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耐震補強を安くする工法が充実。0円で施工できる可能性も

2020年2月3日

地震は心配だけど、費用や工期が不安……。

そんな風に、古い住宅の耐震性をそのまま放置している人もたくさんいます。でも、耐震補強工事の工法はどんどん進化しており、思ったより安い価格で施工できることもあります。

現在の費用目安は150~200万円程度。自治体の補助を活用すれば、50万円程度で施工できる可能性もあります。

この記事では最新の工法に加えて、自治体の補助金を申請するタイミングや業者選びのコツ、失敗しない手順をやさしくご案内します。

耐震補強工事の目安価格は、建物の種類や規模によって変化しますので、具体的には自治体の耐震診断(これも補助が出るので格安です)を活用して調査してください。

必ず発生する大地震

地震の約90%は環太平洋の帯状地域で発生し、マグニチュード6以上の地震の約18.5%が日本周辺で発生しています。30年以内に、南海トラフ地震等の巨大地震が起きる確率は80%ともいわれており、住宅を購入する場合には耐震性能は極めて重要な問題といえます(国交省『防災白書』等)。

From Wikimedia Commons

それを前提に、昭和56年(1981年)以前の木造住宅は旧耐震であり、診断・改修の必要性が高いと考えられます。

進化している耐震補強工法

フドマガ
フドマガ
耐震補強が安くなっているのは、いろんな工法が登場し、それぞれの建物にあった合理的な補強方法を採用できるようになったからです。

最近では安価で効果的な耐震補強工法が次々と登場しており、ここ10年ほどで見ても、耐震補強にかかる費用が激減しているそうです。特に注目されているのは既存の構造を壊さずに『耐震かべ』を取り付ける工法や、『壁用ステンレスブレース』を筋交いのように取り付ける工法など。

こういった工法の登場により、工期短縮やコストダウンができるようになってきました。

建物の上部構造に限らず、基礎に関してもアラミド繊維等で強化する工法が開発されており、昔のようにコンクリートを打設して補強する必要がなくなってきています。

東京都都市整備局『安価で信頼できる木造住宅「耐震改修工法・装置」の事例紹介』より

メモ

凡例は①事例の建設年、②面積、③耐震改修工事費用(全体の工事費)、④工期、⑤評点(改修前→改修後)、⑥事例の改修内容(補強か所数、施工内容など)

住みながら工事できる「外付け補強」

水回りその他のリフォームと同時に行うのではなく、耐震改修工事のみを行う場合の選択肢も増えてきました。こういったケースでは、外付け補強を選ぶことが多いようです。おおまかに、外壁にブレースを取り付ける工法と、外壁を交換する(または追加する)ことで補強する方法にわかれます。

外付け補強は外壁をはがさずに外から補強材を追加します。そのため住みながら工事でき、さらに工期も短くてすむという特徴があります。上記の例では工期が10日間とされています。

反面、壁をはがさないので内部の構造を確認しにくく、工事中に接合部の状態を確認する作業などはしにくいと言われています。施工には熟練を要する工程がありますので、耐震設計をしてくれる建築士さんといっしょに施工業者を選ぶ必要があります。

リフォーム工事と同時に行う場合

耐震改修以外のリフォームと同時に行う場合は、壁をはがして内部から補強できるので、より精度が高くデザイン的にもきれいな補強が可能です。手作業で筋交いを追加したり金物を追加していた時代に比べると、コストも工期も短縮しています。

このように既存の柱と柱の間に設置できる商品は複数開発されており、工事完了後には壁の内部に収まるため、見栄えもかなりよくなります。価格もかなり低く抑えられています。

補助を使えば自己負担が軽減

この記事の資料集めのため、さまざまな自治体の耐震補助を調査しました。耐震改修工事の事例を示している自治体もかなりあります。それを見ていくと、各自治体が耐震改修工事に必要とする平均的な金額を、どのように想定しているかがわかります。

費用の目安は150~200万円

たとえば大阪府阪南市では、以下のような事例を資料に掲載していました。

建物の全体的なリフォーム(浴室・玄関・一部居室の改修)とあわせて合計14か所の壁補強をしたケースで、耐震改修そのものに必要だった費用は168万円。市の補助金は40万円(所得により60万円まで支給される場合もあります)なので、自己負担は128万円

他の自治体でも同様の資料を公開してるケースが多く、耐震改修に必要な費用をみると150万円~、という記載が多くみられます。多くの自治体で、150万円~200万円くらいの事例が多いようです。

東京都のパンフレットの記載事例では昭和29年築の評点0.61の住宅を、費用172万円で評価1.05に改善した例などが紹介されています。この価格で耐震改修ができ、しかも外観もきれいになってしまうのが魅力です。

(このような事例が多数)

メモ

ちなみに、評点というのは耐震診断の評価のことで、1.0以上であれば「一応倒壊しない」という判断になります。0.7~1.0は「倒壊する可能性がある」で、0.7未満は「倒壊する可能性が高い」となっています。

上記は175万円の工事で評点を1.0以上(一応倒壊しない)に引き上げた事例です。これに自治体の補助を加味すると、多くの自治体で50万円以下に収まるはずです。補助の手厚い自治体では、ほとんど無料で耐震改修が施行できる可能性があります。

自治体の補助はどう使う?

自治体の補助は、補助率も補助される金額の上限もバラバラです。また年間予算もバラバラです。

新潟県燕市などは年間の補助件数がわずか5件です。年度はじめにすぐ申し込んでも、補助を受けられるかどうか……といった水準です。一方、かなり大きい予算を組んでいる自治体もあります。たとえば以下の表にある自治体の例を見るだけでも、相当ばらつきがあることがわかります(以下はすべて木造戸建て住宅についての補助)。

市町村補助率(設計)限度額補助率(施工)限度額
宮城県仙台市 自己負担最大17600円5分の4100万円
秋田県横手市 自己負担1万円23%80万円
石川県小松市8割12万円全額150万円
石川県能美市5分の412万円全額150万円
富山県富山市9割 5分の4100万円
新潟県燕市2分の110万円3分の265万円
栃木県宇都宮市3分の22ないし10万円5分の4100万円
神奈川県川崎市全額 3分の285万円
千葉県市川市3分の28万円8割100万円
千葉県柏市3分の24万円3分の150万円
愛知県碧南市3分の220万円8割設計・施工合計で120万円
岐阜県高山市  10分の10180万円
滋賀県草津市  8割100万円
大阪府堺市3分の226万円3分の2120万円
大阪府摂津市7割10万円定額70万円
福岡県太宰府市  5割60万円
宮城県日向市9割54000円8割100万円
大分県佐伯市 自己負担5500円3分の280万円

そこでまず各自治体のホームページで補助率や額を調べた上で、一度担当部署に電話で問い合わせをしてください。ほとんどの自治体で予算を掲載しておらず、年間何件の補助を出しているかわからないからです。

確実に耐震診断・耐震改修補助を受けるには年度の頭である4月にすぐ提出することが望ましいです。1~2月には準備しておき、自治体窓口で相談しておきましょう。

自治体窓口では、その他の補助なども確認しておくとよいと思います。たとえば耐震診断を行った場合に固定資産税を軽減する措置などもあります。

ほとんどの自治体では非木造住宅の耐震補助がない(もしくはないに等しい金額しか出ない)のですが、名古屋市では非木造住宅でも60万円まで補助される制度があります。軽量鉄骨造等の住宅にお住まいの方は、こういった点も尋ねてみてはどうでしょうか?

上記の市町村の補助に関する一覧表にある補助金の額は原則で、場合によっては上乗せされるケースもあります。逆に収入等の要件で補助が受けられないケースもありますので、個別具体的な案件については直接各役所にお問い合わせください。

いろいろな自治体が発表している資料の中で、東京都耐震ポータルサイトがいちばん参考になると思います。この章の最後に同サイトへのリンクを掲載しておきます。

参考東京都耐震ポータルサイト

ポイント

仮に耐震改修に必要な費用が150万円とすると、自治体の補助を申請することで100万円以下に収まる計算になります。市町村によっては全額補助されるケースもあります。

さらにコストダウンを図るなら「火災保険申請」

火災保険に付帯する風水害や漏水の補償は、多くの一戸建て住宅で、請求すればおりるということをご存じでしょうか? お家の保険相談センター(株式会社Fremo)によれば、およそ7割の一戸建て住宅で100万円程度の保険金がおりるそうです。

フドマガ
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築5年以上の一戸建て住宅の約7割で、保険を申請すれば平均約100万円もらえたそうです。

もし火災保険に加入している一戸建て住宅で耐震リフォームをお考えであれば、リフォーム前に保険の請求をしておいてください。リフォームしてしまうと保険金を受け取ることができなくなります。

お家の保険相談センターについては以下のページでも解説しています。

参考住宅をリフォームする前にお家の保険相談センターで保険請求すべき理由

また公式サイトは以下のリンクから確認いただけます。

参考お家の保険相談センター……保険適用可能かを無料で調査してくれます。

ダメ押しでやっておきたい住宅ローンの借り換え

2010年頃に都市銀行で住宅ローンを組み、固定金利を選択していたら、その金利は3%前後の設定となっているはずです。現在の変動金利の水準であれば、借り換えによって数百万円の金利を削減できることもざらにあります。

そこで、耐震改修やリフォームを検討しているなら、あわせて住宅ローンを借り換えてしまうことをおすすめします。リフォーム費用を新しく借り入れる住宅ローンに組み込むことができるからです。

モゲチェック公式サイトより

リフォームと融資のポイントについて、以下の記事で解説しています。

参考リフォームするならモゲチェックで住宅ローンの借り換えを

モゲチェックのサイトは以下から確認できます。

参考モゲチェック(公式)……無料診断が参考になります


また、リフォーム費用を抑える分離発注については以下の記事が参考になります。

はじめてのリフォーム分離発注。外と中の2分割で失敗せずに安くする!

リフォーム工事は細かく発注先を分ける「分離発注」で、劇的にコストを下げることができます。しかし、一般の人にはハードルが高 ...

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耐震性とシロアリの被害(補足)

「三宮・神戸経理コンピューター専門学校近く」松岡明芳撮影

阪神淡路大震災時の調査によって、地震で大破した木造住宅の6~8割にシロアリの被害が見られたと報告されています。

出典『兵庫県南部震災による木造軸組住宅の被災調査』(1995年7月)

上のグラフは奈良女子大学の疋田洋子氏らの調査から引用したものですが、シロアリの被害と地震での被災の大きさが相関していることがわかります。

シロアリに関して詳しくは以下の記事で解説していますので、時間があればあわせて読んでみてください。

関連記事

シロアリが見つかった場合、リフォーム・耐震補強を行う時に、必ず駆除しておくべきだといえます。その際、ふたつの点に注意してください。

  1. シロアリ被害は再発しやすいため5年ごとの駆除を続ける
  2. 駆除業者のレベルは様々なので全国チェーンと有力地場業者の相見積もりをとる

すでにシロアリの被害が深刻な場合のをぞき、駆除・予防であればシロアリ110番がいいでしょう。コスパが高く、ひとまず何とか対応してくれます。

一方、すでにシロアリの被害が進行している場合は、定評がある大手シロアリ駆除業者に問い合わせをしてください。タウンライフのシロアリ特集であれば、ダスキン、アサンテ、サニックス、雨宮などの大手有名業者にまとめて調査依頼ができます(ほとんどの会社は無料で調査を行ってくれます)。

これに加えて地元で有名な業者さんがあれば、そちらにも相談し、その中からよいと思える業者さんを選んでください。

メモ

日本におけるシロアリ研究は、長い間アメリカやフランス、イギリスより遅れていました。またシロアリには不明点がたくさんあります。そのため、非常に知識豊富で信頼できそうな老舗業者さんが言うことが、最新の論文と異なっている場合もあります。シロアリ駆除業者の選び方は大変難しく、最終的には会って判断してみるというアナログな方法になってしまいます。その点も踏まえて、必ず相見積もりを取って多くの業者さんの意見を聞くべきだといえます。

まとめ

耐震性はいまが“安く強くする”好機です。外付け・壁内装置などの低コスト工法が開発されたことに加えて、自治体補助と保険・借り換えを組み合わせれば、自己負担を最小化できるからです。

「古い家の補強は高い・長い・暮らしに支障」と考える方も多いはずです。しかし、実際に行動してみると、思ったより費用が安くすむことも十分考えられます。

まず自治体の耐震診断を受け、外から足す外付け補強や室内に収まる耐震かべ・ステンレスブレース、基礎の繊維補強など“壊さず・短工期”の工法を検討してみてください。

耐震診断だけであれば、自治体の補助を活用して数万円で実施できる事もあります。

耐震診断の後、工法を決定したら、自治体補助を申請し、着工前に火災保険(風水害・漏水)の請求可否を確認しておくとよいでしょう。

木造の耐震改修は150~200万円が目安。補助が適用されれば、自己負担50万円以下で施工できるケースも。工期は、外付け補強なら約10日の例もあります。

参考文献

  1. 地震調査研究推進本部(2022-01-01)『南海トラフ地震の長期評価(第二版)』。 https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/nankai_trough/ (最終確認:2025-09-14)
  2. 国土交通省(2019)『防災白書:我が国の災害の状況(地震・火山活動が多い国土)』。 https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r01/hakusho/r02/html/n1115000.html (最終確認:2025-09-14)
  3. 東京都 都市整備局(2025-02改訂)『木造住宅の安価で信頼できる「耐震改修工法・装置」の事例紹介(パンフレット)』。 https://www.taishin.metro.tokyo.lg.jp/pdf/info/Pamph/dl_005_2112.pdf?ver=20250228 (最終確認:2025-09-14)
  4. 東京都 耐震ポータル(パンフ一覧)(掲載日不詳)『パンフレット等:耐震化インフォ』。 https://www.taishin.metro.tokyo.lg.jp/info/topic02.html (最終確認:2025-09-14)
  5. 岐阜県 高山市(掲載日不詳)『木造住宅耐震改修補助制度(10/10 上限180万円)』。 https://www.city.takayama.lg.jp/kurashi/1000024/1000268/1000354.html (最終確認:2025-09-14)
  6. 大分県 津久見市(2025-04-??)『【令和7年度】木造住宅の耐震化をお考えの方へ(全体改修 上限150万円・10/10)』。 https://www.city.tsukumi.oita.jp/soshiki/12/10095.html (最終確認:2025-09-14)
  7. 大阪府 阪南市(2025-06-24時点)『耐震診断及び耐震改修補助金について(先着・診断/改修の各上限等)』。 https://www.city.hannan.lg.jp/kakuka/toshi/toshi/taishinka/1597994486626.html (最終確認:2025-09-14)
  8. 東京都 主税局(掲載日不詳)『耐震化のための建替え又は改修を行った住宅に対する固定資産税・都市計画税の減免(23区内)』。 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/real_estate/kotei_tosi/taishin (最終確認:2025-09-14)
  9. 鎌倉市(2025-04-10)『家屋の固定資産税はどのような場合に減額が受けられますか。(住宅耐震改修に伴う減額)』。 https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/qa/zeikin/zeikin0217.html (最終確認:2025-09-14)
  10. 一般社団法人 日本損害保険協会(2021-06-25)『火災保険における保険金 支払いと収支の状況等(有識者懇談会資料)』。 https://www.fsa.go.jp/singi/suisai/siryou/20210625/02.pdf (最終確認:2025-09-14)
  11. 日本損害保険協会(2025頃版)『すまいの保険(学習教材)』。 https://soudanguide.sonpo.or.jp/home/pdf/book_soudan_home.pdf (最終確認:2025-09-14)
  12. 疋田洋子・ほか(1995-07-25)『兵庫県南部震災による木造軸組住宅の被災調査』木材保存 21(4):178-186。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jwpa1975/21/4/21_4_178/_article/-char/ja/ (最終確認:2025-09-14)

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