倍、40代の人は3.6倍にしておくとまずまず安全ライン。記事中で詳しく計算しています。
年収倍率を目安にする根拠はない?
不動産屋は「お客さんが借りたいなら限界まで借りさせるのがいい仕事だ」と思っていますし、銀行員は「お客さんには当行が貸したい金額を借りてもらいたい」と思っています。
どちらも、顧客が破綻しない程度にマックスの金額を狙う傾向があるので、相談相手としてはリスキーです。
とりあえず、現状をみるとそのあたりが浮き彫りになってきます。
グラフは、住宅金融支援機構で融資を受けている人の年収倍率です(フラット35)。新築マンションや戸建てでは、衝撃の7倍超え。平均7倍なので、もっと限界まで借りている人も相当数いるはずです。
結局、借入額をいくらにすべきかは自分でしっかり判断するのがベストです。
年収倍率について確かな根拠を示している人は少ない
実は書籍やネットの記事で調べても、「住宅ローンは年収の何倍まで」という根拠を示している資料は見当たりません。
それも当然で、適正な年収倍率は
- どんな仕事をしているか、勤務先は?
- 年齢は何歳か?
- 家族構成やライフプランは?
- そもそも何年ローンを組む?
といったさまざまな条件によって変わってくるからです。
そこで、「自分は住宅ローンをいくら借り入れすればいいのか?」を検討する場合、年収倍率よりは少し根拠がはっきりしている「返済比率」を基準にするほうがよいでしょう。
返済比率から逆算するのがベスト
返済比率は返済負担率ともいいます。住宅ローンの返済額が収入の何%か? という数字が返済比率です。
たとえばアメリカでは、以前は「返済比率20〜25%以下」というのが基準となっていました。ところがサブプライムローンが登場して、より大きな返済比率で住宅ローンを借り入れするようになり、それがリーマンショックにつながったといわれています。
この20〜25%というラインは他のデータからも「1つの基準になりそうだ」と判断できます。
米国の住宅ローンの考え方について調べると、他にもいろいろなルールや基準があり「返済比率20〜25%以下」というのはその中の1つの考え方です。
現在住宅ローンを組んでいる人の返済比率も20%前後
このグラフは住宅金融支援機構が発表した、現在ローンを組んでいる人の返済比率です。15〜20%が最も多く、つぎに20〜25%の人が多いことがわかります。
そしてこれは一般にいわれている水準よりかなり低いのです。意外と返済比率が低いから、今の日本の住宅ローン破綻率が低いとも考えられます。
ポイント
現在の日本の住宅ローン破綻率は1.2〜1.4%くらいです。住宅ローンが比較的安全な債権とされるのは、やはり「今借りている人の返済比率が低い」ということが原因です。
一方で、金融機関はもっと高い返済比率を想定しています。たとえば常陽銀行のサイトには次のように書かれています。
返済比率の目安は、「高くても40%以下」というのが一般的です。
常陽銀行
その他、新生銀行は「一般的には30~35%が基準といわれている」と説明していますし、住宅金融支援機構は年収400万円以下で30%、年収400万円以上の人は35%を上限としています。
金融機関で相談すると返済比率は30~40%といわれるが、実際には15~20%が最多数。ムリしないのが正解です。
あえて年齢と返済比率から年収倍率を計算すると?
「住宅ローンは年収の何倍か?」から出発すべきでないもう1つの理由は、年齢により答えが変わってしまう点にあります。
たとえば40代の人であれば「できるだけ25年くらいでローンを完済したい」と考えるべきですし、30代以下であれば「35年ローンを組んでもよい」かもしれません。
そこで25年ローンと35年ローンのケースに分けて、返済比率から年収倍率を割り出してみました。ここではおすすめの返済比率「20%」で計算してみます(手取りの計算はdodaによります)。
35年ローンの場合年収 | 手取り | ローン月額 | 借入額 | 年収倍率 |
250万円 | 200万円 | 3.3万円 | 1208万円 | 4.8倍 |
400万円 | 320万円 | 5.3万円 | 1940万円 | 4.85倍 |
600万円 | 480万円 | 8.0万円 | 2929万円 | 4.88倍 |
800万円 | 640万円 | 10.7万円 | 3918万円 | 4.9倍 |
年収 | 手取り | ローン月額 | 借入額 | 年収倍率 |
250万円 | 200万円 | 3.3万円 | 897万円 | 3.6倍 |
400万円 | 320万円 | 5.3万円 | 1440万円 | 3.6倍 |
600万円 | 480万円 | 8.0万円 | 2174万円 | 3.6倍 |
800万円 | 640万円 | 10.7万円 | 2908万円 | 3.6倍 |
ざっくりいうと、35年ローンを組むなら年収倍率は最大4.8~5倍くらい。25年ローンだと3.6倍くらいと考えれば比較的安全です。
つまり、
- 30代以下なら借入を年収の4.8~5倍以内に
- 40代なら借入を年収の3.6倍に
というのが、おすすめできる安全ラインということになります。
こういった計算を自分自身のデータで試算してみたい場合は、住宅保証機構株式会社が作っている「住宅ローンシミュレーション」が便利です。
住宅ローンシミュレーション|参考リンク
「借入可能額の試算」の中の「返済額より計算する」を選んでください。
返済比率は、金利0.8%、ボーナス払いなしのローンを組んだ場合に手取り収入の20%の金額を算出しました。年収倍率は、額面の収入に対する倍率として計算しています。
ここからは、年収倍率や返済比率以外に、住宅ローンを組む上で知っておきたい事をダイジェストでまとめていきます。
住宅ローンによって返済総額が100万円単位で変わる
住宅ローンの組み方1つで、総返済額が100万円単位で変わってしまう……。そんなことも普通にあります。
よくいわれることですが、金利が最も低いのはネット銀行などで、フラット35等を扱うモーゲージバンクがもっとも高金利です。
では「自分が借りられるのはネット銀行なのか、メガバンクなのか、地銀なのか?」という点を判定し、最も有利な金融機関を選ぶのが理想です。
たとえば、3000万円借り入れして35年償還の場合、金利1.2%と0.38%では、返済総額が約470万円違います。
しかし、最適な銀行を選ぶには高度な専門知識が必要で、ほとんどの人が「とりあえず相談するか」と訪れた銀行でローンを組みます。
スマホで銀行を比較し、正確に判定できる時代に!
2019年にオンラインサービス化した株式会社MFSのモゲチェックを利用すると、データ入力後10秒くらいでAIの提案を観ることができます。
モゲチェックはほぼすべてのネット銀行やメガバンクと提携しており、それら金融機関の中から、自分にベストな住宅ローンを提案してくれます。
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銀行からの広告費等で運営されていることもあり、ユーザーは無料で利用できるというのもメリットです。
このようにモゲチェックを利用することで、最も有利な金利を提案してもらい、住宅ローン返済総額を100万円単位で節約できた事例はたくさんあります。
モゲチェックについて、詳しくは以下の記事で解説しています。
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関連記事モゲチェックは怪しい?住宅ローンが月々1万円安くなる秘密は?
出典:株式会社MFSプレスリリース 住宅ローンが100~200万円安くなるのが当たり前だ……。 「しかも無料で利用できる ...
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「何年住むのか」を考え、売却戦略を考えておく
住宅ローンのリスクヘッジという観点でいえば、「年収倍率をどう考えるか」「返済比率をどう考えるか」は大切ですが、実はもう1つ重要なポイントがあります。
ローン完済時にその不動産の価値がどうなっているのか? という観点です。
たとえば、今45歳の人であれば「65歳で家を売却して高齢者向け賃貸に移ったらどうかな」というプランも、一応は頭に入れておくべきです。
そうすると「あと20年住んで有利に売却できる物件は?」という視点で不動産を見ることが必要になります。
このグラフは東京都・大阪府・愛知県の築年別マンション価格ですが、築20年から40年まで、中古マンションはほとんど値段が下がらないことがわかります。
仮に、今40歳の人が築20年のマンションを購入すると、65歳になった時(20年後)に購入時とあまり変わらない値段で売れる可能性が高いと予測できます。
その間、タダで住みながら貯蓄しているようなものなので、資金的な余裕をもって高齢者住宅に引っ越しをすることも可能になります。
ポイント
20年後に売却するとしたら、一戸建てよりマンションが有利です。しかし、マンションは駅からの距離がシビアに見られるため、「駅近である」という点を重視しましょう。他にも「需要の多い間取りである」「管理がしっかりしている」など、売却しやすい物件を選ぶことも必要です。
まとめと将来を豊かに過ごせる不動産の買い方
筆者は不動産屋として何度もお客さんの相談を受け「年収の何倍の不動産を買うべきか」を計算しました。
結論は「根拠を持って金額を出せない!」です。
そこで「住宅ローン返済額が年収の何パーセントか?」を目安としてください。これを返済比率といいますが、こちらのほうが根拠のある目安となります。
現在住宅ローンを借りている人のデータでは、だいたい返済比率は20%くらいが主流です。これは一般的に銀行などでいわれる返済比率より安い、というのが注意点!
住宅ローンの返済額や返済比率を確認するなら、無料のモゲチェックを利用してください。非常に信頼性の高いサービスです。
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また、不動産を買うときは「将来売るとしたら?」という出口戦略を考えておくこともおすすめします。
たとえば20年住むとしたら、築20年のマンションがおすすめです。上の図は都市部のマンションの価格推移ですが、築20年から40年くらいまでは価格があまり変わりません。
値段が落ち着いた築20年のマンションを購入し、価格が下落する築40年を過ぎる前に売り切れば、ほぼただで住めたことになります。
こういったマンションのなかから「今買えるものは?」という視点で物件を選び、返済比率が上がりすぎないように注意すれば、破綻せず将来を豊かに過ごせる物件選びが可能になります。