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「賃貸と持ち家で1300万円の差」は本当なのか検証してみました

結論からいうと、同一エリアで同程度の広さ・グレードの住宅に35年住んだ場合のコストを詳細に計算すると、賃貸の方が約1300万円高くつくことがわかりました。

同程度の広さ・グレードの家に住んだ場合のコスト比較(グラフ)
地方の政令指定都市の物件で検証しました

上記は大阪府堺市南区に実在する2物件(いずれも一戸建て)に35年間住んだ場合のコストを、できる限り詳細に割り出した結果です。

その差は約1,280万円。確かに、約1300万円の差がつくようです。

この記事では具体的な物件の紹介と、コスト比較をした際の計算方法を公開しています。

西村博之(ひろゆき)さんや堀江貴文さんは「賃貸のほうが有利だ」と言っています。その間違いをデータで検証した記事もおすすめです。

今回比較した賃貸vs持ち家の実在物件とは

物件を比較したエリアの地図

今回、賃貸vs持ち家に35年間住んだコストを比較するにあたり、できるだけ条件を揃えるために同じエリアにあり、類似した規模の一戸建てをピックアップしました。

この記事では、同一エリア内の類似物件を比較しています。

具体的には、政令指定都市(大阪府堺市)のベッドタウン主要駅に隣接するエリアで、athomeに掲載された2つの物件を採用しました。

賃貸物件で選んだのは家賃16万円の物件

事例1

賃貸一戸建ては、駅から徒歩23分、家賃16万円の物件を選びました(比較する持ち家との条件が最も近いため)。

築年は2002年ととやや古いですが、床面積は112.8㎡と広めです。間取りも4SLDKと余裕があります。

持ち家物件で選んだのは3680万円の物件

事例2

持ち家代表として選んだのは、駅から徒歩17分、22年1月完成の建売住宅です。間取りは比較対象の賃貸物件より少ない3LDKですが、床面積は103.83㎡とそこそこ広く、設備も分譲用のものがインストールされているため、一定のクオリティーは保たれています。

一般的に、建物のクオリティーは売買物件(分譲)のほうが高いです。

賃貸一戸建てに35年住んだ場合のコストを計算

DATA
家賃16万円
建物面積112.8㎡
築年2002年
駅徒歩23分

賃貸と持ち家を比較する場合、賃貸のコストを家賃だけで判断する事も多いですが、実際には家賃保証、2年ごとの契約更新料、借家人保険なども加味する必要があります。

それらを加えた総合計は以下の表の通りです。

35年でかかる金額
家賃¥67,200,000
諸費用¥253,000
安心サポート¥369,600
更新料¥850,000
借家人保険¥525,000
合計¥69,197,600

諸費用に含まれるのは、仲介手数料(176,000円)、クリーニング特約(44,000円)、鍵交換費用(11,000円)、初回事務手数料(22,000円)です。

なお、仲介手数料は法令の本則では月額家賃の0.5か月ぶんですが、賃貸不動産業界では1か月ぶん受領することが常態化しています。

安心サポートというのは、最近賃貸管理業者が徴収している夜間電話サービスなどの費用です。月額880円ですが35年で369,600円になります。

本来このような費用は不要(管理業者が負担すべき)ですが、こういった費用の徴収も常態化しています。

更新料は2年ごとに50,000円かかり、35年で85万円になります。また保険料は年額15,000円程度として、35年で525,000円かかる計算としました。

以上を合計して、大阪府堺市南区で賃貸一戸建てに35年間住んだ場合の総コストを約6,920万円と見積もっています

家賃は35年を通して一定と仮定しましたが、その理由は記事末尾で簡単に説明しています。

一戸建ての持ち家に35年住んだコストを計算

DATA
価格3,680万円
床面積103.83㎡
築年新築
駅徒歩17分

上記の賃貸一戸建てと同じエリアに35年住んだ場合のコストを見積もりました。こちらは計算がやや複雑になりますが、できるだけ詳細に割り出しています。

まず物件価格以外にかかるさまざまな費用を計算しました。

35年でかかる金額(物件価格以外)
諸費用¥1,180,000
固定資産税¥3,800,000
ローン金利¥6,830,000
火災保険¥2,000,000
リフォーム・メンテ¥5,800,000
合計¥19,610,000

上記の表の「諸費用」は購入時にかかる費用です。一般に自己資金が必要とされる部分ですが、所有権移転費用など登記費用、契約書に貼る収入印紙代、フラット35融資手数料を合計したものです。

諸費用の内訳

登記費用¥450,000
収入印紙¥30,000
フラット35融資手数料(概算)¥700,00
合計¥1,180,000

次に固定資産税を計算しました。同エリアの公示価格(約95,000円)の70%(66,500円)を固定資産税評価額と見積もり、小規模宅地の特例を加味した土地の年税額は22,155円と推定できます。35年間で77,5000円ほどかかります。

建物に関しては新築時の評価額を1,200万円と推定し、35年後にほぼゼロになることを勘案して、35年の総額で固定資産税294万円と試算しています。

火災保険については、損保ジャパンの「1分でできる保険料クイック試算」を利用しました。家財保険あり(300万円)、地震保険ありのミニマム料金を採用しています。

ローンの金利は、フラット35を利用し、金利1%固定で35年償還として試算しました。フルローンで3,680万円借入をする想定です。

最後に35年間のリフォーム・メンテナンスには外壁・屋根の工事を2回実施し、水回りの設備更新を1回実施し、内装クロスの貼り替えを1回実施することを想定しました。なお、新築10年目以降5年ごとにシロアリ防除工事を行うことも加味しています。

リフォーム・メンテ費用の内訳

工事内容施工回数金額35年間合計
外壁塗装・屋根塗装2¥1,500,000¥3,000,000
設備更新1¥1,500,000¥1,500,000
内装クロス1¥400,000¥400,000
シロアリ防除工事6¥150,000¥900,000
合計¥5,800,000

最低限行うリフォームやメンテナンスは、上記の580万円が目安になります。結果、このエリアで持ち家に35年間住んだ時のコストは56,410,000円と推定できます。

なお、外壁塗装は以下のような方法で費用を圧縮できます。

また、シロアリ防除工事のコストについては以下の記事で解説しています。業者により費用と施工レベルにバラツキがあるので注意してください。

結論として「永く住むなら持ち家が有利」と言えます

計算する前は「1,300万円もの差がつくことはないだろう」と考えていましたが、今回記事作成のために費用を算出してみて、

フドマガ
フドマガ
思ったより賃貸と持ち家の差額は大きい。

とわかりました。

「賃貸の方が有利」派との違い

勝間和代さんや、堀江貴文(ホリエモン)さんは、「賃貸と持ち家ではコストにあまり差がない」といいます(注1)。

その理由は、持ち家を、持ち家のローンと同額程度で住める賃貸物件と比較しているからです。

この記事で取り上げた売買物件(持ち家の事例)では、ローンの月額は103,881円です。類似物件を賃貸で借りるとすると、家賃月額は15~18万円くらいになります。

堺市南区で家賃10万円で住める賃貸物件とローン10万円で住める持ち家の間取り比較
家賃vsローンを同額で比較するのは間違い

同エリアで家賃10万円しか出さないとすると、金額的には一戸建ては無理で、2LDKか3LDKのアパートになります。

フドマガ
フドマガ
単純化して「価格」だけで割り切って比較すると、賃貸と持ち家の差は小さく見えます。

しかし「おなじクオリティーの住宅に35年住むなら」と考えた場合、何度計算しても、持ち家が有利という判断になります。

堀江さんや西村博之(ひろゆき)さんの「賃貸有利説」のカン違いを、データで指摘した関連記事もおすすめです。

関連記事ひろゆきやホリエモンの「持ち家より賃貸」論には老後破綻の危険が…

理屈を考えれば賃貸の方が高いのが当然 ビジネスについて知識が深い堀江貴文(ホリエモン)さんや西村博之(ひろゆき)さんが、そろって「持ち家より賃貸がおトク」といいます。でも、それは間違いです。 同一エリ ...

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注1……勝間さんは自身のYouTubeチャンネルで「持ち家と賃貸のコストの差は2%程度」と述べています。この試算と前提条件が異なるからです。

賃貸より持ち家のコストが有利となる理由

日経ビジネスのこの記事は信憑性が高い

ここまで見てきたように、同じ街に長く住む前提であれば、コスト的には持ち家が有利です。

エリアによってはもう少し、賃貸と持ち家の差が少なくなる場合もありますし、差が開く場合もありますが、逆転することはありません。

家賃に含まれているものの模式図

なぜなら、賃貸物件の家賃にはさまざまな「コスト」が上乗せされているからです。

家賃に上乗せされているコスト
家主の利益一般に年利4~8%くらい
空室コスト空室が出た時の家主の損失が上乗せされる
家賃滞納コスト誰かが家賃滞納する可能性を補填するコスト
入居者募集コストリフォームや原状回復費用
アパートローン住宅ローンより利率が高いローン分も上乗せされる

そこで、原理的に賃貸物件の家賃が持ち家のコストより不利になるのはしかたがないことです。これについては「日経ビジネス」で経済の専門家が議論をしています。

家賃に含まれるさまざまなコストについて、以下の記事でより突っ込んだ解説をしています。

サラリーマンでしっかりめの家賃補助がある場合には、賃貸の方が有利となる可能性があります。

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「それなら持ち家を検討しよう」と思った場合、ポイントが2つあります。

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フドマガ
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モゲチェックについての詳しい解説記事もあります。

関連記事モゲチェックは怪しい?住宅ローンが月々1万円安くなる秘密は?

出典:株式会社MFSプレスリリース 住宅ローンが100~200万円安くなるのが当たり前だ……。 「しかも無料で利用できるサービス」と聞くと、確かに怪しく感じますよね。 この記事では不動産業者の目線で判 ...

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予算については、スマホの普及で可視化されるようになっています。しかし、ダメな物件を買ってしまうと「賃貸にしておけばよかった…」と反省する結果になるかもしれません。

フドマガ
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このサイト「フドマガ」の関連記事でも、さまざまな記事を公開しています。

まずは以下のインデックスから、気になるテーマを選んで読んでみてください。

おすすめを1つだけあげるとすれば、この記事からスタートするとわかりやすいと思います。

補足 建物が古くなったら家賃は下がるのでは?

2022年3月、ツイッターでご批判をいただいたいので、その点も簡単に検証しておきたいと思います。

趣旨としては「家賃は値下がりするから計算がおかしいのではないか?」ということですが、実はそれほど単純ではありません。特に戸建賃貸に関しては、建物が古くなったから必ず家賃が下がるかというと……そういうわけでもありません。

家賃は年に1%程度下がるといわれていますが……

三井住友トラスト基礎研究所によると年1%下がる

三井住友トラスト基礎研究所の記事によれば、「経年劣化が賃料に与える影響は年率平均に換算すると約1%」と推定されるようです(集合住宅の場合)。

しかしながら、築20年以降のフェーズでは、家賃の下げ圧力が相当程度低くなるとわかっています。加えて一戸建て賃貸は家賃が下がりにくい傾向があります。

そこから、築20年の一戸建て賃貸住宅の場合は、家賃はあまり下がらないと考えていいはずです。

フドマガ
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ここまで読むと「えー、築20年から35年経ったら、築55年じゃん!」と思われるかもしれませんが、実は築55年でもそれほど下がりません。

実際のデータからも「家賃はあまり下がらない」と確認

下記は、大阪府堺市堺区で広告されていた一戸建て住宅の床面積1平米あたり家賃を算出してみた表です(2022年3月現在/athome掲載物件)。

築年 床面積 月額家賃 平米あたり家賃
2016 97.39 169000 ¥1,735
2013 101.43 150000 ¥1,479
2005 37.67 60000 ¥1,593
1993 80.91 108000 ¥1,335
1984 116.42 140000 ¥1,203
1980 107.86 95000 ¥881
1978 85.36 180000 ¥2,109
1978 30 46000 ¥1,533
1977 117.62 110000 ¥935
1972 35 43000 ¥1,229
1972 50 60000 ¥1,200
1965 34 50000 ¥1,471
1958 35 54000 ¥1,543
1951 154.52 135000 ¥874

こうしてみると、築年数と家賃はあまり相関していないことがわかります。特に都市部の一戸建て住宅については、築古だから家賃が安いとも限りません。

その理由は、リフォームをして更新することで物件の価値が増加し、家賃も維持できることにあります。

というわけで、とくに戸建賃貸の場合は、古くなったら家賃が下がるとは言い切れません。

ただしこの点はエリアによって状況が変わるので「都市部であれば」という条件は外せません。

補足2 賃貸なら子どもが独立した後に「住み替える自由」がある?

これについても、データで検証しておきます。実は、日本人は子どもが独立しても住み替えをしません

5年移動率の年齢階推移推移

上の図は、国立社会保障・人口問題研究所が調査した5年移動率(ある時点から5年後に引っ越している率)のグラフですが、30歳前後をピークにどんどん減少していき、子育てが終わる60歳頃には非常に低調になります。

つまり、子育てが終わったら手頃な小さい家に引っ越しをする、という人は少数派です。

そこで、「家を買ってしまったら転居できないのがデメリット」という指摘は、あまり気にしなくてよいと思います。

フドマガ
フドマガ
どうせ引っ越さないなら、安心して買っちゃっていいですよね。

まとめ

実はこの記事の試算では、住宅ローン減税とすまい給付金を計算に入れていません。それを考慮すると、さらに数百万円ほど持ち家が安上がりだということになります。

なぜ住宅ローン減税を試算にいれなかったのかというと、住宅を買う個々人の収入等に影響されるので、計算できないからです。すまい給付金も同じ理由で計算に入れていません。

一方で、サラリーマンで手厚い家賃補助がある場合は、むしろ賃貸の方が安くなる可能性もあります。

この記事は不動産会社を10年経営した経験を生かしてできるだけリアルな数字を算出したものですが、それでもひとつの試算に過ぎず、他にも答えがあるかもしれません

この記事ではコストを中心に賃貸と持ち家を比較しました。しかし「賃貸か持ち家か論争」は宗教戦争とも揶揄される問題で、誰もが納得する結論を出すことは困難です。損得よりもライフスタイルを優先する、という判断も尊重されるべきだと思います。

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