一生賃貸で暮らすのは、賢いのでしょうか?
実は、一長一短があり、ひと言で言い切ることはできません。たとえば……
一生賃貸に住むと?
- 賃貸なら住宅ローン破綻はない
- 老後も家賃を払うため老後破綻の危険が大きい
どっちもどっちで、かなり悩ましいのです。
そこで、この記事では、賃貸と持ち家のメリット・デメリットを行政が公表しているデータ等から検証し、自分の中で結論を出すことを目指します。
一生賃貸で暮らすメリットと注意点
賃貸に住むメリット・デメリットは、いくつかあります。
注意したいのは、インフルエンサーや有名人が、データに基づかない議論をしていることです。
とくにコスト面では間違いが多く、注意が必要です。
メリット①自由に住み替えることができる
判定
賃貸で生活するメリットといえば、まず自由に引っ越しをし、住み替えられること。
しかし40歳を過ぎると、そのメリットが不要になってきます。
日本人が一生のうちに引っ越す回数は、おおよそ3~5回といわれていますが、よく引っ越しをする年齢は限られています。
下の図を見てみてください 。
このグラフは5年移動率といって、ある人が5年後に引っ越していた率を、年齢階級別に表したものです。
この図でわかるように、日本人は 20代から30代前半まで活発に引っ越しをしますが、40歳頃を境にぱったりと引っ越しをしなくなります。
それはなぜでしょうか?
住宅ローンを組むなら40歳前後がひとつの目安に
このグラフで分かるように、日本人が初めて住宅を購入するのは40歳前後です。
30代前半では5年で引っ越ししていた人が54.8%だったのに対して、40代前半では29%、40代後半では20.8%まで下がっていました。
そこには、40歳前後までに住宅を取得して、引っ越しをしなくなるという背景がああります。
40歳で35年償還の住宅ローンを組めば、75歳で完済できます。25年ローンなら、65歳で完済できます。
そこで、遅くとも40歳くらいで家を買っておかなければ、という計算になるのでしょう。
子どもができたら「引っ越しは人生にマイナス」
子どもができ、成長するにつれて「できれば引っ越したくない」と考えることも、40歳前後で引っ越ししなくなる原因でしょう。
子どもたちが小学生になれば、なおさら「転校させたくない」と考えるはずです。
上のグラフは厚生労働省が調査した、第一子の出産年齢ですが、20代後半から30代前半がピーク。この子たちが小学生になったあたりで、持ち家を購入し、定住する日本人が多いということでしょう。
また、「子どものために引っ越したくない」と考える事には、合理的な根拠があります。
その後の人生が不幸に?
京都大学の川端祐一郎准教授の研究によると、「子どもの頃に引っ越しをたくさんしている人は、大人になってから不幸になる」ということがわかっています。
子どもの頃の引っ越し回数が多いほど……
- 大人になってからの幸福度が下がる
- 健康度が下がる
- ある年齢での死亡率が上がる
- 大学での学業成績が下がる
- 反社会的行動が増える
ということが学問的に判明しているそうです。
日本人が、子どもが生まれたタイミングや、子どもが物心つくタイミングで引っ越しをしなくなっていくのは、理にかなったことだといえるでしょう。
自由に引っ越しできるメリットは30代まで
結論として「賃貸は自由に引っ越しできる」というメリットは30代くらいまでは、魅力だといえるでしょう。
しかし、40代以降は、引っ越しよりも落ち着いて家族と暮らしていく、という人生のフェーズに入ります。
そこから、賃貸は自由に引っ越しできるのがメリットだが「一定の年齢で必要性が下がる」と考えるべきでしょう。
メリット②賃貸の方が安上がり
判定
よく「持ち家よりも賃貸物件の方が安くつく」という人がいます。
しかし、トータルコストで見ると、これは間違っています。ではなぜ、多くの人が「賃貸は安い」と思い込んでしまうのでしょうか?
賃貸の方が安いと思ってしまう背景として、以下のような理由が考えられます。
確かに初期費用を見るとかなり安い
確かに賃貸物件は初期費用が安く、気軽に借りることができるので、「簡便でなんとなく安い」というイメージをもってしまいがちです。
しかし、ある程度長期間で判断すると、持ち家に逆転されてしまいます。
ただし、この章の最後で触れていますが、公営住宅などを利用すると賃貸でもかなり安く住めます。
賃貸が一見安く見える理由は「狭さ」にある
一見すると、家賃と住宅ローンの月額の支払い額は、あまり変わらないように思えます。
しかし、その背景として上の図のように「日本の賃貸物件が非常に狭い」という事情があります。
日本の賃貸物件は、国際的に見ても飛び抜けて狭く、「狭いからこそ安く提供できている」という背景があるのです。
日本の持ち家と賃貸物件の床面積を同じ縮尺で並べると、上の図のようになります。
堀江貴文さんやひろゆきさんなどは、こういった点を理解せずに「賃貸は安い」「賃貸の方がメリットが大きい」という話をしています。
そのため、賃貸が安いという誤ったイメージが定着しました。
堀江さんやひろゆきさんの間違いについて、詳しくは以下の記事で解説しています。
同じ広さ・グレードなら賃貸より持ち家が安い
では、同じクオリティで同じ広さの家に住んだ場合、持ち家と賃貸でどれくらいの差がついてしまうのでしょうか?
以下の記事では、同一エリアの類似物件に35年間住んだ場合の、詳細なシミュレーションを行い、「持ち家の方が1300万円安上がりである」という結論を出しています。
上記の記事では、賃貸の更新料や家賃保証、更新料なども含めて細かく計算しています。また、持ち家の場合の融資手数料や設備更新、外壁リフォームなども漏れなく計算に加えました。
結論として、政令指定都市の一戸建て住宅に35年間居住すると、1000万円を超える差がつくこともある、と考えてよいでしょう。
ただし家賃補助が手厚い会社・公営住宅利用で逆転可能
ただし、家賃補助が手厚い会社に勤めている場合は、持ち家より賃貸のほうが有利になる可能性があります。
また、公営賃貸住宅に入居できれば、持ち家よりも住居費を安く抑えられる可能性があります。
実際、年齢が高くなると県営団地などの公営賃貸住宅に住む割合が上がることが、総務省の調査でわかっています。
世帯の居住状況とその推移|総務省統計局
高齢になって賃貸物件を貸してもらえなくなったら、公営住宅やUR賃貸などを検討すれば、住む家を確保することが可能です。
メリット③住宅ローン破綻の心配がない
判定
確かに賃貸住宅であれば住宅ローン破綻の危険はなく、その点で安心して住むことができます。
「住宅ローンは絶対に組みたくない」という人であれば、賃貸に住み続けるのは合理的だといえるでしょう。
ただ、一般に賃貸の家賃は、持ち家のローンより割高となる傾向があり、その点を押さえた上で判断するとよいでしょう。
以下の記事では、具体的な物件資料に基づいて、賃貸の家賃と持ち家のローンでは、どちらがおトクかを計算しています。
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住宅ローンで破綻する確率は3%くらい
フラット35などの金融商品を取り扱う「住宅金融支援機構」によると、三月以上滞納債権等の割合はおよそ1.21%。深刻な危険がある住宅ローンは、1%強の割合で存在するようです。
また、貸し出し条件を緩和するなどした「リスク管理債権」の合計は、3.05%です。
この割合はコロナ渦が落ち着いてから少し下がっているようですが、それでも「100人に3人」という水準です。
住宅ローンを組むとしたら、無理のない返済計画を立てる必要があります。
データ出典:統合報告書2023|住宅金融支援機構
自分に最適な住宅ローンの借り方は「スマホで確認」
住宅ローンについて知りたい場合、以前は金融機関の窓口で相談する必要がありました。
しかし現在、フィンテックというジャンルのIT企業が、住宅ローンを簡単に可視化するサービスを展開しています。
なかでも、株式会社MFSが運営するモゲチェックというサービスなら、ほぼすべてのネット銀行やメガバンクと提携しており、精度の高い判定が可能です。
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また、銀行が支出する広告費で運営されているので、ユーザーは無料で利用できます。
メリット④固定資産税や修繕費がかからない
判定
よく、「賃貸は固定資産税や修繕費用がかからないのでお得だ」といわれますが、それは間違いです。
大家さんは、慈善事業ではありません。ビジネスとして家を貸しています。
そのため、家賃には以下のようなコストや、大家さんの利益が乗せられています。
この図のように、家賃にはさまざまな費用が、あらかじめ乗せられています。
それなのに、住宅ローンと変わらない家賃で住めるのは、賃貸物件の床面積が非常に狭いからです(この点についてはすでに詳しく説明しました)。
固定資産税や修繕費は「知らないうちに徴収されている」わけです。
持ち家で暮らすメリット・デメリット
一方で、持ち家に暮らすメリットとデメリットは何でしょうか? 一生賃貸で暮らすメリット・デメリットを考えるにあたって、その点も押さえておきましょう。
よくいわれる内容を簡単にまとめると、
メリット
- 資産になり、老後もある程度安心して暮らせる
- リフォームなど自由に手を加えて住環境を整えられる
デメリット
- 修繕の手間が面倒
- 引っ越ししたい場合は面倒
といった点があげられます。
しかし本当でしょうか? こちらも、公的なデータを利用してファクトチェックしていきましょう。
メリット①資産形成ができ老後資金に充てることも可能
よく「持ち家を買っても、これからは価値が下落する」という人がいます。これについては、2つの反論ができます。
- 10年前からそう言われているが三大都市圏では不動産価格が上昇している
- たとえ半額に下落しても、どこまでいってもゼロの賃貸より有利
たとえば、首都圏のマンション価格は以下の図のように推移しています(平米単価推移)。
ごく最近の推移だけを見ても、右肩上がりで上昇していることがわかります。
もちろん、地方に行けば下がっている、もしくはこれから下落するエリアもあります。しかしそれでも、一切資産にならない賃貸に比べると、資産形成としては有利です。
老後2000万円問題の計算でも「持ち家が前提」だった
「老後資金が2000万円不足する」という試算で話題になった、金融審議会の「高齢化社会における資産形成・管理」という報告書は、まだ記憶に新しいと思います。
この試算でも、図のように、高齢無職世帯が「持ち家に住んでいる」ということが前提になっています。
実は、今の高齢者は、住居費を月々1万4000円ほどしか支出していません。それなのに2000万円不足する、ということです。
もし一生賃貸で暮らすとしたら、老後資金は「4000万円ほど不足する」ということになります。
詳しくは、以下の資料で確認できます。
高齢社会における資産形成・管理|金融審議会市場ワーキング・グループ報告書
この報告書の元となった数字は、総務省統計局の「家計調査年報(2017年)」に基づいています。
家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年)|総務省統計局
少し上で、一生賃貸で暮らすとしたら老後資金が4000万円ほど不足する、と書きました。それは家賃8万円の賃貸住宅に20年住むと、おおよそ2000万円弱の家賃が必要になるという計算で、人によって大きく違ってくる可能性があります。
メリット②自由にリフォームすることができる
持ち家は自由にリフォームできるのがメリットといわれます。
しかしこれは、好みの問題であり、メリットと言いきれるものではありません。リフォーム好きな人ならうれしいですが、リフォームに興味がない人にとってはむしろデメリットだからです。
その点、賃貸であれば、古くなったらリフォームなどせず住み替えればいいだけです。
バリアフリー化についても、賃貸ならリフォームでなく、サービス付き高齢者住宅への住み替えで対応できますね。
デメリット①維持費がかかり修繕の手間がめんどう
持ち家は維持管理の必要がある、という問題は、以下の2つのポイントに切り分けて考えるべきです。
- 維持費を含めてもコスト面は持ち家が有利
- 自分で修繕の手配をする手間がかかる
どちらを重視するかで、メリットかデメリットかの判断が逆転してしまいます。
うちでは庭のコンクリート打設などもDIYで行っているので、コスト的には非常に安くあがりました。
その分、かなりのハードワークで、正直けっこうしんどいと感じました。
賃貸なら手間はかかりませんが、修繕費は家賃に組み込まれているため、大家の言い値で支払っていることになります。
維持管理については、手間とコストのトレードオフとなり、どちらが有利か断言することはできません。
デメリット②引っ越しが難しい
筆者は持ち家を売買して、数回引っ越しをしています。国土交通省の資料を見ても、住宅取得回数が「2回目」や「3回目以上」の人もそれなりにいます。
その上で「正直、賃貸も持ち家も、引っ越しの手間は変わらないな」と感じます。ただし、ローンの組み方は非常に重要です。
そもそも、無理なローンを組むと引っ越せない
とくに新築物件で、頭金を用意せずに借入を膨らませてしまうと、上の図のような債務超過の状態になりがちです。
不動産会社を経営して「こういう危ないローンの組み方をする人が、思ったより多い」と感じました。
こうなると、家を売りたくても売れず、引っ越しできないことになります。
新築を避けて、頭金をしっかり用意するだけでも、こういった事態を避ける対策になるので、ぜひ注意したいところです。
上の図では、マンションの現在の価値3200万円と預貯金100万円を足しても3300万円にしかならず、売却しても住宅ローンの残債務3800万円を返済できません。
債務超過の状態にならないように、住宅ローンの組み方を考える場合、無料で専門家に相談できるモゲチェックなどを利用してみてください。
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一生賃貸が向いている人は?
ここからは、一生賃貸が向いている人の特徴や、一生賃貸で暮らすための大前提をまとめていきましょう。
一番心配なのは、老後資金です。
お金に余裕があり老後資金の心配がない人(大前提)
一生賃貸で満足できる暮らしを続けるとしたら、老後資金に心配がない程度の金銭的余裕が大前提となります。
もちろん、公営住宅に住んだり、立地にこだわらずに暮らすことで、資金的にはなんとか都合がつくかもしれません。
老後もアクティブに転居したい人
よく「賃貸のメリットは自由に住み替えできること」といわれます。
老後も「子どもが独立したから手頃な広さの家に引っ越したい」「サービス付き高齢者住宅などに引っ越したい」というニーズが存在します。
そんな場合、確かに賃貸の方が引っ越しがしやすく、希望の物件に住みやすいといえるでしょう。
実は、持ち家であっても「本当は希望の物件に引っ越したい」と考える人は多いようです。
上の図は、特定非営利法人シニアライフ情報センターが会員などについて調査した結果ですが、6割強の人が「住み替え派だ」と回答しています。
介護になった場合の不安などを考えると、持ち家であっても暮らしやすい環境への引っ越しを考えておくと安心できるでしょう。
もし持ち家で、なおかつ住み替えを考えるとしたら、高齢期の住み替え支援をスタートしている三井のリハウス(三井不動産リアルティ)がおすすめできます。
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正確で透明性の高い価格査定に加えて、最近「シニアデザイン」に関する部署を立ち上げたことがその理由です。
三井のリハウスについて、詳しくは以下の記事で解説しています。
まとめ「一生賃貸生活を選ぶ場合に外せないポイント」
一生賃貸と決めるにあたって、まず考えておきたいのは「老後資金」です。
老後2000万円問題が話題になりましたが、それは持ち家の話です。賃貸であれば、2000万円に加えて、20~30年分の家賃も蓄えておく必要があります。
そこから、一生賃貸をおすすめできるのは、ある程度お金持ちの人ということになるでしょう。
賃貸のほうがいいと言っている、堀江貴文さん、ひろゆきさん、勝間和代さん、荻野博子さんなどは、いずれもお金持ちです。
老後資金が不足する場合は公営住宅がおすすめ
もし「老後資金は少ないが賃貸暮らしがいい」という場合は、県営団地などの公営住宅がおすすめです。
たとえば大阪府営住宅では、エリアにもよりますが床面積約40平米で、月額家賃14,200円という物件も見つかります。
総合募集 募集住宅一覧|大阪府営住宅
あるいは、無理のない範囲で住宅ローンを組み、手頃なマンションを買ってしまうのも手でしょう。
安くても持ち家を買っておくなら予算からスタート
もし老後に備えて持ち家を買っておくとしても、筆者は35年ローンは避けた方がいいと考えています。
できるだけ短期のローンで手頃な戸建て・マンションを買っておき、リフォームしながら住んだ方が、住宅ローン破綻の危険が少ないからです。
今ならスマホで、住宅ローンについて「いくら借り入れできるか」「有利な銀行はどこか」といった情報も確認できます。
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