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オウンドメディアは「意味ない」のか? 失敗と成功を分けるもの

オウンドメディアは本当に意味がないのでしょうか?

やり方を間違えると確かに意味がありません。しかし、正しい戦略で運営すれば、AI時代でも結果を出せる「信頼資産」となり得ます。

まず、現状把握からスタートしましょう。

筆者は、全国の不動産会社ホームページのアクセスを独自調査したことがあります。その結論は、約75%のウェブサイトが月間1000アクセス未満という「ほぼ見られていない」状態にあるという現実でした。

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一方で、筆者が運営する不動産オウンドメディアは月間5000〜6000ページビューで月に1〜2件の査定依頼(売却相談)を獲得しています(運営開始半年のサイト)。月間1万ページビュー強のサイトでは、毎月2件程度の査定依頼が獲得できています(運営2年目のサイト)。

本記事ではこういった経験に基づき、なぜ多くのオウンドメディアが失敗するのか、そして中小企業が今から勝てる現実的な戦略とは何かを、実務データと一次情報に基づいて解説します。

オウンドメディアが「意味ない」と言われる5つの理由

オウンドメディアが意味をなさない最大の理由は、「短期的な売上」だけを指標とし、検索エンジンが長期的に評価を蓄積する点を無視していることです。

成果が出るまでに最低1年かかる

オウンドメディアが明確な成果を実感できるまでには、通常1年以上の継続的な運用が必要です。この「成果の遅効性」を理解していない企業は、成果が出る手前の助走期間中に諦めてしまいます。

特に中小規模の不動産会社では、専任担当者を置かずに既存業務の合間に記事を執筆する体制が一般的です。日々の業務に追われる中で更新が途絶え、サイトが陳腐化するという負のループに陥る事例も多く見られます。

筆者が運営するオウンドメディアでは、最初から1年という長期スパンでの成果発生を想定してサイト設計を行っています。

半年以内に成果が出始めたメディアもありますが、それは「建売の客付けのみ」「飯田産業グループホールディングスのみ」という超特化型の戦略を取ったケースです。「アーネストワン」などのブランド検索で上位を取れる専門性に絞り込むことで、成果までの期間を短縮したわけです。

記事のSEO的な品質が低く流入(読者)が取れていない

筆者が全国の不動産会社のホームページをランダムに抽出し、月間トラフィックを調査した結果、以下のような実態が明らかになりました。

  • 月間アクセス0〜10:14.6%
  • 月間アクセス1〜99:13.8%
  • 月間アクセス100未満:45.5%
  • 月間アクセス1000未満:75.6%

つまり、4分の3の不動産会社のホームページは反響が取れないレベルのアクセス数です。

逆に、不動産分野で月間2万ページビュー以上を獲得できている企業はわずか4.9%に過ぎません。少数の「SEOに強い会社」が検索トラフィックを独占しているのが現実です。

効果的なキーワード選定と導線設計がなされていない

では、月間2万ページビュー以上を獲得して「エリアのSEO強者になるべきか」というと、実はそうとも思えません。

事実、筆者が運営する宅建業のオウンドメディアでは、月間5000〜6000ページビューで月に1件の査定依頼、1万ページビューで月に2件程度の反響を獲得しています。

これはページビュー数を追わず、問い合わせが取れるキーワードを中心にサイトを設計しているからです。不動産分野ではSUUMOやLIFULL HOME'Sといった巨大ポータルサイトがビッグワードを独占しているため、中小企業が正面から戦っても勝ち目はありません。

もちろんトラフィック量が多い方がドメインパワー(自社のサイトの検索エンジンからの評価)が高まり、上位に露出しやすくなります。ですから、ページビュー数もある程度追いかけますが、そちらを最重要の目的と捉えると、方向性を間違ってしまいます。

検索アルゴリズムの変化により表面的な記事は淘汰される

Googleの検索品質評価ガイドラインでは、不動産は「Y-M-Y-L(Your Money or Your Life)領域」、すなわち人々の経済的安定や人生の安全に重大な影響を与えるカテゴリーとして、厳格に定義されています。

この分野では、単にコンテンツを量産するだけの従来型アプローチは通用しなくなりました。信頼性と専門性の担保が検索順位の死守に直結します。

特に2022年に追加された「Experience(経験)」の要素は、不動産会社にとって最大の武器となり得ます。

AIが生成した無機質な記事や、現場や現地を知らないライターが書いた一般的なコラムは、Googleから評価されなくなっています。逆に「宅建士の視点」「現場の経験」を徹底していくことで、Googleからの評価が高まることが期待できます。

サイトテーマが明快でない(徹底して絞るべき)

筆者の感触では、最近のGoogleは専門性を非常に重視していると感じています。5年前であれば「不動産売却」という大まかなテーマで記事を書いていれば、小さな会社でもある程度は検索上位が取れました。しかし今は、もっと細分化していく必要があります。

たとえば、エリアであれば「三重県」ではなく「鈴鹿市」というレベルまで超セグメント化する。あるいは、特定の建売メーカーやマンションシリーズに特化するなど、専門性の幅を極限まで絞るべきです。

本当に「意味がない」から今すぐやめるべきケース

すべてのオウンドメディアが悪いわけではありません。しかし、以下のケースに該当する場合、今すぐやめて戦略を練り直すべきです。

短期的な売上(今月の数字)だけを求めている場合

オウンドメディアは資産型のマーケティング手法です。リスティング広告やSNS広告のような「即効性」を期待することはできません。

メディア種別即効性顧客の質・ロイヤルティコスト構造
ポータルサイト非常に高い。掲載即反響が期待できる物件比較が主目的。会社への愛着は低い成約報酬や掲載枠ごとの課金
SNS・広告高い。ターゲットを絞った訴求が可能興味関心層。離脱も速い広告費の継続投入が必要
オウンドメディア低い。成果まで1年以上の継続が必要極めて高い。専門性に惹かれて流入する初期制作費と継続的なコンテンツ制作費(資産化する)

ポータルサイト経由の顧客は、物件そのものに興味があるため「相見積もり」や「競合他社への並行問い合わせ」が前提となっており、成約に至るまでのハードルが高くなります。

対して、自社メディアの有益なコンテンツ(たとえば、特定の自治体独自の補助金制度の解説、特定エリアにおけるマンションの大規模修繕履歴分析など)を通じて流入した顧客は、その企業の「専門性」を既に信頼しているため、初回面談から媒介契約に至るまでのスピードが速い傾向にあります。

社内に専門知識を持つ人がおらず、外注による「コタツ記事」を量産している場合

これが最も深刻な問題です。

筆者は実際にSEO記事の制作で有名なW社でライター登録し、ウェブ制作を下請けとして受注してみました。「大手はどうやって記事を作っているのか」を体験したかったからです。

その現場で気づいたのは、オウンドメディアを外注して作ってしまうと、ほとんどその業界に経験のないエディターが編集をして、専門知識のないライターが書いて、やはり専門知識のないディレクターがそれをチェックして納品してくるという実態です。

筆者は宅地建物取引士の資格を持ち、10年間不動産会社を運営し、なおかつ元雑誌編集者として原稿が書けるという立場です。その目から見ると、外注で制作されるコンテンツは専門性が致命的に欠けた「コタツ記事」の集まりだったのです。

これはあらゆる分野でいえることです。「ウェブ制作会社に頼むと素人が制作する」「SEO会社に頼むと素人がSEO分析をする」この構造的な問題をどう乗り越えるかが、オウンドメディア成功の分水嶺となります。

コタツ記事とは、調査や取材を行うことなく、コタツでぬくぬくと制作した記事を指します。著者の視点や体験が書かれていない、ネット記事の寄せ集めのようなものです

しかし解決策は難しい

理想は、宅建士の資格があり、実務経験もあわせ持つSEO人材を見つけることですが、なかなか見つからないでしょう。その場合は、自社から1人、SEOと業界知識が分かる人を育てるという覚悟で人材を配置していくしかありません。

つまり、オウンドメディアは意味がないわけではないが、めちゃくちゃハードルが高いと考えたほうが現実的です。

ウェブ制作会社とクライアントの深刻なミスマッチ

オウンドメディアが失敗する最大の要因は、ウェブ制作会社側がSEOを理解していないにもかかわらず、「SEOに強い」とうたっている実態にあります。

「SEOに強い」の正体

アルサーガパートナーズ株式会社の調査によれば、ホームページ制作を外注した企業の約87.7%が何らかの失敗を経験しています。この「失敗」の多くは、制作会社がGoogleのガイドラインに沿った本質的なSEOを実現できていないことに起因します。

多くの制作会社が提供する「SEO」とは、titleタグやmeta descriptionの設定、サイトマップの送信といった、2010年代前半までの「SEOの基本」に過ぎません。

さらに深掘りすると、具体的な問題点は以下の通りです。

デザインとSEOのトレードオフ

見た目の美しさを優先するあまり、テキスト情報が画像化されたり、JavaScriptによる過度な演出がクローラー(検索エンジンのロボット)の巡回を妨げたりするケースが散見されます。

不動産業界特有の商慣習や法的規制がわかっていない

デザイナーやエンジニアが不動産業界の実務を理解していないため、E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼性)の基盤となる「専門性」をシステム的に表現する設計がなされていません。

たとえば、宅地建物取引業免許番号の記載位置、有資格者プロフィールの構造化データ、物件情報の正確な更新ルールなど、不動産特有の信頼性担保要素が欠けています。

価格優先の体制による技術的問題

中小企業が重視する「コストパフォーマンス」に応えるため、制作会社は経験の浅い若手デザイナーや、SEO知識を持たない外部パートナーをアサインせざるを得ず、結果として技術的に欠陥のあるサイトが納品されがちです。

アンケート結果によれば、制作会社選びで「失敗した」と感じる企業の70%が「デザインの質の低さ」を挙げ、33.3%が「知見の低さ・技術のずさんさ」を挙げています。さらに、失敗した企業の53.3%が「価格の安さ」を基準に会社を選定していたというデータがあります。

つまり、SEO効果を期待しながら低予算で発注することには無理がある、ということです。

制作会社選びの失敗パターンと対策

失敗の分類具体的な原因対策の方向性
価格重視の罠安価な制作費では、SEO戦略を練る工数が捻出できない相場(コンサル込みで月数十万円〜)を理解する
知人の紹介スキルセットの確認が不十分なまま「断りづらさ」で発注紹介であってもRFP(提案依頼書)に基づき選定
丸投げの弊害自社の強みを伝えず制作会社に依存し、凡庸なサイトが完成自社の一次情報を積極的に供給する体制を構築
ロードマップ欠如制作とSEO実装のタイミングが合わず、公開後にやり直し制作開始前にSEO会社と制作会社の三者会議を行う

筆者が現場で実感したのは、ウェブ制作会社の導線設計がめちゃくちゃだという点です。

多くの中小不動産会社の査定依頼フォームや問い合わせフォームは、入力項目が多すぎます。町のウェブ制作会社に頼むと、非常にたくさんの項目を書かせるフォームを作ってくるのですが、これは今のIT企業のトレンドと真逆です。

現代の優れたサービスは、いかに少ない入力項目で問い合わせを取るかを追求しています。不動産価格査定を出すために必要な「ギリギリの項目」に絞り込むべきなのに、その設計ができていない時点で、導線設計の知見がないと判断できます。

また、査定フォームを1個で済まそうとするのも問題です。オウンドメディアの記事は長文になるため、読んでいる箇所によって査定をしたい動機やモチベーションが違います。そこに応じた複数の査定依頼フォームを用意し、モチベーションに合わせた導線設計にしていく……といった具体的な対策が取れている会社は、ほぼ見あたりません。

これからの時代に「意味を持つ」メディアの条件

では、どのようなオウンドメディアであれば、AI時代においても価値を持ち続けるのでしょうか。

一次情報の徹底

Googleが2022年に追加した「Experience(経験)」は、私たち宅建業者にとって最大の武器です。実際にそのエリアを歩き、その地域の物件を扱い、その取引をサポートした人にしか書けない情報をGoogleは求めています。

具体的には以下のような項目です。

  1. 物件スペックの羅列ではなく、実際に内見するとわかる「学校までの歩道の整備状況(通行安全度)」「坂道の傾斜の厳しさ」「周辺住民の属性や治安」などの独自情報を、現場担当者の署名付きで掲載する
  2. 有資格者(宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー、司法書士など)がコンテンツを執筆、あるいは監修していることを明示し、そのプロフィールの詳細(経歴、成約実績)をページ内に構造化データとして組み込む

超セグメント化された専門性

小さな会社で検索上位を取るには、サイトテーマをさらに細分化していく必要があります。

筆者が運営しているオウンドメディアで半年以内に成果が出始めたものの1つは、「建売の客付けのみ」に絞り、なおかつ「飯田産業グループホールディングスのみ」に絞っているサイトです。飯田産業関連のブランド検索で上位を取れているため、すでに安定して購入相談が取れています。

このような、極端なテーマの絞り方が必要になっています。

もう1つ考えられるのは、エリアを超セグメント化していく戦略です。

これまでは小規模な宅建業者であっても「岡山県」というキーワードで勝負できました。しかし、今は岡山県で勝負しようとしても、SUUMOやホームズといった超大手が上位を取っていきます。

そこで、もっと小さなセグメントに分けて「岡山市北区」といった超細かい切り方にしていくのです。

そうするとトラフィック全体では小さくなってしまいますが、少ないトラフィックでも関心の高い読者が見てくれるという流れになります。これが今、小規模な不動産会社が取りうる戦略だと考えています。

問い合わせ導線の最適化

筆者のメディアでは、以下のような導線設計を行っています。

離脱防止ポップアップの設置

ユーザーがページを離れようとした瞬間に表示されるポップアップで、最後の接点を作ります。

サイド追尾式フォーム(PC向け)

効果が最も高いのは、サイドバーに4項目しかない査定依頼フォームを設置し、追尾式で常に表示させる方法です。

筆者が調査したところ、トーマ不動産マガジンでは半数の読者がPCで読んでいることが分かりました。そこでこの追尾式査定フォームを導入したところ、ここからの問い合わせは非常に多くなりました(全体の約半数)。

ユーザーがスクロールして読んでいっても、常に画面右側に簡易的な査定フォームが表示され続けるため、検討意欲が高まった瞬間に迷わず行動に移せる設計になっています。

記事の文脈に応じた複数のCTA

記事のどの部分を読んでいるかによって、ユーザーの「売却へのモチベーション」は異なります。そこに応じた複数のCTA(行動喚起)を配置することで、取りこぼしを防ぎます。

信頼性の技術的担保

不動産はYMYL分野であるため、技術的な不備があると、簡単に信頼を崩壊させます。

  1. SSL化(HTTPS)の徹底:全ページの暗号化は最低条件。非SSLページが一部でも混在している場合、検索順位に負の影響を与える
  2. 運営者情報の透明性:会社概要、所在地、代表者名、そして最も重要な「宅地建物取引業免許番号」を、クローラーが認識しやすい形で記載する
  3. 正確な情報の更新:記事の「最終更新日」を明記し、3年以上前の古い情報を放置しないメンテナンス体制をとる

参考までに、筆者は構造化データに埋め込むためだけの、各宅建業者の代表者や自分自身のプロフィールページをつくっています。つまり、GoogleのクローラーやAIに読ませるための、人間向けとは少し違った設計のプロフィールページを設けているわけです。

AI時代の可能性

生成AIが普及し、ユーザーの検索行動が変化する中で、不動産オウンドメディアは今後どのような価値を持つべきでしょうか。

筆者は、生成AIを意識しすぎてそちらに軸足を移しすぎると、今の時点では失敗すると考えています。なぜなら、作業の内容としては、これまでのSEOもこれからのGEO(Generative Engine Optimization:生成エンジン最適化)も、やることは変わらないからです。

ただし、目的が少し変わってきます

今はまだ2026年の2月ですが、今年の末や来年になってGoogleの検索よりもAIによる検索が多く使われるようになった時点で、AIは検索結果をまとめて、「この不動産屋さんに頼んでください」と実名での結論を返してきます。

そこでこれからは「AIに実名を挙げられるようなSEO対策」という風に、力点がシフトしていくだろうと考えています。

AIが実名推薦する条件

AIは内部的にサブクエリ(細かい検索)を作って検索をします。

たとえば、人間のユーザーがAIに「おすすめの不動産屋さんを教えて」というと、AIは「売るんですか?買うんですか?」「どういう物件ですか?」と整理をしたうえで、ユーザーの端末位置情報も参照しながら、非常に具体的な検索を行うはずです。

たとえば、ユーザーは「相続をした実家に誰も住んでいないので売却をしたい。でも売れるかどうか分からない。場所は沖縄県南城市」といった具体的な条件でAIに質問します。

その時に、「南城市 相続不動産 売却」という超セグメント化されたキーワードで専門性の高いコンテンツを持っているオウンドメディアが、AIによって実名推薦される可能性が高いと考えられます。

たとえばトーマ不動産マガジンは現在、その時代を見据えたサイト設計へとシフトしています。

まとめ「戦略があればオウンドメディアは意味がある資産になる」

オウンドメディアは「意味がない」のではありません。戦略なき運用と、SEO知見のない制作会社への丸投げが、意味をなくしているのです。

やめるべきケース

  • 短期的な売上のみを追求している
  • 外注による専門性のない「コタツ記事」を量産している
  • 価格の安さだけで制作会社を選んでいる

作り替えるべきポイント

  • 専任担当者の配置:自社から1人、SEOと業界知識が分かる人を育てる覚悟を持つ
  • 超セグメント化:ビッグワードを捨て、勝てる領域(地域、物件種別、顧客層)で専門性を極める
  • 問い合わせ導線の最適化:少ないトラフィックでも成果を出す設計を徹底する
  • 一次情報の徹底:現場でしか得られない経験と知見を記事化する
  • 技術的信頼性:SSL、正確な情報更新、免許番号の明示などYMYL基準を満たす

筆者の経験から断言できるのは、オウンドメディアは意味がないわけではないが、めちゃくちゃハードルが高いということです。しかし、そのハードルを乗り越えた先には、AI時代にも通用する「信頼の拠点」としての確固たる地位と、安定した反響が待っています。

いや、待っていますと断言するのは早計かもしれません。

AI検索時代は、まだ誰も見たことのない世界です。ですから、私の推測が間違っている可能性もあります。一方で、まだ誰も(SUUMOのような大手でさえも)ポジションを獲得できていない世界です。

やるなら今でしょう。

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