ボロ戸建て投資の出口戦略は、売却するときに考えると遅すぎます。購入を決める前に、3つの売却価格を試算しておいてください。
出口を決めずに買った物件でも、賃貸には入居者がついてくれるかもしれません。ただ、その後に「売ろうとしたら買い手がつかない」「更地にしたら解体費で手残りがゼロになった」という事態が起きかねません。
ボロ戸建て投資で損をするパターンの多くは、売却時ではなく購入時の準備不足に原因があります。
そこでこの記事では、3つの出口を購入前に試算する方法を解説します。
① 投資家向け(オーナーチェンジ): 年間家賃と期待利回りから売却価格を逆算します。例えば年間家賃60万円・期待利回り15%なら、出口価格の目安は400万円です。
② 実需層向け: 周辺の中古戸建て成約価格をベースに、築年数・修繕状態・駐車場・接道条件で補正します。投資家向けとは価格の決まり方が異なります。
③ 更地売却: 土地価格から解体費・アスベスト対策費・境界確定測量費・売却諸費用を差し引いた手残り額を確認します。国土交通省の資料では木造住宅の解体費の目安として「1坪あたり3.5万円」とされますが、接道条件や残置物の状況によって大幅に変わります。地価の低いエリアでは、更地にすると手残りの減少が心配です。
さらに記事の後半では、IRR(内部収益率)を使って投資全体を判定する方法も解説します。表面利回り20%の物件でも、修繕費・空室損失・譲渡所得税を時系列で並べると結果が変わります。「売れたから成功」ではなく、全体の収支で判断するようにしましょう。
この記事を読み終えると、購入前に3つの出口価格を自分で試算し、どれか一つが成立するかどうかを確認する手順が身につくはずです。ぜひ最後までお付き合いください。
この記事は、アップライト合同会社の立石秀彦(宅地建物取引士)が制作しました。不動産の調査・マーケティングを専門とし、複数の不動産メディアを運営しています。
ボロ戸建て投資の出口は購入時に決める

不動産投資の出口戦略は、投資物件を売却する時ではなく、購入する前に綿密に計画しておくべきものです。これはすべての不動産投資に共通する論点ですが、ボロ戸建て投資でも同じです。
むしろボロ戸建ての場合、出口戦略が難しいことも多く、まず最初に確実な出口を決めてから購入するという順序が特に大切になります。
購入前に出口を決めても予定どおりには進まない
ボロ物件の場合、出口戦略は実際かなり難しいケースが多いのが特徴です。
購入前に出口戦略を決めておいたとしても、想定外の建物の傷みや予想していなかった近隣クレームなどが発生するケースも多く、計画どおりに売却・処分できるとは限りません。
そのため、万が一想定した価格で売却できなかった場合でも可能な限り赤字にならない計画にしておく必要があります。また、売却できなかった場合に別の出口にシフトできる、柔軟な計画を立てておくことも重要です。
出口戦略が変更しても致命傷にならない投資額に抑える
柔軟な出口戦略と言われても、具体的にどうすればいいかわからない場合は、まず予算に着目してください。特に初心者の場合、借り入れをせずに購入できる低価格な物件を探し、その物件で経験を積んでいくのがいいでしょう。
不動産投資は非常に複雑な要素が絡むため、幅広い知識が必要です。ボロ物件の場合は特に建物を見る目が求められるため、不動産投資の中でも難易度が高い領域です。
一方、失敗した場合のダメージは、そもそもの価格が安いため比較的小さくてすみます。
その点を最大限に生かし、不動産投資の練習をスタートするというつもりで、できるだけ安い物件を選んでください。そして、万が一失敗してもダメージが少ない計画にしておくのがいいでしょう。
売却益を当てにせず家賃だけでも回収できる計画を作る
投資初心者であれば、次に重視したいのがインカムゲインを最大化する考え方です。
購入した物件を売却して利益を出すキャピタルゲインも魅力的ですが、ボロ戸建て投資でインカムゲインとキャピタルゲインの両方を狙うとハードルが高くなります。プロであれば両方を狙いたいところですが、最初はどちらか一つに絞るのが得策でしょう。
不動産投資の練習をスタートするという観点からも、まず狙いたいのは月々の家賃を最大化することです。
入居率などの調査は、自分でも、比較的簡単に行えます。例えば、購入物件があるエリアを実際に歩いてみて、アパートがどれくらい建っているか、カーテンがかかっていて人が暮らしている部屋がいくつあり、空室がいくつあるかという空室調査を行います。
空室があまりに多いエリアは避け、空室が少ないエリアを検討するという大まかな方向性であっても、実際に街を歩いて得たデータは役に立ちます。
またボロ戸建てとはいえ、賃貸アパートに比べれば建物も広く庭もついているため、ファミリーには魅力のある物件になり得ます。学校が近い、スーパーなど買い物に便利なエリアであれば、特にファミリー層の入居が期待できます。
ファミリー向け物件としてインカムゲインを狙うという方法は十分考えられるでしょう。
そして家賃収入だけである程度の利益が見込めるなら、出口戦略については多少大雑把に考えておいても、トータルで見て許容範囲に収まる可能性が高くなります。
試算1:最も売りやすい出口は入居者付きのオーナーチェンジ

ボロ戸建ての出口戦略にはいくつかの考え方があります。
一つは賃貸の入居者がついている状態で、自分と同じような投資家向けに売却する方法。もう一つは実際にそこに住む人向け、つまり実需層向けに売却する方法です。
主にこの2つが考えられ、その両方がうまくいかなかった場合には建物を壊して更地にして売却するなど、損切り的な意味合いの強い出口戦略を考えることになります。
年間家賃と期待利回りから売却価格を逆算する
投資家向けに売却するとしたら、自分がその物件を買うときと同じように利回り計算をするはずです。
もちろん、エリアごとにどれくらいの利回りなら魅力的に映るかという水準は異なりますが、競争力のある家賃設定としたうえで、できるだけ利回りを最大化しておく必要もあります。。
ここでは、一般的に検討してもらえそうな利回りを想定して計算してみます。
年間家賃60万円・期待利回り15%なら出口価格は400万円
エリアや物件の状態にもよりますが、利回り15%程度であれば、一定数の投資家に注目してもらえる水準ではないかと考えられます。そこで表面利回り15%のケースを計算してみます。
月額家賃5万円の場合 年間家賃60万円 ÷ 0.15 = 400万円
おおよそこの価格で将来売れるかどうかを検討し、その計画が成り立つならボロ戸建て投資を進めていくという手順がおすすめです。以下の計算機で、表面利回りを簡単に計算することができます。
表面利回り計算機
利回り計算機
相場より安い家賃で貸すと売却価格まで下がる
ここまで見てきてわかる通り、計画なく物件を購入してしまい、入居者がなかなか決まらないからといって家賃を下げると、狙っていた利回りがつきにくくなります。
購入を検討する投資家は家賃から利回りを判断しますから、家賃が安いということは売却価格も安くなるということです。「入居者がつかないから」という理由で家賃を下げるのは最終手段と考えてください。
長期入居者と安定した賃貸履歴が投資家への説明材料になる
一方で、投資家向けに売却する場合、同じ入居者が長期間入居してくれているとプラスに働きます。
長く入居しているということは、今後も安定して入居し家賃も安定して入るだろうという判断につながるからです。
試算2:ターゲットを実需層に切り替える場合の考え方

投資家は近隣の物件相場だけでなく、利回りを加味して購入の判断を下しますが、実重層の場合は周辺相場のみを見て買うかどうかを判断すると言うことになります。
したがってボロコ建て投資の出口を投資家から、実需層に切り替える場合、一旦売り出し価格を見直して周辺相場にきっちり合わせる必要が出てきます。
実需層は利回りではなく周辺の中古戸建て相場で判断する
周辺の相場価格を調べる場合、SUUMOやLIFULL HOME’Sのようなポータルサイトだけで価格をチェックするとどうしても不正確になりがちです。売り出し価格と成約価格には一定の差があることがほとんどですから、実際の成約価格は売り出し価格よりも少し安い値段のはずです。
確認するとしたら、レインズ等の登録データを見て判断することになりますが、レインズは不動産会社でないと実際に閲覧することができません。
方法としては、信頼できる不動産会社を見つけて価格査定をしてもらうか、あるいは国土交通省の不動産情報ライブラリなどを利用して実際の取引データを自分自身で確認するか、この2つがあげられるでしょう。
不動産情報ライブラリ|国土交通省
築年数・修繕状態・駐車場・接道条件で価格を補正する
実需層向けに戸建て住宅を売却する場合、ファミリー層を対象にするケースが多くなるはずです。そこでファミリー層に魅力がある物件を、投資の入り口の段階で選んでおくことで、最終的に子育て中のファミリー層への売却という出口をさらに増やし、柔軟化することができます。
チェックしておきたいのは、学校までの距離——学校に通いやすいかどうか——と、駅やスーパーなど生活上重要な施設への距離です。いずれも近いほど有利です。
ただし、この点は賃貸で運営する場合も全く同じ観点で選ぶことになります。賃貸でも戸建て物件の場合はファミリー層が中心になりますから、学校への道順、スーパーや駅への距離といった点を意識して物件を選ぶ必要があります。
その他には、築年数や修繕状況が価格を左右します。都心部を除くと駐車場が2台分あるという点もポイントになりますので、できれば駐車場を確保しやすい物件を選ぶと良いでしょう。また、建築基準法上の接道要件を満たしているかどうかについても、十分に確認した上で物件を選んでください。
入居者がいない物件は実需向けの売却も難しい
ここまで見てきた通り、ボロ戸建てに限らず一戸建て賃貸物件の投資では、賃貸の入居者層と売却時の購入者層がかなり重なります。いずれもファミリー層、とりわけ子育て世帯が中心であり、地方では駐車場も必須です。
つまり、賃貸に出しても入居者が決まらない場合、「では売却しよう」と考えても売りにくい、ということです。
賃貸でファミリー層が入居しないのであれば、そのエリアにはファミリー層の需要がなかったということになります。賃貸で回せないから売却を、という考え方はなかなか成立しないと最初から想定した上で、確実に入居者が集まりそうな物件を狙っていくという点に注意してください。
試算3:更地売却は出口というより最後の損切り

更地にすれば売れる……そう思いがちですが、土地売却の手取り額は「土地価格」そのものではありません。 解体から売却完了まで、差し引くべき費用が積み上がり、手取りはかなり少なくなります。
その計算をせずに購入を決めた物件で、後から「売っても手残りがゼロ」という事態が起きます。
土地価格から解体・測量・残置物処分・売却費用を差し引く
更地売却の最終手取り額は、おおよそ次の式で計算します。
最終手取り額 = 土地売却価格 ー(解体費 + アスベスト対策費 + 残置物処分費 + 境界確定測量費 + 建物滅失登記費 + 売却仲介手数料 + 譲渡所得税)
それぞれの費用は次のとおりです。
解体費(本体): 木造住宅の解体費用については、国土交通省の資料(社会資本整備審議会・2020年)が木造住宅の目安として「1坪あたり3.5万円、50坪で175万円程度」を示しています。ただし、これはあくまでひとつの参考値です。前面道路が狭く重機が入らない物件、隣地との間隔が1m未満の密集地では手壊し解体の割合が増え、坪単価が大きく上がります。解体費は物件の個別条件によって変動幅が大きく、事前に複数社から見積もりを取ることが必要です。
アスベスト対策費: 2006年以前に建てられた、または増改築された物件は、解体前にアスベストの事前調査が義務化されています(大気汚染防止法)。スレート屋根や断熱材に石綿が検出された場合、特殊な処分費用が別途かかります。これも物件ごとの調査結果次第で金額が変わるため、事前に確定できません。
残置物処分費: 室内に家財や廃棄物が残っている場合、解体業者に処分を任せると産業廃棄物扱いとなり費用がかさみます。
境界確定測量費: 土地の売却には、隣地との境界を明確にする作業(土地家屋調査士による測量・立ち会い確認)が通常必要です。費用は住宅地の一般的なケースで40万〜80万円程度が目安ですが、官民境界の確定が絡む場合はさらに期間と費用がかかります。
建物滅失登記費: 解体後1ヶ月以内に申請義務があります。土地家屋調査士に依頼する場合の報酬は5万円前後が目安です。
売却仲介手数料: 売却価格に対して上限「売却額の3% + 6万円 + 消費税」。
固定資産税の変化: 建物が建っている土地には「住宅用地の課税標準の特例」が適用され、課税標準が最大6分の1に軽減されています。建物を解体して1月1日時点で更地になると、この特例が翌年度から外れます。「税額が6倍になる」とよく言われますが、正確には課税標準の特例が消えることで税負担が増えるという仕組みです。実際の税額は土地の評価額や自治体によって異なるため、具体的な金額は事前に確認してください。
地価の低いエリアでは、これらの費用の合計が土地の売却価格を上回り、更地にするほど手残りが減るケースがあります。更地売却を想定する場合、「土地価格からいくら残るか」を必ず先に試算してください。
再建築不可なら建物を壊すことで価値がゼロに近くなることも
建築基準法第43条第1項(接道義務)は、建築物の敷地が「建築基準法上の道路に2m以上接すること」を求めています。この要件を満たさない土地では、現在の建物は使い続けられますが、一度解体すると新しい建物を建てることができません。
つまり、再建築不可物件で建物を壊すと「建物を利用する」という選択肢まで消えます。
建築基準法第43条第2項には、特例として建て替えを認める認定・許可制度があります。第1号の「認定」は、国土交通省令の基準に適合する道に2m以上接するなどの条件を満たし、特定行政庁(都道府県・市区町村)が安全上支障ないと認めた場合に建築審査会の同意なしで受けられます。第2号の「許可」は、敷地の周囲に広い空地がある場合などに特定行政庁が建築審査会の同意を得て個別に判断します。
ただし、包括同意基準(自治体があらかじめ建築審査会の同意を取得している基準)の内容は自治体ごとに異なります。「申請すれば通る」と断言できるものではなく、購入前に対象の特定行政庁窓口に照会する必要があります。
再建築不可物件は、オーナーチェンジ(投資家向け売却)以外の出口がほぼ塞がれます。住宅ローンを使う実需層への売却は原則として成立せず、土地として売却しても「二度と建物が建てられない土地」として評価は著しく低くなります。
境界・越境・接道・擁壁が土地売却を止める
土地として売れる状態にするには、建物を解体するだけでは足りません。次の問題がひとつでも未解決だと、売却が止まります。
境界未確定: 隣地との境界が確定していない土地は、多くの買主が購入をためらいます。買主側の金融機関も融資条件に境界確定を求めることがあります。隣地所有者が不在・多数・相続未了の場合、確定まで長期間かかることがあります。
越境: 建物の屋根、ブロック塀、樹木などが隣地に越境している状態、または隣地からの越境を受けている状態は、重要事項説明の対象です。売却前に覚書の締結または現物の是正が必要になる場合があります。
私道の通行・掘削承諾: 敷地への進入路が私道の場合、通行権と掘削(水道・ガスの引き込み工事)の承諾を私道所有者から取得できていないと、買主が敷地を有効に使えません。承諾書がない状態では取引が成立しないケースがあります。
擁壁: 高低差のある敷地に設置された古い擁壁は、安全性の確認が求められます。老朽化した擁壁の補修・造り替えには数百万円規模の費用がかかることがあり、売却価格の減価要因になります。
土地としても売れない物件には手を出さない
更地にしても売れない物件は存在します。
接道義務を満たさず、かつ43条2項の特例も適用できない物件は、解体後の土地に建物を建てることができません。資材置き場や駐車場としての利用価値しか残らず、売却先を見つけることが難しくなります。
地価の低い地方・郊外では、土地の売却価格そのものが解体・測量・処分費の合計を下回るケースがあります。この場合、更地売却を選ぶほど手残りが減ります。
購入前に「土地として売れるか、売れるとしたらいくらが手元に残るか」を計算することは、最悪シナリオの床を確認する作業です。その計算で手残りがマイナスになるなら、更地売却という出口は実質的に存在しないと判断してください。
100万円のリフォームは100万円以上を回収できなければ投資ではない

ボロ戸建て投資では、売却するにしても賃貸に出すにしても、ある程度のリフォームが必要になります。ただし、リフォームの考え方は目的に応じたものでなければ効果がありません。
リフォームは安ければいいというものではなく、かけたコスト以上の効果が得られるかどうかで判断する必要があります。
100万円のリフォームをするなら、100万円以上を回収できる投資になっているかどうか……この観点から考える必要があります。
再販目的なら工事費以上に売却価値を上げる
不動産会社であれば、最初からキャピタルゲインを狙い、買い取った物件をリフォームして再販するというケースが多々あります。
このパターンでは、リフォーム費用を考える際「その費用をかけることで建物の価値をいくら上げられるか」という観点で物件を見ます。
費用面では、プロの場合は仕入れのノウハウがあるため、設備を安く調達してリフォームのトータルコストを下げ、競争力のある売出し価格に持っていくという戦略を取ります。
一般の方であれば、ホームセンターの水回り3点セットなどを活用する方法もあります。工事費込みで意外とコストが抑えられるケースもあるため、この部分にしっかり予算をかけてコスパの高い工事をしておくと、全体の印象がよくなり競争力アップにつながります。
次に、どれくらいの付加価値がつき、いくらで売れるかをリサーチします。近隣にリフォーム済み物件の成約事例があれば、それを参考にするのがベストです。ない場合は、築年数がやや新しいリフォームなしの物件がいくらで成約したかを確認し、自分の物件がそれに対抗できるかという観点で再販価格を想定します。
物件の購入費用・諸費用にリフォーム費用を加えたうえで、なおかつ利益が出る金額で売却できるかどうかを判断してください。
賃貸目的なら家賃・入居率改善で回収する
投資初心者の場合は、家賃収入をメインに考えることになるでしょう。その場合も、購入金額・諸費用にリフォーム費用を加えた上で、近隣の賃貸物件と比べてアドバンテージがあるかどうかを確認します。
ボロ物件であっても、水回りを修繕し、壁紙や廊下をきれいに補修してあれば、検討してくれる人は一定数います。過疎エリアは別として、地方都市レベルであれば客付けが可能なケースも多く、あとは家賃設定だけというところまで持っていけることも少なくありません。
入居率をできるだけ高めて空室を出さないこと、一方で、できるだけ高い家賃を維持すること……この2点をバランスよく考えながら家賃を設定してください。
見えない部分を軽視すると緊急修繕で計画が狂う
賃貸に出す場合、見えない部分はリフォームせず、予算もかけずに貸したいと考えることもあるかもしれません。ただ、床下の配管や小屋裏等の設備については、最初からしっかり調査し、修繕が必要な箇所は対処しておくことをおすすめします。
こうした箇所は、問題が起きると緊急のクレーム対応になりがちで、予算を無視した修繕が必要になる場合もあります。
こうなると収益を圧迫するだけでなく、出口戦略にも影響が出てきます。できれば購入前後にインスペクションを入れ、修繕すべき箇所を早めに把握しておくのが得策です。
設備を安く仕入れても基本性能は削らない
YouTubeなどでボロ物件投資家がセルフリフォームをして賃貸に出す動画を見かけますが、重要な部分の施工はプロに任せた方がいいと考えます。その上で、設備の仕入れを工夫してコストを下げる方が合理的です。
設備については、通販の設備販売業者を活用すると低コストで調達できる可能性があります。
たとえば、建材・設備の大手である野原産業が運営するオンライン販売サイト「アウンワークス」では、建材や住宅設備を幅広く取り扱っており、価格も抑えめです。賃貸向けのキッチンであれば、クリナップ製品が5万円前後から手に入ります。換気扇・空調機器・洗面化粧台なども揃っており、たとえば600mm幅の洗面化粧台であれば3万円程度から入手できます。こうした設備を大工さんと一緒に取り付けることで、仕上がりの確実さとコストのバランスを両立できます。
セルフリフォームで施工品質を落とすよりも、仕入れを工夫しながら要所要所でプロの手を借りる……そのバランスを取ったリフォームを心がけてください。
「売れたから成功」? 本来はIRRで投資全体を判定する

売却が完了した日、手元に現金が戻ってきます。 「売れた」という事実は確かです。ただ、それが「成功した投資」かどうかは別の話です。
購入に使った自己資金、リフォーム費用、保有中の修繕費、空室損失、税金——それらをすべて加味した上で、最終的にいくら残ったのか。さらにいえば、その金額は何年間にわたる投資の結果なのか。
それを計算する指標が、IRR(内部収益率)です。
表面利回りだけでは修繕・空室・売却損を捉えられない
表面利回りは「年間家賃 ÷ 物件価格 × 100」で計算します。 計算が簡単なので物件を比較するときの入り口として使われますが、投資全体の収益性を測るには不十分です。
表面利回りが捉えられないもの:
- 購入時の仲介手数料・登記費用・不動産取得税などの諸費用
- 保有中の固定資産税・火災保険・管理費
- 突発的な修繕費(雨漏り、設備故障)
- 空室期間中の収入ゼロ
- 売却時の仲介手数料・譲渡所得税
- 売却価格の下落
年間家賃60万円・購入価格300万円なら表面利回り20%です。 ただし、購入諸費用30万円、初期リフォーム150万円、5年間の修繕費累計80万円、売却時諸費用・税金30万円がかかり、売却価格が200万円だったとすれば、話はまるで変わります。
表面利回りは物件を見つける段階のスクリーニングとして使うものであり、投資の最終評価には適しません。
購入費・家賃・修繕費・税金・売却代金を時系列で並べる
IRRは、投資全体を通じたキャッシュフローを時系列で並べ、その複利収益率を計算する指標です。
正式な定義は「全期間のキャッシュフローの現在価値合計が初期投資額と等しくなる割引率」です。Excelでは「=IRR(キャッシュフローの範囲)」で計算できます。
計算に必要な入力項目を時系列で整理します。
0年目(初期支出・マイナス値): 物件購入価格 + 購入諸費用(仲介手数料・登記免許税・不動産取得税・司法書士費用等)+ 初期リフォーム費用
1年目〜保有最終年の前年(年間手残り): プラス:年間家賃収入 × (1 ー 空室率) マイナス:固定資産税・都市計画税 + 火災保険料 + 管理委託費 + 修繕積立・突発修繕費 + 賃貸所得にかかる所得税・住民税
売却年(運営CFと売却CFを合算): その年の運営手残り + 売却価格 ー 売却仲介手数料 ー 建物滅失登記費(更地売却の場合は解体関連費用も) ー 譲渡所得税
借入れを使う場合は、毎年の返済額(元利均等)をマイナスに、売却時のローン残債返済もマイナスに加えます。これが「レバレッジ後のIRR」です。借入れなしで計算した場合は「物件そのものの収益性(アンレバードIRR)」になります。二つは意味が異なるため、混同しないよう注意してください。
複数の出口シナリオでIRRと最終手残りを比較する
同じ物件でも、売却のタイミングと売却方法によってIRRは大きく変わります。
IRRは時間価値を加味する指標です。同じ売却価格でも、早く回収するほど数値は高くなります。10年かけて同額を回収するより、5年で回収した方がIRRは高くなる——これはIRRの計算上の特性です。
ただし、IRR一つで判断すると見落としが生じます。次の指標を一緒に確認してください。
- 最終手残り額: 全コストを引いた後に手元に残る金額の絶対値
- 投資期間: 何年間、資金を拘束するか
- 最大損失額: 最悪のケースで失う金額はいくらか
これらを「楽観・基準・悲観」の3シナリオで比較します。
楽観シナリオでは実需への高値売却を想定し、基準シナリオではオーナーチェンジ売却、悲観シナリオでは更地売却(またはそれ以下)を置きます。DeepResearchに掲載されている試算例(楽観IRR +22.4%・基準 +8.2%・悲観 -14.5%)は計算の構造を示す参考として読む程度にとどめ、実際の投資判断には自分の物件データで改めて計算してください。
3シナリオを計算した上で「悲観シナリオでもIRRがプラスになるか、またはマイナスになるとしても許容できる損失の範囲か」を確認する。これが購入判断の基準になります。
売却益がなくても投資全体では利益になる場合がある
売却価格が購入価格を下回っても、投資として成立することはあります。
保有中の家賃収入(インカムゲイン)が十分に積み上がり、初期投資を回収できていれば、売却損が出てもトータルではプラスになります。
逆に、売却価格が購入価格より高くても、保有中の修繕費・空室損失・税金が膨らんでいれば、トータルではマイナスになります。
「売れたから成功」でも「売却損が出たから失敗」でもありません。評価するのはあくまで全体の収支です。
なお、譲渡所得税の計算では「売却した年の1月1日時点の所有期間」で長期・短期を判定します。5年を超えていれば税率が約20%(長期譲渡)、5年以下なら約40%(短期譲渡)です。暦上は5年経過していても、1月1日時点でまだ5年に達していなければ短期扱いになります。この判定は税額に大きく影響するため、売却時期の設計に組み込んでください。個別の税額計算は税理士に確認することをおすすめします。
まとめ「ボロ戸建て投資は購入前の計画が大切」

ボロ戸建て投資の出口戦略は、売却する段階で考えるものではありません。購入価格を決める前に、出口価格をしっかりと試算しておくことが不動産投資の基本です。
この記事で見てきた通り、投資家向け(オーナーチェンジ)・実需層向け・更地売却では、価格の決まり方がそれぞれ異なります。家賃が下がれば投資家向けの売却価格も下がり、賃貸で入居者がつかなければ実需向けにも売りにくい傾向があります。
更地にすれば売れると思いがちですが、解体費・測量費・アスベスト対策費などを差し引いた手残りが想定より少なくなることもよくあります。
3つのルートすべてで試算しておくのは、そのためです。
リフォームも出口戦略の一部です。かけた費用以上を回収できる見込みがあるかどうか、賃貸目的なら見えない部分まで修繕を済ませておくかどうか……ここで判断を誤ると、運用中の修繕が収益を圧迫します。
また、最終的な投資の評価は、表面利回りではなくIRRで行うべきです。購入から売却までの全キャッシュフローを時系列で並べ、楽観・基準・悲観の3シナリオで確認することが、失敗を防ぐ判断の基礎になります。
この記事を読み終えた今、「物件を買うかどうか」の前に「3つの出口価格を計算できるか」を確認する重要性が理解できているはずです。その1ステップが、ボロ戸建て投資の結果を大きく変えます。
もし「自分では判断がつかないな」と思ったら、無料のミニ不動産相談を利用してください。
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無料ですが、迷っている問題をある程度切り分け、解決に向けた方向性が出せる可能性もあります。


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