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「両手仲介は悪いこと?」ピント外れな議論に終止符を打つ

『マンションを相場より高く売る方法』という本があります。ファーストプレスという出版社から発売されていて、著者は風戸裕樹氏と吉川克弥氏。ソニー不動産(現SRE不動産)の関係者が書いた本で、ソニー不動産のスタンスを「良いもの」として推しています。すなわち、売主専業の片手仲介こそベストという考え方です。

なぜ、両手仲介がよくないというのでしょうか?

ソニー不動産が考える両手仲介の弊害は

  • 売却価格が下がる傾向がある
  • 情報操作をすることがある
  • 不動産会社が売り手に対して真実を隠すことがある

の3点なのだそうです。「不動産会社が自分の報酬を両手(2倍)にしようとすると、このようなことが起きる可能性があるのです。」と補足をしていますが、本当でしょうか?  何かふたつの問題を混同しているようですね。

ポイント

実は上記の考えは「両手仲介」と「囲い込み行為」を混同しています。上記3つの問題点は、すべて「囲い込み行為」の問題点ですね。

両手仲介とは?

まずは「片手取引」から説明します。

ソニー不動産は上記の取引の形にこだわります。つまり、ソニー不動産が上記のA社の立場にたち、他の会社と共同で仲介業務を行うということです。この場合、A社は売主から、B社は買主から、それぞれ手数料をもらいます。片方のお客さんから手数料をもらうので「片手取引」です。

それに対して「両手取引」はこの図のような形。

A社1社だけで売主と買主双方を担当し、契約を成立させます。手数料に着目すると、売主と買主の両方からもらうことができるので「両手取引」といいます。両手取引の方が仲介手数料が多く、たいていの場合、片手取引の倍額の手数料を受け取ることができます。

囲い込み行為とは?

この本でも紹介されている「囲い込み行為」。仲介依頼(売却依頼)を受けた仲介会社(仮にA社としましょう)が、自社で買主を見つけたいがために、他社経由の顧客を断るという行為です。宅地建物取引業法に違反していますし、商道徳にも違反しています。

たとえばA社がBマンションの仲介依頼を受けて広告しているところに、C社が「弊社のお客様がBマンションの内覧をしたいのですが」と打診をしたとします。A社はまだ買主を見つけていなかったとしても「もう、申し込みが入っています」とウソの回答をして、C社の客付けを断ってしまうのです。

A社は、なぜC社の申し出を断るのでしょうか?

それは、A社が買主も見つけて、売主と買主の双方から仲介手数料をもらいたいからです。たとえば3000万円のマンションを仲介する場合、片手仲介であれば手数料は96万円+税ですが、両手仲介であれば、その倍の192万円+税になります。つまり、A社は手数料にこだわって自社の利益を優先する不動産屋ということができます。

どんな不動産屋が手数料にこだわるのでしょうか? それはノルマがきつい会社、運営に多額の経費をかけている会社(たとえば不必要に立派な事務所を構えているとか)、経営者が儲け主義の会社……ということになります。大手の不動産屋はだいたいこれにあてはまる傾向にありますが、すべてではないでしょう。また、営業マンレベル、担当者レベルでも、手数料へのこだわりには違いがあります。

さてここで、ソニー不動産が考える「両手仲介の弊害」をもう一度みてみてください。

  • 売却価格が下がる傾向がある
  • 情報操作をすることがある
  • 不動産会社が売り手に対して真実を隠すことがある

これらはすべて「両手仲介の弊害」ではなく「囲い込み行為の弊害」であることがわかります。

ソニー不動産が主張する3つのマイナス点は、すべて囲い込み行為に当てはまることがわかります。たとえば「両手仲介がほしいから情報操作をすることがある」=囲い込み行為の問題、ということです。

すなわち、両手仲介が抱える問題と、囲い込み行為という不正行為がもつ問題点を、混同しているわけです。囲い込み行為についての解説は、下の記事がわかりやすいと思います。

不動産の囲い込み行為とは? 対策方法を含めて徹底解説しています

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両手仲介のメリットとは何か?

実は、両手仲介にはひとつのメリットがあります。

上記の本『マンションを相場より高く売る方法』の107ページに「その物件の魅力を最も知っている人の力を借りる」という記事が掲載されています。これは、同社が仲介した中古マンションの客付け業者に、たまたま同マンション新築時の販売員だった人がいたので、この人が役に立った……という事例でした。

それはそうですよね。物件をよく知っている人こそが、最良の営業マンです

両手仲介のメリットも同じ。

両手仲介とは、売主から売却を任された会社(の営業マン)が買主を探すということです。その営業マンは、物件調査の段階から、様々な角度でこの不動産を見てきているはずです。売主とのリレーションも最強で、売主がどんな思いでこの家を建てたのか、あるいはこの土地の魅力を感じて購入したのかも知っています。つまり、売主側に立って物件を見てきた仲介業者(の営業マン)こそが、その物件の魅力を最もよく知っている、ということができます。

その物件をよく知っている人こそ、最良の営業マン。

ここで再確認してみると、ソニー不動産は「その物件の魅力を最も知っている人の力」は役に立つという考え方でした。そうであれば、両手仲介そのものを否定するのは理屈にあいません。

両手仲介を禁止するのではなく、囲い込み行為を防ぐことが大切なのです。どうやって囲い込み行為を防止すればいいのか? それには簡単に実践できる、有効な手段があります。

他の記事でも何度も解説していますが、一般媒介契約で2社ないし3社の不動産会社に仲介を依頼すればよいのです。そうすれば自動的に情報はオープンになり、囲い込むことができなくなります。

専任媒介ではなく一般媒介を選ぶ、という簡単な方法で、囲い込み行為を防ぐことができます

こういう話になると、よく「アメリカでは……」と言う人がいます。

アメリカでは両手仲介は禁止されており、不動産仲介業者(エージェント)は売主または買主、どちらかの立場に立って業務を行います。だから公正な仲介業務ができるのだ、という理屈です。

一見正しいように見えて、実はそういう意味での公正さを実現したいのであれば、アメリカと同じ法体系にするのが先です。宅地建物取引業法という法律を変えずに、なぜか自ら両手仲介を縛る、というのはかえってソンをしていると思います。

宅地建物取引業法は両手仲介を禁じるかわりに、一般媒介契約という類型を用意しています。

それを活用するのが最も現実的な囲い込み対策であり、ソニー不動産が言うような弊害を防止することができる有効な方策だと考えます。

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