空き家を放置して特定空家に指定されると、固定資産税の特例(住宅用地特例=小規模住宅用地で課税標準を6分の1にする減額措置)が外れ、最大6倍の税額になる可能性があります。
それだけでなく、行政代執行(強制解体・撤去)の対象になった場合、数百万円の費用負担が発生することも。
また、そこまで深刻な事態にならなくても、相続登記をせずに放置しているだけで10万円以下の過料が科される恐れがあります。
この記事では空き家を放置することによるリスクや費用負担について解説します。また、アップライト合同会社が所在するエリアで30%におよぶ空き家において、相続登記が放置されている実態についても報告していきます。
筆者は宅建士・JSHI認定のホームインスペクターとして、大阪府阪南市で不動産業を営んでいます。実体験も踏まえて、空き家放置がもたらす金銭的リスクを解説しました。
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空き家を放置すると大きな金銭負担につながる可能性

空き家を長期間放置するほど、建物の劣化、税金や修繕など金銭負担につながる可能性があります。最近はそれに加えて、行政の対応も厳しくなっています。
空き家を放置した結果、市区町村から「管理不全空家等」や「特定空家等」と判断されると、かなり大きな金銭的負担が発生しますから、その点には注意してください。
管理不全空き家・特定空き家に指定されると
特定空家等とは、放置によって周囲に深刻な悪影響を及ぼす状態になった空き家のことです。 空家法では、主に次のような空き家が該当します。
・倒壊などの危険がある
・衛生上、有害となるおそれがある
・著しく景観を損なっている
・その他、周辺の生活環境を守るために放置することが不適切である
そしてこの特定空き家に指定されると、市区町村から所有者に対して改善が求められます。
特定空家等について必要な措置を命じられても対応しない場合には、行政代執行によって解体などが行われ、その費用を所有者等が負担するケースもあります。この費用は後ほど詳しく解説しますが、500万円前後になるケースが多いともいわれています。
さらに、2023年12月に施行された改正空家法では、新たに「管理不全空家等」という仕組みが設けられました。
管理不全空家等とは、適切な管理が行われておらず、そのまま放置すれば「特定空家等」に該当するおそれがある空き家です。特定空家等になる前の段階から行政が介入できるようになった、と考えるとイメージしやすいでしょう。
なお、行政の「勧告」に従わず「命令」の段階まで進んだ場合、命令違反そのものにも50万円以下の過料が科されます(空家法第30条)。行政代執行の費用とは別に、この過料も発生し得る点は押さえておいたほうがいいでしょう。
空き家を放置した場合のコストは数百万円!?

空き家を放置した場合の金銭負担は、毎年かかる税金だけではありません。状態が悪化し、行政の対応が進むほど、負担の大きさは重くなっていきます。
では、実際にどのような費用が発生し、最終的にどれくらいの金額になるのでしょうか。固定資産税と行政代執行の実例から見ていきます。
まず固定資産税が6倍になる
空き家を放置すると、「固定資産税が6倍になる」といわれることがあります。 正確には、固定資産税そのものが6倍になるわけではなく、税金の特例が外れて、結果として6倍の税額を払わなければいけなくなるということです。
住宅が建っている土地には「住宅用地特例」があり、200㎡以下の小規模住宅用地では、固定資産税の課税標準が本来の価格の6分の1に軽減されています。200㎡を超える部分についても、一般住宅用地として3分の1に軽減されます。
しかし、空き家を適切に管理せず、「管理不全空家等」または「特定空家等」として市区町村から勧告を受けると、その敷地は住宅用地特例の対象から外れます。つまり、200㎡以下の部分では、それまで「6分の1」とされていた課税標準の特例がなくなるため、固定資産税の負担が6倍に増えるわけです。
一気に特例が外れるのではなく、市町村の勧告に従わない場合に特例が外れることになります。そこで、勧告が来たら無視せず、その時点で対応したほうがよいでしょう。
行政代執行による請求額は1000万円を超すケースも
特定空家等を放置し、市区町村からの命令にも従わない場合、最終的には行政代執行によって建物を解体されることがあります。
注意したいのは、行政が無料で解体してくれるわけではないことです。
行政代執行に実際にかかった費用は、原則として所有者等に請求されます。行政代執行法に基づき、作業員の賃金、業者への報酬、資材費など、代執行に要した費用が徴収の対象となります。
では、実際にどのくらいかかるのでしょうか。
国土交通省近畿地方整備局がまとめた6件の行政代執行事例では、除却費用等は次のようになっています。
- 木造平屋・34㎡……約150万円
- 木造2階建て・49.38㎡……約180万円
- 木造2階建て・342㎡……約470万円
- 木造2階建て・75.69㎡……約570万円
- 木造2階建て・112.89㎡……約600万円
- 木・鉄骨造・253㎡……約850万円
6事例だけの数字であり、全国平均を示すものではありませんが、ある程度参考になる数字です。
費用は150万〜850万円に達しており、単純中央値を計算すると約520万円。行政代執行まで進めば、数百万円規模の負担になるケースは十分にあり得ることが分かります。
さらに、建物が大きい場合やアスベストの処理などが必要な場合には、1,000万円を大きく超えることもあります。
滋賀県野洲市が鉄骨造3階建て・9戸の区分所有建物を行政代執行で解体した事例では、解体工事の設計・工事監理・工事費・土地借上料を合わせた費用が約1億1,813万円(1億1,813万2,460円)に達しました。
もちろん、行政代執行の費用には一律の相場があるわけではありません。
しかし、「行政代執行になっても、自治体が解体してくれるから大丈夫」と考えるのは危険です。
しかも、行政代執行法では、国税滞納処分の例による強制徴収が認められています。自治体によっては、土地だけでなく預貯金などの財産を差し押さえて費用を回収する可能性もあります。
特定空家等として行政から指導や勧告を受けた段階で対応したほうが、結果として金銭的な負担を小さくできる可能性が高いでしょう。
(参考)国土交通省近畿地方整備局「事例から見る空き家の行政代執行の実務」 (参考)国土交通省「区分所有建物の空き家に対する行政代執行の事例について」 (参考)名古屋市「空き家所有者の皆様へ」
実際に特定空き家に指定された物件の事例
特定空家等の指定から行政代執行に至るまでの流れは、実際の事例を見るとイメージしやすくなります(上記は姫路市が特定空家に指定している事例)。
以下に紹介する事例からわかるのは、指定から代執行までは段階を踏んで進むということです。助言・指導の段階で気づいて対応すれば、費用負担はほとんど発生しません。放置したまま何段階も進んでしまうことが、負担を大きくする一番の原因といえるでしょう。
情報を積極的に公開する姫路市の事例
兵庫県姫路市は、特定空家や管理不全空家に関する情報を積極的に公開している自治体です。姫路市によると、平成27年に空家特措法が施行されて以降、27件の老朽危険空家が特定空家に指定されました(令和8年8月現在)。そのうち5件が行政代執行(略式代執行含む)による除却(解体すること)、9件が所有者自身による除却でした。
また令和5年に空家特措法が改正され、管理不全空家が規定されて以来、このまま放置すれば特定空家に該当する恐れがある空家5件が管理不全空家に認定されています(そのうち1件が特定空家に引き上げ)。
どのような建物を特定空家に指定するかは市町村の判断によりますが、姫路市では「外壁の仕上材の剥離や軒の腐朽が確認でき、このまま放置すれば北側道路等に落下し、周辺に危害を及ぼすおそれのある危険な状態のため」など具体的な判断基準も紹介しており、ひとつの参考になります。
法第2条第2項に規定する「特定空家等」の認定等について(姫路市)
筆者が見た特定空き家の実例

上記は、平成8年に筆者が見学してきた特定空き家の実例写真です。この物件は比較的都市部にありながら、接道が非常に狭く、道路幅員が1mを切っている箇所もありました。
そのため、解体しようにも重機を入れることができず、所有者も手が付けられなかったのでしょう。実際住める状態ではありませんでしたし、リフォームするにも車両が入らないので工事ができない状態でした。
ただし、この建物は、市の空き家バンクに登録されて無事に引き取り手が見つかりました(ゼロ円譲渡)。この物件からわかることは、「特定空き家になるにはそれなりの理由もある」ということと、「行政はただ過料を科すだけでなく、空き家バンク登録などの手助けもしてくれる」ということでした。
行政とは密に相談しておき、解決につながる提案をしてもらうことも大切だと感じます。
相続登記を放置すると10万円以下の過料も

空き家そのものを適切に管理していても、登記を放置している場合は別の問題があります。
とくに相続した不動産や、所有者の住所・氏名が古いままになっている不動産には注意が必要です。近年の制度改正によって、これまで任意だった手続きを含め、期限内の対応が必要となっています。
相続登記が義務化された点に注意(10万円以下の過料)
2024年4月1日から、相続登記が義務化されています。
相続(遺言を含む)によって不動産の所有権を取得した相続人は、相続の開始を知り、かつ不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する義務があります(不動産登記法第76条の2)。
正当な理由がないのにこの申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法第164条第1項)。
注意したいのは、2024年4月1日より前に発生した相続も対象になる点です。すでに相続が発生していて登記していない不動産があれば、原則として2027年3月31日までに登記する必要があります。
ただし、期限を過ぎたからといって、いきなり過料が科されるわけではありません。登記官が申請義務違反を把握すると、まず相当の期間を定めて申請するよう催告します。その催告にも正当な理由なく応じなかった場合に、管轄の地方裁判所に通知される、という流れです。
遺産分割がまとまらず期限内に相続登記できない場合は、「相続人申告登記」という簡易な制度を使えば、いったん義務を果たしたことにできます。ただし、これはあくまで暫定的な対応で、遺産分割が成立したあとは、別途正式な相続登記が必要になります。
(参考)法務省「相続登記の申請義務化について」
住所等変更登記を放置すると5万円以下の過料に
相続登記とは別に、2026年4月1日から「住所等変更登記」も義務化されています。これは、登記簿に記載されている所有者本人の住所や氏名を最新の状態に更新する手続きです。
引っ越しや結婚などで住所・氏名が変わってから2年以内に変更登記をしないと、正当な理由がない限り、5万円以下の過料の対象になります。
これまで住所変更登記は任意で、罰則もありませんでした。しかし、登記簿上の住所が古いままだと、行政が所有者と連絡を取れなくなり、災害復興や公共事業の妨げになる「所有者不明土地問題」の一因になっていました。今回の義務化は、その解消が目的です。
この制度も、過去の住所変更にさかのぼって適用される点は相続登記と同じです。心当たりのある方は、早めに確認しておくことをおすすめします。
なお、法務局へあらかじめ「検索用情報の申出」をしておくと、住基ネットの情報をもとに法務局が職権で変更登記をしてくれる「スマート変更登記」という制度も用意されています。この申出自体は2025年4月から受付が始まっており、登録免許税もかかりません。今のうちに済ませておくと、将来の手間を減らせます。
(参考)法務省「所有者不明土地の解消に向けた民法・不動産登記法等の改正」
「30%の人が相続登記を放置している実態」が明らかに

当社(アップライト合同会社)では、近隣の住宅街について「空き家の所有実態や、登記はどうなっているのか」を調査しました。
原始的ながら確実な方法として、阪南市内の3町について、足で歩いて空き家を確認し、その登記事項を確認する方法で調査を行ったところ、約3割の空き家について「相続登記がなされていない」可能性が高いことがわかりました。
当社周辺の空き家を歩いて調べた結果
当社が所在するエリア(阪南市舞、光陽台、鳥取三井)には、3,460世帯が居住しています(阪南市ホームページ/住民基本台帳による)。そのエリアをくまなく歩き、およそ100件の空き家を目視確認しました。
なかでも、しばらく放置されているように見える42件について登記事項を取得し、その内容を精査しました。
このエリア(とくに舞地区)は昭和40年代に開発された住宅地で、その当時のまま登記が変更されていない物件が多いことがわかりました。その他の地区も、50年代から60年代に開発されたエリアで、登記簿の甲区がその当時のままになっている物件が多く見つかりました。
この簡易調査で、筆者は次のように推定しています。
| 区分 | 推定件数 | 42物件中 |
| 相続登記未了の疑いが強い | 約13件 | 約31% |
| 相続登記未了の可能性がある | 約15〜20件 | 約36〜48% |
| 住所変更登記未了の疑い | 約6〜10件 | 約14〜24% |
こういった状態の土地建物は、現在の不動産登記法によれば、いずれも過料の対象となる可能性があります。
将来の売却時に見つかって10万円が課される可能性
ここまで、相続により土地や建物を取得したことを知った日から3年以内に相続登記しないと10万円以下の過料の対象となる、と説明してきました。
しかし、登記をせずに放置しているだけで、法務局が自動的に検知してペナルティを課す仕組みなどはないようです。
気になるのは「将来売ることになった時」。売却時にはいったん相続人の名義に登録することになりますから、その時点で法務局は「長年相続登記を怠っているな」と気付きます。
いまのところ、相続登記を行っていないことに気づいたからといって即過料が課されるわけではないようです。
しかし、法律上は過料が課されても文句はいえません。売却の予定がなくても、名義が古いままの不動産は、いざという時に手続きが一気に増えて時間がかかります。心当たりがあれば、早めに整理しておくほうが結果的に楽です。
FAQ「空き家放置に関するよくある質問と回答」

空き家を放置した場合のリスクについては、「すぐに税金が上がるのか」「相続登記が未了だとどうなるのか」など、細かな疑問も浮かびます。
ここでは、空き家の管理や登記について、とくに迷いやすいポイントをQ&A形式で整理します。
- 空き家を放置すると、すぐに過料や税金の増額があるのですか?
-
すぐには発生しません。特定空家等の場合は助言・指導、勧告、命令という段階を踏みます。固定資産税の特例が外れるのは勧告を受けた段階からで、過料が発生するのは命令にも従わなかった場合です。相続登記や住所等変更登記も、催告に応じなければ過料の対象となる、という流れになっています。
- 特定空き家に指定されたら、何をすればいいですか?
-
まずは市区町村からの助言・指導の内容を確認し、指摘された点(老朽化、雑草、ごみなど)を早めに改善することです。この段階で対応すれば、勧告や命令に進む前に解決できます。自分で対応することが難しい場合は、解体や売却も含めて不動産会社に相談することをおすすめします。
- 相続登記をしていない不動産が複数あります。過料も複数科されますか?
-
複数の不動産や複数の相続が絡む場合は、それぞれ別の過料事件として扱われる可能性があります。心当たりのある不動産をまとめて確認しておくと安心です。
- 空き家を解体せずに売却することはできますか?
-
一般に可能なケースも多いです。ただし、古家付きのまま売却するほうが有利か、更地にしてから売却するほうが流理かは、エリアと物件により異なります。また、特定空家等に指定されている場合は、買い手が見つかりにくくなることもあります。解体費用と売却価格のバランスを見ながら判断する必要があります。
- 相続人が複数いて話がまとまりません。それでも登記義務は発生しますか?
-
発生します。ただし、遺産分割が未了の場合は「相続人申告登記」という簡易な手続きで、いったん申請義務を果たすことができます。正式な相続登記は、遺産分割がまとまってから改めて行う形になります。
まとめ|空き家は「まだ大丈夫」と放置せず、早めの対応を

空き家を使わずに放置した場合、単に建物が劣化しやすいだけではありません。
建物管理や相続登記を放置することで、固定資産税の負担増、行政代執行による解体費用負担、相続登記や住所等変更登記の過料など、思わぬ金銭負担につながる可能性があります。
とはいえ、金銭負担がいきなり発生するわけではありません。管理不全空家等や特定空家等に指定されるケースでも、まず行政からの指導や勧告などが行われます。
そういった段階を踏ん、どうしても従わなかった場合に行政代執行などに進みます。相続登記についても、まず法務局から連絡が来るはずです。
そのような連絡が来た時点であわてないように、手続きの期限や内容を把握して対応することが大切です。
そこで、相続した空き家をそのままにしている方は、まず建物の状態と登記の状況を確認してみてください。管理を続けるのか、売却するのかを早めに整理しておけば、問題が大きくなってから慌てて対応する事態を避けやすくなります。
空き家の状態を確認する
管理を続ける場合も、売却を検討する場合もご相談いただけます。
また、空き家は問題が表面化してからでは選択肢が少なくなります。「まだ急がなくても大丈夫」と感じている段階で現状だけでも確認しておくと、その後の判断にゆとりが生まれ、より有利な対応ができるはずです。


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