空き家の持ち主を調べる方法|登記確認から専門家相談まで

空き家の持ち主を調べるなら、住所から地番・家屋番号を特定し、法務局の登記事項証明書または登記情報提供サービスで所有者の氏名と住所を確認するのが基本の手順です。

ただし、登記上の名義人がすでに亡くなっていたり、相続や住所変更が反映されていなかったりすることも珍しくありません。

国土交通省の「空家所有者の特定の参考資料」でも、建物登記簿で特定できない場合に土地登記簿で追跡する手順が別途示されており、一筋縄ではいかないケースが実務では多く存在します。

背景にある空き家の増加も見逃せません。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年の全国の空き家数は900万戸(空き家率13.8%)で過去最多となっています。賃貸・売却用や二次的住宅を除いたいわゆる「その他の空き家」だけで385万戸。

近所に所在する空き家について「誰が持ち主かを調べる」という状況はこれからも増えていくはずです。

この記事では、一般の方にも分かる手順で説明しながら、宅建士の実務視点から「どこまで自分で調べられるか」「どこから専門家や自治体に切り替えるべきか」を整理します。

また「不動産や法律の専門家に無料で相談してみたい」と思われたら、以下のフォームをご利用ください。

無料空き家相談|いえとちラボ

目次

空き家の持ち主を調べる手順(これが基本)

まず、登記簿を取得して「登記名義人は誰か」を確認するのが第一ステップ。しかし、住所だけでは登記情報にたどり着けないケースがあります。

登記を取得するには「地番」と「家屋番号」が必要です。私たちが普段使っている住居表示(○○町1丁目2番3号)とは別の番号体系で、まず「地番」を確認するところからスタートします(次章で詳しい手順を解説)。

登記事項証明書(書面) 法務局に申請して取得する公的な証明書です。契約や行政手続きへの提出など、証明書として使う必要がある場合はこちらです。

登記情報提供サービス(オンライン) インターネット上で登記情報を確認できる有料サービスです。証明書としての効力はありませんが、所有者の確認だけならこちらが手軽です。

どちらも、取得できる情報は「登記上の所有者の氏名と住所」です。電話番号やメールアドレスは記載されていません。

住所から地番を特定する手順

住居表示と、登記簿をとるときの地番は、別の制度です。

住居表示は郵便や住所案内のために整備されたもので、地番は土地の区画ごとに付けられた番号です。同じ場所でも、住居表示と地番は一致しないことが多く「まずは地番の確認からスタート」というのが定石です。

いまおすすめなのが、MAPPLE法務局地図ビューア。以下のリンクを開き、住所を入力するだけで、地番を確認することができます。

MAPPLE法務局地図ビューア|公式サイト

ただし、エリアによっては対応していないことがあるので、その場合は近くの法務局(地方法務局等)を調べて、電話で確認します。

また、分筆(土地を分割した記録)などにより、住宅地図と公図(法務局の地図)の敷地形状が一致しないケースがあります。そのような場合も、法務局に直接問い合わせて確認するのが確実です。

なお、市区町村によっては役所の窓口で地番を教えてもらえることもありますが、全国共通のルールではありません。

登記簿で分かる情報・分からない情報

地番がわかったら、登記事項証明書または登記情報提供サービスで所有者情報を確認できます。

登記事項証明書は、法務局に申請して取得する証明書です。誰でも取得できます(不動産の所有者でなくても可)。

手数料は以下の通りです(令和7年4月1日からの料金)。

取得方法手数料
書面請求(窓口・郵送)600円
オンライン請求・郵送520円
オンライン請求・窓口交付490円

登記情報提供サービスは、法務省が指定した機関が運営するオンラインサービスです。登記記録の全部情報は331円、所有者事項のみは141円で確認できます(令和6年4月1日時点の料金。利用前に最新の料金を確認してください)。

登記情報提供サービス|民亊法務協会

上記のリンクから「一時利用」を選んで請求手続きを進めて下さい。

ポイントは、まず土地登記簿を「共同担保目録付き」で取得すること(無料オプションです)。すると、共担目録に建物の家屋番号が掲載されているケースが多く、それを見ながら建物の登記情報を取得します。

もし共同担保目録がない場合は、法務局窓口に電話で問い合わせるのがはやいでしょう。

また繰り返しになりますが、登記で確認できるのは「登記上の名義人の氏名と住所」です。現在の居所、電話番号、売却意思、相続人全員の同意状況などは、登記からは分かりません。

登記名義人が現在の交渉相手とは限らない

登記で名義人を見つけたとしても、その人がそのまま交渉の相手になるとは限りません。

実務上、よく遭遇するのは以下のケースです。

相続登記が未了

名義人がすでに亡くなっているのに、相続登記がされていない状態です。この場合、不動産は法定相続人全員の共有財産になっています。売却するには相続人全員の同意が必要です。

問題は、相続が数世代にわたって放置されている「数次相続」が起きているケースです。相続人を戸籍で遡ると、交渉相手が数十名に及ぶことがあります。一人でも非協力的な相続人がいれば、売買契約は法的に成立しません。

2024年4月から相続登記が義務化されました。相続で不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に登記を申請する必要があります。

正当な理由なく相続登記を申請しない場合は10万円以下の過料の対象となります。また、義務化以前に発生した相続も対象はりますが、既存の未登記状態がすぐに解消されるわけではありません。

所有者が認知症などの場合

名義人が生存していても、認知症などで判断能力が不十分な場合、交渉相手は家庭裁判所が選任した「成年後見人」になります。

このケースは要注意です。成年後見人が被後見人の居住用不動産を処分する場合、家庭裁判所の事前許可が必要になります。後見人と価格面で合意しても、裁判所が「本人の利益を損なう」と判断すれば許可は下りません。「居住用不動産」の定義は広く、現在住んでいる物件だけでなく、過去に住んでいた物件や将来住む可能性がある物件も含まれます。成年後見人との交渉では、裁判所の許可が下りない状況も想定し、あらかじめ法律の専門家に相談しておくほうがいいでしょう。

所在不明・相続人不存在

名義人の所在が分からない、あるいは相続人全員が相続放棄をしたケースでは、裁判所が選任した「管理人」が交渉相手になります。

2023年4月に施行された改正民法により、「所有者不明土地・建物管理制度」が新設されました。特定の不動産に限定した管理人を選任でき、裁判所の許可を得て不動産を売却することも可能です。申立てには予納金として数十万〜100万円程度が必要で、手続き完了まで3ヶ月から1年程度を要します。物件の市場価値がこのコストを下回る場合、採算が合わなくなります。

共有名義

複数人が共有している物件では、共有者全員の同意がないと売却できません(民法251条)。代表者一人と交渉を進めていても、他の共有者が同意しないと売買はできないわけです。共有者が多ければ多いほど、紛争の可能性が増え、リスクが増大します。

法人名義

名義人が法人の場合、法人が休眠・解散していると交渉が難しくなります。解散後は清算人が法人の代表権を持ちますが、清算人が未選任だったり、すでに死亡しているケースもあります。自然人のケース以上に、慎重な権利関係の確認が必要です。

まとめると、登記で名義人を確認することはスタート地点にすぎません。

その名義人が現在も生存しているか、判断能力があるか、権限を持って動ける立場にあるか、他に同意が必要な当事者がいないか。これを確認しないまま交渉を進めても、後から無効になるリスクがあります。

役所が所有者情報を教えない理由

「市役所に行けば、所有者を教えてもらえる」と思っている方もいますが、基本的には教えてもらえません。

自治体は固定資産税の課税情報などを通じて所有者を把握している場合がありますが、それを民間の個人や業者に伝えることは守秘義務により原則できません。

神戸市のFAQでは「市が所有者情報を把握している場合でも、守秘義務があるためお伝えすることはできません」と明記されています。これは神戸市に限らず、多くの自治体で同様の対応が取られています。

一方、空家等対策特別措置法(空家法)の第10条では、自治体が固定資産税情報などを「行政内部」で利用することは認められています。自治体が所有者に直接連絡を取ることも可能です。ただし、その情報を相談者側に開示することは別の話です。

総務省の行政評価・監視調査(対象72自治体)では、行政による空き家所有者の特定率は平均95%に達しています。固定資産税情報を第一の確認手段とすることで、登記だけでは半数程度にとどまる特定率を大きく上回っています。自治体には民間にはない「最強の探索ツール」があります。ただし、それを民間人に開示するルートは基本的にありません。

「自治体が間に入って所有者へ働きかけてくれる可能性はある。でも、所有者の個人情報を直接教えてくれるとは思わないほうがいい」というのが実務上の整理です。

なお、自治体によっては空き家相談窓口や通報フォーム、空き家バンクへの登録案内など、独自の取り組みを設けているところもあります。問い合わせ先が分からなければ、まず市区町村の窓口に「近隣の空き家について相談したい」と伝えてみるのが入口になります。

目的によって調査ルートと動き方が変わる

空き家の持ち主を調べる目的は、人によって異なります。購入したい、苦情を伝えたい、売却を提案したい──それぞれで、最適な調査方法と所有者への接触方法が変わります。

買いたい場合

登記で所有者の住所を確認し、手紙で購入意向を伝えるのが基本でしょう。突然訪問すると、かなり警戒されます。手紙に会社名・担当者名・連絡先に加え、「返信は任意であり断っても不利益はない」旨を明記したうえで、相手の反応を待ちます。

自治体が運営する空き家バンクに登録されている物件であれば、自治体や仲介業者が間に入るため交渉の安全性が上がります。所在不明・相続複雑化の物件で自力での追跡に限界を感じたら、早めに司法書士・弁護士に相談してください。

前述の所有者不明土地・建物管理制度の活用も視野に入ります。

苦情・管理不全を伝えたい場合

個人で直接抗議するより、自治体の空き家相談窓口に通報するほうが有効です。

自治体には固定資産税情報・戸籍情報が蓄積されており、所有者特定率もかなり高いといわれています。自治体が間に入って所有者へ管理改善を指導することで、より重みのある対策になります。

越境樹木・害獣・倒壊リスクなど受忍限度を超える被害がある場合は、弁護士を介した損害賠償・妨害排除請求を検討してみる手もあります。

所有者への初回アプローチはAIを活用するのがベター

所有者への最初の連絡は書面(手紙)から始めるのが基本です。突然の電話や訪問は相当警戒されるので、避けたほうがいいでしょう

書面に盛り込みたい要素は以下の通りです。

  • 目的(購入希望・売却相談・管理依頼など)
  • 会社名・担当者名・連絡先
  • 「返信・連絡は任意であり、断っても不利益はない」旨

筆者の経験上、この書面はAIを活用して制作したほうが効果的です。条件を整理してプロンプトに入れるだけで、目的が伝わり、相手に圧迫感を与えない文面の下書きが出てきます。

以下は基本的な入力例です。

プロンプト例

不動産会社の担当者として、空き家の所有者に初めて手紙を送ります。
以下の条件で、丁寧な手紙の文面を書いてください。

・目的:空き家の売却または活用についてご相談させていただきたい
・会社名:〇〇株式会社
・担当者名:〇〇(宅地建物取引士)
・連絡先:電話番号・メールアドレス
・強調したい点:返信・連絡は任意であり、ご迷惑をおかけする意図はない

手紙の長さはA4用紙1枚以内。
です・ます調で、押しつけがましくない文体にしてください。

自社の状況に合わせて条件を変えるだけで、案件ごとに使い回せます。

筆者がコンサルティングしているクライアント(複数の不動産会社)に「ウェブからの問い合わせへの返信もAIに相談してから送るようにしてください」と伝えて以来、媒介・相談案件の獲得率が上がっています。

所有者への連絡前に確認する実務上の注意

まず前提として押さえておきたいのは、返事が来る確率は低い、ということです。

手紙を送っても、ポストに投函しても、反応がないのが普通だと思ってください。AIで文面を整えることで反響率は多少上がります。ただ、それだけで所有者の気持ちを動かせるかというと、現実はそう甘くありません。

だからこそ、「この物件でなければ困る」という状態でアプローチするのは効率が悪く、おすすめしません。

空き家に対するアプローチはダメ元が基本です。他にも候補がある状態で、複数同時に動く前提でプランを組んでください。

また、連絡がついたとしても、そこからスムーズに進むとは限りません。

筆者の経験上、連絡がついた案件でも共有名義になっているケースが多く「一部の共有者は売りたいが残りは売りたくない」という状況になることがよくあります。当事者が増えるほど、話はまとまりにくくなります。

最悪「会いに行く」コストも考える

手紙での初回アプローチで反応がない場合、次は足を運ぶことになります。所有者に直接会いに行く。どうしてもそういう局面が出てきます。沖縄から愛知県まで足を運んだこともあります。その物件にそこまでコストをかける価値があるかどうか、事前に判断しておく必要があります。

専門家に依頼すれば、持ち主の特定まではできます。ただ、「売ってもらえるかどうか」は別の話です。不動産会社に「この空き家の持ち主と交渉して売買契約まで持っていってほしい」と頼んでも、断られるケースが多い。割に合わないからです。結局、自分で動くしかない部分がある、という覚悟は持っておいてください。

まとめると、空き家の持ち主にアプローチする場合は以下の2点が大前提です。

  • 成功する可能性は低い、という前提でプランを立てる
  • 不動産会社はあまり動いてくれない、したがって自分でやることが多い

その前提に立ったうえで、この記事で紹介した方法を組み合わせながら所有者を探し、アプローチしてみてください。

自分で調べられない場合は専門家へ

登記で名義人を追っても連絡が取れない、相続人が複数いて交渉窓口が定まらない、そもそも登記がない建物だった……そういう状況になったら、専門家への切り替えを検討してください。

司法書士 相続登記、名義変更、相続人調査などを依頼できます。登記に関わる手続きが中心です。

弁護士 紛争になりそうな場面、交渉の代理、訴訟の可能性があるケースに適しています。

行政書士 書類作成や行政への申請が中心の場合に相談できます。ただし業務範囲があるため、状況によります。

神戸市FAQでも「登記簿でも所有者が分からない場合は、弁護士や司法書士等へ相談・依頼して調査することも考えられる」と案内されています。

また、法務省は「所有不動産記録証明制度」を令和8年2月2日に施行予定として掲載しています(公開時点で施行済みの場合は表記を修正してください)。今後、調査手段が広がる可能性もあります。

まとめ

空き家の持ち主を調べる入口は、登記情報です。地番を特定し、登記事項証明書または登記情報提供サービスで所有者の氏名と住所を確認する、という手順は前提条件。

ただし、登記だけで「現在連絡できる相手」が見つかるとは限りません。相続したが未登記、住所変更未登記、共有状態、成年後見など、名義人と実際の意思決定者がずれているケースは少なくありません。

また、持ち主を探す目的によって、とるべきアクションも変わります。

  • 購入や売却提案を考えているなら、登記簿確認の後、書面でのアプローチが現実的です。
  • 管理不全の苦情を伝えたいなら、持ち主を探すより、自治体の空き家相談窓口を経由する方法が効果的です。
  • 連絡が取れない・相続人が多数いるといった状況なら、司法書士または弁護士への相談を検討してください。

解決が難しい場合は、いえとちラボ(アップライト合同会社)で空き家に関する相談を受け付けています。宅建士が直接対応しますので、状況に合わせてご相談ください。

無料空き家相談|いえとちラボ

参考文献一覧

  1. 総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(2024年)
  2. 国土交通省「空家所有者の特定の参考資料」
  3. 国土交通省「空家等対策特別措置法 条文別施策情報(第10条関係)」
  4. 法務省「相続登記の申請義務化について」
  5. 法務省「主な登記手数料(令和7年4月1日以降)」
  6. 登記情報提供サービス 利用料金(令和6年4月1日時点)
  7. 神戸市FAQ「空地・空き家の所有者について知りたい」
  8. 総務省「行政評価・監視調査(空き家対策)」

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次