記事作成のために、ネットの口コミをデータベースソフトに打ち込んでいったところ、驚くべき実態が見えてきました。
このように、人為的としか考えられない傾向がクッキリと現れたのです。
- 2018年夏から2019年春に口コミが集中している
- しかもその間「良い」口コミが90%にのぼる
- それ以外の期間は「良い」口コミは13%しかない
2018~19年3月 | 2019年4月以降 | |
---|---|---|
肯定的な口コミ | 71 | 2 |
否定的な口コミ | 8 | 13 |
肯定的な口コミの割合 | 90% | 13% |
通常「よい」口コミが13%しかないのに対して、2018年夏から2019年3月末の期間に限り、不動産一括査定サイトについての「よい」口コミが90%と不自然に高いことがわかりました。
またデータベースソフトに入力して統計を取ると、2018~2019年の口コミは文字数が揃っていることもわかりました。
2018年・2019年に何が起きたのでしょうか?
この記事では、まず作為的なネットの口コミを分析して実態を明らかにします。
その後、それを前提として、不動産売却を成功させるための「本当の情報収集」を考えます。
記事中では2つの口コミサイト(口コミサイトAと口コミサイトBと表記)について評価しています。他にも「口コミ」と自称するサイトはありますが、投稿日時が表示されないなど、口コミの体裁さえ整っていないため調査対象としませんでした。
やらせまみれか?ネットの口コミ驚きの実態
まず、上の図を見てください。左側が2019年3月以前の口コミです。
緑が「ポジティブな口コミ」、赤が「ネガティブな口コミ」、白が「どちらでもない」口コミです。
「口コミサイトA」「口コミサイトB」ともに、2019年3月以前はほとんど緑(ポジティブ評価)という状況です。
ところが2019年4月以降(上図右)では、ほぼ「ネガティブな口コミ」が占めており、なおかつ投稿数も少なくなっています。
- 2019年3月以前はポジティブな口コミが90%もあった
- 2019年4月以降はポジティブな口コミが13%に激減した
続いて、ポジティブな口コミにどういう傾向があるかを分析しました。
推論=200文字台で発注された「やらせ口コミ」の可能性
ファイルメーカーの関数を使って口コミの文字数を数えてみると、不思議な傾向に気がつきました。
口コミの文字数に統一感があるのです。具体的には、大半の口コミが200文字台で書かれていました。
そこで、EXCELのワークシートに書き出して集計したところ、2019年3月以前に投稿された「口コミサイトA」のポジティブな口コミ62件のうち87%が200文字台におさまっていました。また、平均文字数は238.9文字でした。
一方、2019年4月以降の口コミの平均文字数は135文字でした。まったく傾向が違います。
そこで、文字数と投稿時期をEXCELで散布図にしてみたところ2019年4月(グラフ内赤線)を境に、明らかに傾向が異なることがわかりました。
ここにもう1つの「作為」が疑われました。
つまり、2019年3月以前には
- 何らかの理由で「よい」口コミの割合が不自然に多い(90%)
- その87%が200文字台に収まっている
可能性としては、誰かが何かの目的で「200文字~300文字のヤラセ口コミの投稿」を行ったと見ることができます。
今では、口コミも簡単にお金で買える時代になっています。
上記は有名なクラウドソーシングのウエブサイトに掲示されている「口コミ募集」。やらせや自作自演とは限りませんが、「口コミはお金で買える」という点は間違いなく言える事です。
文字数調査は「口コミサイトA」のみ対象 。「口コミサイトB」は件数が少なく統計を取る意味がないと判断しました。
結論=ネットの口コミはまったく信用できない
1つだけ確実に言えるのは「ネットの口コミはまったく信用できない」という事です。ここまであからさまな傾向が見られる以上、たとえヤラセでなかったとしても不自然ですし、信用してはならないと断言できます。
今回はたまたま不動産一括査定サイトの口コミに、異常な人為的傾向が見られたのですが、他のジャンルの口コミも疑った方がいいかも知れません。
今回は「口コミサイトA」「口コミサイトB」を対象として調査しましたが、それはまだ「よい方」だからです。他の口コミサイトでは、そもそも「本当の口コミが1件も存在せず、すべてやらせではないか?」と疑われるサイトもあります。
不動産屋だったからわかる一括査定の真実
不動産一括査定サイトの仕組みはどこも同じです。
一括査定サイトは図のように、ユーザーから受け取った不動産査定情報を6社(最大10社)程度の不動産業者に流すのが仕事です。
そこで不動産一括査定業者は、雨後のタケノコのように増加してしまいました。
しかし同じビジネスモデルですから、査定サイトの仕組みはどこも同じです。
デメリットから判断する不動産一括査定|関連記事
同じような仕組みなのに「自社サイトが有利だ」と宣伝するために、不動産一括査定サイトはさまざまな広告を打っています。
こういう広告をよく見かけますが、不動産の実務を経験していれば「この広告は嘘だ」とすぐにわかります。不動産価格査定はそういう理屈ではないからです。
不動産価格査定とは?
不動産の価格査定は、本来「3か月程度で売却できる相場の価格」を算出するものです。そうすると「高い査定額がよい」と考えるのはおかしな話で、「正確な査定額がよい査定額」だといえます。
不動産売却査定の注意点|関連記事
不動産一括査定のデメリットは査定額が高すぎること
不動産実務を行っていてひしひしと感じたのは「高すぎる査定額が増えている」という事でした。
不動産一括査定サイトが流行し、多くの不動産業者が一括査定サイトに登録しています。当然、その内部で競争が激しくなります。
査定依頼をしてくる人の多くは、こんな広告にだまされたお客さんです。
そこでウソとわかっていても、実際より高い価格査定を出してしまう不動産業者がどんどん増えてしまったのです。
特に派手に広告をしていて「儲かればいい」と考えている不動産一括査定サイトほど、その傾向が強くなっています。
消費者は、不動産一括査定サイトを利用する時「査定額はあてにならない」と理解しておく必要があります。
では、不動産一括査定サイトを使わずに、手近な不動産業者を訪問すればいいのか? というと、それも危険です。
しかし本当に怖いのは「最悪な1社」に依頼すること
とはいえ、不動産の売却で最も怖いのはたった1社の不動産業者に相談してしまったために、本当の相場も知らされずに買いたたかれることです。
私自身が身近に見た例では、おじいちゃん社長が1人で経営している不動産業者に頼んでカタにはめられた例が最も気の毒でした。
事例1 | 住宅街に事務所を構え、おじいちゃん社長1人で営業している業者に相続案件の売却を依頼。私の査定で1400万円の物件を1000万円で売却された事例。 |
---|---|
事例2 | 近隣商業地域に事務所を構え、おじいちゃん社長1人で営業している業者に相続マンションの売却を依頼。私の査定で800万円の物件を470万円で売却された事例。 |
このように「最悪な1社」にだけ相談すると、最悪な結果が待っています。
そこで、不動産一括査定サイトを利用すること自体はおすすめできます。使い方が問題なだけです。
個人的にはおじいちゃん社長が1人でやっている会社が恐い印象があります。またIT化もせず少人数で細々と営業している業者の中にも地雷業者がまぎれ込んでいます。
今も水面下で続けられる「囲い込み行為」
一方で、大手不動産仲介業者1社だけに仲介を依頼した場合には「囲い込み行為」が心配です。
ちなみに「囲い込み行為」とは以下の図のように、物件を自社で囲い込んでしまうことです。
つまり囲い込み行為とは、売主と買主の両方から仲介手数料を取るために、物件を他社に売らせないで囲い込むという悪質な手法です。結果的に売却期間が長引き、価格も低下する傾向にあります。
なぜなら「より有利な条件で買いたい」という他社のお客さんを断ってしまうからです。
不動産の囲い込み行為とは?|関連記事
この囲い込み行為は「大手仲介業者ほどよく行っている」とする報道があります。
大手不動産仲介は「囲い込み」が蔓延?!|ダイヤモンド不動産研究所
上記リンクはダイヤモンド社という大手出版社の報道ですから、信憑性があると考えています。
そこで、大手仲介業者にだけ相談すると囲い込み行為などの悪徳な手法が心配になります。
「知らないと怖い」悪徳業者の手法
悪徳業者の見分け方と、知らないと怖い悪徳業者の手法については、以下の記事で詳しく解説しています。
悪徳不動産業社リスト+悪質業者を見抜くその他の方法|関連記事
-
国土交通省が作った「危ない悪徳不動産業社を検索」するブラックリストとは?
不動産業界は大きなお金が動く世界。どうしても一定数は「儲かれば何でもいい」という悪質な業者が存在します。そこで、取引の前 ...
続きを見る
この記事は、当サイト「フドマガ」で最も人気の記事の1つです。時間がある時にでも目を通していただくと、悪徳業者の全般的な傾向がつかめると思います。
一括査定サイト+一般媒介契約が、最も安心できる売り方
不動産一括査定サイトを「高い査定額を出してもらうために利用する」というのはおすすめしません。
そうではなく、一般媒介のメリットを最大限いかすために利用するのがおすすめです。一般媒介契約の場合複数の業者に仲介を依頼できるので、大手業者と地場業者を効率よく組み合わせることができます。
不動産取引という高額な契約をする以上、万が一にでも悪質業者に当たった場合のダメージははかりしれません。
またそのために不動産一括査定サイトを使うのはありです。
仕組みは同じだが経営姿勢が違う「一括査定サイト」
私は「一括サイトはどこも変わらない」と言いました。しかしそれは「仕組みは同じ」という意味です。
実は運営する会社の営業姿勢によって「良心的」「儲かればいい」といった傾向は分かれます。
私自身、不動産業者として約10年間不動産一括査定サイトを利用した経験から「いちばんガツガツしておらず、良心的ではないか」と感じるのはRE-Guide(リガイド)というサイトです。
リガイドは派手な宣伝こそしませんが、不動産屋に優良顧客を送客してくれる傾向があり、それはユーザーにとっても「ダマし要素を駆使していない」というメリットがあることを示しています。
RE-Guide(リガイド)|公式サイト
リガイドについては、約3年にわたって利用してきた経験からレビュー記事も書いています。公式サイトの前に、まずはレビュー記事を読んでみていただければと思います。
Re-Guide(リガイド)不動産売却査定を3年利用した口コミ評価まとめ|関連記事
-
関連記事Re-Guide(リガイド)不動産売却査定を3年利用した口コミ評価まとめ
私は不動産屋の立場で「R-Guide(リガイド)不動産売却査定」を約3年間利用しました。もちろんその間、他の不動産一括査 ...
続きを見る