ボロ家を売ろうとして失敗しがちなのは「高く売れないこと」ではありません。「いくら手元に残るか」の計算をしていないことのほうが問題です。
100万円で売れたとしても、仲介手数料33万円(税込)、残置物の処分費、境界測量費を引けば、手残りはゼロかマイナスになることがあります。2024年7月の法改正で800万円以下の物件には仲介手数料の上限特例が適用されるようになり、多くのボロ物件・空き家等について、手取りがマイナスになる危険が出てきました。
一方、「売らずに様子を見る」という選択肢も、以前より厳しい状況です。
2024年4月からは相続登記が義務化され、放置すれば最大10万円の過料の対象になりえます。2023年の空家法改正で新設された「管理不全空家等」に指定されると、固定資産税が最大6倍になる可能性もあります。
実は、ボロ家の売却には、都市部の人気物件以上に幅広く深い知識が必要なのです。
その点、筆者は宅建士として複数のボロ家・空き家の売却に関わってきました。これまでの実務経験をもとに、不動産屋のノウハウを記事に盛り込み、読み終えたときに役立つ記事を目指しました。
この記事は、アップライト合同会社の立石秀彦(宅地建物取引士)が制作しました。不動産の調査・マーケティングを専門とし、複数の不動産メディアを運営しています。
ボロ家は「放置して様子を見る」と高くつく時代に

親から相続した古い家は「何もしないのが一番安上がり」と感じてしまいますが、実際には違います。
現実は逆で、放置すればするほどコストが積み上がる時代になりました。
相続登記が義務化。おこたると最大10万円の過料も
2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。
不動産を相続した場合、自分が相続したと知った日から3年以内に登記申請をする必要があります。正当な理由なく相続登記を怠ると、10万円以下の過料(行政上の罰則であり、前科にはならない)の対象になりえます。
この制度で見落とされやすいのは、法改正前の相続にも適用されること。2024年4月1日以前に発生した相続も対象で、過去分の猶予期限は2027年3月31日までとされています。
もちろん「3年を過ぎたらすぐに罰を受ける」というわけではありません。
実務上は法務局から催告書が届き、それでも対応しなければ、最終的に過料が課されるかのうせいがあります。
遺産分割が難航している場合には救済策として「相続人申告登記」という暫定措置があり、これを使えばペナルティを回避できます。
とはいえ、相続登記は早めにすませておくのが鉄則。そもそも不動産を売るためには、相続登記が必要です。
特定空家等・管理不全空家等になると、行政対応の対象になりうる
古い家を放置しておいて、壊れるまで様子をみようか……という対応は不可能になりつつあります。
空家等対策特別措置法の改正で、「管理不全空家等」という区分が新たに設けられています(2023年の法改正)。
倒壊の危険がある「特定空家等」になる手前の段階でも、窓ガラスの割れや庭木の越境などがあれば、行政による助言・指導の対象になりえます。
行政の対応は、助言・指導から始まり、勧告、命令、行政代執行と進んでいきます。勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例(土地の課税を軽減する措置)が外れる可能性があり、固定資産税が最大6倍になります。
最終的に命令を無視すると50万円以下の過料に加え、行政代執行(強制解体)の費用が所有者に請求されます。
行政の指導が来た時点で「かなり重い警告」と考えておくのが現実的です。
売らないなら管理コストを払い続ける覚悟が必要
ボロ家を持ち続けるということは、管理コストを払い続けることでもあります。
固定資産税(住宅が建っている土地は軽減措置が適用されていますが、勧告を受けると外れる可能性があります)、草刈りや害虫対策などの維持費、万一の際の近隣対応……こういった手間と費用が毎年積み重なります。
「そのうち判断しよう」と先延ばしにするほど、建物は老朽化し、処分コストは上がり、行政対応のリスクは高まります。
もちろん「その価値がある」と判断した場合は別です。しかし、コストから合理的に判断するなら、売却したほうが有利なケースが多いといえます。
100万円の家でも仲介手数料が33万円になる時代。確認したい「手残り」

ボロ家を売るとき、多くの人が「いくらで売れるか」を気にします。しかし低額物件では、売値より「手残りがいくらか」の計算のほうが重要です。
筆者は宅建士として相当数のボロ家を仲介しましたが、低価格物件ならではの問題をクリアする必要がありました。
800万円以下の物件では、仲介手数料の上限が変わった
2024年7月1日から、低廉な空家等の媒介報酬特例の対象が拡大されました。
以前は400万円以下の物件が対象でしたが、改正後は800万円以下の宅地建物(使用状態を問わない)に広がっています。
仲介不動産会社が、売主・買主それぞれから受け取れる仲介手数料の上限は最大30万円+消費税、つまり税込33万円です。
この特例を適用するには、不動産会社が媒介契約前に依頼者へ説明し、合意を得る必要がありますが、正直なところ、高額な仲介手数料が入ってくる都市部の物件とボロ家で、仕事の大変さはほぼ同じです。
そこで、現実的には、ボロ家物件であっても上限となる33万円の仲介手数料を請求するのはデフォルトといえる状態になっています。
低額物件ほど仲介手数料の負担が重くなる
100万円の物件で仲介手数料が33万円かかれば、売値の3割超が手数料で消えます。300万円の物件でも同様です。これは読者の直感より大きな金額のはずです。
一方で、この改正により不動産会社が低額物件を扱う動機が生まれたという面もあります。
これまで「手数料5万円では赤字になる」と敬遠していた地方の業者が、33万円もらえるならがんばって買主を探してくれる可能性があります。
売主にとっては負担増ですが、業者が本気になってくれる対価として捉えると、見え方が変わります。
そもそも、この法律の改正の狙いもそこにありました。
譲渡所得税、残置物処分、測量費まで引いて判断する
売値から手数料だけを引けばいいわけではありません。
たとえば150万円で売れたとしても、残置物の処分に50万円、境界測量に80万円、仲介手数料に33万円かかれば、手元に残るのはマイナスです(ただし低価格な不動産では境界測量を省略することもよくありますので、ご相談ください)。
相続した物件では、譲渡所得税にも注意が必要です。
取得費が不明な場合、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」で計算されるため、税負担が大きくなることがあります。
正確な税額は税理士や税務署に確認することをお勧めします。
また、昭和56年5月31日以前に建てられた一戸建てで一定の要件を満たす場合、相続してから3年を経過する年の12月31日までに売れば、売却益から3,000万円を控除できる特例(相続空き家の特例)が使える可能性があります。
2024年からは、現状のまま売却し、買主が翌年2月15日までに解体・耐震改修すれば売主が特例を適用できるよう緩和されました。
単純に高く売ることより「諸費用を引いた手残り」を計算する。その順序を間違えないことが、低額物件売却の基本です。
空き家バンクは選択肢としては優先度が低い

空き家バンクは「使えば売れる」というものではありません。役に立つ場面はありますが、かなり条件がいい場合に限られます。
筆者としては、空き家バンクを使うなら通常の不動産売却のサブチャンネルにつかうのがおすすめです。
空き家バンクは民間流通に乗りにくい家の受け皿
空き家バンクとは、自治体が空き家情報を登録・公開し、移住希望者などとのマッチングを図る公的な仕組みです。
国土交通省が支援する全国版の空き家・空き地バンクには、令和6年8月末時点で1,076自治体が参画し、累計約1万8,400件の成約実績があります。
評価額が極めて低い物件、再建築不可物件、農地付きの物件など、民間の不動産会社が扱いにくい家の受け皿としては機能しています。
「空き家バンクは全く役に立たない」と言い切るのも違うのですが、しかし甘い期待をかけるのも考えものです。
地域によって登録数・成約力に差がある
空き家バンクの実力は、運営している自治体によって大きく異なります。
成果を出している自治体では、写真が豊富で周辺情報も丁寧に記載されています。それに対して、外観写真が1枚で情報が数年間更新されていない自治体も少なくありません。
自分の実家がある自治体の空き家バンクページを実際に開いて、物件情報の質と量を確認してみてください。
「写真が少ない」「最終更新が1年以上前」であれば、その自治体の空き家バンクに期待しすぎないほうがいいでしょう。
なお、空き家バンクに登録することで、自治体が用意している解体費用補助や家財処分費の補助金(10万〜20万円程度の自治体もある)を活用できるケースがあります。こちらは確認しておく価値があります。
空き家バンクを使うなら民間の売却活動と併用
空き家バンクを使う場合でも、民間の不動産会社による仲介・買取の活動と同時に進めるのが合理的です。
行政のサービスでは、民間ほどのスピードや営業力を期待しにくい面があります。空き家バンク一本に絞ると、売却が長期化するリスクがあります。
「民間で売れたら空き家バンクから外す」という並列的な使い方なら、通常の不動産売却を補完する効果が期待できます。
まとめ|ボロ家は「高く売る」より「手残り」を計算

ボロ家の売却では、単純に「高く売ること」だけではない、複雑な問題が絡みます。「これ以上、損を広げないこと」をひとつの論点とし、早めに「手残りを計算する」という姿勢が必要になります。
仲介手数料、残置物処分費、測量費、税金などを差し引いた実額が、本当の売却額になることを前提とし、「結局いくら残るのか」で判断する必要があります。
一方で、相続登記の義務化、管理不全空家等に指定されるデメリットを考えると、ボロ家・空き家を放置しておくことは得策といえません。
つまり、ボロ家は持っているだけでも費用がかかりリスクもある。一方で、売約には、通常の不動産より考える事が多く、ハードルも高いということになります。
実際のところ、ボロ家・空き家の売却には考えるべきことがたくさんあります。まずは私たちの無料相談で、問題を切り分けるところからスタートしても遅くありません。
いえとちラボのボロ家・空き家相談(無料)
仲介を依頼するかどうかは、その後じっくりと考える方針でもかまいません。上記からお問い合わせいただければ、不動産の処分について、私たちの意見をお伝えします。
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