古い家に住むことは、決して珍しい選択ではありません。
中古戸建てを購入してリフォームする人、相続した実家に住み続ける人、古家付き土地を取得して活用する人……「古い家に住む」といっても、その事情は人によって大きく違います。
ただし、「安いからいい」とも限りません。
物件価格が低く見えても、修繕費や解体費が加わると結局は割高になるケースもあります。また、建物の状態だけでなく、土地の条件によって住めるかどうかが決まります。
筆者は10年以上にわたり不動産会社を経営し、自身も郊外の古い一戸建てへ住み替えた経験があります。この記事では、宅建士の視点から、古い家に住むメリット・デメリット、費用の実態、そして「住める古家」と「やめたほうがよい古家」の見極め方を整理します。
古い家に住むことはできる? 結論は「可能」です

結論からいうと、古い家に住むこと自体は十分に可能です。
ただし、次の3点は押さえておく必要があります。
①住める古い家も住めない古い家もある 傷みが軽微で、土地条件に問題がなければ、古くても安全に住み続けられる家は存在します。
②安いから住めるとは限らない 購入価格が低くても、修繕費・調査費・維持費を加えると、思っていた以上にコストがかかるケースがあります。
③住めるかどうかは土地条件でも決まる 建物の状態だけを見て「住めそう」と判断しても、接道(道路との接続状況)や再建築の可否に問題があると、あとで大きく困ることがあります。

古い家に住むかどうかは、「古いか新しいか」だけで判断する問題ではなく、建物と土地の両面から見る問題です。
「古い家に住む」が指す3つのケース

「古い家に住む」という言葉は、場面によって意味が少し違います。まず、どのケースに自分が当てはまるかを整理しておきましょう。
①中古住宅として買って住む
一般的な中古戸建てを購入し、そのまま、または必要な修繕をして住むケースです。立地や広さのわりに取得費を抑えやすい反面、修繕が必要になることもあります。
②古家付き土地を取得して住む
建物より土地の価値を中心に評価・販売されている物件を取得し、古家を活かして住むかどうかを判断するケースです。建物の状態がよければ住めることもありますが、解体前提で考えるべき物件もあります。
③相続した実家・空き家に住み続ける
すでに所有している、あるいは相続した古い家に住むケースです。購入費がかからない反面、修繕や管理の負担が表に出やすいのが特徴です。
このように、前提は一つではありません。以降の内容は、どのケースにも共通する判断基準として読んでいただけます。
なお、空き家活用については以下の記事がおすすめです。

古い家に住むメリット

古い家には、新築や築浅物件にはない魅力があります。
取得費を抑えやすい
新築に比べると、古い家は価格が低く設定されていることが多く、初期費用を抑えやすい傾向があります。特に、建物の価値があまり評価されていない物件では、土地を中心に価格が決まっていることもあります。
立地・広さのわりに割安なことがある
古い家は、今の新築市場では出にくい立地に立っていることがあります。駅からの距離、土地の広さ、庭のゆとり、昔ながらの住宅地の落ち着き……こうした条件が新築より有利なこともよくあります。
なぜなら、いい立地はすでに人が住んでいるからです。空き家、古家、中古住宅は、そういった立地に立っているケースがあるわけです。
リフォームで自分向きに改装できる
築浅の住宅に比べて、古い家は修繕やリフォームを前提に考えやすい面があります。どうせ古いわけですから、思い切って改装することができます。DIYでのリフォームも、ハードルが低く感じられます。
予算に合わせて最低限の修繕から始め、住みながら段階的に整えるという考え方も可能です。マンションと違い、戸建ては構造の自由度が高いという点も、改修のしやすさにつながります。
空き家活用という選択肢になる
相続した実家や地域に残る空き家を、住まいとして活用する考え方にも近年注目が集まっています。使われていない家を再生して住むことは、単なる節約ではなく、空き家対策の一つの形でもあります。
古い家に住むデメリット

一方で、古い家には明確な弱点があります。ここを見落とすと、「安く買えたはずなのに結局高くついた」という失敗につながりかねません。
修繕費が読みづらい
古い家で最も大きなリスクの一つが、入居後に追加費用が出やすいことです。見た目にはわからなくても、屋根・外壁・床下・給排水管・電気配線などに問題を抱えている場合があります。
筆者が経験したケースでも、購入前は問題なく見えた物件が、入居後に給水管の老朽化で想定外の修繕費が発生したことがありました。古い家の給水管は細く、しかも金属製の場合があります。サビなどが詰まると水が出なくなってしまいます。

耐震性・断熱性に不安がある
1981年以前に建てられた住宅(旧耐震基準)は、現在の耐震基準を満たしていないことがあります。また、断熱性能が低い古い家では、夏は暑く冬は寒い、光熱費がかかるといった問題が出ることもあります。
とくにサッシ周りの気密性は弱く、内窓を設置したり、樹脂窓に取り替えることも検討すべきでしょう。
住んでから気づく不具合がある
雨漏り、シロアリ、床の傾き、カビ、湿気……こういった問題は、購入前の内覧だけではわからないことがあります。住み始めてから気づくケースが少なくありません。
その点を考慮しておき、あらかじめ安い価格で購入するように気をつけるべきでしょう。
将来売りにくいことがある
古い家の場合、自分が住んでいる間は問題がなくても、将来売却しようとしたときになかなか売れないという問題も出てきます。
特に、①再建築不可、②接道条件に問題がある、③境界が不明確、といった物件は、出口(売却・活用)まで含めて考える必要があります。
住める古家・やめたほうがよい古家の違い

古い家に住むかどうかを判断するときは、感覚ではなく、確認ポイントを一つひとつ押さえることが大切です。
住める可能性がある古家
次のような状態であれば、古くても住める可能性があります。
- 大きな傾きが見られない
- 雨漏り跡が目立たない
- シロアリ被害が深刻ではない
- 給排水・電気設備が致命的に傷んでいない
- 接道・再建築の条件に大きな問題がない
- 権利関係が比較的整理されている

慎重に判断したい古家
反対に、次のような状態の物件は慎重に考える必要があります。
- 明らかな傾きがある
- 屋根や天井に雨漏り跡がある
- 床が沈む・ふわふわする
- シロアリ被害が進行している
- 増改築の履歴が不明
- 接道条件が悪い(幅員2m未満など)
- 再建築できない可能性がある
- 境界が未確定
- インフラの状態が不明
こうした点は、素人の目だけでは判断しにくいことも多く、必要に応じてホームインスペクション(住宅診断)や建築士、不動産会社など専門家の確認を入れることをおすすめします。

筆者注: 特に再建築不可・接道・境界の問題は、建物の見た目では気づけません。登記事項証明書・公図・測量図・道路台帳など、書類ベースの確認が不可欠です。
古い家に住むときの費用

古い家に住む場合、物件価格だけを見ていると判断を誤りかねません。本当に大切なのは、購入から維持まで含めた総額です。その点をあらかじめ計算しておき、のちのち予想外の出費が出ないようにしてください。
①購入費
物件の取得費そのものです。ただし、安く見える物件でも、以下にあげるコストが加わるのは前提。また、物件価格だけでなく、仲介手数料は税金などの諸費用がかかる点にも注意してください。
②インスペクション費(住宅診断)
購入前のホームインスペクションにかかる費用です。一般的には5万〜10万円前後が目安です。意外とインスペクションを入れる人は少数派ですが、省略してしまうと大きな修繕費につながる可能性もあります。
耐震診断が必要な場合は別途かかります。また、建築士の資格を持っている人に依頼するようにしてください。
③修繕・リフォーム費
入居前に最低限必要な修繕が出ることがあります。屋根・外壁・水回り・床・給湯器・配管・電気設備など、物件によって範囲は大きく異なります。部分修繕で済む場合もあれば、数百万円規模になることもあります。
筆者としては、ここには厚めに予算を取っておき、後悔のないようにリフォームすることをおすすめします。
④維持費
住み始めたあとも、固定資産税・火災保険・庭や外構の管理・設備更新などの費用がかかります。古い家は「住みながら手を入れていく」前提で考えたほうが現実的です。
⑤解体費の可能性
古家付き土地などでは、当初は住むつもりでも、建物の状態によって解体せざるを得ないケースもあります。解体費は木造一戸建てで100万〜200万円前後が目安です(規模・状況により変動)。取得前から視野に入れておかないと、想定外の出費になりかねません。
以下のサイトなどを利用して、一括見積りを取ることでコストを押さえられる可能性があります。
解体無料見積ガイド|一般社団法人あんしん解体業者認定協会
向いている人・向かない人

古い家は、すべての人に向くわけではありません。一方で、向いている人にとっては魅力的な選択肢になります。筆者が考える「向いている人」「向いていない人」の条件を列挙しますので、一度ご自分に当てはめてみてください。
向いている人
- 新築に強くこだわらない人
- 取得費を抑えたい人
- 多少の手間や不便を許容できる人
- 住みながら少しずつ直していく考え方ができる人
- 立地や敷地の広さを重視したい人
- 空き家・古家を活かしたいと考えている人
向かない人
- すぐに快適な住環境を求める人
- 修繕や維持管理に手間をかけたくない人
- 想定外の出費に弱い人
- 寒さ・暑さ・結露・段差などに強い不満を感じやすい人
- 将来の売却しやすさを最優先したい人
古い家に住む前に確認したいチェックリスト

古い家を買う前、あるいは空き家を住まいとして活用する前に、最低限次の点を確認しましょう。
【建物】
- □雨漏りの跡はないか
- □ 床・柱に傾きはないか
- □ シロアリ被害はないか
- □給排水・電気設備に問題はないか
- □増改築の履歴は把握できるか
【土地・権利】
- □接道条件に問題はないか(建築基準法上の道路に2m以上接しているか)
- □再建築できるか
- □ 境界は確認できるか
- □ハザードリスク(洪水・土砂崩れ等)はどうか
【出口】
- □将来売るとしたら、買い手がつきそうか
- □ 解体が必要になったとき、費用を賄えるか
関連記事: 接道・再建築可否・境界など、土地調査の詳細は「不動産物件調査の基本」もあわせてご覧ください。(※内部リンク設定箇所)
まとめ:「住めるか」ではなく「続けられるか」で考える

古い家を見ると、「とりあえず住めそうかどうか」に目が向きがちです。しかし、それだけでは判断として不十分です。
大切なのは、以下の視点です。
- 無理なく維持できるか
- 修繕費を負担できるか
- 将来も使い続けられるか
- いざとなったとき売れるか
家を「買う」だけでなく「持ち続ける」コストまで含めて考えると、古い家の選択がよいかどうかはおのずと見えてきます。
古い家に住むことは、安さだけで決めるものではありません。一方で、古いからといってすべて避けるべきともいえません。建物と土地の両面を冷静に確認し、費用と出口まで含めて判断することが、失敗しない古家活用の基本です。

