空き家の相続で注意したいポイント5選を解説|親族で揉めない対策から税金対策まで

空き家を相続したら、まず確認したいのは、相続人、遺言書、登記名義、固定資産税通知書、そして現地の状態です。ここを飛ばして判断すると、あとから相続人が増えたり、共有者の同意が取れなかったり、売却や解体の手続きが止まることがあります。

特に注意したいのが、相続登記です。2024年4月から相続登記は義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記するのが基本になりました。相続放棄を考える場合も、原則として相続を知った日から3か月以内に判断する必要があります。

さらに、空き家を持ち続ければ固定資産税や管理費がかかります。放置すれば、管理不全空家や特定空家に指定され、税負担や近隣トラブルのリスクが大きくなることもあります。一方で、要件を満たせば、売却時に空き家の3,000万円控除を使える可能性もあります。

この記事では、空き家を相続したときに最初に確認すること、相続登記の義務化、兄弟で相続する場合の注意点、税金、相続放棄、売却・解体・管理の判断基準まで、順番に整理します。

「何から手をつければいいかわからない」という方でも、読み終えるころには、自分の空き家で次に確認するべきことが見えてくるはずです。

この記事は、アップライト合同会社の立石秀彦(宅地建物取引士)が制作しました。不動産の調査・マーケティングを専門とし、複数の不動産メディアを運営しています。

目次

空き家を相続したら最初に確認したい5項目

空き家を相続した場合、多くの人は「何から手をつければいいのか」と迷うはずです。

筆者もこれまで多くの相談を受けてきましたが、最初の一歩でつまずく方は少なくありません。ここでは、判断を誤らないために、空き家を相続したら最初に確認しておきたい5つのポイントを整理します。

[画像挿入:空き家相続の全体フロー図/ALT案「空き家 相続 チェックリスト 5項目」]

誰が相続人になるかを確認する

相続人は誰か。 まずここを確定させないと、話は前に進みません。

配偶者は常に相続人になります。子どもがいれば子どもたちも相続人になります。子どもがいない場合は親、親もいなければ兄弟姉妹……というように、法律で順番が決まっています(法定相続人・法定相続分)。

戸籍を遡ってみると、思わぬ相続人が出てくることもあります。離婚歴のある被相続人に、前妻との間の子がいた、というケースも珍しくありません。

相続人が誰かわからないまま話し合いを始めても、あとで「実は他にも相続人がいた」となれば、やり直しです。まずは戸籍謄本を集めて、相続人を確定させるところから始めます。

遺言書・遺産分割協議・共有名義の有無を確認する

次に確認したいのが、遺言書の有無です。

相続登記に詳しい笹尾司法書士も、遺言があるかないかで手続きの流れが大きく変わると話していました。公正証書遺言、または法務局に保管されている自筆証書遺言であれば、家庭裁判所での検認手続きは不要です。それ以外の自筆証書遺言は、検認を経てからでないと手続きを進められません。

遺言がない場合は、相続人全員で遺産分割協議をすることになります。ただし、法定相続分どおりに登記を入れるなら、この協議自体が不要になるケースもあるそうです。

もう一つ、見落としがちなのが共有名義です。すでに親の代から兄弟で共有になっている土地が、実家の空き家についてくることもあります。共有名義の不動産は、売却するにも共有者全員の同意が必要になります(この点は後の章で詳しく触れます)。

土地と建物の名義を登記簿で確認する

登記簿を見て、名義が誰になっているかを確認します。

ここで意外と多いのが、「被相続人(亡くなった方)が山林などを所有していた記憶はあるけれど、どこの不動産か特定できていない」というケース。「何か山があるらしい」というだけで、場所がはっきりしない、という状態です。

こうした場合は、2024年2月から始まった所有不動産記録証明制度が手がかりになります。亡くなった人の名前で、その人が所有していた不動産を検索できる制度です(登記官が発行する証明書として取得できます)。ただし、名前の漢字や住所の表記が少し違うだけでヒットしないこともあり、万能な制度とは言えないようです。

名義が先代、先々代のまま止まっている場合も注意が必要です。相続登記をしないまま何世代も経つと、相続人がどんどん増えて、収拾がつかなくなります。

固定資産税通知書・建築資料・写真をそろえる

名義が確認できたら、次は資料集めを行います。

固定資産税通知書には、土地・建物の評価額や面積が記載されています。売却や査定の際、真っ先に必要となる資料の一つです。

建築確認時の書類や図面が残っていれば、それも用意しておきます。再建築の可否や、増改築の履歴を確認する際に必要になることがあります。

建物の写真も、劣化状況がわかるものを撮っておくと、あとの判断がスムーズです。外壁のひび割れ、雨漏りの跡、庭木の様子……。こうした記録は、不動産会社に相談する際にも役立ちます。

売る・残す・放棄を判断する前に現地の状態を確認する

資料がそろったら、最後に現地を見ておきます。

図面や写真だけではわからないこともあります。実際に足を運んでみると、想像していたより傷みが進んでいた、逆に思ったより状態がよかった、ということもあります。

遠方の空き家の場合、現地確認を後回しにしがちです。しかし、ここを飛ばして売る・残す・解体するといった判断をすると、あとで話が変わってくることもあります。

判断を急ぐ必要はありません。まずは状態を確認してから、次のステップに進みます。

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以上の5項目を確認できれば、空き家相続の全体像がつかめます。次の章では、相続登記の義務化について、司法書士の視点から詳しく見ていきます。

相続登記の義務化について司法書士の笹尾先生に聞きました

相続登記の義務化について、相続登記を専門にする四日市の司法書士・笹尾亘先生に伺いました。この章は、インタビュー内容を元に構成しています。

相続登記は不動産を取得したことを知った日から3年以内が基本

「相続登記の義務化」——ニュースでよく聞く言葉ですが、中身まで知っている人は多くありません。

笹尾先生によると、日本には所有者がわからない土地が、九州の面積とほぼ同じだけ存在するそうです。 そのうち約65%が、相続登記がされていない土地でした。

所有者がわからないと、何が困るのでしょうか。

周辺環境の悪化や、公共事業の遅れにつながる点などが問題視されています。

こうした問題を解消するために始まったのが、相続登記の義務化です。

期限は、不動産を相続したことを知った日から3年以内。 「知った日」というと難しく聞こえますが、多くの場合は被相続人(亡くなった方)が亡くなった日が、そのまま起点になります。海外に住んでいるなど特殊な事情がある場合は、実際に知った日が起点となります。

期限内に登記をしないと、過料が科される可能性もありますから、注意が必要です(ただし行政罰なので前科がつくことはありません)。

とはいえ、正当な理由があれば、過料を免れる可能性もあります。 遺産分割協議がまとまらない場合や、重い病気を抱えている場合、DV被害や経済的困窮も、これに含まれるそうです。

こうした事情を登記官に説明すれば、正当な理由があると認められる場合があるとのこと。ただし、まだ始まったばかりの制度で、判例の蓄積はありません。具体的な基準は明確ではなく、法務局で「事情を説明するしかない」というのが、笹尾先生の率直な感想でした。

もう一つ、覚えておきたいのが相続人申告登記という制度です。 相続人が不明で登記そのものが難しい場合、この手続きをすることで、登記の義務を一旦果たしたことになります。

遺産分割が終わっていない場合でも放置はダメ

遺産分割協議が長引くケースも珍しくありません。相続人が多かったり、相続財産に田畑が混じっていたり、行方不明の相続人がいたり……。それだけで、話し合いが何年もかかることがあります。

しかし遺産分割協議が終わっていないからといって、相続登記をしないまま放置していい理由にはなりません。

先ほどの相続人申告登記を使えば、一旦義務は果たせます。しかしこれは、実際の名義変更(所有権移転登記)ではありません。遺産分割協議がまとまったら、あらためて登記が必要になります。

とはいえ「相続は初めてで、何から手をつけていいかわからない」と感じる方がほとんどだと思います。笹尾先生は、まず司法書士に相談することを勧めていました。登記は司法書士の専門分野です。相続税の申告が必要になれば税理士を、遺産分割で揉めそうなら弁護士を、それぞれ紹介してもらえる体制が整っていることも多いようです。

司法書士笹尾亘事務所

〒510-0812 三重県四日市市西阿倉川1490−21 ラトゥール 203
電話番号:059-327-7456

登記義務を後回しにすると売却・解体・活用が難しくなる

笹尾先生によると、昭和初期に亡くなったおじいさん、ひいおじいさんの代から相続登記が未了だった土地で、相続登記に10年かかった事例があるそうです。

いざ土地を売ろうとしたときに、所有者を確認すると——40人、50人にまで増えていたのですが、ここまで来ると売却どころではありません。

こうした事態を防ぐためにも、相続登記の義務化が始まりました。

登記名義人の住所変更登記や氏名変更登記の義務化、所有不動産記録証明制度(亡くなった方の名前で、所有していた不動産を検索できる制度)も、同じ狙いから生まれた仕組みです。制度同士を連携し、所有者を特定しやすくする方向に進んでいます。

空き家の管理責任は相続後も残る

相続が発生した時から、空き家の管理責任も相続人に移ります。つまり、遺産分割が終わっていなくても、自分の財産と同じくらいの注意をはらって管理する義務があります(民法918条)。

それを放置するとどうなるのでしょうか。

長期間放置すると、行政の対応は徐々に厳しくなっていきます(固定資産税が最大6倍になるなど)。 「管理不全空家」に指定され、勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が外れます。さらに放置を続け、状況が悪化すれば「特定空家」に指定されることに。最終的には、解体費用まで請求されることになります。 

倒壊やブロック塀の破損、庭木の越境、害虫被害……。こうした事情で近隣に損害を与えた場合、相続人は民法717条の工作物責任を負う可能性もあります。故意や過失がなくても責任を問われる、いわゆる無過失責任です。

「相続放棄をすれば管理から解放される」と思われがちですが、そう単純でもありません。放棄した時点で実際にその空き家を管理していた(現に占有していた)場合は、保存義務が残ります。次の相続人か、家庭裁判所が選ぶ相続財産清算人に引き渡すまで、この責任からは逃れられないのです。

固定資産税・都市計画税の支払いが発生する

固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日時点の所有者に課税されます。遺産分割が終わっていない間は、相続人全員が「連帯納税義務」を負う形です。自治体は、相続人のうち誰か一人に全額を請求することもできます。持分に応じた精算は、相続人間で話し合って決める必要があります。

住宅用地には軽減措置があり、200㎡以下の部分は評価額の6分の1にまで下がります。ところが、管理不全空家として勧告を受けると、この特例が外れます。負担調整の仕組みはあるものの、実際の税額は3.5倍から4.2倍程度まで上がるケースが多いようです。

建物を解体して更地にした場合も、同じように特例が外れます。老朽化した建物を取り壊して安全にしたはずが、土地の税金は上がる——そんなジレンマにおちいるわけです。一部の自治体では、解体後も一定期間税額を据え置く独自の減免制度を設けています。ただし内容は自治体ごとにかなり違うので、役所に確認する必要があります。

なお都市計画税は、市街化区域内の不動産だけが対象です。固定資産税とは課税される区域が違う、という点も覚えておきたいところです。

兄弟で空き家を相続する場合に注意すること

兄弟で相続不動産を共有にするケースもありますが、一人だけで所有する単有にくらべて、どうしても成約やデメリットが生じてしまいます。ここでは、相続不動産を共有する場合の注意点をあげていきます。

共有名義にすると売却時に全員の同意が必要になる

兄弟で相続すると、土地は共有名義になります。

笹尾先生の話では、例えば3人兄弟が3分の1ずつ相続した場合、誰か一人だけの判断で土地全部を売ることはできないそうです。売却には共有者全員の同意が必要で、権利書(登記識別情報通知書)と印鑑証明書もそれぞれ用意することになります。

自分の持分だけを売ることは法律上できますが、買い手はかなり限られます。共有のままの土地を欲しがる人は少なく、値段も安くなりがちです。

兄弟で管理費や固定資産税をどう負担するか決める

管理費や固定資産税は、持分に応じて分担するのが原則です。ただ実際には、代表者が立て替えて、あとで兄弟間で清算するケースが多いようです。誰がいくら払うかを早めに決めておくと、あとの揉め事を防げます。 

使いたい人・売りたい人・放棄したい人で意見が分かれるケース

家を残したい人、売りたい人、関わりたくない人……。空き家の使い道について、兄弟の意見がそろわないことは珍しくありません。

実家への思い入れがある人と、そうでない人とでは、どうしても温度差が出ます。介護をしていた側が「自分の取り分を多く」と主張する、という話もよく聞くパターンです。まとまらないまま放置すると、次の相続でさらに相続人が増え、話はもっとややこしくなります。

代償分割・換価分割・共有の違いを整理する

空き家の分け方には、いくつかの方法があります。

笹尾先生によると、共有物の分割は主に3パターンだそうです。土地そのものを切り分ける「現物分割」。売って代金を分ける「換価分割」。そして誰か一人が土地を取得し、他の兄弟に相当額を払う「代償分割」です。

家が建っている土地では、現物分割は現実的でないことが多く、換価分割か代償分割のどちらかを選ぶケースが目立ちます。

兄弟間で揉める前に不動産の査定額を確認するのもおすすめ

まず査定額を確認することが、話し合いの土台になります。

感覚だけで金額の話をすると、認識のズレが出やすいところです。先に査定を行い価格を確認しておけば、代償分割の金額も、売却するかどうかの判断も進めやすくなります。

空き家相続でかかる税金をまとめておさらい

空き家の相続には、いくつかの税金が関わってきます。ここでは全体像を簡単に整理します。細かい計算は税理士に確認するのが確実です。

[画像挿入:相続時・保有中・売却時の税金整理図/ALT案「空き家 相続 税金 一覧」]

相続税がかかるかどうかは財産総額で決まる

相続税には基礎控除があり、その目安は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。遺産の総額がこの範囲内であれば、相続税はかかりません。

実際に相続税がかかった人の割合は、全体の1割程度(令和5年で9.9%程度)とされています。空き家一軒だけの相続であれば、かからないケースも多いようです。(参考:国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」)。

固定資産税は空き家を持ち続ける限り発生する

固定資産税(地域によっては都市計画税も)は、空き家を持っている間、毎年かかり続けます。使っていない家でも、所有しているだけで課税されます。 

売却すると譲渡所得税がかかる場合がある

空き家を売って利益が出た場合、譲渡所得税がかかることがあります。所有期間が5年以下だと税率は約39.63%、5年を超えると約20.315%が目安です(いずれも所得税・住民税・復興特別所得税の合計)。

ただし、後述する「3,000万円控除」が使えれば、税負担はかなり抑えられます。

解体すると住宅用地特例が外れて固定資産税が上がる可能性がある

建物を解体して更地にすると、土地の固定資産税が上がることがあります。住宅が建っている土地には軽減措置があり、更地にするとこれが外れるためです。売却や活用の計画が固まっていない段階での解体は、慎重に判断したいところです。 

税金の判断は「相続時」「保有中」「売却時」に分けて考える

税金の話は、タイミングによって種類が変わります。相続時は相続税、保有中は固定資産税(都市計画税)、売却時は譲渡所得税……というように、それぞれ別の税金として整理すると分かりやすくなります。

いつ、どの税金が発生するかを把握しておくと、売る・残すの判断時に役立ちます。

空き家の3,000万円控除が使えるか確認する

相続した空き家を売るときに使える可能性がある特例

相続した空き家を売却すると、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります。「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」という制度で、要件を満たせば税負担がかなり軽くなります。 (参考:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までが目安

期限は、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。加えて、制度自体の適用期限が令和9年(2027年)12月31日までとされています。どちらの期限も超えないよう、早めの判断が必要です。 

昭和56年5月31日以前の建物か確認する

対象となるのは、昭和56年5月31日以前に建築された建物です(旧耐震基準の建物、という理解で概ね問題ありません)。マンションなど区分所有建物は対象外です。 

耐震リフォームまたは取り壊しが必要になるケース

建物付きで売る場合は、現行の耐震基準を満たしている必要があります。満たしていない場合は、耐震リフォームをするか、取り壊して更地で売るかのどちらかです。令和6年以降の売却分からは、売却後に買主が耐震改修や取り壊しをした場合でも、一定期間内であれば対象になるよう緩和されています。 

相続人が3人以上の場合は控除額が変わる

控除額は、相続人が1人または2人なら1人あたり3,000万円、3人以上の場合は1人あたり2,000万円になります(令和6年1月1日以後の譲渡分から)。 

マンションや同居していた家では使えない場合がある

この特例は、被相続人が一人暮らしをしていた家が対象です。相続開始の直前に同居していた家族がいた場合は、原則として対象外になります。区分所有建物(マンション)も対象外です。

要件が細かいので、当てはまるかどうか迷う場合は、税務署か税理士への確認をおすすめします。

空き家を相続するデメリットと放置リスク

相続した空き家を、そのまま置いておくとどうなるでしょうか。ここでは具体的なデメリットとリスクを整理します。

[画像挿入:実際に特定空家に指定された建物の写真/ALT案「特定空家 事例 外壁 劣化」]

固定資産税・管理費・修繕費がかかり続ける

空き家は、住んでいなくても税金や管理費がかかり続けます。固定資産税は毎年発生しますし、庭の手入れや水道光熱費の基本料金、防犯対策の費用もかかってきます(この点は前の章でも触れた通りです)。

使っていない不動産に、毎年お金だけが出ていく状態です。

老朽化すると売却価格が下がりやすい

放置すればするほど建物は傷みます。雨漏り、シロアリ、基礎の沈下……。こうした劣化は、査定額に直結します。

早めに売却を検討したほうが、高く売れる可能性は高くなります。ただし、立地や土地の条件によっては、建物の状態がそれほど価格に影響しないケースもあります。

管理不全空家・特定空家に指定されるリスクがある

劣化が進むと、自治体から「管理不全空家」や「特定空家」に指定されることがあります(この仕組みについては前の章で詳しく触れています)。

筆者は最近、特定空家に指定された建物を下見に行ってきました。外壁が崩れ、庭木が道路にまではみ出していて、近隣の方が困っている様子が伝わってくる状態でした(上の写真の建物です)。指定を受けると固定資産税の優遇が外れ、税負担が大きくなります。

倒壊・越境・害虫・不法侵入で近隣トラブルになる

管理が行き届かない空き家は、近隣トラブルの元にもなります。ブロック塀の崩落、庭木の越境、害虫の発生、不法侵入……。

こうした被害が発生した場合、相続人は法的な責任を問われる可能性があります(工作物責任について、詳しくは前の章で触れています)。

放置するほど相続人が増えて処分しにくくなる

相続登記をしないまま放置すると、次の相続、また次の相続と続くうちに、相続人がどんどん増えていきます。

笹尾先生も、相続登記に10年かかった実例を話してくれました。所有者が40人、50人にまで増えてしまい、売ろうにも身動きが取れなくなったケースです。空き家は、放置している時間が長ければ長いほどハイリスクになります。

「うちの実家は大丈夫だろうか」と気になった方は、いえとちラボまでご相談ください。現地の状態確認から承っています。

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こうしたデメリットは、放置期間が長くなるほど大きくなります。次の章では、相続放棄という選択肢について整理します。

相続放棄で空き家を手放すのは正解?

相続放棄は空き家だけを放棄できる制度ではない

相続放棄して「いらない空き家だけ手放したい」と考える方は多いですが、相続放棄はそう都合よく選べる制度ではありません。相続放棄をすると、被相続人の財産すべてを放棄することになります。 

預貯金や他の財産も相続できなくなる

空き家だけでなく、預貯金や他の不動産、株式なども含めて、すべての相続権を失います。プラスの財産があっても、受け取ることはできません。 

原則として相続を知った日から3か月以内に判断する

相続放棄には期限があります。相続の開始を知った日から3か月以内(熟慮期間)に、家庭裁判所へ申し立てる必要があります。判断材料が足りない場合は、期間の伸長を申し立てることも可能です。 

すでに処分や管理をしていると相続放棄が問題になる場合がある

被相続人の預金で支払いをしたり、遺品を処分したりすると、「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなることがあります(法定単純承認)。判断に迷う段階では、財産に手をつけないのが基本です。 

売れる空き家なら放棄の前に査定する価値がある

空き家について「マイナスの財産だから」と判断する前に、査定を取っておく価値はあります。老朽化していても、立地によっては買い手がつくケースもあります。放棄してしまうと、あとから「実は売れた」とわかっても取り消せません。 

相続放棄後も管理義務が残るケースに注意する

相続放棄をすれば、すべての負担から解放されると思われがちですが、そうとも限りません。放棄した時点でその空き家を実際に管理していた場合、次の相続人か相続財産清算人に引き渡すまで、保存義務が残ります(この点は前の章でも触れた通りです)。

相続放棄の判断や手続きについては、こちらの記事でさらに詳しく解説しています (参考:「実家の相続放棄」)。

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空き家を売る・貸す・解体する・残すの判断基準

売却しやすい空き家の条件

立地がよく、建物の状態もそこまで悪くない空き家であれば、よほど不人気エリアでない限り売却すべきだと考えます。また、駅からの距離、周辺の生活利便性……。こうした条件がそろっていれば、多少の劣化があっても買い手はつきやすい傾向があります。

管理の手間や税金の負担を考えると、条件がそろっているうちに動いたほうが有利でしょう。

賃貸や活用を検討できる空き家の条件

立地がよくてもすぐに売りたくない場合は、賃貸という選択肢もあります。ただし、賃貸にはリフォームや設備更新の初期費用がかかりますし、入居者募集や管理の手間も発生します。

駅近や住宅需要が高いエリアなら、賃貸に回す価値は十分あります。逆に、需要が少ないエリアでは、空室が続いて負担が大きくなるおそれもあります。

解体して更地売却を検討するケース

建物の傷みが激しく、リフォームでは対応しきれない場合は、解体して更地で売る方法もあります。ただし解体費用がかかりますし、更地にすると固定資産税の特例が外れることもあります(この点は前の章で触れた通りです)。

解体を決める前に、更地にしたほうが売れやすいか、不動産会社に確認してから判断したいところです。

しばらく保有する場合の最低限の管理計画

すぐに判断がつかない場合、しばらく保有するという選択肢も現実的です。ただし、何もせず放置するのは避けたいところです。

最低限、月1回程度の見回りや、庭木の手入れは必要になります。遠方に住んでいる場合は、空き家管理サービスを利用する方法もあります。

判断に迷う場合はホームインスペクション+空き家管理から始める

どの選択肢を取るか迷ったときは、まず現地調査(建物診断)と定期的な管理から始めるのが確実です(現地確認については、最初の章でも触れた通りです)。

調査をして数字や現況が見えてくると、判断の材料がそろいます。感覚だけで結論を出すより、確実な一歩になるはずです。

判断に必要な材料がそろえば、あとは条件に合った方法を選ぶだけです。次の章では、実際に売れにくい空き家の出口について整理します。

空き家が売れにくい場合の現実的な出口

仲介で売れる空き家と買取を検討したい空き家

立地や状態がある程度よければ、仲介で買い手を探す方法が向いています。時間はかかりますが、価格は市場価格に近い水準を狙えます。

一方、老朽化が進んでいたり、条件が悪かったりする空き家は、不動産会社による買取のほうが早く現金化できます。価格は仲介より下がるのが一般的ですが、売却時期を確定できるのが利点です。

再建築不可・接道不良・老朽化がある場合の進め方

道路に十分接していない土地(接道不良)や、建て替えができない土地(再建築不可)は、通常の売却より難易度が上がります。

隣地の買主に絞って交渉する、専門の買取業者に相談する、といった進め方が現実的です。一般の仲介市場だけで探すと、時間がかかりやすいところです。

遠方の空き家を相続した場合の売却手順

遠方に住んでいる場合、現地に何度も足を運ぶのは負担です。まずは電話やオンラインでの相談から始め、現地確認は写真や動画で補いながら進める方法もあります。

地元の不動産会社に、片付けから売却まで一括で任せられるかを確認しておくと、やり取りの回数を減らせます。

家財道具が残っている場合の片付けと査定の順番

家財道具が残ったままでも、査定自体は可能です。先に片付けてから査定を受けるか、そのままの状態で査定を受けて片付け費用を差し引くか、どちらの進め方もあります。

遺品の中に価値のあるものが混ざっていることもあるので、処分を急ぎすぎないほうが安心です。

解体しても売れない土地はどう考えるか

解体して更地にしても売れない土地は、実際にあります。立地や需要の問題が大きく、建物の有無だけでは解決しないケースです。

こうした土地では、次に説明する相続土地国庫帰属制度や、自治体への寄付、隣地所有者への譲渡といった、売却以外の選択肢も視野に入れることになります。

相続土地国庫帰属制度は使えるか

売れない土地を手放す手段として、相続土地国庫帰属制度があります。相続した土地を、一定の要件のもとで国に引き取ってもらう制度です(令和5年4月27日スタート)。

ただし、建物がある土地は対象外です。空き家付きの土地で使うには、先に解体しておく必要があります。境界が不明確な土地や、担保権(制限物権)が設定されている土地なども対象外になります。

費用もかかります。審査手数料が1筆14,000円、承認後の負担金が原則20万円程度(市街地の宅地や農地など、面積に応じて数十万円以上になる場合もあります)。

売却できる見込みが少しでもあるなら、まずは査定を取ってから、この制度を検討する順番が現実的です(参考:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」)。

空き家を相続した次のアクションは?

この章では、ここまでの内容を実際の行動に落とし込んでみます。

まず相続登記・相続人確認を進める

最初にやることは、相続登記と相続人の確認です(詳しくは最初の章で触れた通りです)。ここが済んでいないと、売る・貸す・解体するのどれを選ぶにしても、次に進めません。 

売却できる空き家なら早めに査定する

売る可能性が少しでもあるなら、早めに査定を取っておきます。老朽化が進む前に動いたほうが、選べる選択肢は多く残ります。 

3,000万円控除を使える可能性がある場合は期限から逆算する

控除が使えそうな場合は、期限から逆算してスケジュールを組みます。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、という期限があります(詳しくは税金の章で触れた通りです)。 

使う予定がない空き家は管理・解体・売却を比較する

当面使う予定がないなら、管理を続けるか、解体するか、売却するかを比較します。それぞれの費用と手間を並べてみると、判断しやすくなります。 

判断がつかない場合は空き家の状態確認から始める

迷ったときは、まず現地の状態を確認することから始めます。資料と現地、両方を見てから判断すれば、あとで後悔しにくくなります。 

空き家相続でよくある質問

空き家を相続したら必ず登記しないといけませんか

はい。2024年4月から相続登記が義務化されています。自分のために相続が発生したことを知った日から3年以内に登記をしないと、過料の対象になります(詳しくは相続登記の章で触れた通りです)。

兄弟で相続した空き家は誰が管理しますか

共有名義の場合、管理費や固定資産税は持分に応じて分担するのが原則です。誰が代表して管理するか、早めに決めておくとトラブルを防げます(詳しくは兄弟間の注意点の章をご覧ください)。

空き家を解体してから売るほうがよいですか

一概には言えません。老朽化が激しい場合は解体したほうが売れやすいこともありますが、更地にすると固定資産税の特例が外れる場合もあります。不動産会社に相談したうえで、解体の要否を判断するのが確実です。

古い空き家でも3,000万円控除は使えますか

昭和56年5月31日以前に建築された建物であれば、使える可能性があります。ただし被相続人が一人暮らしをしていたこと、区分所有建物でないことなど、いくつかの条件があります(詳しくは控除の章で触れた通りです)。

遠方の実家を相続した場合も査定できますか

可能です。写真や図面をもとに簡易査定を受け、現地調査は必要な段階でまとめて行う、という進め方もあります(詳しくは売れにくい空き家の出口の章で触れた通りです)。

相談前に何を準備すればいいですか

固定資産税通知書、登記簿、建築確認資料があると話が早いです。建物の写真(劣化状況が分かるもの)も用意しておくと、査定や解体要否の判断がスムーズになります。

まとめ「空き家を相続したあとに迷わないための整理ポイント 」

空き家を相続したら、最初にやることは「相続人・名義・資料・現地の状態」を確認し、売る・残す・放棄する前に判断材料をそろえることです。

ここを急ぐと、あとから共有者の同意が取れない、相続登記が進まない、税金や管理責任だけが残る……という事態になりかねません。

特に相続登記は、2024年4月から義務化されています。兄弟で相続する場合は、共有名義にする前に、売却時の同意や費用負担まで話し合っておくことが大切です。さらに、固定資産税、3,000万円控除、相続放棄、解体後の税負担などは、タイミングによって判断が変わります。

この記事を読んだことで、まず何を確認し、どの順番で専門家に相談すればよいかが整理できたはずです。

そのうえで、迷う場合はいきなり売却や解体を決めるのではなく、まず空き家の状態確認と簡易査定から始めてください。いえとちラボでは、現地調査や査定を通じて、売却・管理・解体のどれが合うかを一緒に考えます。

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