マンション売却時にリフォームをしておくべきか、不要なのか? その判断は主要な不動産サイトによっても分かれています。
しかし、データを見る限り「見た目の悪い物件は売却に苦労する」という点は間違いありません。
そこで、売れにくい物件の現況を改善するための、最低限のリフォームが効果的なことは間違いありません。
この記事では、
- 本当にリフォームは必要なのか? 不要なのか?
- どんなリフォームをすべきで、どんなリフォームは避けるべきか?
- どんな手順でマンションとリフォームに強い不動産業者を見つけるか?
を解説しています。
費用対効果の高いリフォームか所は?
結論として、費用対効果の高いリフォームか所は壁紙(クロス)交換。面積が広くて価格の割によく目立ちます。こういった点に絞ったリフォームなら検討の価値があります。また、マンションとリフォームに詳しい不動産業者を探すなら、マンション専門の査定サイト「マンションナビ」がおすすめです。
マンション売却で使うべき一括査定サイトについては、以下のレビュー記事が参考になります。
参考証拠あり!本当に役立つマンション売却の「不動産一括査定サイト」を特定しました
不動産専門サイトの判断は11対3で「リフォーム不要」
マンションを売却する時にリフォームをした方がいいのかどうかは、ほんとうであれば個々の物件によって答えが変わります。本来、リフォーム見積りを取り、詳しく計算をしてみないと結論が出せないのです。
しかし不動産をテーマにした主要サイトの結論を見てみると、リフォームが不要・必要それぞれの意見に分かれていました。結果は11対3で「リフォームは不要」とするサイトが多数を占めました。
サイト名 | 賛否 | 主張内容 |
---|---|---|
イエウール | × | リフォームしない方がいい |
オウチーノ | × | リフォームは費用の無駄 |
すまいステップ | × | 売却を目的としたリフォームはおすすめしない |
東京テアトル | × | 売却前にリフォームを行うメリットはあまりない |
東急リバブル | × | どうしてもリフォームしなければいけない、ということではない |
スマイティ | × | リフォームしたからといって必ずしも早く高く売れるわけではない |
不動産売却の教科書 | × | マンション売却でリフォームは基本不要 |
マンション売却123 | ○ | 30~50万円以内のリフォームなら効果がある |
REDS不動産流通システム | ○ | 最小のコストで最大のメリットをめざすリフォームなら効果がある |
お家のいろは | × | 売却のためにわざわざ全てをリフォームすることは、原則として不要 |
マンションナビ | ○ | 一般論としてはリフォームした方がよい |
スターマイカ | × | 一般の方が家をリフォームして売却することはおすすめしない |
カウル | × | 築年数が長くなっているマンションでもリフォームは基本的に必要ない |
すまいうる | × | 結論からいえば売却前のリフォームは不要 |
東急リバブルや、スターマイカといったマンション・不動産流通大手企業は「マンション売却前のリフォームはおすすめしない」と結論づけています。
それに対してマンションナビなど一部サイトでは「リフォームをした方が有利だ」としています。
どうしてこのように結論が真っ二つに分かれてしまうのでしょうか?
判断がわかれるのは書き手の立場による
実は不動産のプロである宅建業者が物件を買い取る場合、ほとんどのケースで「リフォームをしてから再販する」ことを前提としています。それは、リフォームをした方が高く売れて、利益も確保できるからです。
上記の表で「マンション売却前のリフォームをおすすめしない」としているサイトも、記事をよく読むと「一般消費者がリフォームをして販売することはおすすめしない」という立場です。
不動産のプロがリフォームをして再販することまでは否定していません。
つまり「リフォームを分かっていない一般の素人が、リフォームをしてからマンションを売却するのはやめたほうがいい」という立場です。
それに対して「マンション売却前にはリフォームをした方が有利だ」とするサイトは、売却チャンスを広げるために効率的なリフォームをすればいいんだという前提で、判断を下しています。
つまりリフォームが成功するのか失敗するのか、いずれの立場で原稿を書いているかによって結論が変わっているということです。
リフォーム不要論は「どうせリフォームしてもうまくいかないから」という前提で、リフォーム推進論は「うまくリフォームすれば効果がある」という前提で記事を書いています。
つまり同じことを2つの面から見ているだけ!結論は1つ
つまり、本当の結論はひとつしかありません。
買い手のニーズをとらえた効果的なリフォームを行えば、マンション売却はうまくいきますし、買い手にとってあまり意味のないリフォームを行ってしまえば、リフォームにかけたコストを回収することができず、売却は失敗に終わってしまいます。
「一般消費者であればリフォームをしてもどうせうまくいかないだろう」という立場で結論を出しているのがイエウール、オウチーノ、住まいステップなど、リフォームに反対の立場をとるサイトです。
反対に「きちんと情報収集をして、効果的なリフォームをすればいいんだ」という前提で考えているのが、 REDS不動産流通システムや、マンションナビなどの各サイトです。
「マンションはリノベ前提で買うからリフォーム不要」はウソ
マンション売却時にリフォームは不要だとする理由で、もうひとつ目立ったのは「中古マンションを購入する人はこだわりがあり、リノベを前提としている。だからリフォームをしてもムダになる」という説。これは間違いです。
もちろんリノベ前提の人も多くいますが、割合からいえば小規模リフォームにとどめる人の方が多数派で、築古(築30年以上)のマンションであっても500万円以上かけてフルリフォーム・リノベを実施する人は全体の1割未満です(注1)。
上のグラフは一般社団法人住宅リフォーム推進協議会が平成31年2月に発表した調査報告「住宅リフォーム潜在需要者の意識と行動に関する調査 第11回調査報告書」に掲載されたものですが、マンション購入者の平均的なリフォーム予算は築10年未満の新しいマンションで328万円、築30年以上のマンションで200.4万円です。
この予算でできるのは部分的なリフォームで、フルリフォームやリノベといえる規模ではありません。
注1……ここで引用しているグラフは「住宅リフォーム潜在需要者の意識と行動に関する調査 第11回調査報告書」に掲載されてもののうち、住宅ローンを組む人(中古を購入してリフォームもする人)を対象としたものです。
結論として、最低限のリフォームは効果的
結論として、最低限のリフォームを行い内覧時の第一印象をよくしておくことは、マンションの売却にとって十分に効果的で、意味のあることです。
それを裏付けるデータを見てみましょう。
不動産買取再販事業のすむたす買取が2021年1月に実施したアンケート調査では、「不動産のプロが考える売れない・売れづらい不動産」の理由として、いろいろと気になる項目があげられています。
注目したいのは第2位以降。売れない・売れづらい不動産の理由として、2番目にあげられたのは築古で室内状況が劣化していること、第3位は共用部が汚い・状態が良くないというものでした。
いずれも物件の状態がよくない、見た目の印象がよくないということが、不動産が売れない原因として大きいということを表しています。
そこからイエウール、オウチーノ、すまいステップなどが主張するように「リフォームをしないほうがいい」というのは、突き詰めて考えれば間違いだということがわかります。
本当はリフォームをして見ばえをよくした方が売れやすいことは間違いありません。 ただ素人がリフォームをして売却に成功するのが難しいというだけです。
ではどういった点に気をつけて、どういうリフォームをすれば売却に成功するのでしょうか?
リフォームが必要・不要を判断
コストをおさえた効果的なリフォームなら、一般売主の方であってもおすすめです。逆にリフォームしないほうがいいのは、簡単に施工できるか所がきれいな状態の物件や、難易度が高い部分の工事が必要なケースです。
ここからは、一般論として、とりあえずやっておいたほうがいい安くて効果的なリフォームを考えていきます。
マンションナビの記述に注目。「生活の痕跡」が売れない理由に
「マンション売却ではリフォームをした方が有利だ」とする立場の、マンションナビの記述が参考になります、
限度を超える生活の痕跡があると印象が悪くなる。
マンションナビの記事では、この点を重視しています。これは不動産売買のプロが考える不動産が売れない理由と一致しています。
見た目が悪い物件は間違いなく売るのに苦労します。
見た目が悪すぎる物件は第一印象で弾かれてしまい、その他の条件がよくても売却に時間がかかったり、安く買い叩かれてしまったりするのです。
ポイント
見た目がよくない物件は第一印象で弾かれてしまい、安く買い叩かれる結果につながります。
効果的なリフォームは「目立つけれど安い部分」
本当は厳密に、
- リフォームコストはいくらか?
- そのコストを掛けて回収できるのか?
という計算をしておくのが理想的です。しかし、いきなりリフォーム費用を積算するのは難しいと思うので、まずは誰でもできる安くて効果的なリフォームを紹介します。
できればマンション売却に強い不動産業者に相談に乗ってもらい、もう少し具体的にリフォーム内容を検討できればベストです。
おすすめリフォームか所は壁紙の交換
リフォームにかかるコストが安いのに目立つ、といえば1番にあげられるのが壁紙(クロス)です。
とくに「ペットを飼っていたので壁紙が汚損している」「子供が落書きをしている」「湿気で黒ずんだり剥がれてきた」という場合、かなり印象が悪くなってしまいます。
そんな時、壁紙だけ貼り替えておくというのは、かなりコスパの高いリフォームポイントです。どれくらいの費用がかかるかというと、6畳の部屋で約8万円が目安。
項目 | 単価 | 単位 | 数量 | 小計 |
ビニールクロス一般品(w920) | ¥490 | ㎡ | 31 | ¥15,190 |
養生費 | ¥540 | ㎡ | 10 | ¥5,400 |
クロス剥がし施工 | ¥540 | ㎡ | 31 | ¥16,740 |
クロス・天井仕上 | ¥540 | ㎡ | 31 | ¥16,740 |
残材処理費 | ¥251 | kg | 100 | ¥25,100 |
合計 | ¥79,170 |
上の表は既存のクロスを貼り替えて、普及品のビニールクロス(剥がした跡の不陸を考慮したリフォーム専用品)に交換するケースを想定しています。材料費の単価を490円(㎡)、手間賃を540円(㎡)としています。職人さんの1人工を18,000円として、クロスの撤去・施工いずれも㎡あたり0.03人工とすると、上記の数字になります。
この表を作成するに当たって工務店向けの資料『新リフォームマニュアル』(建築資料研究社)および『職人・工務店のためのリフォームマニュアル』(全国建設労働組合総連合)を参照しました。
畳表の交換はウラ技で効果アップ
和室がある場合は畳も面積が広く、かなり目立つポイントです。落書きがある場合や、黒ずみ、カビなどがある場合は非常に目につくため、内覧時に大きくポイントを落としてしまいます。
とはいえ畳を交換するとけっこうな予算が必要になります。
そこで、畳表だけを交換するのが効果的。さらに、賃貸用の畳表に換えてもらうという手法で、相当なコストダウンを図ることができます。
例えば6畳の和室で畳表を交換する場合は以下のような予算になります(実在する畳屋さんの見積りから引用)。
単価 | 価格 | |
一般用畳表 | 11,000円(税込) | 66,000円 |
賃貸用畳表 | 2,310円(税込) | 13,860円 |
普通の畳表に交換すると単価はだいたい1万円前後ですから、6畳で6万6千円。賃貸用の畳表にしてもらうと、単価がものすごく安くなるため、13,860円で施工できます。
賃貸向けに販売されている畳表は外国製のい草を使っていて、品質も耐久性も劣るのですが、見た目はすごくきれいになります。
ただし、買主さんには正直に「今はいっている畳表はあまりよいものではないので」痛んできたら交換してくださいね、と教えてあげてください。
簡単にできる柱のリフォームもおすすめ
柱に落書きがあるような場合もかなり印象が悪くなります。これは大工さんに研磨してもらうか、上から板を増し貼りしてもらうことでかなりきれいになります。コストもかからないので、検討してみる余地は十分あると思います。
ポイント
リフォームするならコストが安くて効果的な部分を重点的に。壁紙(クロス)貼り替えや、柱の研磨などがおすすめ。
こういった、誰でもきれいなほうがうれしいし価格も安い場所であれば、リフォームしておく価値は十分にあります。
平均的なリフォーム予算が200~300万円ということを考えると、ほとんどの買い手は普及品のビニールクロスで満足できるはずですから、「きれいな方がうれしい」と思ってもらえます。
逆に触らない方がいいのは「趣味性が高く価格も高い場所」
逆にプロの不動産屋でもよくミスをする失敗ポイントもあります。なかでもシステムキッチンや浴室は、価格も高くて失敗もしやすいので、避けたい設備ナンバーワンでしょう。
システムキッチンはIHがいいという人と、絶対ガスがいいという人がいますし、身長によって最適な高さが変わってきます。現在一般的なのは高さ850ミリのキッチンですが、身長が高い人は900ミリ、逆に低い人であれば800ミリが適しています。
プロの不動産屋であれば、よく出る850ミリに決め打ちしてしまい、カラーも白か明るめの木目にしておき、安くて質のよいメーカー(永大産業など)を選択することが多いですが、ある程度経験がものをいう部分です。
しかも価格は高く(プロであれば材料費20万円以内で仕入れると思いますが、一般には困難です)、施工には専門の職人を呼ぶ必要があります。特にシステムバスは認定を持っている職人でないと施工できない(メーカーから売ってもらえない)ことも多く、手配も大変です。
ポイント
水回りなど難しい部分のリフォームは原則として避けておき、買い手に任せる方が無難。
ハウスクリーニングは本当に効果があるのか?
建築業界には美装屋さんという職種の人たちがいます。普通のハウスクリーニング屋さんというより、売買や賃貸に絡んで物件を清掃するのが専門の人たちです。
美装屋さんにお願いするとしたら、床のワックス掛けがかなりおすすめです。壁紙と同じく面積が広く、施工単価も安く、なおかつきれいになったら目立つ場所だからです。
ただし床によってワックスのチョイスが違ったり、新建材などでワックス不可のケースもあります。
つまり、リフォームとハウスクリーニング、両方の相談に乗ってもらえる不動産業者を捕まえるのが、もっとも大事な売却のコツといえます。ただしマンションとリフォーム、両方に詳しい業者を探すには、それなりのコツがあります。
マンションが得意な不動産業者のアドバイスをもらいたい!
マンション売却時の一括査定サイトは、マンションに詳しい業者を集めている、マンション専門の査定サイトがデフォルトになります。
参考マンションナビ……マンション専業なので効率的
マンションナビであれば、ひとまず「マンションに詳しい」という点はクリアできている業者が見つかります。
複数の査定書をもらい、その中から「リフォームもわかっている」「建物に詳しい」という担当営業マンを探してください。
積極的に買取りをしている不動産業者ならリフォームに詳しい
リフォームにくわしい業者かどうかを見極める、わかりやすいポイントは「積極的に買取りをしているかどうか?」という点。買取りをしている業者は、買い取った後にリフォームをして価値を増加させた後で、再販します。
ですから、買取りもしている不動産業者は、ふだんからリフォームに携わっているのです。
そこで、
- マンションナビで複数の不動産業者に査定依頼をする。
- 買取りをしている業者を重視しながら仲介依頼をする業者を探す。
という手順で売却を進めるのがおすすめです。
また、マンションナビなどの不動産一括査定サイトについては、以下の記事で詳しく分析しています。
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ただし、マンション買取り業者に買い取ってもらうというのはおすすめしません。買取りは市場価格の5~7割程度という安い価格になるためです。
あくまでも「買取りに積極的な業者」を探し、仲介で売却してもらってください。