古い家を売るなら1981年を区切りに売り方を変える

古い家を売るとき、まず確認したいのは「いつ建てられたか」です。

1981年6月を境に、建築基準法の耐震基準が大きく変わりました。それ以前に建てられた旧耐震基準の建物は、耐震性が心配です。阪神・淡路大震災では旧耐震の建物が、倒壊した住宅の98%を占めていたというデータがあります。

買主がこの点を気にしているなら、購入をためらう可能性があります。そこで、その対策を考えておく必要があります。

一方、同じ「古い家」でも1981年6月以降の新耐震基準に適合していれば、築40年であっても状態次第でスムーズに売却できる可能性もあります。

問題は、多くの売主がおおざっぱに「古い家」と一括りに考え、販売戦略をしっかりと立てていないことです。

この記事では、建築年ごとの売却戦略の違い、更地化する前に確認しておきたい諸条件、契約不適合責任と使える税制まで、現場経験豊富な宅地建物取引士が整理します。

「古い家をなるべく損せずに手放したい」という方は、解体や買取を選ぶ前に、ひと通り読んでみてください。

この記事は、アップライト合同会社の立石秀彦(宅地建物取引士)が制作しました。不動産の調査・マーケティングを専門とし、複数の不動産メディアを運営しています。

目次

1981年6月が「古い家」を仕訳する条件

「古い家」と一口にいっても、「どの時代に建てられたか」で大きく性能が異なります。筆者としては、建築基準法の改定時期を基準に、以下のように分類したうえで対策をたてるべきだと考えています。

建築基準法改正による区切り

建築時期耐震基準備考
1981年5月以前旧耐震基準壁量不足など耐震性に問題がある場合も
1981年6月以降新耐震基準木造住宅の耐震性能が引き上げられた
2000年6月以降木造住宅の基準を強化阪神・淡路大震災の教訓を受けて強化された
2025年4月以降4号建築物の見直し確認検査の厳格さと省エネ性能強化

なかでも、一番大きく判断を分けるのが1981年の新耐震基準に合致しているかどうか。たとえば実家を相続したケースでは、旧耐震基準の建物であるケースも多く、このような家をどう売却するのかは、しっかりと考える必要があります。

#H3 2000年以降の家であれば中古住宅として一般流通に乗せる

税務上、木造住宅の法定耐用年数は22年。そこで、築20年を超える木造住宅の価値は認められにくい傾向があります。しかし、2000年改正の建築基準法に合致していれば、まだまだ住める可能性が高く、状態がよければ通常の不動産流通に乗せて売却すべきです。

古い家は売却に時間がかかるケースもありますが、仲介での売却が「もっとも高い価格で売れる」方法です。

筆者であれば、2000年以降の住宅について、不動産買取などを利用することなく、じっくりと仲介で売却をめざします。

1981年6月1日以降〜2000年以前の家は時間をかければ売れる可能性大

築40年程度の物件であれば、「新耐震基準で建てられているが2000年基準ではない」という微妙な立ち位置です。しかしそれでも、可能な限り一般の不動産流通ルートに乗せて売却してください。

時間をかけてでも、仲介でじっくりと売却するのが、価格を最大化するためのセオリーです。反響が薄い時期が続くと不安になりますが、安易に買取などを利用しないほうがいいでしょう。それよりも、周辺の物件売出情報を常に確認し、自分の家の価格が高すぎないかなどに気をつけます。

ライバル物件が多いようなら、少し価格を落としてみてもいいでしょう。不動産の需要が弱いエリアなら、1~2年時間をかけて、じっくりと取り組むように意識してみるのもいいでしょう。

「劣化が激しい」「環境面で特段に不便だ」といった理由がない限り、通常ルートでの売却を目指してください。

それが難しい場合は、次の章で解説する1981年以前の旧耐震住宅と同じ方法で売却を目指してください。

1981年以前の旧耐震住宅は建物価値と土地需要を天秤にかける

旧耐震の住宅といえば、築45年以上の築古住宅になります。しかし、それでも使えないわけではありません。耐震改修を行い、構造を含めたリフォームをすれば、ある程度快適に居住することができます。

たとえば、筆者の住宅は、1974年築。旧耐震で建てられた軽量鉄骨造の戸建てですが、あちこちバラしてフルリフォームして住んでいます。

購入価格は270万円ですが、リフォームに700万円以上かけているので、トータルで約1000万円です。新築よりはるかに安く、設備類はすべて更新しているのでそれなりに快適です。

こういった需要を考えると、旧耐震の古い家であっても、すぐに更地にして売るのはおすすめしません。

土地需要の有無で更地にするかどうかを判断する

「更地にしたほうがいいですか?」と、古家を売る方によく聞かれるます。しかし、その答えはエリアに寄って変わってきます。

都市部で「住宅を新築したい」という人が多いエリアであれば、更地にしてもいいでしょう。更地化することで、買主は新築した後のイメージをつかみやすくなります。また、解体費用を考慮しなくていいので、予算が立てやすくなります。

結果、新築需要があるエリアでは、古い家を解体して、更地にしたほうがいいケースがあります。

一方、地方で人口が減少しているエリアでは、簡単に解体するのはおすすめしません。

  • 新築したい人が少ないので売れにくい
  • 古家を安く買いたい需要を捨てることになる
  • 更地にすると固定資産税が上がる

上記のような理由から、更地化するのは最終手段と考え、できるだけ古家あり土地として売却するほうが有利です。

旧耐震の木造住宅は耐震性能に対する不安をどう払拭するか

旧耐震の木造住宅は、倒壊の恐れが高いといわれています。昨今、南海トラフ地震は高確率で発生すると報道されていますから、耐震性能が不安で手が出ない人も多いはず。

その点、自治体の耐震改修補助制度を利用できることを告知するのもおすすめです。

全国の市区町村(1,741団体)のうち、耐震診断への補助制度を設けているのは1,495団体(85.9%)。耐震改修そのものへの補助も1,469団体(84.4%)にのぼります(国土交通省、2025年4月時点)。

耐震補助に関する制度が「ない」自治体のほうが、今や少数派です。

ただし、補助額の水準は自治体によって差がありますので、いくつか代表例を挙げておきます。

  • 名古屋市:最大115万円(低所得世帯は165万円)。一括での改修が難しい場合は、段階的な工事にも対応しており、1段階目だけで最大60万円を補助する。
  • 静岡市・富士市:工事費用の80%を補助(上限100万円程度)。かなり踏み込んだ支援で、地震県ならではの手厚さです。
  • 阪南市(大阪府):費用の80%(上限50万円、低所得世帯75万円)。耐震診断は所有者負担がわずか5,000〜6,000円程度になる仕組みで、初動のハードルを下げている。
  • 和歌山県内市町村:耐震診断は無料。改修への補助上限は国・県・市町村合計で115.9万円。さらに津波避難困難エリアからの転居には、解体費・新築費の一部助成まで用意されています。

耐震改修の平均工事費は全国で約145万円です。補助を使えば、自己負担は数十万円程度に収まるケースも多々あります。

売却の話に戻すと、買主に「この家には補助が使えます」と伝えられるかどうかで、交渉の流れも変わってきます。旧耐震の木造住宅を売るなら、対象の補助制度を事前に調べておくことをおすすめします。自治体窓口か、リフォームや改修に詳しい不動産会社に確認するのが確実です。

古い家を解体する条件=「再建築できるか」を確認する方法

古い家は、解体して更地にすれば売りやすくなるとは限りません。接道義務や市街化調整区域などの制限により、解体後に再建築できない土地もあるためです。

建築基準法上の道路に2メートル以上接していない土地は、再建築できないことがある

「接道義務」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。建築基準法では、建物を建てる土地は建築基準法上の道路に2メートル以上接していることが条件です。この条件を満たさない土地には、建物を新築することができません。

問題は、「前面の道路が建築基準法上の道路かどうか」が、見た目だけではわからない点です。舗装されていても、幅が4メートル未満の私道だったり、法的に道路として認定されていない通路だったりすることがあります。

解体前に確認しないまま工事を進めると、「更地にしたが建て替えができない」という状況になります。このケースでは、土地の価値が大きく下がります。

市街化調整区域では建て替えや開発に制限がかかることがある

都市計画法では、土地を「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分しています。市街化調整区域は、都市の無秩序な拡大を抑えるために開発を制限するエリアです。

市街化調整区域の土地は、原則として新たな建築が認められません。ただし例外もあり、「既存建築物の用途変更なしの建て替え」などが条件付きで許可されるケースがあります。この例外要件は自治体ごとに異なります。

古い家がある土地が市街化調整区域に指定されていると、解体後に同規模の住宅を建て直せない可能性があります。相続した実家などで立地をよく把握していない場合は、必ず事前に確認が必要です。

再建築不可の家を解体すると価値が激減する可能性もある

再建築不可物件は、現状のまま売ることはできます。古家あり土地として、価格を下げれば買い手がつくこともある。

しかし解体すると話が変わります。建物がなくなれば、その土地に二度と住宅を建てることができないためです。

再建築不可の土地を更地で売る場合、買い手が想定できる用途は資材置き場や駐車場など、限定的なものになります。建物が残っていれば買ってくれた層が、更地では買い手にならない。つまり解体によって、売却の選択肢が狭まる可能性があります。

このリスクは、旧耐震の古家を持つ売主が見落としやすい落とし穴のひとつです。

接道・道路種別・用途地域は、自治体と不動産会社に確認する

接道状況(道路の種別・幅員・接道長さ)と用途地域(市街化区域・調整区域など)は、いずれも自治体の窓口で確認できます。

具体的には以下の方法が一般的です。

  • 市区町村の建築指導課(または都市計画課):用途地域と接道状況の概要を教えてもらえます。
  • 法務局:公図と地積測量図で、隣接する道路との境界や地番を確認できます。
  • 不動産会社:上記の情報をもとに、再建築の可否を総合的に判断してもらえます。

いずれも「売却前の下調べ」として相談できます。費用はかかりません。

個人で確認できることと、専門家に任せるべきことを分ける

個人でも確認できることがあります。たとえば、市区町村のウェブサイトに都市計画図を公開しているケースが多く、おおまかな用途地域はそこで把握できます。

一方、「建築基準法上の道路かどうか」の詳細な確認や、市街化調整区域での建て替え可否の判断は、個人では難しい場合があります。道路の種別は公図だけでは読み取れないことも多く、担当部署への問い合わせと現地確認を組み合わせる必要があります。

また、「接道義務は満たしているが、敷地が旗竿(はたざお)形状で再建築の条件が複雑」といったケースでは、不動産会社や建築士など専門家の判断を仰ぐほうが確実です。

古い家を解体する前に「再建築できるか」を確認することは、売却戦略の前提条件です。確認なしに解体工事を進めないよう、注意してください。

1981年以前の旧耐震住宅は、買主の不安を前提に売却戦略を組み立てる

1981年以前の旧耐震住宅は、買主が耐震性・住宅ローン・税制適用を不安に感じやすいため、建物として売るより、土地・リフォーム素材・投資対象として見せるほうが現実的な場合があります。

旧耐震基準は想定している震度が現行基準と違う

旧耐震基準(1981年5月以前)の設計想定は、震度5強程度の中規模地震です。「その揺れで構造部材が損傷しないこと」を目標に設計されていました。

現行の新耐震基準は、これに加えて震度6強〜7の大規模地震に対する「二次設計」を義務づけています。大地震では建物の一部が変形してエネルギーを吸収しながら、倒壊だけは防ぐという思想です。

旧耐震の設計にはこの二次設計がありません。つまり、大地震時に建物がどう挙動するかを、設計段階で検証していないということです。

阪神・淡路大震災のデータは明確です。倒壊した住宅の98%が旧耐震基準の建物でした。買主がこの事実を知っていれば、旧耐震というだけで購入をためらうのは当然の判断といえます。

新耐震基準でも2000年以前の木造住宅は金物や耐力壁のバランスに注意

1981年6月以降〜2000年以前に建てられた木造住宅は「新耐震基準」に適合しています。ただし、この時期の木造住宅には構造上の課題が残っています。

筋かいを固定する金物の規定が不十分で、接合部の強度が現行基準より低いケースがあります。また耐力壁の配置バランスについての規定が2000年の改正で初めて厳格化されたため、それ以前の建物では耐力壁に偏りがある場合があります。

診断実施済みの木造戸建てで見ると、1981〜1990年に建てられたものでも31.8%で耐震性能が不足と判定されています(国土交通省推計データ)。「新耐震だから安心」とは言いきれない数字です。

買主の中には、この点を気にする人もいます。ある程度買い手を選ぶ物件であり、成約までに時間がかかる可能性があると考えておくべきでしょう。

2000年基準以降の木造住宅は買主も納得しやすい

2000年6月以降に建てられた木造住宅は、現行の耐震基準に最も近いものです。筋かい金物・壁量・壁配置バランスのすべてに現行に近い規定が適用されており、買主も納得して購入できます。

「築25年でも2000年基準適合です」と伝えられれば、耐震性への不安はかなり払拭できます。インスペクション(住宅診断)を実施してその結果を開示すれば、さらに買主の安心につながるでしょう。

2000年以降の住宅であれば、多少古い家であっても売りやすくなります。

住宅ローン控除や耐震基準適合証明書への対応は買主の判断に影響する

旧耐震の住宅を買う買主が住宅ローン控除を使うには、原則として「耐震基準適合証明書」の取得が必要です(または既存住宅売買瑕疵保険への加入など)。

耐震基準適合証明書を取得するには、まず耐震診断を受け、耐震性能が基準を満たさない場合は改修工事が必要です。費用も時間もかかる。買主がこの手間を嫌って購入を見送るケースは少なくありません。

売主としてできる対応は2つです。ひとつは売却前に耐震診断を実施し、結果を開示すること。もうひとつは、耐震基準適合証明書の取得を支援する姿勢を示すこと。どちらも「買主の不安を先回りして取り除く」という発想です。

ただし、診断の結果によっては適合証明が出ない可能性もあります。その場合は「現況での売却」か「耐震改修後の売却」かを検討することになります。不動産会社と相談しながら判断してください。

耐震診断やインスペクションは、売却前の安心材料になる

「売却前にお金をかけるのは……」と躊躇するかもしれません。ただ、旧耐震住宅の場合は売却前の耐震診断・インスペクションが、かなり有効なケースもあります。

耐震診断の診断結果を開示することで、問題の有無が明確になります。問題がなければ強力な安心材料になりますし、問題があれば、価格に反映したうえで正直に開示することで、契約不適合責任のリスクも下げられます。

耐震診断の費用は一般的な木造戸建てで10〜20万円程度。自治体の補助制度を利用すれば、数万円で実施できる場合もあります。売却価格への影響と比較して判断する価値はあります。

新耐震以降のちょっと古い家は「急いで買取を利用しないほうがいい」理由

1981年6月1日以降に建築確認を受けた家は、古くても一定の価値があります。たとえば築40年の古い家(1980年代後半)であっても、新耐震基準に適合していますから、コンディションさえよければまだまだ使えます。

もちろん、築40年といえば劣化もあり、設備の交換も必要です。そのため「上モノの価値はあまり残っていない」と評価される場合もありますが、それでも安易に解体するのは考えもの。更地にするよりも、じっくり時間をかけて売却するほうが有利なケースもあります。

また、急ぐからといって専門業者の不動産買取を利用するのはおすすめしません。買取はよくよく考えてから利用してください。

買取業者は「安く買って直して再販売する」前提で価格を出す

筆者も不動産の買取を行っていましたので、具体的な計算方法を解説できます。実は「高く買い取ってあげよう」と思っても、あまり高く買い取ることはできないのです。

市場価格100%
販売利益10~30%
諸費用10%
リフォーム30%
買取価格相場の30~50%

おおまかには、この表のようになります。

よく「買取は相場価格の7掛け程度」といわれますが、それはリフォームがまったく必要ないなど、特殊なケース。売買にかかる諸費用や税金・金利だけでも相当な負担になりますから、不動産会社もあまり高くは買い取れません。

仮に利益をほとんど取らなかったとしても、相場の7掛けはそうとう厳しいレベルです。それに、利益を1割を切るような事業計画では、銀行が融資をしてくれません。

ですから「高価買取」といったキャッチコピーに惑わされず、一般には「専門業者の買取を利用するのは最後の最後の手段」と考えてください。

一方、個人の買主に売却するのであれば、相場の価格で売ることができます。そこで、まず最初に「できるだけ仲介で、相場の価格で売却する」という戦略が鉄則です。

「早く売る」と「高く売る」は両立しないのが市場原理

ここまで見てきたように、早く売ることと高く売ることは両立しないのが市場原理です。ですから、急ぐ理由がないなら、時間をかけて適正価格で値段で売却するプランを検討するべきでしょう。

何らかの理由があり、早く売らなければいけないという場合に限って価格を下げて売却する方法を検討します。

また、価格を下げる場合であっても、必ずしも一気に価格を下げて不動産買取専門業者の買取を利用する必要があるとはいえません。

仲介であっても、市場の7掛け程度の価格であれば、比較的早期に売却できる可能性もあります。そのような方法を試してタイムリミット近くまで粘ってみた上で、どうしても売れなかった場合に限り、買い取りを利用すればいいのではないでしょうか。

土地需要があるエリアなら、更地化前提の売却も選択肢になる

土地需要がある地域では、古い建物そのものに価値がなくても、新築用地として買主が見つかる可能性があります。ただし、実際に解体する前に、再建築可否と税負担を確認する必要があります。

新築需要がある地域では買主は建物より「土地」を重視

都市部や人口が増加しているエリアでは、古家付き土地を購入する買主の多くが「解体して新築する」ことを前提にしています。建物の状態はほぼ関係ない。見ているのは立地・面積・形状・道路付けです。

このようなエリアでは、売主が先に解体して更地にすることで、買主が新築後のイメージをつかみやすくなります。解体費用の見積もりを気にしなくていい分、資金計画も立てやすい。結果として、買主の間口が広がります。

ただし、「新築需要があるかどうか」は肌感覚で判断するのは危険です。周辺で新築工事が目立つ、分譲地の売り出しが続いているといった状況が、ひとつの目安になります。地元に根ざした不動産会社に確認するのが確実です。

更地にすると見た目は良くなるが解体費用を取り返せない可能性も

更地化には、解体費用が先行して発生します。売却代金が入る前に、数十万〜数百万円の現金が出ていく。これは資金的な余裕がない場合、大きな負担になります。

解体費用の目安は構造・規模・立地によって変わりますが、木造一般住宅(30〜40坪)で100〜200万円程度が多い。次のセクションで詳しく触れますが、道路幅や残置物の状況によってはさらに上振れします。

更地にしたからといって、必ず早く売れるわけでもありません。「更地化したが想定より売れなかった」というケースも現実にあります。解体費用を先に出す判断は、土地需要を十分に確認してからにしてください。

年末時点で更地のまま残ると住宅用地特例が外れる可能性がある

固定資産税には「住宅用地特例」があります。住宅が建っている土地は、小規模住宅用地(200㎡以下の部分)で固定資産税が6分の1に軽減される制度です。

建物を解体して更地にすると、この特例が外れます。翌年の固定資産税が最大で6倍になるケースもあります。

特に注意が必要なのは年末のタイミングです。固定資産税の課税基準日は1月1日。その時点で更地になっていると、翌年から特例が適用されません。年内に売却できる見込みがないなら、解体の時期を翌年以降にずらすことも選択肢になります。売却スケジュールと解体タイミングは、セットで考えてください。

管理不全空家として勧告を受けると固定資産税の優遇が外れることがある

2023年の空家特措法改正により、管理が不十分な空家は「管理不全空家」として自治体から指導・勧告を受ける仕組みが整備されました。勧告を受けた空家は、住宅用地特例の対象から除外されます。

つまり、建物が残っていても固定資産税の優遇が外れる場合があるということです。「建物があれば特例が使える」は、今や無条件には成り立ちません。

売却を検討している古家が長期間空き家になっているなら、自治体から指導が来ていないかを確認してください。すでに勧告を受けている場合は、早急に売却か適切な管理への移行が必要です。

解体費用は構造・道路幅・残置物・アスベストの有無で変わる

解体費用の見積もりは、以下の要素で大きく変わります。

  • 構造:木造よりRC造・鉄骨造のほうが割高。同じ木造でも、2階建てと平屋では異なる。
  • 道路幅:前面道路が狭いと大型重機が入れず、手壊し作業が増えて費用が上がる。
  • 残置物:家財や庭石・井戸・浄化槽が残っていると、別途撤去費用が発生する。
  • アスベスト:1975年以前の建物を中心に、断熱材や天井材にアスベストが含まれているケースがある。事前調査と適切な処理が法律で義務づけられており、費用は数十万円単位で加算される。

解体業者に見積もりを依頼する前に、上記の条件を整理しておくと話がスムーズです。複数社から見積もりを取ることも基本です。1社だけでは相場感がつかめません。

そのまま売る・更地にする・リフォームする・買取に出す…の切り分け方

古い家の売却方法は、どれが正解というものではありません。土地需要、建物状態、再建築可否、売却期限、資金事情によって、最適な方法は変わります。

そのまま売るのは、解体費用を先に出したくない家に向いている

「古家付き土地」として現況のまま売り出す方法です。解体費用が先行しない分、資金的なリスクが低い。

向いているのは以下のような場合です。資金に余裕がない、再建築可否が不明確、解体するほど土地需要がないエリア、建物にまだ使える余地がある。

デメリットは、買主の間口がやや狭くなること。解体費用を見込んで値引き交渉される可能性もあります。それでも、解体費用を先払いするリスクと比較すれば、そのまま売ることが現実的な選択肢になるケースは少なくありません。

更地にするのは、土地需要があり再建築できると確認できた家に向いている

以下の条件が揃ったときに、はじめて更地化が有効な選択肢になります。

  • 周辺に新築需要がある
  • 再建築可能と確認できている
  • 解体費用を先払いできる資金がある
  • 年内に売却できる見込みがある(住宅用地特例の問題)

どれかひとつでも欠けると、更地化のメリットが薄れます。特に再建築可否は、確認前に解体してはいけません。取り返しがつかないためです。

リフォームして売るのは、費用回収の見込みがある場合に限る

リフォームして売ることで、売却価格が上がる可能性はあります。ただし、リフォーム費用が売却価格の上昇分を上回るケースも多い。

一般的に、売却目的のリフォームで回収できるのは、かけた費用の5〜7割程度といわれています。全額回収できることはほぼありません。

向いているのは、「クリーニングと最低限の修繕で印象が大きく変わる物件」です。外壁塗装や水回りの全面改修など、大きな工事を売却前に行うのは慎重に判断してください。不動産会社と相談のうえ、費用対効果を確認してから着手することをおすすめします。

買取に出すのは、価格より早期処分と責任回避を優先するときに向いている

不動産買取専門業者への売却は、スピードと確実性が最大のメリットです。買主を探す期間がなく、契約不適合責任も原則免責になります。

ただし価格は相場の30〜50%程度になることが多い。業者が「安く買って、リフォームし

て、利益を乗せて売る」ビジネスモデルである以上、これは構造的なことで、どの業者に依頼しても大きくは変わりません。

買取が向いているのは、売却期限が明確に決まっている、遠方で管理が難しい、建物の問題を抱えたまま仲介では売れない、といった事情がある場合です。急ぐ理由がないなら、まず仲介を試みてください。

迷ったら複数の査定を取って比較する

「どの方法が有利か」は、査定を取ってみないとわかりません。

仲介での査定額、買取での査定額、更地にした場合の土地の査定額を、それぞれ別の不動産会社に依頼して比較する。これが最も合理的な判断材料の集め方です。

査定は無料で依頼できます。「査定を依頼したら必ず売らなければならない」ということもありません。情報を集めてから判断する、という順番を守ってください。

古い家の売却では契約不適合責任と税制に注意する

古い家は、雨漏り・シロアリ・傾き・再建築不可などの問題が後から判明すると、売却後のトラブルにつながります。この点をクリアにしておき、買主に告知しておくほうが安全です。

あわせて、使える税制特例も売却前に確認しておく必要があります。

雨漏り・シロアリ・傾き・給排水の不具合は、買主に説明する

2020年の民法改正により、不動産売買における売主の責任は「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に変わりました。従来より売主の責任範囲が広くなっています。

契約不適合責任とは、売買契約の内容と実際の物件状態が異なる場合に、買主が売主に対して修補・代金減額・損害賠償・契約解除を請求できる制度です。「知らなかった」は免責の理由になりません。

古い家で特に問題になりやすいのは以下の4点です。

  • 雨漏り:屋根・外壁・サッシ周りの劣化から発生しやすい。過去に雨漏りがあった事実も開示対象になります。
  • シロアリ:床下の被害は目視では発見しにくい。過去の被害歴・駆除歴も含めて開示する。
  • 傾き・不同沈下:基礎の劣化や地盤の問題で生じる。体感できる傾きがあれば必ず開示する。
  • 給排水の不具合:配管の老朽化による水漏れや、浄化槽の状態も確認が必要です。

売却前にインスペクション(既存住宅状況調査)を実施し、その結果を買主に開示することで、契約後のトラブルリスクを大幅に下げることができます。費用は5〜10万円程度が目安です。

再建築不可を隠したまま売ると重大なトラブルもあり得る

再建築不可の事実は、不動産売買における重要事項説明の対象です。告知せずに売却した場合、買主から契約不適合責任を追及されます。契約解除・損害賠償請求に発展するケースもあります。

「知らなかった」では済まない場合もあります。売主として知り得る情報は、事前に調査して開示するのが原則です。

再建築不可かどうかは、自治体の建築指導課で確認できます。売却前に必ず確認してください。

相続空き家の3,000万円特別控除は旧耐震の相続空き家で重要になる

被相続人(亡くなった方)が居住していた家を相続し、その後売却した場合に使える特例です。一定の条件を満たせば、売却益から最大3,000万円を控除できます。

主な適用要件は以下の通りです。

  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋であること
  • 相続開始直前まで被相続人が一人で居住していた(または空き家だった)こと
  • 相続してから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  • 売却価格が1億円以下であること
  • 売却時点で、建物の耐震性が現行基準を満たしているか、建物を解体して更地で売ること

旧耐震の相続空き家は、この特例の対象になるケースが多い。ただし条件が細かく、見落としやすい要件もあります。適用を検討する場合は、売却前に税理士に相談することをおすすめします。

なお、2024年の税制改正により、売主が耐震改修または解体を行わなくても、買主が売却翌年の2月15日までに改修・解体を完了することを条件に特例が使えるよう、要件が緩和されています。

低未利用土地等の100万円控除は低額な土地売却で確認したい

低未利用土地等の譲渡に係る長期譲渡所得の特別控除(100万円控除)は、都市計画区域内にある低未利用土地を一定の条件のもとで売却した場合に、譲渡所得から100万円を控除できる制度です。

主な要件は以下の通りです。

  • 売却価格が500万円以下(一部区域では800万円以下)であること
  • 売却年の1月1日時点で所有期間が5年を超えること
  • 売却後に買主がその土地を適切に利用すること(市区町村への確認書の取得が必要)

地方の安価な古家付き土地を売却する場合に活用できる可能性があります。売却価格が低額になりそうな物件では、事前に確認しておきたい制度です。

税制は年度で変わるため売却前に税理士や自治体に確認する

ここまで紹介した特例は、いずれも適用要件・期限・控除額が年度ごとに変わる可能性があります。

特に相続空き家の3,000万円特別控除は、2027年12月31日までの時限措置です。売却のタイミングによっては、適用できなくなる可能性があります。

税制の情報は国税庁のウェブサイトで確認できますが、個別の案件に当てはめる判断は専門家に委ねるのが確実です。不動産売却の税務相談は、不動産に詳しい税理士か、市区町村の税務窓口に問い合わせてください。

古い家を売るときによくある質問

本文で補足しきれない疑問をFAQにまとめ、古い家の売却でよくある不安・疑問に答えます。

築50年の家でも売れますか?

売れます。ただし、条件次第です。

立地がよく再建築可能な土地なら、建物の状態に関わらず需要があります。地方の人口減少エリアであっても、価格を適正に設定すれば買い手はつく場合がほとんどです。「売れない」のではなく「適正価格がわかりにくい」ことが、売却を難しくしているケースが多い。地元に詳しい不動産会社に査定を依頼するところから始めてください。

古い家は解体してから売ったほうがよいですか?

必ずしもそうではありません。

土地に新築需要があり、再建築可能と確認できている場合は、更地化が有効な場合があります。一方、再建築不可の土地や土地需要が薄いエリアでは、解体することで売却の選択肢が狭まるリスクがあります。解体前に再建築可否と地域の需要を確認してから判断してください。

古い家をリフォームしてから売るのは得ですか?

得になるとは限らず、慎重に計算する必要があります。

リフォーム費用が売却価格の上昇分を上回るケースが多く、費用を全額回収できることはほぼないと考えてください。クリーニングや最低限の修繕は有効ですが、大規模なリフォームは売却前に不動産会社と費用対効果を確認してから判断することをおすすめします。

再建築不可の古い家でも売れますか?

売れます。ただし、買い手の層は限られます。

現金購入の投資家や、リノベーションを前提とした実需層が主な買い手になります。住宅ローンが使いにくい物件のため、価格は再建築可能な物件より低くなります。再建築不可であることは必ず買主に告知する義務があります。隠したまま売却すると、契約不適合責任を問われます。

古い家を0円で手放す方法はありますか?

あります。ただし、想像より簡単ではありません。

「みんなの0円物件」などのマッチングサイトや、ジモティーでの無償譲渡、市区町村が運営する空き家バンクでのゼロ円登録といった方法があります。ただし、こういったサービスに掲載されている物件数は限られており、すぐに引き受け手が見つかるとは限りません。0円での手放しを検討する前に、まず適正価格での売却を試みることをおすすめします。

相続した古い家を売るときに使える税制はありますか?

代表的なものが2つあります。

ひとつは「相続空き家の3,000万円特別控除」。1981年5月以前に建てられた被相続人の旧居を相続後に売却する場合、一定条件のもとで売却益から最大3,000万円を控除できます。もうひとつは「低未利用土地等の100万円控除」。売却価格が500万円以下(一部800万円以下)の低未利用地が対象です。いずれも適用要件があるため、売却前に税理士に相談することをおすすめします。

古い家の査定はどこに依頼すればよいですか?

地元に根ざした不動産会社への依頼が基本です。

古い家の売却は、地域の取引事例や土地需要の把握が重要になります。全国展開の大手より、そのエリアを長年見てきた地場の不動産会社のほうが、実態に近い査定と助言が得られることが多い。複数社に査定を依頼して比較することも基本です。査定は無料で、依頼したからといって売却を強制されることはありません。

まとめ|古い家を売る最初の一歩は「売り方を検討する」こと

古い家の売り方は、「1981年6月以前か以降か」から整理するのが合理的です。

筆者の経験上、旧耐震の建物と新耐震の建物では、買主が感じる不安の種類も、使える税制特例も、適切な売却戦略も違うからです。

とくに以下の3点は押さえておいてください。

①解体は「再建築できるか」を確認してから行うべきです。確認なしに工事を進めると、取り返しのつかない価値の喪失につながります。

②次に、急ぐ理由がないなら買取より仲介を選ぶこと。買取価格は相場の30〜50%程度になる可能性があり、「高価買取」は掛け声だけです。

③そして、相続した旧耐震の空き家なら、売却益から最大3,000万円を控除できる特例の要件を、売却前にしっかり確認しておいてください。

この記事を読んだことで、「古い家は安く手放すしかない」と一括りに考えることなく、年代別に最適な売却戦略を選んでいただければ幸いです。

まず複数の不動産会社に査定を依頼し、仲介・更地化・買取それぞれの数字を比べてみてください。

東京、大阪、沖縄では弊社と協力各社が「古い家であってもしっかり査定・販売する」という方針で、ご相談に対応します。

無料空き家相談|いえとちラボ

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