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「老後の理想の住まい」。新しいマンションを作った会社に聞きました

85歳のうちの父は、最近この段差が上れなくなりました。わずか25センチですが、下るのがやっとで、上るのは本当に無理そうです。

しかし、それでも「この家がいい」と、住み替えはしてくれません。

わたしたち40代・50代のプレシニア層としては、「親に安全な家に住み替えてもらいたい」と思いますが、黙って施設に入ってくれることはなさそうです。

そんな時、老人ホームやサ高住を多数運営する株式会社ライフケア・ビジョンさんが、高齢者向けのマンションを作ったと聞きました。

介護の専門会社が、普通のマンションをつくり、そこにいくつかの特別な機能を付け加えた理由をうかがうと、危険な持ち家と老人ホームなどの施設をつなぐ、新しい住まい方が見えてきました。

今回の取材先

株式会社ライフケア・ビジョン企画広報室・室長の頭山さん。問合せ先は0120-975-868。

高齢者が増え、高齢者向け施設が増えていかない現状

フドマガ まず前提として、老人ホームやサ高住などが、これからどういう方向に向かうのかを教えてください。

頭山 ひとことでいうと「選択と集中」という方向に向かっていると思います。

介護保険制度は、本来は「住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができる」ために、かなり大雑把に分類すると、特養(特別養護老人ホーム)などの介護施設の整備や、訪問介護や看護などの在宅サービス、予防のための機能訓練があります。

介護保険法が作られた当初はその利用拡大が図られましたが、予想以上の高齢化もあり、特養(特別養護老人ホーム)や老健(介護老人保健施設)の新設を自治体に委ねる方向に舵を切りました。現在は特養は要介護3以上の方が入居対象となり、重度要介護者への対応へとシフトしています。

有料老人ホームもサ高住は自立(要介護状態でないということ)や要介護高齢者が入居ができますが、現実問題として、ほぼ寝たきりの方と、比較的元気な方とでは必要とするサービスが異なっていることと、最近では特に介護人材の不足の問題があるため、当社では要介護の方が大多数となってしまっています。

フドマガ サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)と有料老人ホームの違いも、よくわからないのですが……。

頭山 もともと有料老人ホームや特養というのは、老人福祉法と介護保険法に基づくもので、管轄は厚労省です。サ高住は、厚労省と国交省が管轄していて、自立できる方が見守りを受けながら暮らせる賃貸住宅として平成24年に制度が開始されました。

サ高住情報提供システム運用者情報より国交省作成(令和2年)

ただ、サ高住の実態はかなり有料老人ホームに寄ってしまっています。私たちが運営しているサ高住でも、要介護度が平均で3.2くらいです。

フドマガ サ高住は本来介護はしないはずでしたが、現在は御社で介護までカバーしているのでしょうか?

頭山 はい。最初は要支援や要介護1、2の方も、何年も入居されていると要介護度が上がってしまっていますし、最初から特養待ちの方も多く入居されています。

フドマガ すると、当初のイメージとは……。

頭山 ずいぶん違っていますね。

なぜサ高住ではなく普通のマンションだったのか

ライフケア吹田室内
ライフケア吹田室内

フドマガ ライフケア吹田は、高齢者向けでありながら一見普通のマンションです。なぜこれを作ろうと考えたのでしょうか?

頭山 サ高住は24時間365日「人」を置かないといけないのですが、人を配置する最も大きな意味は「見守り」なんです。そうなると人件費が入居者の支払う月額費用に上乗せされてしまいます。また、昨今は本当に介護人材の確保に苦戦しています。しかし我々としては、見守りだったら人じゃなくてデジタルでいけるという確信があり、サ高住じゃなくて普通のマンションとしてここを作ったんです。そうすれば、普通の人の年金で住むことができます。

注……有資格者、あるいは高齢者介護の知見がある人材を配置することが望ましいとされています。

フドマガ デジタルで見守りというと、どのように?

頭山 大きく分けて3つあります。1つめは、睡眠センサーによる見守りです。パラマウント社の眠りSCANという製品を使うことで、睡眠時の心拍や体動、呼吸をとれます。無呼吸なども異常として検知できます。

睡眠中の呼吸や心拍をリアルタイムでモニタリングする

2つめは、浴室のセンサーとミラバスGuardianを組み合わせて溺水を防止するシステムの導入です。

家庭内での不慮の事故による死亡者(人口動態統計より)

ヒートショックなどで、高齢者の浴室での溺死が増えています。そこで、異常を検知すると自動的に排水し、溺水を防ぐシステムをメディカルプロジェクト社とサイエンス社とで共同開発しました。

溺水を予防するシステムを日本で初めて開発した

こういったセンサーは、弊社の見守りセンターでモニタリングしています。現在は高槻にある弊社の訪問看護ステーションがその役割を担っています。

3つめが、ナースコール。センサーの異常判定に加えて、居室にナースコールを設置しています。見守りセンターで状況を判断し、必要があれば救急搬送を要請します。

フドマガ 駆けつけもしてくれるのでしょうか?

頭山 実は、意識障害やせん妄が出ている場合、駆けつけていると間に合わないんです。そこで、異常があれば見守りセンターから救急搬送を要請します。我々の側で救急の方を部屋まで誘導し、遠隔でロックを解除することができるため、非常に速い対応が可能です。

フドマガ お金がかかる「見守り」を行政にたよらずITで解決したということでしょうか?

頭山 そうです。実は見守りが一番大事な部分なのですが、それは介護保険の対象外です。そこで見守りはセンサーを設置して、必要な時だけ人が入るという形にしました。見守りシステム利用料はかかってしまうのですが、それでも介護報酬に頼らずに、平均的な年金で入居してもらえるように作ったつもりです。

高齢の親は子世代のいうことを聞いてくれない

プレシニア世帯に参考になる遠距離介護を解説した一冊

フドマガ 我々プレシニア世帯にとっては「親がこのマンションに住んでくれれば安心できる」とピンとくるのですが、しかし高齢者は子世帯のいうことを聞かない……。

頭山 私の家もそうです(笑)!

フドマガ 何か、そのへんをうまく持っていくアイデアはありますか?

頭山 たとえば、ライフケア吹田の1階には多目的スペースの「WAIKI」があります。そこでエンディングセミナーを開催すると、いつも満員なんです。そういった場で講師をつとめる僧侶の方に相談してもらうとか、ケアマネージャーに相談してもらうとか……。

親のためになんとかしてあげたい、という子どもの気持ちから出ている言葉でも「ああして」「こうして」というとギクシャクしてしまいます。

そこで、いったん専門職を挟んでみると、また違った反応が返ってくるかもしれません。

フドマガ 「WAIKI」では定期的にイベントを開催しているのでしょうか?

頭山 我々は同じ「WAIKI」という名前のNPO法人もやっていまして、そこで子ども食堂もやっています。高齢者のなかにはスキルをお持ちの方が多いので、子ども食堂にくる子たちに英語を教えてもらったり、料理を手伝ってもらったりするなかで、生きがいを感じてもらえる、社会参加の場を作れると考えています。

フドマガ なるほど。社会に関わり続けてもらうのは大切ですね。また、高齢者向けの分譲マンションは要介護になった場合に動きがとれませんが、賃貸マンションとしたことでその後、ケアマネージャーの意見を聞きながら、必要な施設にスムーズに移れるのも安心できると感じます。

頭山 そうですね。要介護状態になって施設に入る場合、やむを得ない状況であることが大多数です。その点、ここであれば心置きなく人生を満喫して、必要な時に専門家に相談できるというメリットがあります。

フドマガ それが、本当の意味で自分の意思を尊重した老後の暮らし方かもしれないですね。

高齢者向けの住まいについてデータで補足します

迷走する厚生労働省の方針や、低下する日本の経済力により、高齢者や要介護者をめぐる法律がどんどん変わっています。

その結果、我々と、我々の親世帯が入居できる高齢者向けの施設や住居についてもわかりにくいのが現状です。

そこで、記事の補足として、現在利用できる高齢者向けの住まいについて国土交通省の資料をもとにまとめておきます。

根拠法対象者
特別養護老人ホーム老人福祉法65歳以上で常時の介護を必要とし、かつ居宅に住むことが困難
養護老人ホーム 老人福祉法65歳以上で環境上・経済上、居宅で養護を受けることが困難
軽費老人ホーム社会福祉法、老人福祉法60歳以上で、自立した生活を営むことが不安で、家族による援助を受けることが困難
有料老人ホーム 老人福祉法 法律上の定義がなく社会通念による「老人」
サ高住高齢者住まい法60歳以上の者。または要介護・要支援認定を受けている60歳未満の者
認知症高齢者グループホーム老人福祉法要介護者・要支援者であって認知症である者

行政の枠組みの中では、親がある程度元気なうちに(あるいは自分たちも将来)入居するとしたら、サ高住(サービス付き高齢者住宅)ということになります。

サ高住とは、本来以下の要件を満たす施設です。

  1. 床面積は25㎡以上
  2. バリアフリー
  3. 構造・設備が一定の水準を満たすこと
  4. 少なくとも安否確認・生活相談サービスを提供することす

また、平成23年(2011年)法定されて以降、急速に登録件数を増やしています。

データ出典:国土交通省

しかしサ高住は、老人ホームに入居できない高齢者の受け皿となっており、本来「60歳以上の者。または要介護・要支援認定を受けている60歳未満の者」とのみ規定されていますが、9割の入居者が要支援または要介護となっています。

また、サ高住は本来、床面積25㎡以上と定められています。しかし例外的に18㎡以上でも認める規定があるため、75.1%の物件で床面積が18~25㎡未満となっています。

今回取材させてもらったライフケア吹田は、サ高住ではありません。本来サ高住が実現することになっていたアクティブシニア期の住居の形を、民間の力とITだけで実現しようというチャレンジです。


問い合わせ先とデータ

シニア アップデート マンションLife Care Suita
所在地:吹田市内本町3丁目25-16
交通:阪急千里線吹田駅徒歩8分
総戸数:42戸
家賃(参考):月額72,000円~91,000円/共益費10,000円、システム利用料30,000円
専有面積:27.92㎡~31.35㎡
築年:2020年12月
内覧等の問い合わせ:0120-975-868

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