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実家を売却するメリット・デメリット。売却の手順と方法 - 全ガイド

実家を相続したが、どうすべきか? 迷った時は売却するのが大原則です。

とくに漫然と「なんとなくさびしいから売るのは先送りにしよう」というのは危険で、そのまま新たな相続が発生して収拾がつかなくなり、処分に困っている空き家がたくさんあります。

行政の対応も空き家に厳しくなっていますから、以下のような理由がない限り、売却を前提に検討しましょう。

  1. 自分の単独名義で相続して、実際に住むか利用する
  2. 自分の単独名義で相続して、賃貸に出す

このような場合にはあえて売却する必要はありませんが、そうでなければ「どうすればスムーズに売却できるか?」を考えていきましょう。

実家売却を成功させるポイントは、記事後半で紹介しています。

実家は売るべき?そのままにするべき?

相続した実家を売却すべきか、所有しておくべきか? これは誰しも悩むところですが、原則として「売却するほうが心配のタネにならない」といえます。

実家を相続した場合、売却する、賃貸に出す、何もしないの3パターンが考えられますが、それぞれのメリット・デメリットをざっくりまとめると、次のようになります。

メリット
売却する根本的な解決になる。一定のお金が入る可能性あり
賃貸する家賃収入が入る。家が荒廃することを一定程度防げる
何もしない短期的にはラク
デメリット
売却するそれなりに手間。田舎では長期間売れないこともある
賃貸する子どもたちの代に問題を引き継ぐことになる
何もしない場合によっては税額が上がるなど負担増もあり得る

実家が都市部にあるのか田舎にあるのかで事情は変わってきますが、「何もしない」という選択は、おすすめしません。

誰も住まない空き家は傷みが早いですし、荒廃して「特定空き家」に指定されると、税金が最大で6倍に跳ね上がることになります。

空き家問題を解決するため、政府の方針も「空き家を保有するデメリットを増やし、空き家を減らそう」という方向に向かっています。

実家がなくなるとさびしいのも事実ですが、それは他の方法で解決を目指しましょう。

うちの場合も「兄弟で集まる場がなくなる」「いとこたち(子どもの代)が顔を合わせる機会がなくなる」という心配がありましたが、それは以下の記事のような方法で回避しようと考えています。

やはり実家を相続したら、まず売却することを考え、特に理由がある場合は賃貸で誰かに住んでもらうのがよいでしょう。

誰かが住んでいれば家は傷みにくいですし、不具合があれば入居者が報告してくれるので、すぐに修理することができます。

ただ、実家を賃貸する場合は「誰の名義にするのか?」など解決すべき問題も多く、特に長く所有してしまうと「子どもたちの代に問題を引き継ぐ」ということになってしまいます。

その点も考えて、売るか、貸すかを決めるようにしましょう。

実家を売る時の注意点

実は、実家を売るのは簡単な作業ではなく、できるだけ下調べと準備をしておきたい大問題です。

なぜなら、

  1. そもそも不動産を売るには知識が必要。
  2. しかも遠方の実家を売るとしたら、さらに難易度が上がる。

と、通常の不動産売却ですら難しいのに、さらにワンランク難しいことをしないといけません。

最低でも、失敗するとダメージが大きい「税金」の問題から押さえていきましょう。

もちろん「実家がすぐ近所」というケースでは、遠隔不動産売却の難しさはありません。

まず注意したいのは「譲渡所得税」

実家を相続した(する)時点で、相続税の計算をしたはずです。これで安心してしまいがちですが、相続をした実家を売却する時は、相続税とは別に「譲渡所得税」というものが発生します。

フドマガ
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これが案外高額になる場合があるため、あらかじめ計算しておくほうが安心です。

譲渡所得税をざっくりまとめると「不動産を売って出た『儲け』にかかる税金」です。この「儲け」を、ものすごく簡単にまとめると、次のようになります。

たとえば500万円で買った土地が1000万円で売れたら、儲けは500万円。その500万円に対して約2割(または約4割)という、かなり高額の税金が課せられます(様々な特例や細かい要件があるので、後でまとめます)。

相続した不動産の場合「いくらで買ったか」という部分がゼロに近いので(基礎控除5%が認められます)、譲渡所得税が非常に重くなる場合があります。

この点は最初から頭に入れておき、計画を立てる必要があります。

譲渡所得税の計算方法

取得してから5年超か未満かで税率が変わり、5年超の長期譲渡の場合は約2割、短期譲渡の場合は約4割の税金が課されます。また建物の場合は減価償却も関連してきます。まずはざっくり把握しておけば計画はたてられますが、詳しく計算する場合は以下の記事を参考にしてください。

マイナスの資産となる場合は「相続放棄」が必要かも?

被相続人(亡くなった親など)に借金があり、相続した不動産と合計してもマイナスになる場合、相続放棄をしたほうがいい可能性もあります。

相続放棄は、自分のために相続があったことを知った時から3か月以内に行う必要があり、速めの対応が求められます。

いずれにせよ専門家のお世話になることになると思いますので、司法書士、税理士、弁護士などに相談してください。

フドマガ
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司法書士に相談するのがいいと思います。

司法書士さんには相続登記の手続きをお願いすることになるので、相続が発生したら、まず相談しておくと安心です。司法書士さんから、その他の専門家を紹介してもらうこともできます。

不動産と相続について、詳しくは以下の記事を参照してください。

また、相続放棄をすべきかどうかを考える時、不動産の正確な価格査定が必要になります。その場合、おすすめは三井不動産リアルティ(三井のリハウス)です。

なぜ三井の価格査定が正確なのかは、以下の記事で解説しています。

三井のリハウスが対応していないエリアの場合は、以下の記事を参照してください。

相続放棄をしても管理責任は残る

もし建物が老朽化して危険な場合には、民法940条の規定が気になります。

第940条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

たとえ相続放棄をしても、管理責任まで放棄することができないわけです。

そこで、「建物が老朽化して危険だから相続放棄しよう」というのは、あまり得策ではありません。

その点は注意が必要です。

意外と手間取る「遺品整理」

訳あり物件買取プロを運営する株式会社Alba Linkさんを取材中、「残置物処理で高額請求を受けたっていう話をよく聞きます」という発言がありました。

株式会社Alba Linkさんでは、不動産買取時の残置物廃棄については実費だけもらっているそうですが、確かに価格が不透明な部分です。

「消費者にわかりにくい部分なので、100万円前後の請求をする業者もいます」

ということなので、慎重に対応したほうがいいでしょう。

私たちであれば、遺品・残置物整理をするユーザーさんに対して極力安上がりな方法をアドバイスします。

  1. まず、買取り業者を呼んで値段がつくものを処理
  2. 市町村の清掃工場へ直接搬入する
  3. どうしても処分できなかったものだけ地元の廃品業者を呼ぶ

この3ステップであれば、手間はかかるものの費用は10万円~20万円くらいに抑えられます(大量にゴミがあるともう少しかかるかもしれません)。

そこまでするのはめんどくさい、という場合はAlba Linkさんに相談してみてください。

「実際に買取にならず、相談だけでも問題ありません」とのことなので、買い取り価格を確認がてらアドバイスをもらうだけでも大丈夫です。

「訳あり物件買取プロ」は全国対応ですが、あまりに遠隔地の場合は対応できない場合も……。でも、その場合でも相談には乗ってもらえます。

実家を売却する手順と方法

相続が発生すると、やることがたくさんあります。

相続発生時にやることリスト
死亡届(医師の死亡診断書)7日以内市区町村
火葬(埋葬)7日以内市区町村
年金受給者死亡届10日以内市区町村
介護保険資格喪失届14日以内市区町村
健康保険資格喪失届14日以内市区町村等
世帯主変更届14日以内市区町村
相続放棄・限定承認等手続き3か月以内家庭裁判所
準確定申告4か月以内税務署
相続税の申告納税10か月以内税務署
相続財産の名義変更等法務局
国民年金の死亡一時金請求2年以内市区町村等
国民健康保険の葬祭費請求2年以内市区町村

やることが多く、かなりバタバタと手続きをするなかで「実家をどうするか」についても決めていく必要があります。

フドマガ
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ここでは実家を「売る」前提で、処分方法を考えていきます。

実家を賃貸する場合でも、この記事の内容は参考になると思います。

田舎での「実家の売り方」

都市部に住みながら田舎の実家を売る……というのは、2つのポイントでハードルが上がります。

  1. 遠隔地で不動産仲介業者とやりとりしないといけない
  2. 需要が少ない田舎の物件は、売却に時間がかかる

以上の理由から、まずは不動産業者選びがキモになります。

地方の物件を売る時の不動産屋の探し方

通常であれば、不動産仲介業者との契約は、複数の業者に同時に依頼ができる「一般媒介契約」がおすすめです。

態様依頼できる会社数報告義務レインズ登録
専属専任媒介1社のみ1週間に1度以上5日以内
専任媒介1社のみ 2週間に1度以上7日以内
一般媒介★複数社に依頼できる義務なし義務なし

その理由について、詳しくは以下の記事で解説しています。

ただし、遠隔地の物件を売却する場合、一般媒介では心もとないかもしれません。理想をいえば信頼の置ける仲介業者を1社見つけて、責任を持って売却してもらえれば安心です。

そこで、できるだけたくさんの業者に査定を依頼し、その中からベストな業者を探す必要が出てきます。

そのためには、複数業者に見積り依頼ができる「一括査定」を利用することになります。地方に強い一括査定サイトをいくつかあげるとすると、以下がおすすめです。

このあたりであれば、比較的地方の不動産業者の登録が多いのですが、それでも「対応業者が少ない」と感じるかもしれません。

その場合は、複数の一括査定サイトを利用して、なるべく3社以上の見積もりをとってください。

その上で、腰を据えて売却に取り組む必要があります。

それでも対応不動産業者が見つからない場合は? その場合は「不動産屋が儲からないくらい不動産が売れない地域」である可能性も。「家いちば」などの個人売買サイトや、(あふぃりんく)「みんなのゼロ円」など、不動産を無償譲渡するサイトの利用も検討してみてください。行政が運営する空き家バンクは効率が悪く、念のため利用するくらいの優先順位でよいでしょう。

農地が含まれている場合の売り方

相続時に、親の農地を自分名義にすることは簡単です。しかし、それを売る時、一気にハードルが上がります。

農地を売買するためには、購入する人が農家であるなど、買受適格があることが求められます。誰にでも売却できるわけではありません。

農地売却の要件や手順について、詳しくは以下の記事で解説しています。

農地に間違いなく対応している不動産一括査定サイトといえば、リビンマッチが第一にあげられます。

私は長年リビンマッチに業者登録していましたが、結構な数の農地を査定しました。

それ以外であれば、以下のサイトが対応可能です。

こういったサイトを利用して対応不動産業者を探します。ただし、かなりの長期戦になりがちなので、その点を覚悟の上で売却活動を開始してください。

山林が含まれている場合の売り方

実は日本の国土のうち66%が森林。そして、森林のうち私有林は60.9%を占めます。

地方の実家を相続してみたら「場所もわからない山林が附属していた」ということは、意外とよくあります。

妻の祖父がいまだ名義人となっている山林

実はうちの妻の祖父名義の山林がいまだに残っており、「これをやがて私が処理する時が来るなぁ」と覚悟だけはしています。

ただ、これから山林を相続する人は注意が必要です。

2012年の森林法改正により、新たに山林の所有者となった人は、90日以内に市町村に届け出ることが義務づけられました。届け出ない場合は10万円以下の過料という罰則もあります。

フドマガ
フドマガ
どうせならこの機会に、相続人間で「山林をどうする」という話し合いもしておきたいところです。

もし山林を売却するとなったら、かなり時間がかかりますし、対応できる業者もなかなか見つかりません。

不動産一括査定サイトを利用するとしたら、まずリビンマッチ、ついでリガイド、イエウールを試してみるのがよいと思います。

私はリビンマッチで林地の査定を受けることが多く、仲介を依頼された物件はおおむね売却成功しました。

しかし、常に時間はかかりました。山林など売却しにくい物件については、1~2年腰を据えて取り組む必要があります。

都市部での「実家の売り方」

実家が都市部にあれば、通常の不動産売却と変わらない手順になります。

この場合は、一般媒介契約にしておき、大手仲介業者+地元中小業者の組合せにしておくことをおすすめします。

なぜなら、大手と地場業者の強みが違っており、それを組み合わせることでベストな布陣としたいからです。

メリット デメリット
大手業者瞬発的な販売力囲い込み行為をしがち
地場業者コツコツ長期営業コンプライアンスが心配

ざっくりいうと、大手仲介業者は豊富な宣伝広告を打ち、瞬発的に客付けをするのが得意です。その反面、物件を囲い込む傾向があり、長期売れないと放置される傾向もあります。

地場業者は、その点コツコツ営業が得意です。長期間売れなくても、ある程度ちゃんと対応してくれることが多く、安い物件でも嫌な顔をしません。ただし最新の法律などについて行けず、コンプライアンス的にやや心配な傾向があります。

フドマガ
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どちらも一長一短ですが、組み合わせることでデメリットを打ち消すことが可能です。

まず大手仲介業者を1つ選ぶとしたら、三井不動産リアルティ(三井のリハウス)がよいでしょう。三井は査定価格の正確さに定評があるからです。

次に、イエウールなどの不動産一括査定サイトを利用して、地場業者を探します。

これらの一括査定サイトに登録しているのは地場業者が多く、大手と組み合わせることで効果を発揮します。

ただ、地場業者はピンキリで、ハズレも多いので注意してください。

都市部で不動産を売る全体的な流れは、以下の記事で解説しています。


参考文献

『実家のたたみ方』(2014、翔泳社、千葉利宏著)

著:千葉 利宏
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