リフォーム工事は細かく発注先を分ける「分離発注」で、劇的にコストを下げることができます。しかし、一般の人にはハードルが高く、失敗するとかえってコストがかかる危険性も。
外部リフォーム | 外壁塗装や屋根まわりはコストが品質に直結するため、品質を維持して適正価格で発注しましょう。 |
内部リフォーム | 内部は工程が多く、よく見るとコストを落とせるところがあります。どこでコストを落とせるか考えましょう。 |
リフォームの分離発注は「外と中に分ける」2分割で、安全にコストダウンすることができます。
なお、外壁塗装のコストダウンについては、以下の記事で細かく解説しています。
外壁塗装するお金がない時の4つのノウハウと絶対避けたいNG行為
フルリフォームを安全にコストダウンする考え方
いままでたくさんのリフォーム業者さん、大工さんと仕事をしてきて、発注の仕方を難易度でわけると次の図のようになると考えています。
そこで、この記事では「中と外に分けるざっくり分離発注」でどこまで安全にコストダウンできるかを考えていきます。
どれくらいのコストダウンをめざすか?
一般的にリフォーム工事における工務店経費は25~40%です(全国建設労働組合総連合の資料より)。ざっくりと3割の経費がないと工務店経営が難しい、ともいわれています。そこで、完全分離発注で落とせるコストは最大3割がめやす。
一方、この記事の「ざっくり分離発注」で目指すのはコスト1割カットです。むりをしないので、失敗しにくいですし、手間も最小限ですみます。
外部と内部、すべてを自社施工する業者は少ない
- 外部工事と内部工事の両方を自社施工できる業者は非常に少ない
- そうであれば、外と中に分離発注した方がコストも品質もよい
- 内部は構造に直結しないのでコスト重視で考えるのもあり
- 外部工事は建物の寿命に直結するので品質重視で考えるべき
というわけで①外回りは自社施工できる業者さんに一括してお願いし、②内部は別の業者さん(=内部のプロ)に直接発注するのが効率的です。
たったそれだけでも、内部(または外部)工事を下請けに外注する際のマージンをカットすることができるからです。
ポイント 外部をすべて自社施工する業者はありますが、内部をすべて自社施工する業者はあまり見かけません。通常、大工、設備、電気、クロスなどの各工程を別々の業者が担当し、リフォーム会社がそれを統括しています。つまり、内部工事は複雑で工程管理も大変だが、コストを落とす余地もそこにはあるといえます。
というわけで、まずは絶対に必要になる、外回り一式を任せられる業者を探してみましょう。
外部を任せられる業者さんとは?
外回りの業者は「安さ」で選ばない
不動産会社の仕事としていくつかの塗装業者さんと仕事をしてきた結果、私は「外回りは値段で選ばない方がいい」と考えるようになりました。
理由はふたつあります。
値段で選ばない方がいい理由
- 屋根や壁は雨漏りなど深刻な問題に直結している
- 塗装工事は原価的に価格の下げ幅が少なく、下げすぎると危険
まずひとつ目の「雨漏りなど深刻な問題に直結」というのは、わかりやすいポイントだと思います。家の寿命そのものに関わってくるので、あまりケチってしまうと建物の耐久性を下げる可能性があります。
もうひとつ、原価の問題は解説が必要かもしれません。塗装の原価は主として「ペンキ代」と「人件費」、さらに「足場台」で構成されています。そしてペンキ代は大量に購入することで下げられるものの、そこまで劇的には下がりません。
とすると、無理をして外部工事の費用を下げようとすると、人件費か材料費を削っていくことになります。「ケレンの作業を簡単に済まそう」「3回塗りすべきだが2回にしておこう」といった方法で予算を削るしかないので建物の寿命が短くなってしまいます。
あとは、どうやって塗装業者を見つけるかが問題です。
自社施工する塗装店を集めた一括見積りサービス
一括見積サイトは便利なのですが、その内容にはばらつきがあります。下請けに仕事を投げて中抜きする、いわゆる営業会社ではなく、自社施工している施工店だけを集めた一括査定サイトはそれほど多くありません。
ほとんどの一括見積りサイトでは「こんなに安くなる!」と激安をアピールしています。
しかし、激安がいいわけではなく、しっかり施工してもらったうえで高すぎる価格を避けるのが正解です。
その方向で、独自の取り組みをしているのがGoyooというサービス。
一括見積りサービスではあるのですが、いったん雨漏り診断士がヒアリングした上で、8万社以上のネットワークから適切な施工業者を選んでくれます。
「リフォームは初めて」「経験がない」という方であれば、こういったサービスを利用するほうが安心できるでしょう。
Goyoo |公式サイト
Goyooでは、無料で、他社の外壁見積もりの診断も行ってくれます。
外壁塗装見積りサイトのヌリカエも、発足当初から「激安でなく適正価格」を推奨し、実際に職人を抱えている施工店だけを集めています。
- 当サイト一押し塗装業者のN-TRUSTさんが加盟している
- 相場、塗料、見積もり書類の見方など無料で相談可能
- ユーザーと塗装業者の間に入って、きちんとコミットしてくれる
そこから、このサイトを利用して、極力多くの見積をとりつつ、不明点の相談にも乗ってもらうのがよいと思います。
参考ヌリカエ……施工店だけに見積りを依頼できます
私がこのサイトを利用するとしたら、安さだけに注目せず、リフォームしたい箇所(たとえば外壁塗装と屋根葺き直し)すべてを自社施工できているか? に注目します。また、どんな塗料を使っているのかも確認しておきたいポイントです。
塗装の種類と性能の目安は以下の通りです。
種類 | 耐用年数 |
アクリル | 3~7年 |
ウレタン | 5~10年 |
シリコン | 7~15年 |
フッ素 | 12~20年 |
さらに高価で耐用年数の高い塗料もありますが、普通の塗装であればフッ素系が上限で、シリコンでも十分許容できると思います。※塗料の耐用年数には諸説あり、大まかな目安と考えてください。
ポイント
外壁塗装+屋根の補修(葺き直し)をお願いする、外部工事の業者さんは、価格ではなく信頼性で選びましょう。価格の差=クオリティーの差となりやすい部分だからです。
外壁塗装に関するより詳しい記事は、以下をご参照ください。
-
【外壁塗装】塗料・メンテナンス時期・価格相場・おすすめローン・屋根の補修を解説
一般的な戸建て住宅の外壁は10~15年でメンテナンスが必要です。その金額は平均で109万円との調査もあり、かなり高額にな ...
続きを見る
ここまで述べてきたように、外回りの工事は無理に価格を落とすと危険です。その代わりに、リフォーム前には火災保険の請求を検討してみることをおすすめします。架空請求は問題がありますが、実際にリフォームする以上、保険を請求する正当な権利があります。
その他、外壁塗装をお得にする裏ワザを以下の記事で詳しく解説しています。
内部リフォームは価格差が大きく値下げ交渉の価値あり
いろんな物件で見積りをとっていくとわかってきたのですが、外部リフォームに比べて、内部リフォームは価格のばらつきが大きいです。
価格にばらつきがある理由は、内部工事はすべてを自社施工できないから。下請けに外注する部分が多くなるのですが、外注時にどれくらいのマージンを乗せるかは各社バラバラです。
もうひとつは、住宅設備などの「物」の値段です。キッチンや洗面化粧台を安く仕入れて安く提供してくれる業者さんならいいのですが、仕入れ能力に限界があり、この部分で高くなってしまっている見積をよく見かけます。
見積は平均を取れ! がプロの教え
バリューエンジニアリング(VE)という仕事をしていた建築士さんからアドバイスされたのが「平均を取れ!」というポイント。本来のVEの手法とは違うようですが、アマチュアでもできるテクニックとして、教えてくれました(注1)。
よく「見積は3社取れ」と言われますが、漫然と3社以上の見積をとっても意味がありません。
見積りが届いたら、面倒でもEXCELのワークシートに落とし込んでいってください。リフォーム会社によって見積の項目が違っているので、完全な表にできなくてもOK。可能な限り、項目ごとの価格を比較できるようにします。
すると、一番安い業者でも、項目によっては平均より高い部分が出てきます。
項目ごとに平均をとることによって、最安の見積に、さらに絞れる部分がないかを検討する。ここがポイントです。こういう手法なら建築に全然詳しくなくても応用していけますので、見積を比較するときはぜひ思い出してください。
内部工事の見積を取るには?
ひとまず、誰でも応用できる方法として、内部リフォームの一括見積サイトを検討してみました。調べてみると結構色々あるようですが、「リフォーム工事の相場を、あり得そうな金額でちゃんと提示している」のは1サイトだけでした。
参考ホームプロ……利用者数No.1の住宅リフォーム会社紹介サイト
実はこのサイトはリクルートが100%出資する株式会社ホームプロが運営しています。信頼性が高いのはそのためです。
たとえば「キッチン・台所リフォームの費用と相場」というページでは、目安価格帯として50~200万円、中心価格帯として100~150万円と表示しています。決して安くなく、後から「だまされたかな」みたいにならない正直なラインです。
キッチンについては私見ですが、不動産業者が仕入れる場合でも、LIXILの主力商品シエラなどで30万円前後のケースが多いです。施工費用は古いキッチンの廃棄処分を含めて15~20万円ほどみておきます。
すると、このサイトの施工例「Panasonic リビングステーションVスタイル」に入れ替えて67万円というのは、あり得そうなラインじゃないかな、と思います。本音をいうともう少し落としたい気もしますが、そこは実際の見積を見ながら精査していくことになるかと思います。
こういうサイトで相見積を出してもらい、それをしっかり比較してから内部工事を発注するのが効率的です。
ここまでの手順 外部工事をお願いする業者さんが決まったら、見積り比較サイトなどで内部工事の相見積もりを取って、見積内容を精査。
外部工事+内部工事の、ざっくり2カ所に分離発注ならこれでいけると思います。
材工分離とは? 施主支給とは?
材工分離発注(施主支給)というのは、「施工は大工さんや工務店さんにお願いするけど、材料は施主が仕入れて支給しますから、これを使ってください」という方法。コストダウンにつながりますが、ふたつほど注意点があります。
- 全て施主支給は無理がある
- 協力的な工務店・大工さんでないと不可能
まず①について。リフォーム工事の材料は幅広く、たとえば内部ドアや床材、トイレ、システムバス、システムキッチンなど様々な材料を発注する必要があります。すべてを発注していると手に負えないので、金額が大きい物だけに絞った方がよいでしょう。副資材の発注漏れなども起きますから、あまり欲張らない方がいいと思います。
②は理屈で考えれば仕方ない部分です。大工さんとしても「発注ミス等で手が空いてしまったらいやだなー」と思っているはずです。大工さんに迷惑を掛けない範囲で、どこまで材工分離とするか相談することになります。
私だったら、システムキッチンは材工分離工事にしたい部分です。けっこう価格差が大きく、特殊な職人でなく大工さんが施工できるからです。他にはトイレや洗面化粧台も、よく材工分離にします。
一方システムバスは無理だと思います。メーカーの認定を持っている職人さんでないと組み立てられないケースが多く、完全にプロの世界なので、私はここについては設備屋さんに任せていました。
施主支給で頼りになるサービスは?
この施主支給で不動産会社経営時からお世話になってきたのは、野原産業という会社です。建築関係者なら知っているはずですが、1598年(慶長3年)に創業された超老舗の建材商社。私は業務で直接営業所に発注していたので知らなかったのですが、なんと個人でもネットで注文できるようになっていました。
参考アウンワークス……野原産業が運営する国内最大級建材サイト
たとえばLIXILのリフォーム用システムキッチンパッとりくん(上の写真)が税抜き113,000円~。残念ながらシステムキッチンはほかの機種が選べないので、ハイグレードな物を希望する場合は対応できません。
しかし洗面化粧台はかなり選べますし、ジャニス工業などややマイナーなメーカーを選べば爆安です。
たとえば上のモデルLU752RSJ-10 BW1は税別27,650円から。他メーカー含めて結構選べますので、コストダウンを狙う場合はぜひチェックしてみてください。床材も安く、ノダのネクシオ ウォークフィット45 床暖房用防音フロア(定価税別46,000円/ケース)が税別15,650円など、気になる商品がたくさんあります。
もし施主支給はあきらめたとしても、見積とアウンワークスとの価格比較はしたほうがいいです。
手順をおさらいしておきます
step
1外部見積を取る
外部の見積はクオリティー重視で見積内容を精査してください。おすすめのサイトは、安さだけを訴求しておらず、信頼性の高い外壁塗装パートナーズです。
step
2内部の見積を取る
内部は工程が複雑で、コストダウンできるか所も見つかります。見積をエクセルに落とし込むなどして、しっかり比較してください。項目ごとに見積を検討し、最安の見積を出した工務店さんであっても、高すぎる項目については要交渉です。おすすめのサイトはホームプロです。材料が高すぎるのでは? と感じたら、アウンワークスとの比較をおすすめします。
step
3余力があれば材工分離発注を検討
万人にお勧めするわけではありませんが、挑戦してみたい人はアウンワークスなどを使って工務店・大工さんの見積よりコストダウンできる資材を探してみてください。大工さんの協力があれば施主支給という形で材工を分離できます。ただし、全部の材料を施主支給とするのは超高難度です。
ここまでやっておくと漫然とひとつのリフォーム会社に発注するよりも納得がいき、なおかつ価格も抑えたリフォームができるはずです。
禁断の完全分離発注……やめとくべき?
リフォームが初めてとか、2度目くらいの場合、正直なところ完全分離発注は避けた方が無難だと思います。資材・副資材の発注漏れや工程の管理ミスが心配ですし、そういう事故があると工期が長引き、コスト的にもかさんでしまいます。
が、それでも「完全分離発注に挑戦したい」というやる気満々の方に、「私はこうやっている」という方法をご紹介します。これが正解ということではありませんが、コストを下げつつ納得のいく工事をすることはできます。
大工さんを探すという苦行からスタート
内部工事の花形は大工さん。大工さんがいれば「ここ、誰に発注したらいいですか?」という相談もできますし、「工程はこんな順番でいいですか?」とアドバイスを求めることができます。
しかし、なんのツテもない状態からどうやって大工さんを探すのかという問題は残ります。これについては、私は「電話しまくる」という方法をおすすめします。
まず、タウンページで大工さんをリストアップします。さらに余力があればGoogleに「近所の大工」と入力して検索してください。ええ職人ドットコムとか、indeedの求人なども含めて検索に引っかかります。この求人情報からも、大工さんの連絡先をリストアップします。
そして、上から順に電話をして「こんな工事をしたいんです」と相談します。「えー、素人の分離発注か」と難色を示す人が多い中、若干名の大工さんが相談に乗ってくれるはずです。ここでいい大工さんがつかまれば、あとは大工さんの紹介で、いろんな職人さんを集めることができます。なので、がんばって大工さんを探してください。素人の分離発注に付き合ってくれる大工さんは、だいたいいい人です。
現地で打ち合わせをしながらプランを練る
私の場合は、現地で大工さんと打ち合わせすることからスタートします。まず最初に手描きでいいですから「こういう風にリフォームしたい」という図面を用意しておきます。
それを元に、大工さんはどこまで施工できるか? 大工さんがやれない部分はどの職人を頼むか? 材料はどちらがどの部分を手配するか? そんなことを決めていきます。
おそらく、大工さんに紹介してもらうべき職人さんは、設備屋さん、電気工事屋さん、クロス屋さんあたりだと思います。こういった職人さんを紹介してもらったら、それぞれに工事内容を説明し、見積をもらいます。
その上で「お願いしてもよい」となったら、各職人さんの予定を聞き、予想される工程を工程表に落とし込んでいきます。あとは工程表に従って、毎日現場をチェックしつつ工程管理を行います。
また、キッチンなど設備はだいたい現場受取になりますから、搬入日を決めておき、当日は立ち会いもします。
リフォームをお得にする参考記事
その他にも、リフォームをする時に役立つ記事を公開しています。ぜひ以下の記事も参照してみてください。
-
外壁塗装するお金がない時、2か月だけ待てばなんとかなるかも!?
外壁塗装が必要なのはわかります。放置すれば雨水の浸入を招き、シロアリ被害も発生しやすくなります。結果、住宅の寿命が縮んで ...
続きを見る
-
火災保険申請でリフォーム代100万円をGETする方法と注意点
リフォームを計画しているということは、家のどこかに不具合があるはずです。その破損が風水害による場合は火災保険が下りること ...
続きを見る
-
耐震補強を安くする工法が充実。0円で施工できる可能性も
進化し続ける耐震工法 わずか10年数前の建築専門書でも、耐震工法といえば手作業で金具を取り付ける工法が解説されていました ...
続きを見る
注1……バリューエンジニアリング(VE)とは、建物の機能を落とすことなくコストを削減する技術あるいはその技術を用いた仕事を指します。この記事に登場する建築士さんは、ゼネコンなどのビル建築の際にVEを担当し、コスト削減を提案するという仕事をしていました。現在はご自分の会社で住宅分譲などをしていますが、コスト削減は「スゴイ!」と驚くレベルです。ここだけの話ですが、私はこの建築士さんにツーバイフォーの住宅を1棟800万円で建ててもらいました。しかもコストが高いことで知られる沖縄県内です。お問い合わせいただければ、この建築士さんを紹介できます。と、ここでこっそり発表しておきます。